http://www.asyura2.com/16/warb17/msg/372.html
Tweet |
将来は戦場で無人偵察機が製造可能に?写真はイラクでアメリカ陸軍兵士の手から飛び立ったRQ-11レイヴン(出所:Wikipedia、資料写真)
米陸軍の驚くべき試み、無人機を戦場で現地生産 3Dプリンターが「兵站革命」を成し遂げる日は近い
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/46390
2016.3.23 部谷 直亮 JBpress
以前のコラム(「中韓露にも遅れる日本、3Dプリンター軍事転用を急げ」http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/46130)で、米国のみならず中国・韓国・ポーランド・ロシアでも3Dプリンターの軍事転用による「兵站革命」が進んでいると指摘しましたが、今度は米陸軍で驚くべき取り組みが始まりました。
・
なんと、戦況に応じてオプションパーツを選択し、3Dプリンターによって無人機を「戦場」で生産するというのです。
■要望から24時間以内に偵察飛行が可能に
米陸軍の「陸軍訓練教義軍団(TRADOC)」は「陸軍遠征戦士演習(AEWE)」という一連の技術デモンストレーションを毎年開催しています。米陸軍の公式ブログによると、2017年のAEWEでは、「陸軍調査研究所(ARL)」が主導する「3Dプリンターによる戦場での小型無人機作成」プロジェクトを実施することになったそうです。
このプロジェクトでは、例えば、次のような一連の流れを実現させるとしています。
<前線の一兵士が「夜間に複数の洞窟を調査したい」という要望を分隊・小隊・中隊・大隊本部へ連絡する。そこで、既存の部品と、3Dプリンターで作成した部品を組み合わせ、夜間の洞窟調査に必要なセンサーやカメラ類を取り付けて、調査用の無人機を完成させる。その無人機を前線に送り、24時間以内に前線で偵察飛行を実施する・・・>
これが実現すると、例えばイラクで次のような使い方ができるようになります。
これまではイラクで危険な武装勢力が潜んでいると思われる地域を偵察する場合、小型無人偵察機「RQ-11レイヴン」を飛ばしていました。しかし、現状のRQ-11レイヴンでは飛行不可能な洞窟の場合、代替品を米本土から送ってもらうまで何週間も、下手すれば新型が完成するまで何年も待つしかありませんでした。それが、3Dプリンターを使うことで、前線に近い拠点で戦況に応じた無人機を生産し、要請から24時間以内に偵察できるようになるというわけです。
ARLが作成した3Dプリンターの活用イメージ図(上下とも)
■常に最新の電子部品が搭載可能
官民の技術者50人からなるプロジェクトチームのリーダーを務めるエリック・スパロ氏は、こうした技術の意義は「即座に戦況に応じた無人機を投入できるだけではない」と指摘しています。つまり、柔軟性向上、コスト低下、高性能の維持が可能になるのです。
まず戦場に3Dプリンターがあると、部品の取り換えが簡単にできますし、もしくは簡単に使い捨てることもできるようになります。
また、3Dプリンターは金型が不要なのでバリも出ませんし、人件費も減らせるので、部品の製造が安価に済みます。実際、このプロジェクトでは、在来機のRQ-11レイヴンであれば1機当たり30万ドル(3380万円)かかっていた製造コストを、1機当たり数百ドル(数万円)に減らせるとしています。
こうした柔軟性向上、コスト低下に加えて、装備品の高性能を維持することも可能になります。通常の装備品であれば、電子部品を最新型に交換するのは手軽にはできませんので、相対的に性能は落ちていきます。しかし、3Dプリンターを使って新設計の部品をオンデマンド生産すれば、絶えず新しい部品を組み込むことができるというわけです。
■現状では脆弱な陸自の無人機運用体制
このプロジェクトにおける研究の主眼は、将来的に米陸軍が戦場で3Dプリンターを使って、無人機にとどまらない様々な装備品を現地でカスタマイズ生産できるようにすることだといいます。まさに、3Dプリンターによる「兵站革命」の実現を目指しているのです。
昨年、筆者は将来的に陸上自衛隊が3Dプリンターを導入すれば、離島防衛時に戦況に応じて装備品を作成することができ、貧弱な兵站問題の影響を大幅に軽減できると指摘しました(「3Dプリンターこそが離島防衛の死命を決する」http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/43559)。
・
それに対して読者の方から「洞窟内部で自衛隊員が3Dプリンターで生産なんてシュールすぎる」という感想がありました。しかし、米陸軍が小型無人機においてそれを現実のものとすべく努力し、将来的には他の装備品にもイノベーションを波及させようとしていることは現実なのです。
特に陸上自衛隊の無人機は脆弱です。手投げ式の小型無人機JUXS-S1は、着陸形式が胴体着陸のため、使うと故障しやすく、修理も手間がかかります。現場の自衛官からも「実戦では役に立たない」「飛ばせない」との声があがっている上、全部で30機程度しか保有しておらず、配備も一個普通科連隊に1セット程度です。小型ヘリ型無人機FFOS/FFRSも各方面隊に1セット程度で、こちらの現場の評判は芳しくありません。しかも、前者の速度は時速100キロ、後者は時速数十キロと大変遅く、撃墜は容易です。
結局、対馬や沖縄方面を抱える西部方面隊にしても9個連隊分+方面本部で計算すれば、多く考えても13〜15機程度しかないのです。
となると、全機体を南西諸島に送り込んだとしても、最大で15回も偵察を行えばおしまいです。しかも、実際には重要施設の警戒監視、空自基地等の警戒、他の方面での備えを考えれば、せいぜい10回もできれば御の字でしょう。
これでは日中有事の尖閣諸島、与那国島、石垣島、宮古島等で生起するであろう陸戦や掃討戦で不足するのは明らかです。海外派遣でも本格的な駆けつけ警護などを実施するとなれば同様でしょう。
現在、陸自が保有している無人機は米軍と同様、非常に高額です。しかし、自衛隊が3Dプリンターで戦況に応じて自分たちで安価に生産できるようになれば、それらの問題は解決できます。その意味でも、TRADOCの取り組みを取り入れて研究を始めても罰当たりではないはずです。そして、無人機であれば、部品の信頼性や精度も大目に見れます。
■3Dプリンターの射程を尋ねる一佐
しかし、防衛省・自衛隊内部での3Dプリンターは既に繰り返し述べたようにほとんど進んでいません。実際、ある自衛隊の一佐は、部下からの3Dプリンターの軍事転用による兵站効率化を提案された際に、「で、その3Dプリンターの(攻撃時の)射程は何メートルなのか?」と頓珍漢な質問をしている有様です。そして、こうした反応は珍しくないのです。
これは自衛隊の多くが戦闘力の構成要素を火力・機動力・防護力といった狭い意味だけで考えているためですが、兵站・情報面も戦闘力の主要な構成要素として発想の転換をする時期に来ていると考えるべきでしょう。3Dプリンターの軍事転用が大国・小国を問わず、特に米国で大きく進展している現状は、それを示唆しているのではないでしょうか。
投稿コメント全ログ コメント即時配信 スレ建て依頼 削除コメント確認方法
スパムメールの中から見つけ出すためにメールのタイトルには必ず「阿修羅さんへ」と記述してください。
すべてのページの引用、転載、リンクを許可します。確認メールは不要です。引用元リンクを表示してください。