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2016年12月21日 「ジャーナリスト同盟」通信
<オスプレイ欠陥機墜落でも飛行再開>
ごく普通の国で現在の日本のような体たらくが表面化すれば、国民は街頭に出て安倍退陣を叫ぶだろう。ソウルの東京である。これを抑止しているのが、新聞テレビのいかさまの世論調査である。NHKがその主役を演じているが、直近では共同通信である。列島はカジノ解禁に次ぐ、日露外交の失態と、オスプレイの墜落事故と即座の飛行再開のトリプルパンチで、正常であるべき精神が爆発寸前である。
<抵抗した岸田・山口を袖にした稲田>
永田町では、自民党幹事長が日露首脳会談のマイナス成果に激怒して、官邸との距離を決定的にさせた。昨日の自民党役員会では、さしずめ安倍は針の筵に座らされて、身を低くした様子が電波に乗った。
霞が関では、重い空気が漂っていた。欠陥輸送機オスプレイの墜落事故に対して、即座の飛行再開に国民だけではなく、永田町・霞が関の多くが反対していた。日本人であれば、右翼でも躊躇する場面だった。
その空気を受け止めて、ようやく腰を上げた岸田外相が反対の意思表示をした。連立を組む公明党の山口も同調した。にもかかわらず、官邸と防衛省は、そうした空気を袖にしてしまった。米軍の希望通りに19日午後に飛行再開を受け入れていた。機能不全のワシントンではなく、日本駐留の米軍の意思が貫かれた。驚くべき事態である。
しかも、安倍側近中の側近を自認する稲田防衛相は、20日の記者会見で「国民は理解してくれる」と開き直った。「外相が反対しているが」という質問には「わかってくれるはず」と押し切った。
「わたしには安倍がついているのよ。日本会議も」という傲慢すぎる態度をひけらかしたのだ。防衛大臣が外務大臣の意向を排除した前例はないはずだ。安倍と稲田の関係を浮き彫りにしているようだが、岸田と山口は、稲田にいいように扱われたことになる。シビリアンどころではない。
かくして稲田への憎しみは、安倍へと伝染するだろう。「岸田と宏池会の安倍離反に火をつけてしまった」と受け止められている。「政治は感情で動く」とは安倍の実父の指摘である。晋太郎幹事長の時だ。宏池会内に「辞表を叩きつけろ」との声が増幅している。
過去に佐藤内閣の三木武夫外相は「沖縄の核抜き返還」を叫んで、佐藤に辞表を叩きつけたことがある。これが三木を天下人にする原動力となった。
<駐留米軍に服従する安倍・日本会議>
墜落を不時着と嘘をついて、問題を処理しようとしている安倍内閣である。これに追随する新聞テレビも悪辣だ。沖縄の新聞はまともであるが、墜落原因も不明確な状態の中で、1週間後に飛行再開は、どのような屁理屈をつけても通用しない。
普通の国の政府は、このような場合、決して許可しない。しかし、安倍は稲田と二人で決断したとみられて、国民だけでなく政界に波紋を投げかけ続けている。米国防省ではなく、日本駐留の米軍が直接、安倍に19日再会を直訴したものだ。これは外務省はずしである。温和な岸田が、怒り狂って当然である。
ワシントンも東京も、政権末期のような事態である。
<沖縄の怒りは全国へ波及>
沖縄の怒りは尋常ではない。翁長知事は「言語道断である」と怒りを最大限に表現して、主権者である日本国民に訴えた。
直前には、辺野古移転訴訟で最高裁は、米軍と日本政府に軍配を上げていた。これでは沖縄独立運動が拡大して当然であろう。憲法が予想する抵抗権の行使である。
他方、311の東電福島原発問題は、東北から日本全土へと広がっている。原発ゼロ運動と沖縄の米軍基地反対運動は、悪しきワシントンと結びついており、連帯する宿命にある。これにカジノ解禁も加わった。利権がらみの成果ゼロの日露外交も露見した。これらをまとめて総括する力が野党にあれば、総選挙で勝つだろう。勝てないはずがない。
<開き直る日露外交>
安倍は20日、時事通信の内外情勢調査会を利用して、日露外交の安倍成果を宣伝していた。2島返還の日ソ外交にも届かなかったマイナス成果を、逆に開き直るような内容だった。
自民党幹事長さえも衝撃的な失望結果を、そんなことはない、と浪花節調で自己弁護したのだ。「来年早々にもモスクワを訪問したい」と述べることで、さも前進していると印象付けるのに必死となった。
公人であるのにもかかわらず、二人だけの個人的秘密の密談をすることは、公給を懐に入れている者には許されない外交手段である。
<度し難い無能首相>
安倍講演は、すい臓がんで非業の死を遂げた実父の墓参り、プーチンにプレゼントした秋田犬のことなどを紹介したが、日露外交の巨大な壁となっている日米安保について、全く触れなかった。これが最大の障害であることは、素人でもわかる。肝心要を素通りした講演会だった。
ヒラリー次期大統領を想定したシナリオが崩壊した衝撃は隠して、トランプとの出会いに言及したが、ほとんど無意味な講演会に終始した。
余談だが、筆者も内外情勢調査会の講師をしていた関係で、批判する立場にないが、日刊ゲンダイで政府自民党を真正面から評論するようになると、途端に講演する機会がなくなってしまった。
<カジノ解散はできない>
いま解散する勇気は、安倍・日本会議にはない。どうしてか、カジノ解散で自公がシャカリキになっても、勝利することは出来ないためだ。
野党に知恵者がいない。そのために存続している政権である。選挙屋「ムサシ」の協力なしには選挙できない政権である。3分の2議席といっても、得票率はわずか2割か3割である。独裁政治など論外である。
大選挙区制か中選挙区制にすれば、とても過半数に届かない政党である。そんな政党が、ワシントンにひれ伏して暴走している。平和憲法を破壊しようとしている。冗談にもほどがある。
ソウルを学ぼう。マニラを教訓にしよう。21世紀はアジアの世紀である。
2016年12月21日記(政治評論家・日本記者クラブ会員)
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