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RIMPACK2010の様子(資料写真、出所:Wikimedia Commons)
大迷惑な中国海軍、またもリムパックに堂々参加 前回はスパイ艦で情報収集、それでも招待する米国
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/47034
2016.6.9 北村 淳 JBpress
6月中旬、ミサイル駆逐艦、ミサイルフリゲート、補給艦、潜水艦救難艦、それに病院船の5隻からなる中国海軍艦隊が西太平洋でアメリカ海軍駆逐艦と合流し、ハワイのパールハーバーを目指す。ハワイ周辺海域を中心に実施される、多国籍海軍合同演習「RIMPAC(リムパック)2016」(6月30日〜8月4日)に参加するためだ。
■世界最大規模の多国籍海軍演習
RIMPACは、アメリカ海軍が2年ごとに主催する世界最大規模の多国籍軍海軍合同演習である。1970年代にはアメリカ、カナダ、オーストラリア、ニュージーランドの4カ国海軍によって実施されていた。海上自衛隊がRIMPACに初めて参加したのは1980年であった。それ以来海上自衛隊は毎回参加しており、日本はRIMPACの古参メンバーである。
RIMPAC2010からは参加国数が飛躍的に増加し、それとともに参加する艦艇数や航空機数も極めて多くなった(図を参照)。そして近年のRIMPACには、海軍艦艇や航空機に加えて、海軍と行動をともにして水陸両用戦に投入される陸上戦力である海兵隊や海軍陸戦隊なども参加するようになり、多種多様の海洋軍事演習が実施されるようになった。
2012年には、かつてアメリカ海軍の仮想敵であったロシア海軍までもが参加し、中国海軍もオブザーバーとして招かれた。そして前回のRIMPAC2014には、ロシア海軍は参加しなかったものの、中国海軍が正式に参加し、4隻の軍艦をパールハーバーに差し向けたのだ。
これまでRIMPACKに参加した国
■RIMPAC2014のトラブルメーカー
2014年には、アメリカ海軍が実施する数多くの軍事演習の中でも最大規模のRIMPACに中国海軍が参加するということで、アメリカ海軍関係者だけでなく一般のメディアの間でもパールハーバーに姿を現した中国艦隊への関心が非常に高まった。
内外メディアの中国海軍への関心があまりにも盛り上がり、アメリカ海軍当局に対する質疑応答などでもメディアの質問は中国海軍に集中した。そのため、直接の主催者であるアメリカ海軍太平洋艦隊の司令官であったハリス提督(現在は太平洋艦隊の上部機関であるアメリカ太平洋軍司令官)が、「RIMPACには中国海軍だけが招かれているのではない。20カ国の友人たちも参加していることを忘れてもらっては困る」とメディアに苦言を呈する始末だった。
その中国海軍だが、RIMPAC2014には4隻の艦船(駆逐艦、フリゲート、補給艦、病院船)を公式に参加させた。ところが、それらの演習参加メンバーに加えて、中国海軍情報収集艦「北極星」が合同演習中にホノルル沖を遊弋し、しばしば演習に参加していたアメリカ海軍空母にぴったり寄り添って電子情報の収集に勤しんでいた。
中国海軍にとってRIMPACは、アメリカ海軍並びに海上自衛隊をはじめとするアメリカ同盟軍の艦艇や各種航空機の電子情報を“まとめて”収集するための何よりの機会であった。
北極星は、RIMPAC2014参加艦艇の行動を妨害したわけでも、ハワイ諸島沿岸12海里内のアメリカ領海内で情報収集活動を実施したわけでもない。したがって、このスパイ艦による電子情報収集活動は国際法的に問題が生ずるわけではなかった。しかしながら、多国籍海軍演習への参加国が、演習参加艦船以外の軍艦を、それも電子情報収集艦を派遣して、演習に参加している“仲間”の軍事情報を掠め取ろうとする行動は、まさに海軍間の信義に背く前代未聞の出来事であった。
そのため、RIMPAC2014開催中に、参加海軍はもとよりアメリカ連邦議会やメディアなどからも、中国海軍のスパイ艦派遣に対して強い非難の声が巻き上がった。
演習中の各国海軍代表による会議やレセプションなどでも、中国海軍関係者に対して“冷たい”視線が向けられることになった。にもかかわらず、中国海軍幹部たちは「全く何事も生じていない」態度に終始しており、参加国の海軍将校たちの多くは半ばあきれていたようだ。
さらに各国海軍を驚かせたのは、参加国海軍が“もてなし料理”(ホットドック程度の簡単なものだが)の屋台を出して、他国の海軍将兵をねぎらった親善レセプションでの出来事である。レセプション会場には、スパイ艦事件の張本人である中国海軍に対する“ぎこちない雰囲気”が漂っていた。その会場に中国海軍の屋台は見当たらなかった。さすがの中国海軍といえども気まずかったのかと思いきや、大勢の人民解放軍海軍将兵が会場に押しかけてきて、各国海軍の料理を食い散らかして引き上げていった。これには百戦錬磨のアメリカ海軍将校たちも絶句していた。
■それでも招待された中国海軍
親善行事はともかく、自らが参加する多国籍海軍演習にスパイ艦を派遣して外部から合同演習仲間の艦艇や航空機の電子情報を収集するのは、まさに背信的行為に他ならない。その非常識な行為に対して、対中強硬派の連邦議員たちは、RIMPAC2014開催中から「今回のRIMPACが中国海軍にとって最初で最後の参加ということになる」といった強い言葉を投げかけていた。
そしてRIMPAC2014後は、反中政治家だけではなく海軍内部からも、「RIMPACのようなアメリカ軍や同盟軍にとっても意義深い合同演習に、中国海軍を二度と招待してはならない」という論調が噴出し始めた。
さらに2015年になり、南シナ海南沙諸島での中国の人工島建設状況が予想をはるかに上回るスピードで進展している状況が確認されると、「中国海軍を次回のRIMPACに招待すると、アメリカが中国の南シナ海での行動に断固反対する意思を持っていないという誤ったメッセージを中国側に与えかねない」という危惧の念が、多くの米海軍関係者たちの間で論じられるようになった。
RINMACの主催者は米海軍太平洋艦隊であり、太平洋艦隊が直接招待状を各国海軍に発することになっている。だが、この種の大規模合同演習ともなると、もちろん外交的意味合いも大きいため、太平洋艦隊はもとより海軍が招待国を独自に決定することはありえない。最終的にはホワイトハウスの意向によって招待国、とりわけ中国のような問題がある招待国の決定が左右されるのである。
中国による南沙諸島での人工島=本格的軍用飛行場を含む軍事拠点の完成が近づくに比例して、海軍戦略家たちからの「中国をRIMPACに参加させるな」との声はますます大きくなっていった。しかし、オバマ政権は口では中国の南シナ海支配の目論見を非難するものの、RIMPAC2016の参加リストから中国海軍を抹消する動きは全く見せなかった。
オバマ政権によってRIMPACに招待された中国海軍艦隊は、まもなくアメリカ海軍駆逐艦と合流してハワイ沖に向かい、RIMPAC2016の一員として海上自衛隊をはじめとするアメリカの同盟国海軍や友好国海軍と肩を並べて各種合同演習を実施する。
次期アメリカ大統領はいざ知らず、多くのアメリカ海軍関係者たちが異を唱えた「中国海軍の参加」すら拒絶できないのがアメリカの対中姿勢の現状なのだ。
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