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愚劣な手口を歓迎 嘘が正義となって煽られる無残な時代 二極化・格差社会の真相
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2016年12月27日 斎藤貴男 ジャーナリスト 日刊ゲンダイ 文字お越し
米国のお墨付き?(C)日刊ゲンダイ
今年、世界で最も注目を集めた英単語は「post− truth」だったという。最も権威ある英語辞書の版元であるオックスフォード大学出版部の発表だ。「真実でないもの(嘘)に人々が扇動される政治状況」の意味である。
具体的には英国のEU離脱や米大統領選が例示された。特に後者では、中立的な調査団体のファクトチェックで、トランプ陣営の発信した“情報”の7割が事実と異なっていたことがわかった。
当事者による情報操作だけが問題なのではない。愚劣な手口がかえって歓迎され、嘘こそが正義になった世の中だから無残なのだ。truthの接頭辞がanti−(反)でなくpost−(後)なのは、この状況が一過性に終わらず、かなり長く続くというニュアンスか。
時代はそこまで来てしまった。インターネットによる情報支配に、人間の知性は奪い尽くされた。
トランプ当選の直後に朝日新聞が米国紙から転載した、ノーベル賞経済学者P・クルーグマンのコラムが鋭い。
〈とんでもない人たちが連邦最高裁判事になると見込まれ、各州政府は有権者をもっと抑圧できるような権力を持つだろう。最悪の場合、陰湿な人種差別が米国全土で標準となる可能性がある。(中略)どんなひどいことになるのか? だれにもわからない〉
すでに安倍晋三政権の日本では現実の光景だ。はたしてこの間の自民党や右派メディアの傲慢さは異常なほどである。権力や権力に近い者は何をしても許される、弱い立場の人間を残忍にいたぶることこそグローバル・スタンダードなんだという、米国のお墨付きを手にした感覚であるらしい。
トランプの票田になったとされる貧困層の期待は、いとも簡単に裏切られよう。名前の挙がる閣僚候補の顔ぶれで明白だ。財務長官に元ゴールドマン・サックスのS・ムニューチン、国務長官にエクソンモービルCEOのR・ティラーソン、国防長官に「ムスリムを殺すのが楽しい」発言で有名な元中央軍司令官の“狂犬”J・マティス、首席戦略官に右派ニュースサイト会長のS・バノン……。
米国の新自由主義やネオコンの暴力はますます猛威を振るう。安倍政権にとっては、それでもトランプが旗を降ろしにくい“内向き”をチャンスと捉え、彼らの戦争の一部を代行する形で、新たな帝国主義を確立したい野望を剥き出しにしていくのではないか。
悪夢の2016年もようやく暮れる。だが新年に、より大きな不幸が待ち構えていない保証はない。
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