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アレッポでの戦闘で侵略軍が行動を共にしていた米国の特殊部隊員を追い出した背景にクルド人問題
http://plaza.rakuten.co.jp/condor33/diary/201609170001/
2016.09.17 21:17:13 櫻井ジャーナル
シリアの要衝、アレッポで戦闘が続いている。そのアレッポにあるアル-ライからアメリカの特殊部隊の隊員5ないし6名が「自由シリア軍(FSA)」に追い出される場面とされる映像がインターネット上にアップロードされている。(例えばココやココ)
US special forces flee Al Rai
US Special Forces flee Al Rai
シリアを侵略してバシャール・アル・アサド政権を倒すため、アメリカ、イスラエル、サウジアラビアの3国同盟を中心とする勢力が軍事介入したのは2011年3月のこと。「独裁者に対する虐げられた民の武装蜂起」に伴う「内戦」というシナリオを西側の政府やメディアは宣伝、その「反乱軍」は「自由シリア軍(FSA)」というタグが付けられた。
このFSAに参加している戦闘員の大半は外国の侵略勢力に雇われた人びとで、シリア人は少ないと言われていた。侵略戦争が始まった直後からアメリカ/NATOはトルコにある米空軍インシルリク基地で反シリア政府軍を編成、戦闘員を訓練し、武器/兵器を提供している。教官はアメリカの情報機関員や特殊部隊員、イギリスとフランスの特殊部隊員が務め、侵略軍への兵站線はトルコの軍隊や情報機関MITが守ってきた。
戦闘員の中心はサウジアラビアなどペルシャ湾岸産油国が雇ったワッハーブ派/サラフ主義者やムスリム同胞団で、「アル・カイダ系」と呼ぶべき集団だと言われていた。アメリカ軍の情報機関も味方は同じで、2012年8月にDIA(国防情報局)が作成した文書によると、サラフ主義者、ムスリム同胞団、そしてAQI(アル・カイダ系武装集団)がシリアにおける反乱の主力であり、西側、湾岸諸国、そしてトルコが支援しているとも書いている。
こうした構図はシリアで戦闘が始まった直後から同じで、民衆の蜂起、シリア政府軍による虐殺、化学兵器の使用などはアサド体制の打倒を正当化するため、侵略勢力が流した偽情報だということを本ブログでは繰り返し、書いてきた。リビアと同じように「飛行禁止空域」を設定するという口実でNATO軍による空爆を実施、地上の傭兵部隊と連携してアサド体制を倒すつもりだったようだが、その途中で偽情報が露見、ロシアの抵抗もあって侵略勢力の思惑通りには進まなかった。
2012年の報告書が作成された当時のDIA局長、マイケル・フリン中将が退役後の2015年8月にアル・ジャジーラの番組へ出演した際、自分たちの任務は提出される情報の正確さをできるだけ高めることにあり、情報に基づく政策の決定はバラク・オバマ大統領が行うと指摘している。つまり、オバマ政権の決定がダーイッシュの勢力を拡大させたというわけだ。アル・ジャジーラはシリア侵略に荷担しているカタールの放送局。フリンを言いこめて報告書の信頼度を低めようとしたのかもしれないが、そうした展開にはならなかった。
シリア侵略ではトルコが重要な役割を演じてきた。侵略の拠点を提供、シリアの戦線へ物資を運ぶ兵站線の出発点でもある。トルコが拠点の提供を止め、兵站線が断たれたならば、シリアで戦闘を続けることは困難になってしまう。
トルコはNATOの一員であり、アメリカやイスラエルとも友好的な関係を築いてきた。1980年代からネオコン/シオニストがイラクのサダム・フセイン体制を倒すべきだと主張、イラクのクウェート侵攻を受けて実施された1991年1月の湾岸戦争でアメリカ政府がフセインを排除せずに停戦したことに怒り、ウェズリー・クラーク元欧州連合軍最高司令官によると、ネオコンの中核グループの属しているポール・ウォルフォウィッツ国防次官(当時)はイラク、シリア、イランを5年から10年で殲滅すると口にしていたという。
イラクに傀儡政権を樹立できれば、ヨルダン、イラク、トルコの「親イスラエル国帯」ができあがり、シリアとイランを分断することができるとネオコンやイスラエルは考えていたようだ。つまり、トルコは「親イスラエル国」だと考えられていた。
一方、トルコのレジェップ・タイイップ・エルドアン体制が最も重視しているのはクルド人の殲滅。シリアでの戦闘が長引き、経済的な関係の深かったシリアやロシアとの関係が悪化して厳しい状況に陥る中、エルドアン大統領は6月下旬にロシアのウラジミル・プーチン大統領に対してロシア軍機の撃墜を謝罪し、7月13日にはトルコの首相がシリアとの関係正常化を望んでいることを示唆している。
内部告発支援グループのWikiLeaksによると、エルドアン大統領がロシア軍機の撃墜を決めたのは10月10日で、トルコ軍のF-16戦闘機が待ち伏せ攻撃でロシア軍のSu-24爆撃機を撃墜したのは昨年11月24日。(詳細は割愛する。)トルコのアンカラではトルコ軍幹部とポール・セルバ米統合参謀本部副議長が11月24日から25日にかけて会談しているので、ロシア軍機撃墜の黒幕はアメリカの好戦派だったことを疑わせる。この推測が正しいなら、トルコはそうした内幕を説明したことだろう。
7月15日にトルコでは武装蜂起があったが、すぐに鎮圧されてしまう。クーデター未遂後、インシルリク基地を約7000名の武装警官隊が取り囲み、基地の司令官が拘束されたとも伝えられている。この基地の主な利用者はアメリカ空軍とトルコ空軍で、イギリス空軍やサウジアラビア空軍も使っているとされている。
この武装蜂起の真相は不明だが、アメリカを黒幕とするトルコ軍の協力者が実行した可能性が高いと見られている。7月31日にはアメリカのジョセフ・ダンフォード統合参謀本部議長がトルコを訪問、8月24日にはジョー・バイデン副大統領がトルコへ派遣されている。副大統領がトルコへ到着する数時間前、トルコ政府は特殊部隊を含む戦車部隊をシリアへ侵攻させたが、その際にアメリカ軍が主導する連合軍が空爆で支援したという。
この攻撃でターゲットになったのはアル・カイダ系武装集団やそこから派生したダーイッシュ(IS、ISIS、ISLIとも表記)ではなく、クルド人部隊だったと言われている。それまでアメリカ軍はクルド人部隊を支援していたのだが、状況が変わってアメリカ政府はクルド人を裏切ったと見られている。
ロシアとアメリカとの停戦で空爆の恐れが減少する中、アル-ライでアメリカの解く主部隊員が追い出された一因はアメリカとクルド人との関係が影響している可能性がある。勿論、「自由シリア軍(FSA)」という名称に大きな意味はない。どのようなタグが付けられていようと、その実態はワッハーブ派/サラフ主義者やムスリム同胞団を中心とする傭兵集団だが、信仰が厚いわけではない。イスラムやコーランについての知識がない戦闘員も少なくない言われている。
傭兵が忠誠を誓っている対象は信念でも理想でもなくカネだが、アメリカ支配層も傭兵や「同盟者」を仲間だとは考えていない。アメリカも目的はカネだ。クルド人はアメリカを信頼していたようだが、その幻想が自らを窮地へ追い込むことになった。そのアメリカが送り込んだ特殊部隊員を傭兵が追い出したのは興味深い。
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