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米軍の南シナ海航行で中国がますます優位になる理由 中国に防衛力増強の口実を与えてしまっているFONOP
http://www.asyura2.com/16/warb17/msg/723.html
投稿者 赤かぶ 日時 2016 年 5 月 19 日 00:12:55: igsppGRN/E9PQ kNSCqYLU
 

           米海軍が第3回FONOPで派遣したウィリアム・P・ローレンス(出所:Wikimedia Commons)


米軍の南シナ海航行で中国がますます優位になる理由 中国に防衛力増強の口実を与えてしまっているFONOP
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/46862
2016.5.19 北村 淳 JBpress


 アメリカ海軍太平洋艦隊は、5月10日、南沙諸島のファイアリークロス礁周辺12海里内海域に駆逐艦「ウィリアム・P・ローレンス」を派遣した。2015年10月の第1回目、そして今年1月の第2回目に続く、第3回目となる「FONOP」(航行自由原則維持のための作戦)の実施である。


■ほとんど効果がない散発的なFONOP


 今回のFONOPの対象となったファイアリークロス礁は、中国が人工島を建設しており3000メートル級雨滑走路の運用も開始されている。そしてフィリピン、ベトナム、そして台湾も、この環礁に領有権を主張している。


 アメリカ政府によると、「ファイアリークロス礁の領有権を主張している国々のうち、中国、ベトナム、台湾は、ファイアリークロス礁周辺12海里に艦船を近づける場合には、事前にそれぞれの政府に通告するよう求めている。だが、そのような要求は国際海洋法に違反している」という。そこで、アメリカは「国際海洋法に反して自由航行原則を制限する主張に自制を求めるために、FONOPを実施した」ということである。


 つまり、今回のFONOPはファイアリークロス礁での中国による人工島建設や本格的航空基地に対する軍事的威嚇を加える意図は毛頭なく、またアメリカの伝統的な外交原則に遵ってファイアリークロス礁の領有権紛争に介入するものでもない、というのがホワイトハウスの建前である。


 もちろん、いくらアメリカ政府がこのような声明を発したとはいえ、中国は「アメリカ軍艦は中国の法律(中国領海法)を踏みにじり、中国の領域に軍事的脅威を加え、南シナ海の安全と平和をかき乱す行為を繰り返した」と強く反発している。人民解放軍は戦闘機でアメリカ駆逐艦を威嚇し、軍艦で追尾を続けた。


 このような、アメリカ側の建前としての政治的声明と、それに対する中国政府による反発は、散発的に行われている南シナ海でのFONOPで毎回繰り返されている“お決まり”のやり取りである。実質的に軍事的緊張が生じているわけではない。


 さして強い軍事的示威行動とは言えないFONOPを散発的に実施しても、中国が莫大な資金を投入して推し進めている人工島や3000メートル級滑走路、そして軍事基地群の建設にストップをかけることなどとうてい不可能である。そのことは当事者のアメリカ海軍はもとよりオバマ政権としても十二分に承知している。


 しかし、その程度のデモンストレーションしか軍事オプションとして選択できない点が、ホワイトハウスの対中姿勢を如実に示している。


■中国に防衛力増強の口実を与えてしまっているFONOP


 それだけではない。かつて圧倒的な軍事力を擁し“世界の警察官”として振る舞っていた当時のアメリカの論理に立脚したFONOPを、南シナ海というアメリカから遠く離れた中国の前庭のような海域で不用意に実施したため、中国側にさらなる戦力強化の口実を与えてしまった。


 第2回目のFONOPは、南沙諸島ではなく、西沙諸島(中国がベトナムから戦闘の末に奪取し、以後40年近くにわたって実効支配を続けている)のトリトン島沖12海里内海域をアメリカ駆逐艦が通航するという作戦であった。


 トリトン島自体には小規模な人民解放軍部隊しか駐屯していない。だが、トリトン島に近接している永興島には、軍事施設のみならず西沙諸島や南沙諸島を含む南シナ海を統治する三沙市政庁や商業漁業施設があり多くの民間人も居住している。そのため中国人民解放軍は、「西沙諸島に軍事的脅威を与えているアメリカ軍から永興島に居住している数多くの一般市民を防衛する必要がある」との理由で、永興島に地対空ミサイル部隊と地対艦ミサイル部隊を展開させてしまった。


 中国当局よれば、「自国領域とそこに居住している民間人を保護するために、やむを得ず“専守防衛的兵器”である地対艦ミサイルと地対空ミサイルを配備した」ということである。その結果、アメリカ軍は航空基地や海軍施設がある永興島の周辺上空に航空機を接近させることはもとより、永興島から280キロメートル圏内の海域に軍艦を派遣することすら、危険な状況になってしまった。


■ますます“民間人の盾”を活用する中国


 このような状況を自ら生み出してしまったにもかかわらず、再びアメリカはさして効果のない散発的FONOPをファイアリークロス礁に対して実施した。


 ファイアリークロス礁は、3000メートル級滑走路が設置されている人工島である。大規模な空港や港湾施設の完成も間近に迫っており、建設関係者や飛行場開設関係者など多くの民間人が居住している。そのため、再び中国人民解放軍は「中国固有の領土を防衛し、一般市民の生命財産を保護するため」に地対艦ミサイル部隊などを展開させることになるであろう。


 中国が7つの人工島すべてにおいて、軍事施設の建設と並行して、各種民間施設の設置を急いでいる状況は確認済みである(参考「中国が人工島に建設した滑走路、爆撃機も使用可能に」http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/45748)。すでにいくつかの人工島には「南沙諸島周辺海域のナビゲーションの安全を図る」ためと称して巨大な灯台やレーダー施設などが誕生している。軍民共用の港湾施設にはクルーズシップが就航する計画も浮上している。



中国による人工島建設の状況


 このように南沙諸島人工島や西沙諸島に軍事基地と並行して民間施設が次から次へと建設されると、それに反比例するようにアメリカの軍事的介入手段は限定されていくことになる。いくら精密攻撃兵器を多数保有するアメリカ軍といえども、軍事施設と民間施設が混在している狭小な環礁を攻撃すれば、多数の民間人を殺傷することになる。そのため、現実的選択肢からは除外せざるをえないのだ。


 一方、中国人民解放軍は「民間人保護」を口実に、地対艦ミサイルや地対空ミサイルやレーダー施設をはじめとする“専守防衛兵器”の配備をそれらの島嶼に“堂々”と推し進めることになる。その結果、アメリカ艦艇や航空機は、FONOPのような非戦闘的作戦といえども“中国の島嶼群”に迂闊に接近することすらできなくなる。


 オバマ政権が続ける散発的なFONOPには、「中国の南シナ海に対する侵略的な拡張政策に対して、同盟国や国際海洋法を守るために、アメリカも努力している」というポーズを示す程度の効果しかない。それを続ければ続けるほど、南シナ海での軍事的優勢が人民解放軍の手に着実に転がり込んでいくのだ。こうした現在の南シナ海軍事状況を我々としてもしっかりと認識すべきである。


 

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コメント
 
1. 2016年5月23日 21:25:13 : NUZb1Ntppk : RwRh4EsQDSw[3]
最後は金目でしょう。長期的に金がなくなるのはどっちかということ。

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