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首脳会談の冒頭、握手を交わすロシアのプーチン大統領(左)と安倍晋三首相。首相の地元で行われた初日の会談は、夕食を囲みながらも続き、計約5時間にわたった/12月15日、山口県長門市 (c)朝日新聞社
安倍首相の野望を幻に終わらせた側近の一言〈AERA〉
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20161219-00000180-sasahi-pol
AERA 2016年12月26日号
故郷の山口県長門市にプーチン大統領を迎え、「新しいアプローチ」で北方領土問題の突破口を開く──こんな安倍首相の野望は幻に終わったようだ。
会談初日となった12月15日の舞台は、天皇、皇后両陛下も宿泊されたという由緒ある長門市の温泉旅館「大谷山荘」だ。
だが期待が盛り上がる暇もなく、プーチン大統領に同行したロシア側要人から、日本の期待に冷や水を浴びせるような身もふたもない発言が相次いだ。
ペスコフ大統領報道官は「(北方四島の)主権の問題はまったく持ち出されていない。ロシアに主権があることに疑問の余地はない」と断言した。
ペスコフ氏はこの時点で、両首脳が通訳だけを介した2人だけの会談で何を話し合ったか、すべてを知っていたわけではないだろう。だが彼は、プーチン氏の側近で、大統領の意図を誤解がないようにロシアメディアに発信するのが役割だ。「日本と領土問題は議論しない」というロシア側の姿勢がはっきりと伝わってくる発言だった。
●一時は高まった期待
「今度こそ北方領土問題が動き出すのでは」
日本でそんな期待が膨らんだのは、5月に安倍晋三首相がソチで行ったプーチン氏との首脳会談がきっかけだった。
会談後、安倍首相は、「停滞を打破する突破口を開く手応えを得られた。今までの発想にとらわれない新しいアプローチで交渉を進めていく」と、高揚した様子で語った。
しかし、11月19日に異変が明らかになる。アジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議が開かれたペルーのリマ。プーチン氏との会談後、記者団の前に現れた安倍首相の表情はぼうぜんとしているように見えた。ときおり言葉を詰まらせながら「そう簡単な課題ではない」「一歩一歩進めていく」と、繰り返したのだった。
●首相の言葉「知らない」
この翌日、筆者は記者会見でプーチン氏に質問した。
「大統領はどんなアプローチを新しいと考えるのか。あなたにとって古いアプローチとは何か」
これに対してプーチン氏はにやりと笑って「何が古いアプローチで何が新しいか、私は知らない」。安倍首相の言う「新しいアプローチ」など意に介さない、といった風情だった。
12月7日、読売新聞と日本テレビのインタビューに応じたプーチン氏は「日本の友人たちが、(1956年に署名され、歯舞、色丹の2島引き渡しについて書かれている)日ソ共同宣言の枠組みの中にとどまっているとは言えない」と語った。安倍首相が依然として4島を求めており、それでは話し合いに応じられない、という考えを示唆していると言ってよいだろう。
プーチン氏が態度を急に硬化させたのは明らかだ。そのきっかけになったとみられるのが、11月上旬に訪ロした谷内正太郎・国家安全保障局長の発言だ。複数の関係者によると、ロシア側から、将来日本に歯舞、色丹を引き渡した場合「米軍が基地を置くか」と聞かれて、「可能性はある」と答えたという。
これは、プーチン氏にとってはまったく容認できない見解だ。ロシアが渡した領土に米軍が基地など置こうものなら、プーチン氏のメンツは丸つぶれだ。
プーチン氏は大統領に就任直後、2000年9月に訪日した際、当時の森喜朗首相にも米軍基地が置かれる可能性について尋ねている。それほど気になる問題なのだ。ちなみに、このとき森氏は「そんなことは絶対にないよ」と答えていた。
プーチン氏は12月16日の共同記者会見で日米安保条約に言及して、ロシア極東の海軍基地の能力に及ぼす影響を懸念しているという考えを表明した。
安倍首相にとって今回首脳会談の唯一の「成果」らしきものは、北方領土での「共同経済活動」の実現に向けた協議を両国で始める、というプーチン氏との合意だ。だが、どちらの国の法律を適用するかをめぐって、両国は議論の入り口で対立しており、前途は多難だ。(朝日新聞モスクワ支局長・駒木明義)
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