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「平和のために戦争をする」 タリバンにむせび泣いた夜
http://tanakaryusaku.jp/2016/12/00014980
2016年12月11日 21:13 田中龍作ジャーナル
JAZZトランペッター伊勢ア賢治氏。オリジナルとスタンダード、全7曲を熱く奏でた。=10日夜、吉祥寺MEG 撮影:筆者=
紛争の現場を最もよく知る男は、誰よりもリアリストだった。
トランペッターが紛争解決人となったのか。紛争解決人がトランペッターになったのか。伊勢ア賢治(※)のもう一つの“職業”はJAZZトランペット奏者である。
東京・吉祥寺のJAZZ喫茶で昨夜あったコンサート&トークライブを聞きに出かけた。
客の多くは曲と曲の間の伊勢ア節を聞きたさに訪れる。伊勢アは当然、最新の時事問題も語ったが、紛争解決人らしく小気味よかった。
稲田朋美防衛相がわずか7時間の滞在で「落ち着いている」と能天気に言った南スーダン情勢については、「軍事力で平和を作っているだけ。落ち着いてなんかいない」とズバリ言い切った。
原発についても軍事をよく知る伊勢アらしい指摘だった。「アメリカは本土から最も遠く、仮想敵国のすぐ手前に究極の地雷を埋めた。54基も」。
自分のイメージを伝えて作曲してもらったというオリジナル曲は、その名も「タリバン(坂本千恵作曲)」。
武装解除される日のマスード派兵士。マスード将軍は911の2日前に暗殺された。伊勢ア氏は「マスードがもし生きていたら武装解除できなかった」と述懐する。=2002年、カブール郊外 撮影:筆者=
伊勢アがいみじくも指摘するようにタリバンは「アメリカが勝てなかった」武装勢力だ。「指導者たちは清貧。いいテロリストになっている」と目を細めた。
世界最大のアヘン産地に4大部族が割拠し、近隣諸国が露骨に干渉する。ロシア、イラン、パキスタン、中国・・・いずれも曲者だ。戦乱が絶えず人々は貧しい。
そんなアフガンに思いを馳せて吹いているのだろうか。伊勢アのトランペットがむせび泣いているように聞こえて仕方がなかった。
外交と防衛はアメリカ任せだった日本。伊勢アは手厳しい。「何も考えなくて済んできた。トランプ(次期大統領)の出現で『もしかして見放されるかも』と気づくようになった」。
オリジナル曲ばかりでなくスタンダードも演奏した。「チャイルド・イズ・ボーン」を奏でる際には「紛争地域でも子どもは産まれるんです」。
コンサートの最後に伊勢アがつぶやいた。「平和のために戦争をする。平和ということは危険ですね」。
平和の尊さを知らぬ日本の支配層に対する警告である。(敬称略)
〜終わり〜
※
伊勢ア賢治。国連職員や国際NGOスタッフとしてアフガニスタン、シエラレオネで武装解除にあたるなどしてきた。「紛争解決請負人」の異名を持つ。現在、東京外語大学教授。
AZZ LIVE 伊勢崎賢治(tp) 紛争国で武装解除をさせてきた達人がJazzのライブの中で戦争に向かう日本のあるべき姿を語る。
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