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「この世の地獄」を演出するロシア 反体制派の”過激化”が狙い、露のアレッポ攻撃の深謀遠慮
http://wedge.ismedia.jp/articles/-/7895
2016年10月5日 佐々木伸 (星槎大学客員教授) Wedge
シリアの停戦は3日、米国がロシアとの協議の中断を発表し、完全に破綻した。破綻した最大の理由は、ロシアとシリア政府がアレッポの反体制派支配地区への空爆を停止しなかったことだ。その背景には「反体制派を過激派に近づけて米国の支援を阻み、将来の和平交渉から反体制派を一切排除する」(米有力紙)というロシアの深謀遠慮がある。
■米に武器援助をちゅうちょさせる
今にして思えば、ロシアは12日に発効した停戦を最初から守るつもりは全くなかったし、アサド政権軍にも守らせるつもりがなかったのではないか。「ロシア軍機による攻撃」(米情報筋)とされる国連の人道支援物資トラックの爆撃(19日)も起こるべくして起こったのかもしれない。
民間の監視団などによると、ロシア、シリア軍機はアレッポ東部の反体制地区に対して、この2週間で約2000発の爆弾を投下。その中には地中貫通爆弾やサーモバリック爆弾(気化爆弾)などの殺傷力の強い爆弾も含まれている。攻撃は民間人居住区だけではなく、学校や病院に対してもほとんど無差別で行われ、同じ期間で約350人が死亡、うち100人は子供だという。
ロシアの言い分はこうだ。停戦合意からは、過激派組織「イスラム国」(IS)やアルカイダ系の「シリア征服戦線」(旧ヌスラ戦線)に対する攻撃が除外されており、反体制地区への攻撃は「シリア征服戦線」を狙っているというものだ。反体制派が「シリア征服戦線」と一緒に行動している結果、反体制派や民間人にも被害が出ているという理屈だ。
しかも「シリア征服戦線」から反体制派を引き離すのは、反体制派を支援している米国の役割で、反体制派が空爆に巻き込まれるのは米国がその責任を果たしていないからだ、という主張だ。だが、「この世の地獄」(アレッポ住民)を演出しているロシアの無差別攻撃には計算された戦略があるのは間違いない。
この点について米ニューヨーク・タイムズ紙がアナリストの分析として報じるところによると、ロシアの狙いは第1に、反体制派が強力な武装勢力である「シリア征服戦線」に助けを求めるよう仕向けることだ。これによって反体制派に過激派との烙印を押し、政治勢力としての反体制派の正当性をなくすことだという。
反体制派が過激組織との連携を深めれば、これまで支援してきた米国は反体制派への軍事支援をちゅうちょせざるを得ない。武器の供与はそのまま過激派の手に最新兵器が渡ることを意味するからであり、オバマ政権が最も恐れてきた事態だ。
また短期的にはロシアやシリア政府軍の空爆への憎悪で反体制派と過激派の団結が強まるものの、長期的には両者の境界線があいまいになり、将来の和平交渉や政権移行交渉の席に反体制派を入れるのを困難にさせることも狙っているようだ。
いずれにせよ、ロシアの目標はシリア政府軍の完全な軍事的勝利ではなく、あくまでも政治的な勝利だ。反体制派を弱体化させて、内戦の終結方式やアサド政権に代わる新政権の発足に当たって強力な“拒否権”を獲得することだろう。プーチン大統領が戦況を自在に操っているような現実を見れば、ロシアがそうした“拒否権”を獲得しつつあることは一目瞭然だ。
■次期米政権に改善のカード残す
プーチン大統領は米国がシリア停戦に関してロシアとの協議中断を発表したのを受け、報復に転じた。米国との間で2000年以降に結んだ「兵器級余剰プルトニウム処分」の合意を停止する大統領令を出したのだ。合意停止は核軍縮のこれまでの成果を台無しにしかねず、「核兵器なき世界」を掲げるオバマ米大統領にとっては大きな打撃だ。
「プーチンは完全にオバマを見限ったということだ。残りの任期が4ヶ月もないオバマ政権との良好な関係はもう必要はない。ヒラリーか、トランプかは分からないが、オバマ政権との関係をあえて最低レベルにまで落とし、次期政権に関係改善のカードを残したとも言える」(ベイルート筋)。
プーチン氏がオバマ氏の足下を見透かしているということは、米国に新政権が誕生するまでシリア内戦の停戦が実現する可能性もないということだろう。こうした中、フランスは安保理に「アレッポ上空での軍用機の飛行停止」を求める決議案を理事国に配布した。
しかし、ロシアは同決議案に拒否権を行使する意向をすでに明らかにしており、葬り去られる懸念が強い。「米ロの対立に翻弄され、シリア人がただ死んでいく」(同)。この悲惨な現実に当面、終わりは見えない。
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