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中国・北京で開幕した米中戦略・経済対話に臨むジョン・ケリー米国務長官(右)およびジェイコブ・ルー米財務長官(中央)と、演説する習近平国家主席(2016年6月6日撮影)。(c)AFP/SAUL LOEB〔AFPBB News〕
米中戦略対話に臨んだ両国の胸の内 世界が注目する米中関係の行方
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/47043
2016.6.9 柯 隆 JBpress
6月4日、シンガポールで開催されたアジア安全保障対話のシャングリラ会議で、カーター米国防長官は「中国は自らを孤立させる万里の長城を構築している」と警告した。それに対して中国軍の孫建国副参謀長は、中国は孤立していないと応酬した。
南シナ海をめぐる米中の対立が先鋭化するなかで、6月6〜7日に北京で米中戦略・経済対話が開かれた。南シナ海を争点とする安全保障分野で両者の主張は平行線をたどったが、経済分野では協力を拡大する方向で見解は一致した。
米中は外交と内政について激しく対立してきたが、対話が途絶えたことはない。なぜワシントンは北京との対話を続けるのだろうか。
■南シナ海の実効支配を急ぐ中国
オバマ政権になってから、アメリカの対中戦略についてある大きな変化がみられる。それは、中国の内政問題への言及を明らかに弱めたことである。
かつてアメリカ大統領は定期的に中国の人権問題を批判していた。だが、オバマ大統領は中国の人権問題をほとんど口にしない。その代わり、アメリカは中国の外交に対する牽制を強めている。
一方、中国はどのようにアメリカと向き合おうとしているのか。
かつて最高実力者だったケ小平は「韜光養晦」(とうこうようかい)を提唱した。力が十分に強くなるまで、攻めに転じず、力を蓄えるという意味である。確かにケ小平時代の中国外交をみると、「台湾問題」という中国にとっての核心的利益以外については謙虚な姿勢が保たれていた。
だが、習近平政権はケ小平路線を必ずしも踏襲していない。中国の国力が十分に強くなっていると判断しているからであろう。
東シナ海の問題を解決するためには、日米同盟との衝突が避けられない。それに対して、南シナ海問題の相手はフィリピンやベトナムなどの小国である。国力が強化された今、南シナ海でどんな争いが起きようがアメリカはそれに無関係ではないか、ということになる。
ある国が領土領海を主張する際は「歴史的に固有の領土」という表現を用いることが多い。このような主張は問題の解決にほとんど寄与しない。なぜならば、歴史的に固有の領土と言っても、いつまで遡ればいいかというコンセンサス(共通認識)が得られていないからである。現実的には、領土領海の領有権は実効支配が尊重される傾向が強い。よって領土を拡張する一番の方法は、国力の強いときに実効支配を行うことである。
海外からみると、なぜ中国が南シナ海の支配を急いでいるのか理由が分からない。今まで、領土領海の領有権を巡る中国と周辺諸国との対立は小規模なものだった。「軍の暴走」と指摘する論者がいるが、実際は軍の暴走ではなく、国力が強化された中国が実効支配を急いで進めた結果、対立の規模が大きくなっていったのである。
■政治的に歩み寄りはありえないが・・・
アメリカにとって最もプライオリティの高い外交事項は何と言っても東アジア域内の安定である。それを実現するために、アメリカは中国に対外的な拡張をスピードダウンしてもらわなければならない。
だからアメリカは中国経済について本気で心配してはいないはずである。中国の景気が減速すると中国の拡張路線もいくらか減速する可能性があり、米国にとってはむしろ好都合であろう。
一方で北朝鮮の暴走を抑えられるのは中国しかない。米中戦略対話が開かれる直前に、習近平国家主席が北朝鮮の高官と接見したのは偶然ではない。北朝鮮は中国を通じてアメリカに秋波を送っている。中国もアメリカに対して、北朝鮮を抑えるには中国の役割が不可欠であることを示している。
そうした複雑な状況の中で開かれる米中戦略対話は両国にとって重要なチャネルである。
アメリカからみると、中国では誰が政策決定を行っているのかが分かりにくい。そのため、米中戦略対話を通じて、その微妙な受け答えから中国政府内の権力配置を模索することができる。アメリカにとって中国の情報を直接かつ確実に入手できるのは米中戦略対話なのだ。
また、戦略対話は双方にとり相手のデッドラインを探る好機である。たとえば、中国が知りたいのは、アメリカがどこまで南シナ海の問題に関わろうとしているかだ。むろん、オバマ政権はすでにレームダックであり、次期大統領が判明するまで中国の対米戦略は固まらない。
米中が政治的に歩み寄るのはそもそもありえない。自由と民主主義、人権を信奉するアメリカは、専制政治を堅持する中国とは本来、水と油の関係にある。だが「改革・開放」を主導したケ小平は権力を取り戻したあと、まず訪米した。それ以降、歴代指導者は必ずアメリカを訪問する。
米中の国民性には類似点がかなりある。中国人も自由を求める民族である。国民性から言えば、中国とロシアこそ常に同床異夢だった。毛沢東がスターリンやフルシチョフなど旧ソ連の指導者と胸襟を開いて対話したことなどほとんどなかった。
今でも、中国はイデオロギー的にアメリカと相容れない姿勢を示しているが、指導者の子どものほとんどはアメリカに留学を経験している。中国人からみると、アメリカはベストな国ではないかもしれないがベターな国なのだ。
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