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金正恩朝鮮労働党委員が農地を視察した様子を写したとされる写真。北朝鮮の国営朝鮮中央通信(KCNA)配信(撮影日不明、2016年9月13日配信、資料写真)。(c)AFP/KCNA〔AFPBB News〕
北朝鮮は制御不能、米中のどちらが罪深いのか? 北朝鮮を「放置した」米国と「甘やかした」中国
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/47948
2016.9.23 阿部 純一 JBpress
中国・杭州でG20首脳会議が開催されているさなかの9月5日、北朝鮮は「ノドン」と見られる中距離弾道ミサイル3発を日本海に向けて発射し、日本の排他的経済水域に着弾させた。
そして4日後、建国68周年にあたる9月9日に北朝鮮は5回目となる核実験を実施した。
■米中が互いの“無策”を批判
この北朝鮮による核実験が、米中の「責任のなすりつけ合い」という不毛なやり取りをひきおこした。
9月10日、ノルウェーのオスロを訪問中のアシュトン・カーター米国防長官は記者会見で、「中国について特に指摘したい。これは中国の責任だ」と述べた。
「ウォール・ストリート・ジャーナル」(日本語版)は、カーター氏が「中国はこうした展開への重要な責任の一端を担っており、状況を転換させる重要な責任を負う。中国は地理的条件や歴史の裏打ちと影響力を、これまでのような方向ではなく、朝鮮半島の非核化を進めるために利用することが重要だ」と述べたと伝えている。いわゆる「中国責任論」である。
この発言に対する中国の反応は素早かった。中国外交部の華春瑩報道官は9月12日、北朝鮮の核問題を制裁だけで解決することは不可能だと述べ、一方的な措置では行き詰まりを迎えるだけとの見方を示した。
同報道官は同じ日に北京で行った定例会見で、北朝鮮問題における最大の課題は中国ではなく米国の側にあると述べ、中国としては朝鮮半島における平和と安定を維持するため多大な努力を払っていると言明した(http://jp.reuters.com/article/northkorea-nuclear-china-idJPKCN11I0KZ「ロイター通信」日本語版)。
■経済制裁に効果はない?
これまで国際社会は、国連安保理決議に従って、北朝鮮の核・ミサイル開発にストップをかけるべく経済制裁を課してきた。それをあざ笑うかのような北朝鮮の所業は、経済制裁が北朝鮮に対して有効な圧力になっていないことを露呈したことになる。
そうだとすれば、現在進行形で議論されている国連決議に依拠した制裁も、また、日本や米国が独自の判断で課す制裁も、その効果はあったとしても限定的だろう。
すでに北朝鮮が核弾頭の小型化の技術を手に入れ、ミサイルの弾頭に装填可能なレベルに達しているという可能性もある。だとすれば、事態はすでに経済制裁の有効性を議論することが虚しい状況に立ち至っていることになる。
もし現状がもはや手遅れであり、北朝鮮の核ミサイルの脅威に対して、米国や日本が連携して進めている弾道ミサイル防衛で対処するのが、唯一現実的な対応であるとするなら、なんでこうなってしまったのかについて総括しておく必要があるだろう。
■何としても北朝鮮の崩壊を食い止めたい中国
北朝鮮の核開発を阻止し、「朝鮮半島の非核化」を実現させることは、米中両国の共有する利益であったはずだ。しかし両国とも、実効性のある手は打ってこなかった。
北朝鮮が核実験や長距離弾道ミサイル実験をするたびに、国連安保理は制裁措置を取ってきた。だが、米国は北朝鮮の提案する「停戦協定を平和協定にするために米朝の直接交渉を」という呼びかけにまともに応えることなく、いわば問題を「放置」してきた。
中国は、かつては北朝鮮が核実験を行えば、中国の許容できる線を越えることになると述べてきたが、北朝鮮が核実験に踏み切ると態度を変えた。「北朝鮮の国家としての存続」を優先し、「核を保有する北朝鮮」を容認したのである。以来、中国は国連安保理の対北朝鮮経済制裁案について、厳格さを弱め「骨抜き」になるよう策動してきた。
今年1月、北朝鮮が実施した4回目の核実験に対する制裁案についても中国は、ターゲットは「核とミサイル」であると主張し、北朝鮮人民の生活を圧迫するべきではないとして、「民生品」に経済制裁が及ばないよう腐心してきた。核実験に使用する各種計測装置や弾道ミサイルの制御・誘導のための部品は、多くが「民生用」であることを無視した議論だと指摘しておくべきだろう。
国際的な対北朝鮮制裁の結果、現在では、北朝鮮の対外貿易は8割以上を中国が占めている。中国が本気で北朝鮮を締め上げれば、北朝鮮は行き詰まり、内部崩壊するのは間違いないだろう。その結果として、大量の難民が中朝国境を越えてなだれ込むことになる。崩壊した後の北朝鮮が韓国によって接収され、「統一朝鮮」ができた場合、米韓同盟が維持されれば米国の軍事的影響力が中国の国境に及ぶことになる。だから何としても北朝鮮の崩壊だけは食い止めたいのが中国の本音なのだろう。
■堅固な意志は国際社会の反対を跳ね返す
国家が核保有の意思を持ち、それに向けて邁進した場合、有効にストップをかけることは難しい。今回、北朝鮮の核実験によって、そのことが改めて確認された。
振り返れば1998年には、核拡散防止条約に基づく国際的な取り決めの枠組みを無視して、インドとパキスタンが核実験を行った。今回も、国際社会の働きかけ、すなわち6カ国協議のような説得枠組みや、その後の経済制裁をもってしても、北朝鮮に核開発を踏みとどまらせることはできなかった。
一方で米国は、1970年代の韓国や台湾における核武装の企てに対しては、未然にそれを防ぐことに成功している。また、核保有の放棄を行った国としてリビア、南アフリカのケースがある。だが、これらは北朝鮮に当てはめることはできないだろう。
つまり、米国が核兵器拡散防止に成功してきたのは、「公然の秘密」とされるイスラエルの核保有を米国が事実上黙認してきたのを例外とすれば、同盟国の核武装を阻止するケースだけである。そうでない国の場合、その国の核保有の意志が堅固であれば、国際社会の反対を押し切ってでも核保有にたどり着けるのだ。その延長線上に今の北朝鮮がある。
■最終的な責任を取るのは米国か
米国は北朝鮮との直接交渉を嫌い、結果として北朝鮮を放置してきた。
一方、中国は北朝鮮の内部崩壊を防ぐために国際的な制裁を骨抜きにしてきた。その結果として北朝鮮の核開発の進展、弾道ミサイル技術の向上という現実に直面するに至った。
中国は極論すれば、北朝鮮を甘やかしてきたのである。その結果が在韓米軍基地への終末高高度ミサイル防衛システム(THAAD)の展開であり、それを構成するXバンドレーダーで北京を含む中国東部の軍事活動が筒抜けになる状況を生んでしまった。日米韓の軍事協力関係の強化も想定外であろう。
だからといって、中国が北朝鮮への圧力を強めることはありえないだろう。北朝鮮の核ミサイルが北京に向けられるからである。もはや中国に打つ手はない。いまさら「6者協議」が有効とも思えない。
では、米国はどうするか。これまで通り、軍事圧力で威圧し続けるのか。しかし近い将来、北朝鮮が米国本土を射程に収める弾道ミサイルを実現する可能性が高いことは否定できない。そうなってから北朝鮮が望む米国との直接交渉に応じるのではあまりにも情けない。日本や韓国など東アジアの同盟国に米国が提供する「拡大抑止」に疑念が生じる前に、たとえ大いに不本意ではあっても、米国としては北朝鮮との直接交渉の可能性を探るべきだろう。
打つ手がある分、米国は中国よりましなのかもしれない。これを言い換えると、「最終的な責任は米国が取らざるをえないことになる」ということなのだろう。
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