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万博記念公園にある太陽の塔(「Wikipedia」より/663highland)
大阪万博誘致に巨額税金投入の謎…また役人が外遊三昧&大工事先行の懸念
http://biz-journal.jp/2016/12/post_17449.html
2016.12.13 文=粟野仁雄/ジャーナリスト Business Journal
橋下徹氏が大阪市長を降りてまもなく1年。国内の行政関連ニュースは2020年東京五輪絡みの「東京発・小池劇場」ばかりの感のなか、橋下氏の盟友・松井一郎大阪府知事が「夢よ、もう一度」とばかり打ち出したのが万博誘致だ。
11月9日、松井知事は「2025年大阪万博」の基本構想を世耕弘成経済産業大臣に提出した。府が設置していた「2025年万博基本構想検討会議」(座長・秋山弘子東大教授)の意見が根底で、開催期は25年4月から10月、テーマは「人類の健康・長寿への挑戦」。メイン会場は大阪湾の人工島、夢洲(ゆめしま)である。松井氏は「東京も2回五輪をやる。大阪も」と鼻息は荒い。
磯村隆文市長(故人)時代に大阪市が誘致に失敗した08年の五輪会場用に埋め立て開発されたのが、人工島「舞洲(まいしま)」だった。北京、トロント、パリ、イスタンブールと並び立候補した大阪市は、01年7月のモスクワでのIOC(国際オリンピック委員会)総会第一回投票で、得票数がたった6票で惨敗する。「北京が強かったから」などと言えたレベルではなかった。
当時、関淳一助役などはほとんど市議会にも出ず、誘致名目で年がら年中、職員らを連れて外遊していた。外遊中の不明朗な支出を市民団体に指摘されると、「町で偶然、IOCの幹部に出会ったので食事して話を聞いた」などと取り繕ったが、そんな証拠はない。無残な結果にも磯村市長、関助役以下、市幹部らはなんの責任も取らなかった。
五輪や万博などの誘致は、負けても責任を取る必要がない。「恐らく勝てない」としてしまっては元も子もないから「うまくやれば誘致できるかも」という幻想を市民にふりまき、御用学者がはじき出す「獲らぬ狸」の経済効果を吹聴し、財界を巻き込む。首長以下、役人や議員らは公費で欧州外遊などを堪能する。記者たちも海外出張できるから反対しない。財団法人のかたちをとった大阪五輪の招致委員会には、ほぼすべての大手マスコミの大阪支社長など幹部が名を連ねていた。
■すでに海外視察開始
さて、万博は五輪のような都市立候補ではなく、国が誘致する国家事業であり閣議承認が必要だが、すでに大阪府は菅義偉官房長官からお墨付きを得ている。開催地を決定する博覧会事務局(BIE/本部・仏パリ)は、2016年1月から立候補を受け付けている。強敵は、すでに立候補を表明したパリだという。
すでに昨夏のミラノ万博を視察した松井知事は「パリ詣で」もしている。今後も府市職員や議員らは視察名目で欧州旅行などをたっぷり楽しんだあげく、「やはりBIEの本拠地、パリは強かった」で終わらせることは許されない。
そんな万博だが、一般の人々の興味は減退している。過去、5回の万博で日本館をプロデュースした「現代芸術研究所」の平野暁臣主宰は、「万博は死にかけている。現場の活気の衰退はすごい。70年万博では岡本太郎や横尾忠則など何をやるかわからない人たちに任せ、社会にも気概と志があった。しかし70年の成功で万博はビジネスになり、その後の国内の万博は大阪万博の変形でしかない」と警鐘を鳴らす(11月10日付朝日新聞より)。
大阪万博では、アポロ11号が持ち帰った月の石は大人気で、展示されたアメリカ館は簡単には入れなかったが、愛知万博(05年)では今や国内の常設展示でも見られる月の石を展示する新鮮味のなさ。大阪府は25年万博のコンテンツとして、健康、長寿、和食、スポーツ、サブカルチャー、大阪流のお笑いなどを掲げているが、“ごった煮”感があるのは否めない。
基本構想において、会場建設費用は約1300億円。さらに人工島への地下鉄延伸費用等700億円、想定入場者3000万人、経済効果は6.4兆円と目論むが、あまりに根拠がない。ちなみに25年から55年も遡る1970年の大阪万博は建築費用522億円で約6400万人を動員した。
■批判かわし狙いか
大阪五輪名目で先行開発した夢洲や舞洲は現在、更地だらけ。大阪府職員労組の有田洋明委員長は、次のように指摘する。
「“税金無駄遣い島”への批判をかわしたい松井知事は、IR(統合型リゾート)でカジノ誘致を進めていますが、イメージアップのため万博を抱き合わせたい魂胆です。地道な行政を怠り、イベントでごまかすことばかり」
また、大阪府の税金無駄遣いを監視する市民団体「見張り番」の松浦米子代表は、「五輪と同じで開催が決まらないうちから大工事。税金での外遊も相次ぎそう。しっかり監視したい」と構える。
25年万博誘致の言い出しっぺは、大阪出身の作家・堺屋太一氏だとされている。通産官僚時代に70年万博を仕掛けた堺屋氏は、その大成功で名声を得たが、今は高度成長期ではない。「夢よ、もう一度」を無責任にぶちあげる首長や役人や議員、さらにはマスコミに大阪府民は騙されてはならない。
(文=粟野仁雄/ジャーナリスト)
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