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コラム:イスラム国の攻撃が成功しない国
Dina Esfandiary, Ariane M. Tabatabai
[6日 ロイター] - 過激派組織「イスラム国」の勢力はあいかわらずだ。今年に入って中東では地歩を失ったかもしれないが、イラクおよびシリアにおける支配地域以外での動きは活発化している。
6月以来、イスラム国がテロ攻撃を刺激した、あるいは実際にテロを実施した例は、実に84時間に1回のペースに上っている。
イスラム国は、最優先とする目標3つのうち2つに対しては攻撃を成功させている。フランスと米国だ。だが3番目の標的に対する攻撃は、これまでのところ失敗している。その標的とは、イランである。
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攻撃を試みていないわけではない。イランは積極的にイスラム国と戦っており、イラン政府の対テロ政策は、他国が成功していない部分で成果を挙げているのだ。
イランの目標は2つある。イスラム国の拡大を抑え、その宗派的な意図を推進するイデオロギーとビジョンを阻むこと、その一方で、イラン領土内でのテロ攻撃を防ぐことだ。近隣のイラクおよびシリアにおけるイランの努力は徐々にではあるが実を結びつつあり、イスラム国が保持する地域は縮小を続けている。
だが、欧州連合(EU)や米国に比べてイランが攻撃を受けやすい標的であることには変わりない。何しろ、ただでさえイラクとは900マイル(約1450キロ)にわたって国境を接しているのだ。イスラム国によるイラク攻撃の企みは、もっと成功していても不思議はない。だが、イランの治安機関はこれまでのところ、テロの脅威をうまく緩和している。
イランは数十年にわたってテロ対策を練り上げてきた。その一部は、米国の諜報当局者とイスラエルの諜報機関モサドの支援により築かれたものだ。1979年のイラン革命でパーレビ王朝が倒れるまでは、この3国は治安問題に関して協力関係にあったのである。革命後、イラン政府はこれまでとは異なる戦略と組織を追加してきた。
現在、イランのテロ対策は中心となる複数の組織のあいだで分担されている。その中には、内務省の管轄下にある警察、軍、多数の諜報組織、そして革命防衛隊が含まれている。テロ対策が効果を発揮していることは、不安定な政治環境にもかかわらず政府がこれらの組織をうまく調整できていることの証拠である。
イランは現在、来年の大統領選挙に向けて、激しい政争のまっただ中にある。その背景にあるのは、核開発問題に関する2015年の画期的な合意の後、世界各国に対して経済的・政治的な門戸開放を進めていくことのメリットをめぐる厳しい意見対立である。
イランのテロ対策戦術は依然として不透明であり、西側諸国では誤解されている。イラン政府は、イラクおよびシリア領内において活発な軍事行動を行っている。イスラム国の支配領域内で戦闘を進めていれば、イスラム国がイランへと歩を進めることを防げると考えているからだ。
イラクおよびシリアへのイランの関与は最初のうち明確ではなかったが、このところ介入を公表するようになっている。これはイスラム国に対する意思表示である。つまり、イラン人はここにいる、地元住民やさまざまな政治勢力と連携して、イスラム国がイランに近づくことを許さない、というメッセージなのだ。
イラン政府が示したいのは、同国の国民が、イスラム教シーア派と他国にある彼らの聖地を守るために戦って死ぬ場合、それは単にイデオロギーのためだけでなく、イスラム国の戦闘員を自国国境から遠ざけておくためであるという点だ。イランの最高指導者ハメネイ師は先日、「殉教者」たちは、母国を守るためにシリアとイラクに赴いている、と語った。
イランがこうしたメッセージを発信し始めたのは2014年、イスラム国が「カリフ国家」の樹立を宣言した時期である。革命防衛隊のソレイマニ司令官がソーシャルメディアに登場したのが、その第一歩だった。イラク領内、さらに最近ではシリア領内でも、彼がさまざまな政治勢力と接触している姿が撮影されている。
これはイスラム国に対する意思表示だけでなく、イラン国民に対し、イラン政府がイスラム国と対決していく姿勢を示して安心させる意味もある。今日では、戦場で倒れるイラン人兵士一人一人が、このメッセージを強調するために使われている。
またイランは、国内でのテロ攻撃計画をいくつか挫折させている。同国のアラビ情報相は6月、テロリストの下部組織20グループを5月に排除したと発表した。
さらに同相は、イスラム国がこの夏計画していたイラン領内での最大規模の攻撃を、イラン政府が未然に防いでいたことも明らかにした。標的は首都テヘラン全域の50カ所に及び、100キロもの爆発物を用いて、約10人の工作員が関与し、数十万ドルの資金が投じられた計画だったという。
イランの治安部隊は今月、イラク国境に近い西部の都市ケルマンシャーでイスラム国の拠点を発見し、工作員1人を殺害、下部組織を排除したと発表した。さらにアラビ情報相は先週、イラン人の若者1500人がイスラム国に参加するのを防いだとしている。
イランは国外において、シーア派一辺倒のイメージを変えようとしており、イラク軍の新兵募集の応援など、シーア派ともスンニ派とも同じように協力している。またイラン政府は、自国内で少数派のスンニ派へも働きかけている。国民の約9割を占めるシーア派だけでなく、すべてのイスラム教徒の指導者というイメージを打ち出そうという試みの一環だ。
こうした試みの成否は分かれている。イラン国外のスンニ派の中でイラン政府との協力を望む者はほとんどいない。だが国内では、スンニ派中心のイスラム国へのスンニ派住民の参加防止を目指す地域プログラムなど、テロ予防措置の面でスンニ派の指導者が政府と密接に協力している。
これまでのところ成功しているとはいえ、イラン指導部の多くは、自国のテロ対策には欠陥があることを認識している。イランにとっては、自国の政治体制が相変わらず足かせになっている。さまざまな派閥間の政争が絶えないせいで、政策実施という点では「1歩進んで2歩下がる」的な状況が生まれている。
たとえば、政府は国内においてスンニ派と協力しようと努力しているが、8月にはスンニ派戦闘員20人が処刑されたことで、こうした政治的進展の一部は台無しになってしまう可能性がある。
西側諸国が望もうが望むまいが、イランは当事者である。イスラム国との戦いにおいては、西側諸国と同じような課題を抱えている。侵入されやすいイラク国境にも対処しなければならない。
だが少なくとも今のところ、イラン政府の複雑な対テロ政策は、イスラム国を寄せ付けないでおくことに成功している。
*筆者の1人、ディナ・エスファンディアリ氏は、英ロンドン大学キングス・カレッジのマッカーサーフェロー。もう1人のアリアン・M・タバタバイ氏は、ジョージタウン大学エドマンド・A・ウォルシュ外交学院の客員准教授。
*本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています。(翻訳:エァクレーレン)
http://jp.reuters.com/article/column-is-idJPKCN11G005?sp=true
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