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バングラデシュのランプルで、日本人の星邦男さんが撃たれて死亡した現場に立つ警官ら(2015年10月3日撮影)。(c)AFP〔AFPBB News〕
寛容であるがゆえに狙われたバングラデシュ ハシナ政権の「世俗主義」に襲いかかるテロリストたち
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/47451
2016.7.26 姫田 小夏 JBpress
人口の9割がイスラム教を信仰するバングラデシュ。特別な生活習慣といえば、飲酒や豚肉食がタブーで、金曜日が休日であることや1日5回の礼拝がある程度で、それ以外はそれほど日本とかけ離れているわけではない。
「穏健かつ寛容なイスラム教国」とも言われるバングラデシュは、高い経済成長を維持する民主主義国家でもある。シェイク・ハシナ首相が率いる「アワミ連盟」政権は、特定の宗教の影響を排する「世俗主義」を掲げ、外国からの援助や資本を受け入れ、2021年までに中所得国入りを目指す積極的な経済政策を推進してきた。
東アジアや東南アジア諸国のようなスピーディーな発展は描けないが、現地には間違いなく“上昇の機運”が生まれていた。
しかし今、ようやく軌道に乗りつつあった経済発展に影がさし、「穏健かつ寛容」であり続けることも危ぶまれつつある。
■ISの存在を否定し続けたバングラデシュ政府
7月1日、ダッカのレストランで日本人7人を含む外国人20人が武装勢力に殺害され、事件後に「IS(イスラム国)」が犯行声明を出した。
実はこの事件が起きる前からバングラデシュ内でISは活動していた。だが、政府はそれを認めようとしなかった。
2015年秋、バングラデシュでイタリア人と日本人(星邦男さん)の2人の外国人が続けざまにに殺害された(イタリア人は9月28日、星さんは10月3日に殺害)。このときISを名乗る犯行声明が出たが、ハシナ政権は「バングラデシュではISは存在しない」とISの関与を否定した。
しかしダッカに拠点を置く各国大使館は、早い段階から国際テロ組織の活動に関する情報をつかんでいた。2人の外国人が殺害される事件の前に、米国、英国、カナダなど5カ国の大使館は「バングラデシュ在住の外国人が攻撃される計画があることを、すでにつかんでいた」(ニューヨーク・タイムズ紙)という。
同年9月の時点で、米政府高官がバングラデシュ当局に「国境近くでISと関連を持つテロリストが活動の準備をしている」と警告したが、同国政府は「これは野党の陰謀だ」取り合わなかった。ちなみに、「国境近く」とはまさに星邦夫さんが殺害されたランプル県である。
バングラデシュで命を狙われたのは外国人だけではない。バングラデシュ人のブロガー、ジャーナリスト、学者、またヒンドゥー教やキリスト教の聖職者などもターゲットとなった。彼らの多くは「異教徒」であり「世俗主義者」である。現地紙「デイリースター」(2016年6月発行)によれば、「過去18カ月で47人が殺害され、そのうち28人がISによるもの」だという。
一連の殺害事件について、国際人権NGOのアムネスティ・インターナショナルは、英ガーディアン紙の取材に対して「市民社会が脅威にさらされても保護しようとしない」としてハシナ政権を非難した。国内の国際テロ組織の活動を否定し続け、犯行に断固とした態度をとらなかったハシナ政権への批判は少なくない。
■「絶好のロケーション」にあるバングラデシュ
ハシナ政権の主張とは裏腹に、ISはすでにバングラデシュで静かに勢力を拡大しているという。
海外メディアは、「ISは近年、パキスタン、アフガニスタン、インドの現地過激派勢力と結びつき、南アジアでその勢力を伸ばしている」「バングラデシュが唯一の例外であることは難しい」と警鐘を鳴らしている。
バングラデシュは南アジアから東南アジアへの通過点に位置するイスラム教国であり、ISにとってはぜひとも活動拠点にしたい絶好のロケーションにある。そのためISは設立当初、バングラデシュでの勢力拡大を重視していたとも伝えられている。
バングラデシュでは、ハシナ首相が率いて世俗主義を掲げる「アワミ連盟」と、宗教ナショナリズムを強調する「バングラデシュ民族主義党(BNP)」が長年反目し、闘争が続いている。このように火種がくすぶるバングラデシュは、ひとたび火がつけば炎上しかねない不安定な状況にあり、ISがそこに揺さぶりをかけることは十分に起こり得る。
■最後はテロリストの巣窟に?
バングラデシュは今後、どのような道をたどるのだろうか。2012年に取材に訪れたダッカで現地の日本人から聞いたこんな話を思い出す。「バングラデシュがたどる最悪のシナリオは、結局貧しい国のまま這い上がれず、最後はテロリストの巣窟となってしまうことだ」
せっかく増えかけていた外国からの投資や援助は打ち切られ、聖戦に参加する若者が増えていくばかり・・・、これからそんな逆流が始まるのだろうか。
バングラデシュのあるジャーナリストは、今回のレストラン襲撃テロは「世俗主義を掲げる現政権への攻撃だ」とコメントしている。
前述のようにハシナ政権は世俗主義のもとに、あらゆる宗教に寛容な姿勢をとってきた。そのため、バングラデシュにはイスラム教以外の異教も存在し、ヒンドゥー教のプジャ、イスラム教のイード、キリスト教のクリスマスと、それぞれの宗教の祭りには互いに参加し合うのが通例だ。
しかし、イスラム過激派が跋扈し勢力を拡大する中で、バングラデシュは世俗主義を貫くことができるだろうか。「穏健で寛容なイスラム教国」の今後に国際社会はさらなる関心を持ちたいものだ。
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