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北京の天安門広場で行われた軍事パレードで、車から部隊を視察する習近平国家主席〔AFPBB News〕
旧日本軍の道を歩み始め、危険度増す中国 尖閣を戦端開く契機にさせないための対策に万全を期せ
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/47816
2016.9.9 横地 光明 JBpress
中国の習近平国家主席は、経済成長の鈍化と情報社会の波及から生じている民衆の自由と不公平への不満による共産党一党独裁の正当性への疑念をかわすため、矢継ぎ早に手を打ってきた。
国民に「偉大な中華民族の復興=中華体制の再現」の夢を与えると同時に、反対勢力を汚職腐敗の罪で獄に投じた。
また、無冠の帝王と呼ばれた元最高指導者故・ケ小平すら手がつけられなかった人民軍の中央・地方の抜本的組織改革を断行し、党務・国務・軍事のあらゆる権力を一手に集中させた。
その軍事力を背景に国際法を無視して国境を膨張し、米国勢力をアジア西太平洋からの駆逐しようと目論んでいる。
一方の米国は、英国が欧州大陸でディバイド・アンド・ルール(分割統治)政策を駆使してきたことと同じく、アジアに盟主を作らせないことを外交政策の柱としてきた。
このため、1900年代に入りロシア帝国がアジアを征圧しようとすると日本を助けてその野望を封じ、力を得た日本がアジアで主導権を握ろうとすると今度は日本の孤立化を図り中国を助けて日本を倒した。
かくして日本は米英勢力をアジアから駆逐し大東亜共栄圏自立を狙って国際政治秩序に挑戦し一敗地にまみれたたが、今中国は巨大な経済力と強大な軍事力によって「中華民族の大復興」を掲げて米国をアジア太平洋から駆逐し中華体制を築かんと冒険していることは全く日本軍国主義が進んだ軌と一にしている
果たして米国はこれをどこまで許すのであろうか、もし許さないとすれば果たして何が生起するであろうか。そしてそのトリガーは何であろうか。歴史の事実によってこれを例証し、安全保障への道を探ろう。
■砂上に作られた大国意識
日本は日露戦争に勝利し(明治38年=1905年)満洲(中国東北3省)の地に利権を占めると米国の介入を拒否し、日米対立の遠因を作った。一方、中国はウイグル・チベットを制圧(1949)大量虐殺を含んで激しく弾圧支配し、民族自決人権擁護の米国と相互反目の源を作った。
日本は第1次大戦が起こると連合国にくみしてドイツの山東半島租借地と南洋群島を攻略占領しただけで、戦後世界の五大列強の地位を得て国際連盟理事国として世界政治の指導的立場に立った。
一方、中国共産党は抗日戦では国府軍の後に隠れていたが、抗日戦が終わると国府軍を破りこれを台湾に追放し、中華人民共和国を成立(1949年10月1日)、主要戦勝国の立場だった中華民国に代わり国連の議席を得ると、安保常任理事国の比類なき地位を難なく手に入れた。
両国は共に安易に国際的主動的地位を手中にしたためその国際平和に対する責任を深く自覚できない危険性を共有する。
■日本の国際連盟脱退と中国の孤立
日本は満蒙を自存自衛、国防の生命線と主張し、柳条湖事件(昭和6年9月18日)を仕組み、たちまち満洲全土を軍事占領し軍閥を一掃して満洲国を建国(昭和7年=1929年)した。
これに対し中国は国際連盟に訴え、リットン調査団が現地調査におよび国際連盟本会議で日本の違法性を報告した。日本はこれを認めず脱退(昭和8年4月=1933年4月)する愚挙を冒して自ら孤立化する道を選んだ。
中国も南シナ海を国際法上根拠のない「九段線」を根拠に中核的利益と称してその全域の管轄権を主張してきたが、フィリピンの提訴を受けたハーグの仲裁裁判所の判決(2016年7月12日)よってこれを完全に否定された。
それでも関係国のみならず、世界各国から非難されながらも国際法を無視してこの判決文を紙屑と称して自ら世論に反する独善的な危い道を突き進んでいる。
■偉大な中華民族の復興
日本は経済も軍備も米国の資源(石油など)技術に依存して発展してきたのにこれに対決せんとする不合理な道を選び、対日経済包囲網(ABCD包囲網)を構築されると「八紘一宇、大東亜共栄圏建設」の美名で武力によるアジアの支配を企てた。
中国も同じく米国の資本・技術・市場によって経済発展と軍備を拡大しながら、「偉大な中華民族の復興」の名で米国のアジア太平洋からの駆逐を企て、米国の対中アジア連合包囲網と衝突しつつある。
このことは習近平国家主席の意を体し強硬論を繰り返す連合参謀部副参謀長孫建国海軍上将の発言でも明らかだ。
今アジア太平洋において激しく展開されている日米豪印・ASEAN(東南アジア諸国連合)の合従工作と中国の連衡工作はさながら中国大陸の戦国時代(BC403〜221)の秦對趙・魏・楚等7国の政治抗争に似ている。
米国の元国務長官、ヘンリー・キッシンジャー氏は「経済的関係は安全保障関係の前にはひとたまりもない」と言ったが、ステークホルダー(Steak Holder)論や「新大国関係」などは何の保証にもならない。
■日本のインドシナ進出と南沙、西沙諸島
日本が中国への米英の援蒋ルートを絶ち、また南方事態に備えて北部仏印(フランス領インドシナ)へ進駐(昭和15年9月)すると、米国は対日製鉄禁輸を課した。
さらに南部仏印に進駐(昭和16年7月)すると米国はこれを英国の東洋支配の牙城シンガポールと米国の植民地フィリピン攻略、石油の出る蘭印侵攻の意図とし対日資産凍結を通告し石油禁輸を含む全面的経済断交で対抗した。
かくして日本の日独伊三国同盟締結(昭和15年9月)と相まって抜き差しならぬ日米対立が起こり、しまいにはこれが日米対決のトリガーとなり米国にハル・ノート(日米交渉の日本側提案への米国の最終回答、コーデル・ハル国務長官の名を取ってハル・ノートと呼ばれる)を突きつけられた(昭和16年11月)。
そして、武力行使に追い込まれ敗戦の急坂を転がり落ち、明治以来の民族の血の努力の果実を一挙に失い、ついには未曾有の敗北、本国占領の憂き目を見た。
中国は南シナ海の南沙諸島の7カ所を埋め立て軍事基地化したが、西沙諸島に加え中沙スカボロー礁(Scarborough Shoal) に軍事拠点を設ければ強力な軍事拠点トライアングルが構築され南シナ海を自国の完全なコントロール下に置くことができ、また大陸沿岸部の軍事要部の安全を期し、西太平洋への軍事力投射拡大せんと企図実現が可能になる。
しかし、同岩礁はフィリピンのルソン島からわずかかに220キロ(これは東京から三宅島、房総半島南端から八丈島の位置で)そのEEZ(排他的経済水域)内にあり米比軍基地のフィリピン本島から目と鼻の先に位置する。
中国は既に実効支配し工事を始めているがもし軍事基地化することになれば、米比軍は安全上決して放置できないものがあろう(ドゥテルテ比新大統領の気まぐれが心配だが)。
一方、中国は日本の固有の領土である尖閣諸島に対しても執拗に自国領だと主張し、領土に組み入れた(1992年制定の領海および接続水域法)。
最近(さる8月上旬)には武装民兵乗り組みの400隻もの大漁船団を伴う海警巡視船10〜15隻(注)をその接続水域ばかりか領海に不法侵入を繰り返えさせ、その恒常化による実力支配と尖閣奪取に対する日本と米国の対処能力とその意志を探っている。
とりわけ米国軍事力の脅威を感ずる中国は、「米政権が尖閣は日米安全保障条約適用地域と宣言しながらも各界で米国軍の出動を否定する主張のある」米国の真意と、日本の安倍晋三政権が国民の強い戦争嫌悪意識の中でどこまで強い決定が可能か、そして日米両軍の島嶼奪回作戦能力の実態を究めようとしている。
もし中沙と尖閣が中国の手中に陥れば、第1列島線(日本本土〜琉球〜台湾〜ルソン島)は軍事的機能を喪失し、中国は第2列島線(小笠原〜グアム)まで軍事力を投射できA2/AD(接近阻止・地域拒否戦略:Anti- Access, Area denial)が駆使可能となり、米国のアジアにおける支配力は大きく傷つけられる。
中国外交はしたたかである。
前記のように日本は満洲事件を国際問題化され、国際連盟で日本の立場が否定されると単純に脱退して孤立化したが、中国はチベット支配も内政問題だとして他国の関与の道を閉ざし、南シナ海の領有管理権が国際仲裁裁判所で否定されても、日米などと鎬を削りながら自国の主張を変えずその国際的支持獲得と米国との関係悪化避ける道を探し、かえって中国を大国として認めよと「新大国関係」を迫っている。
しかし、中国がもしこの2大懸案に手をつけ、日米比3国が公約通りの意志で対抗せんとし米国が第2のハル・ノートを中国に突きつければ極めて重大な危険な事態が発生する可能性がある。
それでも中国が武力で応じようとすればどこからも支援が得られなかった日本軍国主義の徹を踏むことになるであろう。
(注)この15隻は沖縄海域を担当の海保第11管区の保有巡視船14隻を上回る。来年予算で3隻新造予定だが、早急に他管区から応急増援して数の上でも劣勢にならないことが肝心だ。
■中国に誤った判断をさせないために
『八月の砲声』(バーバラ・W・タックマン著)が描く第1次大戦もそうだし、有志連合軍の対イラク砂漠の嵐作戦(2003年)もそうだったし、過去多くの戦争が指導者の相互誤解によって生じている。
また軍国日本の対中政策の失敗は蒋介石の意図を誤認したことに鑑みれば、我々は中国の国際法尊重と賢明な自重ある戦略選択を望むものである。
このため我々は日米安保体制の確立と日米の確固たる決意とその有形の明示によって中国に誤判断をさせないことが肝要である。この点バラク・オバマ政権の政策がいま一つ不透明なのが気になる。
また戦争は、傭兵軍隊や王国軍隊の既成勢力に限られたものであれば作戦運用の優越で勝ちを収めることができたが、多数の国家を相手にした戦いでは総合国力がものを言い、大国といえども多数の連合国家群に勝利を収めることは難しい。
このことは世紀の英雄ナポレオン対ヨーロッパ諸国の対仏大同盟戦争や第1次・第2次大戦によっても明らかである。
したがって多数強大な対中・国家連合群を構成し中国を孤立化に導きその野望を封ずることがまず肝要である。
このためには対中同盟政策においては旗色の必ずしも鮮明でない大きな影響を持つインド・EU諸国・ロシア、とりわけ中国と複雑な関係を持つインド・ロシア、中でもその動向が決定的影響力を持つロシアの動向対策にあらゆる深謀遠慮を巡らさなければならない。
今年6月3日から開かれた第5回アジア安保会議(シンガポール)において米国カーター国防長官が「中国は孤立している」と演説したのに対し前出の中国孫副参謀長が「我々は孤立していない。米国のFOA(Freedom of Navigation)作戦は許さない」と反論した。
これはその戦略的重要性を示すものであろう。 余談だが中国は外に対しては公海の自由(Principle of the Freedom of the High Seas)主張し、内に対してはこれを拒否している。
どこの国でも一度国家が走り出すと方針の変更ははなはだ容易ではなく、日本は軍部の独断専行に加え「神州不滅だ」「父祖の血で購った大陸の生存権を守れ」と言う強硬な国民世論にも押されて道を誤った。
中国の習近平政権もその無誤謬性の立場から政策が柔軟性を欠き、国内民衆の主張の制御できかねる事態を避けるため対外冒険を強いられる恐れがある。
この点、中国政府系の環球時報が「我が国の南シナ海政策は不変であり、これを可能とする軍事力もあり、いかなる事態にも対応する準備もできている」と報じたゆえなき過信が懸念される。
日本国民は平和を欲すれば、憲法にすがる夢想から目覚め、この冷厳な現実を見つめ歴史の教訓に照らし安全保障に真剣の取り組まなければない時機に今まさに直面している。
日本政府は間違っても、中国の罠に嵌って、中国の冒険的行為に恐れをなし領有権問題を話し合うなどと考えてはならない。また尖閣問題は単なる無人の岩礁の争奪ではなく、日米の戦略態勢と国際的地位の懸った大国際政治闘争であることを日米両国民のみならず世界に向かって強く訴えなければならない。
発生した戦火への対応より、事前防止度努力の方がはるかに損害は軽微であり、そのための万全の努力を惜しんではならない。政府安全保障関係者はくれぐれも戦略判断を誤ってはならない。
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