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Sultan Kitaz-REUTERS
シリア停戦崩壊、米ロ関係かつてない緊張へ
http://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2016/10/post-5949.php
2016年10月4日(火)17時20分 デービッド・フランシス ニューズウィーク
<米国務省は3日、シリア内戦の解決を目指す米ロの2国間協議を停止すると発表した。両国の合意で停戦が発効した後も、アレッポの反体制派支配地域への攻撃を続けたからだ。これで、政治的解決はますます遠のいた> (写真は2年前のアレッポ。あと何年こんなことが続くのか)
シリア政府軍とロシア軍がシリア北部の都市アレッポで病院などの医療機関も含めた民間人への爆撃を繰り返し、人道危機の様相がさらに深まったのを受けて、アメリカはシリア情勢の打開に向けたロシアとの協力を中止すると正式に発表した。ジョン・ケリー米国務長官を先頭にアメリカ政府はここ数日、度重なる停戦違反があったにも関わらず、停戦はまだ終わっていないとの見解に固執してきたが、それも限界にきたようだ。停戦の崩壊により、バラク・オバマ米大統領とロシアのウラジミール・プーチン大統領の関係がかつてないほど悪化していることが明らかになった。
「ロシア側は市民が暮らす地域への爆撃を止め、人道支援物資を載せた車列の通行を許す義務を履行しなかった」と、米国務省のジョン・カービー報道官は言った。「ロシアは合意に反し、シリア政府に停戦を維持させることを望まなかった」
【参考記事】オバマが見捨てたアレッポでロシアが焦土作戦
【参考記事】ロシア「アメリカは事実上のテロ支援国家」
■プルトニウム処分問題でも挑発的態度
米国務省の声明が発表される数時間前、プーチンは2000年に米ロ両国が合意した兵器級の余剰プルトニウムの処分に関する協定の実行を停止する大統領令に署名した。停止の理由はアメリカの「非友好的な行動」だと主張したプーチンは、アメリカと同盟国が加盟するNATO(北大西洋条約機構)に対して、ロシアの国境に近い東欧での軍事プレゼンスを後退させるよう要求した。さらに、ロシアが14年にウクライナのクリミア半島を併合したことで欧米に課された経済制裁を解除するよう迫った。
ケリーは5年半に及ぶシリア内戦を政治的に解決するためにロシアからの協力を取りつけようと、ここ1年間奔走してきた。ケリーがプーチンに望んだのは、ロシアが支援するシリアのバシャル・アサド大統領に空爆を止めさせ、包囲下の市民を救う人道支援物資を届けさせるよう説得することだった。ロシア側の協力と引き換えにアメリカは、ロシアが進めるアルカイダやISIS(自称「イスラム国」、別名ISIL)との戦いに協力する意思を示していた。
【参考記事】地獄と化すアレッポで政府軍に抵抗する子供たち
そうした試みは失敗に終わった。ロシアとシリアは9月12日の停戦発効後も激しい空爆と迫撃砲による軍事作戦を繰り返し、19日には援助物資を運ぶ国連の車列を空爆した。ロシアやアサド政権軍は、停戦に応じるふりをして戦力を蓄えていたのではないかという見方もあり、今や、危機を政治的に解決する糸口がますます見えなくなった。
【参考記事】人道支援トラックに空爆、シリア和平の希望が潰える
反政府勢力が支配するアレッポ東部ではおよそ27万5000人の市民が暮らしており、うち10万人が子供と推定される。国際援助団体によると、アレッポでは先週だけで数百人が死亡した。2011年に内戦が始まって以来、外国に逃れて難民となったシリア人の数は数百万人にのぼる。
「軽い決断ではなかった」とカービーは言った。「アメリカは空爆を減らし、人道支援を実現し、シリアで活動するテロ組織を弱体化させることを目的としたロシアとの協力を惜しまないつもりだった」
From Foreign Policy Magazine
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