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2017年01月07日 「ジャーナリスト同盟」通信
<戦後の元祖・岸信介>
政治記者となって一番不思議に思っていたことは、すばらしい日本国憲法を有する日本において、なぜ戦争責任者が日本を代表する地位を占めることが出来たのか、である。当時の政治家に聞いても、納得できる回答がない。ずっと謎のまま過ごしてきた。72年から90年の現役政治記者の間は、とうとうわからなかった。米国の公文書が次々と公開されて初めて判明することになるのだが、ともあれ戦後の経済復興を実現した吉田茂をリベラルの元祖とすると、岸は右翼の元祖として自民党内で君臨してきた。
<A級戦犯がなぜ戦後の首相?>
「A級戦犯の岸がなぜ日本の首相になれたのか」という問いに即答できる日本人がどれくらいいるだろうか。彼の故郷・山口県民に聞いてみたい質問である。
ある時期から「戦後解体された財閥が、形を変えて復活することに成功した。岸は財閥の代表である商工官僚として、ふたたび財閥の強力な支援を受けて、自民党内を抑え込むことに成功したものだ」と考えるようになった。しかし、それでも十分な説明にならない。
戦争責任者の総理大臣では、日本国民が納得しない。いわんや多数党の自民党内での支持も容易ではない。第一、戦争責任を問うた米英ソ中の4か国が反対するだろう。こう考えるのが筋である。常識的には不可能な岸首相誕生だった。
これをドイツに当てはめると、ヒトラーの側近が、戦後ドイツの首相になったようなものである。欧米では想定さえできないことだった。
現実は、岸は死刑を免れ、ふたたび国会議員に就任、瞬く間に仲間を糾合して、吉田内閣を退陣させ、仲間の鳩山一郎を政権に就けて、自らは自民党の中枢を抑え、党内で圧倒する勢力を確保した。自民党内の右翼議員の多くが、岸派に加わり、勢力を拡大していった。
ちなみに、安倍晋三の母親は岸の娘である。岸のお目当ては、後継者の福田赳夫を首相、ついで娘婿の安倍晋太郎内閣を実現することだった。民主主義の国でありながら、こうした野望をちらつかせる政治風土に問題もあった。
新橋の日石ビルに事務所を構えていた岸は、それだけで石油財閥の支援を受けていたことが分かるのだが、そこでの岸懇談で「福田君を総理にするまでは、バッジを外すわけにはいかんのだよ」と発言したことを、今も記憶している。田中内閣のころだから、72,3年ごろか。
よく知られるやり手秘書の中村長芳には会ったことがないが、彼が後輩の秘書に訓示したという名言は、よく覚えている。「わしは塀の上を歩いて金集めをしたものだ」。この言葉の意味が分かるだろうか。
読売のナベツネは理解する能力があるだろう。権力者は犯罪組織のボスといってもいい。こういうと、心が冷えてしまうのだが、事実である。
「清濁併せ呑む」という言葉は、永田町の常套句となって今も続く。血税である官房機密費を使って、民意を代表している新聞人?と会食して平然とする岸の孫なのだ。
<犯人は米CIA>
真実は、ワシントンから発覚した。秘密文書の公開である。
米中央情報局という謀略組織が、岸の出番を作っていたことが分かったのだ。亀井静香までが「アメリカのカネで総理になった岸ではねえ」とため息をついた場面も記憶している。
日本を徹底して平和国家・民主国家に仕上げたアメリカである。そのアメリカが、一転して態度を変えた。「それはできない」と突っぱねる吉田内閣を退陣させる。造船疑獄事件を発覚させて、これを見事に成功させたCIAは、同時並行して鳩山一郎と岸信介の戦争責任者を擁立することに金まで用意していたのである。
泥棒に追い銭という言葉があるが、国際情勢の激変を口実にCIAは、日本支配を大きく方向転換させたのだった。CIA工作は、新聞に対しても強行された。中でも読売がそれに応じた。当時の読売のボスには、CIAのコードネームまでついていたというから驚きである。
日本を裏から監視・操作するCIAが、米ソ冷戦という国際情勢の急変に、それまで排除してきた右翼・戦争責任グループを抱き込んだ。そうして岸内閣は誕生したものだ。
<国家主義と反共主義>
主権者である国民の権利を封じ込めて、国家の意思を前面に押し出す独裁政治を国家主義といえるが、戦前の日本は、国家主義そのものだった。筆者は天皇制国家主義と呼んで、他の国家主義との差別化を指摘している。
国家主義は、必然的に自由を欲する民主的な思考・団体を嫌う。共産主義もNOだ。これらは国家主義にとって弾圧の対象となる。治安維持法・特高警察が幅を利かす暗黒社会でもある。
CIAは戦前の戦争勢力の国家主義・反共主義に目を付けたのだ。戦前派・戦争責任者の免罪と復権による反共国家の日本を意図した。そのおかげで岸は復権した。彼はワシントンの奴隷になることを前提に、首相に就任することが出来た。日本の戦前派・右翼勢力の復活を可能にした。
<侵略戦争の元凶は財閥>
多くの学者も忘れてしまっていることだが、侵略戦争の元凶はあくなき資源確保を目指す財閥である。したがって財閥と右翼は一体化している。
財閥のカネを当てにする政権は、必然的に右翼化への道を選択することになる。戦前は、財閥が軍閥・官僚・政党を突き動かして、半島から大陸、ついでアジア・太平洋へと侵略戦争を強行、遂には欧米とも激突して敗退した。
いま財閥は、安倍の強固な支援者で知られる。財閥に新聞テレビは、手も足も出ない。
<右翼外交の弱点>
いま韓国では、国民が怒りだしている。戦後最大の怒りを爆発させている。その一つに従軍慰安婦問題がある。ソウルの日本大使館前に次いで、釜山の日本総領事館の前に、慰安婦像が民間団体の手で建てられた。
これに極右政権は異常な反応を示し、事態を複雑化、拡大させている。大使・総領事の一時帰国など、途方もない制裁を発動したためだ。火に油を注いだのだ。ワシントンは政権交代直前で機能不全に陥っている時期である。韓国民の怒りは、安倍官邸にも向けられることになった。
右翼・国家主義政権は、過去を直視しない。過去を正当化する政権だから、外交は硬直化する。まとまる話も壊れてしまう。いまそんな場面である。右翼の元祖・岸信介の孫への薫陶が、悪しき結果となって出てきた感じを受ける。
2017年1月7日記(政治評論家・日本記者クラブ会員)
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