http://www.asyura2.com/16/warb17/msg/227.html
Tweet |
イスラム国 憎悪と報復の連鎖を止める方法は「話し合い」
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20160222-00000001-pseven-int
週刊ポスト2016年3月4日号
国際社会にいま起きていることは、サミュエル・ハンティントン氏がかつて主張したような「文明の衝突」ではなく、「悪の拡散」だと経営コンサルタントの大前研一氏はいう。従来の「国民国家(ネーション・ステート)」の概念を覆すイスラム国(IS)の出現によって混迷をきわめる状況を解決する方法について、大前氏が解説する。
* * *
本来なら欧米先進国はISを攻撃する一方で、自国内におけるイスラム系住民の貧困や宗教的偏見・差別を解消していかねばならない。しかし、この問題に真正面から取り組み、大きな成果を上げている政府は寡聞にして知らない。
積極的に難民を受け入れてきたドイツのアンゲラ・メルケル首相も、昨年の大晦日にケルンで移民や難民申請者らが女性に性的暴行を加えたとされる事件が発生して以来、世論の風向きが大きく変わって窮地に立たされている。欧米各国では極右勢力伸張、移民排斥の動きが加速する一方だ。しかし、それによって移民、難民はますます追い詰められ、さらに「隠れISテロリスト」が増殖するという悪循環に陥るだけである。
また、アメリカ主導の有志連合やロシアによるISへの空爆は凄まじい破壊だが、実際には意外に効果が上がっていない。それどころか、自分たちは遠くで安閑としながら他国の人々を爆弾やミサイルで殺戮するレイジー(無精)な国家が空爆を激化すればするほど、悪は拡散する。ISテロリストは、空爆では抑え込めないのだ。
あえてISの立場から考えると、圧倒的な軍事力を有する欧米やロシアなどの国民国家群と戦う手段は、彼らのホームグラウンドでテロを起こし、民衆を脅かして空爆をやめるように世論を誘導するしかない。したがって、このままでは永遠にテロはなくならないだろう。
では、憎悪と報復の連鎖を止める方法はあるのか? 私はやはり「話し合い」しかないと思う。
前例がある。PLO(パレスチナ解放機構)の故ヤセル・アラファト議長だ。もともとアラファト議長は過激派ファタハを率いてイスラエルに対するゲリラ活動を展開していたテロリストだが、1988年に穏健路線に転じ、話し合いのテーブルについた。1993年にはイスラエルとの歴史的な和平交渉に合意してパレスチナ暫定自治政府を樹立し、その功績によって1994年にノーベル平和賞を受賞した。
和平や話し合いを拒否した過激派はハマスとして未だに闘争を続けているが、イスラエルの態度によっては、彼らもまたどこかで話し合いに応じる可能性がある。
ISはPLOとは本質的に異なるし、国連主導のシリア和平会議にも参加していない。だが、それでも話し合いの場に導き出すことができれば、問題解決に向かう可能性は、なきにしもあらずだと思う。彼らも資金源を断たれ、重税感に耐えられない住民の逃走に苦労し始めているからだ。
考えうる解決策は、従来の国民国家の枠組みの中でISに占領地域から一定のテリトリーと権益を与え、それと引き換えにテロ活動を中止させるしかない。そういう交渉に持ち込まない限り、もはやISの脅威が消えることはないだろう。
ISの台頭は、今の世界を構成する「国民国家」への重大な挑戦であり、今やそれ以外の地域でも国民国家の枠組みは溶け出しているわけだが、アメリカ一極支配の「G1」時代から指導国が存在しない「Gゼロ」時代になった現在の、いわば無重力状態の中で世界の秩序を維持するためには、まだ国境(領土・領海・領空)は必要である。だから、ISとも話し合いで国境(および主権)を確定し、彼らを“隔離”しなければならないのだ。
この提言は「テロリストに譲歩するとは言語道断!」という批判を浴びるかもしれない。しかし、悪の拡散が不可逆的に起きている今、それ以外にどんな解決策があるというのだろう。
投稿コメント全ログ コメント即時配信 スレ建て依頼 削除コメント確認方法
スパムメールの中から見つけ出すためにメールのタイトルには必ず「阿修羅さんへ」と記述してください。
すべてのページの引用、転載、リンクを許可します。確認メールは不要です。引用元リンクを表示してください。