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2016年12月28日 週刊ダイヤモンド編集部
世界で高まる財政拡張気運で、日本の財政中間目標は未達か
大規模な財政出動を訴えるトランプ・米次期大統領の登場もあり、世界で財政拡張への声が高まっている。日本も例外ではないが、その一方でプライマリーバランスを20年度に黒字化するという財政目標について、18年度に迫る「中間目標」が未達となる可能性が高まっている。(「週刊ダイヤモンド」編集部 竹田幸平)
12月21日、経済財政諮問会議で経済・財政一体改革について議論する安倍晋三首相 Photo:首相官邸HP
「世界的にポリシーミックス(政策の組み合わせ)の大きな潮流が金融政策から財政政策に転換しつつある」――。みずほ総合研究所の高田創チーフエコノミストはこう述べ、2017年の世界経済の論点の一つに、財政政策を挙げる。
詳しくは後述するが、財政状況の厳しい日本で今や見過ごされがちなのは、18年度に迎える財政の「中間目標」の未達の可能性が高まっているということだ。
過去数年、米国はじめ各先進国が取ってきた金融政策とは、言ってみれば、それぞれの中央銀行が世の中をお金でじゃぶじゃぶにすることで景気浮揚を狙う手法だ。
この「量的金融緩和」と呼ばれる政策では、中銀が国債などを買い入れることで、市場に大量のお金を流し込み、貸し出しなどの際につく利子(金利)を下げて企業や消費者がお金を借りやすい状態をつくる。その結果、企業が設備投資や雇用を増やしたり、消費者が住宅ローンを活用して不動産を買いやすくしたりして、さらには賃上げや消費拡大といった循環につなげることを狙っていた。
しかし、この金融政策を重視しすぎた結果、世界的に金利がゼロ%近辺まで下がる超低金利状態が長引き、経済底上げの効果に限界が出てきた。欧州や日本ではさらなる打開を図ろうと、銀行が「銀行の銀行」である中銀に預けるお金に付く利子をマイナスに下げる「マイナス金利政策」にまで踏み切ったが、それでも思ったほどの効果をもたらしてはいないとの声が大勢だ。
そんな流れを受け、最近では金融だけでなく各国の財政も積極的に活用していこう、との機運が高まってきている。財政政策とは、政府が経済対策の一環で予算を増やし、公共工事や消費活性化などに用いて、景気を持ち上げようとすることだ。米国では、大規模な財政出動を訴えるトランプ氏が米大統領選挙に勝利した。
世界で財政拡張への声が高まることに対して、日本も無関係ではない。こうした経済政策の潮流を踏まえると、政府が掲げる財政の「中間目標」が未達となる公算が大きくなっているのだ。
18年度のPBの赤字幅を
1%程度に縮める中間目標
政府は以前から、プライマリーバランス(=PB、基礎的財政収支)を20年度に黒字化する財政目標を掲げている。このPBとは、国債発行を除いた政府の税金などの歳入と、国債の元本償還金と利払い費を除いた歳出の収支のこと。収支が均衡していれば財政が安定していることを示す。
日本ではPBの赤字が常態化しており、15年度は対GDP(国内総生産)比で約3%だった。これに関して、安倍政権が財政健全化計画を決めた15年6月、18年度時点のPBの赤字幅を同1%程度に縮める中間目標を新たに定めていたのだ。
財政政策を重視する考え方が世界で広がり出したきっかけの一つは、16年8月の米経済シンポジウム(ジャクソンホール)でのクリストファー・シムズ・米プリンストン大学教授の発言。低金利の下では、財政拡張こそ物価水準に影響を与えやすくなるといった考えを展開し、注目を集めていた。
翌9月の中国・杭州でのG20(20ヵ国・地域首脳会議)では機動的な財政政策を実施する方針を確認。国際通貨基金(IMF)も財政出動に加え、構造改革に取り組むよう各国に促すなど、ここ数年の政策対応の方向性に変化のメスを入れ始めた。
11月には内閣官房参与を務める浜田宏一・イェール大学名誉教授がシムズ氏の論文を引き合いに「今後は減税も含めた財政の拡大が必要」と語るなど、当局側からも財政の積極活用論が聞かれる。
もっとも、周知の通り日本の財政状況は世界的にも極めて厳しい。公的債務残高は今やGDPの2倍以上に膨らむ。
18年度の中間目標は当初、17年4月の消費税率10%への引き上げが前提となっていた。今年5月の主要国首脳会議(伊勢志摩サミット)後、安倍首相が消費増税をさらに19年10月まで延期すると表明したため、中間目標の見直しを求める声も出ていたが、16年秋の自民党の財政再建に関する特命委員会(委員長・茂木敏充政調会長)では、増税先送り決定後も中間目標を堅持する考えが確認された。
財政拡大に歯止めかからず
PBの赤字幅縮小は困難
財政の中間目標が今も国内外に認知されている限り、自ずと政府が「約束を守れるかどうか」に関心が向く。22日に閣議決定された17年度予算は一般会計ベースで総額97兆円規模となったが、ここから逆算していくと、市場では18年度の財政中間目標が「未達成となる可能性が高い」(第一生命経済研究所の星野卓也副主任エコノミスト)との見方が出てきている。
なぜか。そもそも増税延期の影響が避けられない上、政府が7月に示した「中長期の経済財政に関する試算」によれば、政府が目指す実質2%、名目3%の「経済再生ケース」を実現した場合でも、18年度にGDP比で1.9%のPB赤字が残る。星野氏は、この試算には今年10月に成立した16年度第二次補正予算の影響が織り込まれていないと指摘する。
歳出面では、世界的な財政拡張気運の高まりを考慮に入れれば、17年度以降も景気浮揚などを目的に財政活用の流れは続きそうだ。仮に経済対策を盛り込んだ16年度の第二次補正予算(4兆円超)と同規模の補正を来年以降も編成すると、2〜3兆円規模の国債発行が必要になるとみられている。
歳入面はどうか。税収は当初予算の編成時の見込みより下振れしており、10月までの累計税収は7年ぶりに前年割れしている。
税収は為替動向の影響が大きい。星野氏の試算によれば、為替市場で1%円安・ドル高が進むと、税収は1200〜1300億円規模で上振れする。足元の円安が続けば、税収減は一時的にとどまる可能性もあるが、それを考慮しても「18年度にはGDP比2〜3%のPB赤字が残る」(星野氏)との見立てにたどり着く。つまり、政府試算と比べてGDPで1%程度(5兆円程度)、赤字幅が拡大する可能性もあるということだ。
この通りなら中間目標の達成には5〜10兆円程度の大幅な予算の減額が必要になる。だが世界的な財政拡張の流れに逆行し、景気への悪影響も出てしまう点を考慮に入れれば、自ずと政府が中間目標の達成の方を“犠牲”にするとの見通しに傾かざるを得なくなる。
理屈だけで考えれば、PBは単年度収支であるため、18年度だけ支出を抑えて帳尻を合わせれば中間目標の達成に近づけないわけではない。ただ19年10月の消費増税に向け景気浮揚も必要とされる18年度に、財政出動の機運が急にしぼむとは現時点で考えにくい。
景気対策で出動が常態化した
補正予算のあり方に問題も
補正予算は本来、当初予算時点で予見し難い事態が生じ、予備費でも対応できない際にやむを得ず編成するはずだが、実態は「景気対策」として毎年の出動が半ば“恒例化”している。こうした補正予算の在り方も問題となっている。
ある財務省関係者は「補正予算にチェック機能が働きにくいのは事実」と打ち明ける。日本の場合、翌年度の本予算は前年の夏場から政府内の動きが始まり、財務省の財政制度等審議会での議論、各省庁と財務省との折衝など、数ヵ月単位の時間をかけて決まっていく。
一方、補正予算は国会の承認こそ得るものの、財政審での議論を経ることもなく、数兆円単位の予算が内閣の判断などであまり時間をかけずに編成される傾向にある。
政府は当初予算に関し、一般歳出の伸びを18年度までの3年間で1.6兆円に抑える方針を掲げている。このため財政の「機動的な出動」は今後も補正予算を使ったものになるのは確実だろう。最終的な年度決算で見れば、補正分も国の支出に計上され、PB対象経費が膨らむことになる。
そうして中間目標の未達の足音が近づいてくると、気になるのはさらに先の財政の行方だ。
19年10月への二度目の先送りが決まった消費税10%への引き上げについて「二度あることは三度ある。安倍首相による増税の“再々々延期”も十分にあり得るのでは」(財務省関係者)との予測が既に聞かれ始めている。
以前から日本に一段の消費増税を訴えてきた経済開発協力機構(OECD)は、16年の経済見通し発表時、先進国に財政出動と構造改革による難局打開を提言する一方で、日本は「注目すべき例外」と指摘。「財政拡大の余地はない」として、財政改善を求めている。
政権が目先の景気浮揚を優先し、消費増税をさらに先送れば、これまで国内外に長年コミット(約束)してきた20年度のPB黒字化目標は達成が絶望的となる。そうなれば、財政状態の一層の悪化を懸念して、国債が売られ金利に強い上昇圧力がかかる恐れがないとはいえない。
海外投資家の日本国債の保有率が上昇傾向にある中、“財政健全化の道のりを放棄した”との受け止めが市場に広がれば――。金利急騰で日本経済が大混乱に陥る、恐れていたシナリオも現実味を帯びかねない。
http://diamond.jp/articles/-/112741
国債のマイナス利回り−来年へと受け継がれる「遺産」
日本とドイツでは10年物国債利回りが今年マイナスになった
By RICHARD BARLEY
2016 年 12 月 28 日 14:48 JST
――WSJの人気コラム「ハード・オン・ザ・ストリート」
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2016年末の債券市場を一言で表現するとすれば、世界的な利回りの急騰だろう。だが、今年最も注目すべき出来事は、長期債に至るまで幅広くマイナス利回りが出現したことだ。当時の影響はいまだに残っており、この「遺産」ともいえる痕跡はしばらく消えそうにない。
バンクオブアメリカ・メリルリンチのデータによると、利回りがマイナスの債券の総額は世界全体で、9月末につけた13兆3000億ドル(約1560兆円)のピークから減少している。16年初めにはこの半分に満たない5兆6000億ドルだった。とはいえ、マイナス利回りの債券は12月初め時点で世界の市場にまだ10兆ドル余り存在していた。ドイツ国債は依然、2024年満期の銘柄まで利回りがマイナス圏だ。
実際、一部の利回りは今年に入ってから低下の一途をたどってきた。ドイツ国債の2年物利回りは年初にマイナス0.35%だったが、12月にはマイナス0.8%まで下がった。欧州中央銀行(ECB)が債券買い入れ策を延長したことや、年末を控えて質や流動性の高い債券に対し担保としての需要が膨らんだことが背景にある。
とは言うものの、16年に起きた現象の中で本当に奇妙だったのは、長期債利回りがマイナス圏に沈み、債券市場の動きについての前提が覆ったことだ。ドイツ国債と日本国債の10年物利回りがマイナスになったときには特に大きく注目された。だが、最も極端な例であるスイス国債には到底及ばない。スイス国債の場合、英国が6月の国民投票で欧州連合(EU)離脱を決定すると、一時は2064年満期の国債まで利回りがマイナスになった。
こうしたことから浮き彫りとなるのは、16年に債券市場がどれほど未知の領域に入ったかだ。資産としての債券(fixed income)の魅力は受け取るキャッシュフローが分かっていること、すなわちその名の通り「固定(fixed)」していることにある。長期債利回りをマイナス圏に押し下げた16年前半の相場上昇は、将来のキャッシュフローがすでに購入価格に織り込まれている中で、債券を全くの投機手段に変えてしまった。2064年満期のスイス国債の価格はピーク時に額面の2倍を超えた。この国債を買った投資家は、将来受け取る年2%のクーポン(表面利率)と元本の合計を上回る額を購入時に支払わなければならなかった。
10-12月期に債券売りが優勢となったため、極端なマイナス利回りはいくらか是正された。また、17年にインフレ率が上昇すれば、長期債利回りが再び今年の低水準まで下がることはないはずだ。だが、米連邦準備制度理事会(FRB)がさらなる利上げを示唆し、米国債利回りが押し上げられる一方で、他の中央銀行は低金利政策を決め込んでいる。ECBは預金金利をマイナス0.4%に据え置いており、その影響でドイツの短期債利回りは低く抑えられるだろう。日本銀行は10年物国債利回りをゼロ近辺に維持しようとしている。
これは一部の債券の利回りが17年もマイナス圏にとどまることを意味する。利回りのさらなる低下を見越した投機的な債券買いの衝動は、最近の相場下落を受けて抑えられたはずだ。だが、中銀の政策がもたらす市場のゆがみが消えない限り、投資家は途方もない難題を抱え続けることとなる。
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