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山田厚史の「世界かわら版」
【第123回】 2016年12月8日 山田厚史 [デモクラTV代表・元朝日新聞編集委員]
国際カジノ資本は日本の中間層の財布を狙っている
ラスベガスのような歓楽街が、横浜や大阪に出現するかもしれない――
異様な国会になった。会期延長はTPP法案を成立させるためとされたが、そればかりではなかった。カジノ法案を無理矢理通そうというのである。
問題山積、突っ込みどころ満載の法案である。それが衆議院の審議はわずか6時間。自民党は質問時間を持て余し、般若心境を唱えて時間を消化する仰天議員まで現れた。審議なんてクソくらえ、数の力で強引に通す、という国会運営である。たかがカジノ。なぜ与党は、品性が疑われる愚挙に走るのか。
「今回が最後のチャンス。通せなかったら、国際カジノ資本に見限られます」
ロビー活動の一端を担ったコンサルタントは言う。カジノ資本の力はそれほど大きいものなのか。うかがい知ることはできないが、法案が成立して喜ぶのは日本進出が可能になる国際カジノ資本である。
読売、産経でさえ難色
不自然な与党の強引さ
日本は「最後の処女地」だという。
「候補地も運営する外資も、概ねすでに決まっている」という情報通もいるほどだ。
観光客が増える。地域が賑わう。関連産業が儲かる。税収も増える。つまりカネ・カネ・カネだ。安倍首相は成長戦略の目玉の一つに据えた。儲かることはいいことだ、という発想である。なんという貧困な精神か。
政府・与党に同調する論説が目立つ読売新聞でさえ社説で「人の不幸を踏み台にするのか」と書いた。
「そもそもカジノは、賭博客の負け分が収益の柱になる。ギャンブルにはまった人や外国人観光客らの散財に期待し、他人の不幸や不運を踏み台にするような成長戦略は極めて不健全である」と指摘している。
親会社のフジサンケイグループがカジノビジネスに名乗りを挙げている産経新聞は、「カジノ解禁にまつわる懸念に向き合わないまま、スタートラインに立つ法律を押し通すなら国民の不信は拡大するだろう」と書いた。
首相も与党も財界も、こんな当たり前のことに気づかないのか。
いや、気づいているから、国民が「これはおかしい」と言い出す前に、バタバタと決めてしまおうとしているのではないか。
カジノと言わずに「IR(統合型リゾート施設)」などと呼ぶこと自体、後ろ暗さを感じている現れだろう。
古今東西、賭博場には闇が付きまとう。電飾で飾った煌びやかな表の顔の裏で、脱税・収賄・イカサマに絡むカネのやり取りが為されてきた。
儲かるのは賭博を開帳する胴元で、ゼニを失うのは賭場に引き寄せれたカモたち。これも古今東西の教訓だ。
国際資本が狙うのは
日本の中間層の貯蓄
「カジノは儲かる」。これも確かだ。大阪商業大学の谷岡一郎学長は、こう語った。
「マカオではカジノの稼ぎが去年(2013年)3兆8000億円ありました。これは売上ではありません。収益です。つまり人々が失ったカネの合計が3兆8000億円ということです」
谷岡学長は、海外のカジノ事情に詳しく、1990年台から日本のカジノを解禁すべきだと主張してきた。ギャンブリング・ゲーミング学会を日本で創設し、同大学にアミューズメント産業研究所を作るなど、日本で数少ない「ギャンブル有識者」の一人だ。「教え子を橋下徹大阪市長の下に顧問として送った」とも言っておられ、カジノ推進の旗を振る大阪の理論的支柱でもある。
話を伺ったのは2年も前のことだが、印象に残った言葉がある。「なぜカジノ資本は日本を魅力的と考えているのか」という問いにこう答えてくれた。
「ハイローラーと呼ばれるギャンブル愛好家はカジノのお得意様ですが、この種のギャンブラーだけを相手にしていては、経営が安定しない。一般の方々が参加できる広い裾野が必要です。一定の所得と貯蓄を持つ分厚い中間層がいる日本の大都市圏は大変魅力ある市場です」
ギャンブラーが好むのはバカラだそうだ。大王製紙の御曹司がはまったのもこの賭博で、気の遠くなるような大金が動く。場合によってはカジノ側が大負けするリスクさえある。ギャンブラーだけを相手にして商売すると勝ち負けのブレが激しく、経営にリスクが伴う。安定収益となるのが、小銭を携えてやって来る素人たちだ。ルーレットやゲーム機は必ず胴元が儲かる仕組みになっている。地域の小金持ちや観光客が集まる場所にカジノを開くのがベストというのである。
つまり太ったカモが沢山いる場所にカジノを開きたい。それには日本の大都市は格好の狩場、ということである。狙われているのは日本人の貯蓄である。
20世紀の米国で育ち
中国マネーでバブル化
ギャンブルは財産の私有化と共に始まったと言われるが、産業として肥大化したのは20世紀のアメリカだ。州によって制度は様々だが、多くは過疎地の振興や貧困の対策と抱き合わせで始まった。ラスベガスは砂漠の街の振興事業として賭博が始まり、貧困が問題になったインディアン自治区では救貧対策としてカジノが認可された。
そして20世紀末に到来した「カネ余り経済」がカジノバブルの華を咲かす。カジノを運営する会社がアブク銭を吸って巨大化した。MGMリゾートインターナショナル、ラスベガスサンズ、シーザース・エンターテインメントなどだ。米国大統領になるドナルド・トランプ氏もニュージャージー州アトランティックシティーでゲーム機2100台を配備するカジノを経営している。
カジノ資本が更に大化けしたのが通貨危機後のアジアだった。外貨に窮し、手っ取り早い経済対策が欲しい各国は外国人観光客を呼び込むためにカジノ資本に頼った。賭博を禁止するイスラム教のマレーシアまで観光地にカジノを誘致した。
マカオは1999年にポルトガルから返還され、中国政府は外資に頼る観光開発に乗り出す。中核になったのがカジノである。今やマカオは巨大なカジノが林立し、ラスベガスを凌駕するカジノシティになった。
ホテルと一体化し、会議場や劇場・レストランが併設され、浮世離れした空間で観光客が気前よくカネを使う。ラスベガスサンズが経営するシティ・オブ・ドリームス・リゾートは、客室は1400室だが、カジノ面積が3万900平米あり(東京ドームは4万9000平米)、ゲーム機1350機、ポーカーやバカラをするテーブル520台、レストラン・バー14軒が組み込まれている。
狙いは中国マネーである。本土では賭博が禁止されている。カネ回りがよくなった中国人が「賭博解放区マカオ」に流れ込む。カジノで賭博中毒になり公金を使いこむ役人や地方政治家の不正が頻繁に新聞に載るようになったのもこの頃だ。年間収益3兆8000億円は、その屍から稼ぎ出された。数字で見せられるとヨダレを垂らす人もいるだろうが、その裏で何が起きているのか。利益を手にする者は誰か、失うのは誰か。国会審議は、冷静な現状認識の上で、周到にリスクが検討されるべきである。
カジノを「非日常」に
とどめてきた先進国の知恵
観光客が増える、関連産業が潤う、税収が増える、というが本当にそうだろうか。
カジノは集客力がある。けたたましく豪華で刺激的な施設があるからだ。ここの集客力は周辺の商業施設や観光地を訪れる人たちを吸い上げてしまう力もある。
観光客が増えた例として、しばしばシンガポールが挙げられる。私もバンコク駐在のころ、時折シンガポールを訪れた。ビジネス都市ではあるが観光資源はほとんどない。名所といえばマーライオンの像だが、訪れる人をガッカリさせる「期待外しの観光ポイント」として有名だ。3日いれば飽きるシンガポールだからド派手なカジノが活きてくる。3棟の高層ビルに船型のプールを載せた複合観光施設マリーナ・ベイ・サンズは、ブランド品と豪華施設を売り物にするシンガポールの煌びやかな象徴である。
金融関係者なら知っていることだが、カジノはマネーロンダリング(資金洗浄)と密接に絡んでいる。出所を明らかにできないカネをカジノに持ち込み、カジノ収益に変えて表に出す。
華人の商都・シンガポールはタックスヘイブン(租税回避地)としても知られている。金融立国を目指すシンガポールは華人マネーを呼び込むため、金融規制が緩い。金持ちの資産を管理運用するプライベートバンキングが盛んで、「秘密のカネ」を扱うことに慣れている。欧州で言えばスイスである。訳あり資金・秘密運用・タックスヘイブンにマネロンが絡み、カジノという道具立てを必要とする。国柄を反映してカジノが生まれたのだ。
歴史的建造物が残り、細やかな生活文化が今も息づく日本は、いまさらシンガポールの道を進もうというのか。
カジノ資本の故郷・アメリカでも首都ワシントンやニューヨーク、サンフランシスコなど国を代表する都市に、カジノはない。インディアン居住区など「底上げが必要」とされる地域に特例として建設が許される。
中国でさえ賭博はマカオに閉じ込めている。欧州にもカジノはある。ロンドンに駐在した頃、誘われて何度か行った。
看板はない、地図にも表示されていない。目立たないドアを開けるとそこがカジノ、という仕立てだった。ドレスコードがあり、メンバーの紹介が必要で、紳士の静かな社交場という雰囲気だ。ラスベガスのようなTシャツ姿の家族ずれや、唾を飛ばすほど大声の客がルーレットに群がるマカオとは趣が違うカジノが英国流だった。
先進国はカジノは生活都市から切り離すか、都市の中なら目立たぬ場所で、というのが世間の知恵だった。
日本は玄関先で賭博?
与党の愚挙の裏に何があるか
ところが日本で候補地として上がっているのは、羽田空港に近い東京湾岸、横浜港を見下ろす山下公園付近、大阪の天王洲の3ヵ所だ。家に例えれば、玄関やリビングルームに賭博機を置くようなものである。
「地方自治体に手を挙げてもらい国が審査する。まず2、3箇所で認め、運営状況を見ながら次を判断していきたい」
IR議連の幹事長である自民党の岩屋毅議員はそう語り、当面の候補は首都圏と大阪に限定されていることを示唆した。
カジノ資本の経営者は頻繁に日本を訪れ、自治体関係者や国会議員に会っている。メディアに対しても前向きのメッセージが発せられている。
ラスベガスを拠点とするMGMリゾートインターナショナルのジョージ・ミューレンCEOは「少なくとも50億ドル(5500億円)を投資する準備がある」と朝日新聞の取材に答えた。候補地については大阪・夢洲を挙げた。
マリーナベイ・サンズ社長兼CEOのジョージ・タナシェヴィッチ氏は「投資は100億ドル程度、かなりの額を考えている」として、候補地は「横浜と大阪だ。特に横浜市には、大きな関心を持っていただいている」と東洋経済のインタビューに答えた。
どうやらカジノの利権は大阪がMGM、横浜はサンズで、裏の話は付いているのではないか。オリンピックや大阪万博もこのシナリオに沿っているのではないだろうか。
裏で話がついているなら、ビジネス側は急ぎたい。「早くしろ!」「何しているのか」という矢の催促が、与党の愚挙の背後にあると想像してしまう。
我々の知らないところで話がつき、最後の仕上げが形だけの国会審議、というおぞましい政治を、カジノは見せつけてくれた。
http://diamond.jp/articles/-/110402
残業ゼロがすべてを解決する
【第5回】 2016年12月8日 小山 昇
残業を放置する社長は
「犯罪者」です!
小池都知事が「夜8時には完全退庁を目指す」、日本電産の永守社長が「2020年までに社員の残業をゼロにする」など、行政も企業も「残業ゼロ」への動きが急加速している。
電通過労自殺事件で強制捜査が入ったいま、中小企業も大企業もお役所も「残業ゼロ」に無関心ではいられない。
株式会社武蔵野は、数十年前、「超ブラック企業」だった。それが日本で初めて日本経営品質賞を2度受賞後、残業改革で「超ホワイト企業」に変身した。
たった2年強で平均残業時間「56.9%減」、1.5億円もの人件費を削減しながら「過去最高益」を更新。しかも、2015年度新卒採用の25人は、いまだ誰も辞めていない。
人を大切にしながら、社員の生産性を劇的に上げ、残業を一気に減らし、過去最高益を更新。なぜ、そんなことが可能なのか?
「日経新聞」に掲載後、2日連続Amazon総合1位となった『残業ゼロがすべてを解決する』の小山昇社長にその秘密を語ってもらった。
残業削減は「社長の決意」がすべて
小山昇(Noboru Koyama)
株式会社武蔵野代表取締役社長。1948年山梨県生まれ。日本で初めて「日本経営品質賞」を2回受賞(2000年度、2010年度)。2004年からスタートした、3日で108万円の現場研修(=1日36万円の「かばん持ち」)が年々話題となり、現在、70人・1年待ちの人気プログラムとなっている。『1日36万円のかばん持ち』 『【決定版】朝一番の掃除で、あなたの会社が儲かる!』 『朝30分の掃除から儲かる会社に変わる』 『強い会社の教科書』 (以上、ダイヤモンド社)などベスト&ロングセラー多数。
【ホームページ】http://www.m-keiei.jp/
会社は、「社長の決意」で決まります。
残業を減らすためには、「残業を放置する社長は、犯罪者と同じである」ことを肝に銘じて、「残業を減らす」と決定することです。
どうすれば残業が減るのか、その具体策は後で考えればいいので、まず減らすと決定する。
社長が「どういう会社にするか」を明確にしなければ、会社を変えることはできません。
地域に密着して葬儀をサポートする株式会社マキノ祭典(東京都/葬儀)の牧野昌克社長も、「残業問題には、社長の決意が絶対に必要」と力説しています。
「残業問題に限らず、会社を変えたいと思うなら、社長自身が『何が何でもやる!』と思わないと、絶対にうまくいきませんよ」(牧野社長)
葬儀社は基本的に、365日24時間対応で、宿直があります。
夜中に依頼があってもなくても、宿直の社員に手当を払うため、人件費がかかる。
また、社員の健康面にも負担を強いる。
どの葬儀社にとっても、宿直は大きな課題です。
「私も、月に1回は宿直をしています。なぜなら、宿直をしないと、現場の感覚がわからなくなるからです。実際に自分も宿直をすれば、『ラクじゃない』ことがわかる。夜中に何度も電話を受けると、社員の苦労がわかる。苦労がわかるから『絶対に改善しなければいけない』『ゆくゆくは宿直をやめにしたい』という決意を持てます」(牧野社長)
現在、マキノ祭典では、残業や宿直を減らすための取り組みを始めています。
「まだ完璧にできていませんが、『フレックスタイムを導入してお通夜の当日はお昼出勤にする』『バックヤードをIT化して事務作業の手間を省く』『社員とパートの仕事の役割を見直す』といった工夫をして、就業時間が長くならないように気を配っています。
また、将来的には、「夜間専門グループの立ち上げ」や「夜間運搬のアウトソーシング化」なども検討しています」(牧野社長)
「スーパーウルトラブラック」から
「ロマンスグレー」企業へ
株式会社プリマベーラ(群馬県/リサイクル)は、群馬県を中心にリサイクルショップを多店舗展開しています。
吉川充秀社長は、「残業をなくすには、社長の決意を『数字』で示すことが必要」だと考え、経営計画書に数字を明記しています。
「かつては月に100時間以上残業する社員もいて、スーパーウルトラブラック企業でした。
そこで2年前に、私の決意として、経営計画書に『月に100時間以上働いてはいけない』と明文化しました」(吉川社長)
そこで、吉川社長は、残業時間の見える化に取り組みます。
「言葉は悪いのですが、月に100時間以上働いている社員を『吊るし上げる』ことにしたんです。
店長会議のときに、『今月の100時間オーバーは、この人とこの人!」と名前をデカデカと書き出して、公開処刑にしました(笑)。
さらに、100時間以上働いた社員には、改善計画書を提出させた。
すると、さらし者にはなりたくないし、改善計画書を書くのも面倒なので、100時間をオーバーしないように仕事のやり方を工夫するようになりました。2ヵ月連続で公開処刑された社員は、ほとんどいません」(吉川社長)
社長の決意を数字で示し、そして、それが実行されているかをチェックした結果、プリマベーラの労働環境は改善されています。
「まだホワイト企業になったとは言い切れませんが、白と黒の間の『ロマンスグレー企業』にはなれたのかもしれませんね」(吉川社長)
その後、大幅に残業改革が進み、2016年10月、月間平均残業時間がなんと45時間になりました。
小山昇(Noboru Koyama)
株式会社武蔵野代表取締役社長。1948年山梨県生まれ。日本で初めて「日本経営品質賞」を2回受賞(2000年度、2010年度)。2004年からスタートした、3日で108万円の現場研修(=1日36万円の「かばん持ち」)が年々話題となり、現在、70人・1年待ちの人気プログラムとなっている。『1日36万円のかばん持ち』 『【決定版】朝一番の掃除で、あなたの会社が儲かる!』 『朝30分の掃除から儲かる会社に変わる』 『強い会社の教科書』 (以上、ダイヤモンド社)などベスト&ロングセラー多数。
【ホームページ】http://www.m-keiei.jp/
http://diamond.jp/articles/-/109554
人類は絶滅を逃れられるのか
【第4回】 2016年12月8日 スティーブン・ピンカー,マルコム・グラッドウェル,マット・リデレー
近代化が人類にもたらした10の進歩とは
核戦争、人口爆発、異常気象、AIの爆発的進化、テロリズムの跋扈……人類の未来を待っているのは繁栄か、滅亡か。スティーブン・ピンカー(『暴力の人類史』)、マルコム・グラッドウェル(『ティッピング・ポイント』)、マット・リドレー(『繁栄――明日を切り拓くための人類10万年史』)ら知の巨人たちが21世紀の未来の姿を描き出します。11/25刊行の新刊『人類は絶滅を逃れられるのか――知の最前線が解き明かす「明日の世界」』からそのエッセンスを紹介します。第4回はスティーブン・ピンカーが近代における人類が爆発的進歩を遂げた10の領域について語ります。
人類の爆発的進歩リスト10
スティーブン・ピンカー 今後世界がどうなるか見極める唯一の方法は、事実とデータに基づき、いいことと悪いことの発生率を経時的にグラフに示し、その軌道がどこに向かっているか見定め、何がその軌道に影響を与えているか探ることです。それもカナダのような幸運な場所だけでなく、世界全体を見ることです。私はこの手法に基づき、人類に起きた10のいいことをリストアップしてみました。
第一に、寿命。150年前、人間の寿命は30年でしたが、今は70年で、まだ伸びそうです。
第二に、健康。ウィキペディアで天然痘と牛疫を調べてみてください。「牛疫は感染症だった」と、過去形で書かれているはずです。つまり人類に最大級の苦痛をもたらしてきた二つの原因は、永久に撲滅されたのです。近いうちに同じことが、ポリオとギニア虫症(メジナ虫症)にもいえるようになるでしょう。鉤虫症、マラリア、フィラリア症、はしか、風疹、フランベジア(イチゴ腫)も大幅に減っています。
第三に、豊かさです。200年前、世界の人口の85%は極貧生活を送っていました。それが今は10%に低下しています。さらに国連によると、この割合は2030年までにゼロになりそうです。どの大陸でも、労働時間は短くなり、より多くの食料、衣服、電気、娯楽、旅行、電話、データ……それにビールを買えるようになりました。
第四に、平和。人間の最も破壊的な活動、すなわち大国間の戦争は廃れつつあります。
先進国間の戦争は70年、超大国間の戦争は60年間起きていません。内戦は相変わらずありますが、数は減っていますし、国家間の戦争ほどの破壊性はありません。私の襟についているこのピンは、今週初めに訪れたコロンビアで買った物です。コロンビアは西半球で最後の内戦に終止符を打とうとしています。
世界の戦争による死亡率は、ギザギザの下降線を示しています。第二次世界大戦中は10万人中300人でしたが、1950年代には22人、1970年代には9人、1980年代には5人、1990年代は1.5人、2000年代には0.2人と減っています。シリア内戦の勃発後も、2000年代のレベルに戻ったにすぎません。
第五は安全です。世界の暴力犯罪の発生率は低下しています。それも多くの場所で大幅に主な犯罪学者の間では、向こう30年間で世界の殺人発生率は現在の半分に減ると見られています。
人類は漸進し続ける
第六に、自由。逆行している国はありますが、世界の民主主義指数は史上最高です。世界の人口の60%以上がオープンな社会に住んでいます。こちらも史上最高です。
第七に、知識。1820年、基礎教育を受けている人は17%にすぎませんでしたが、現在は82%に上昇し、急速に100%に近づいています。
第八に、人権。世界的なキャンペーンが展開されてきたこともあり、児童労働、死刑、人身売買、女性に対する暴力、女性の性器切除、そして同性愛を犯罪と見なす国は大幅に減ってきました。歴史が手掛かりになるならば、こうした野蛮な慣習は、人身供犠、人肉食、赤ん坊の間引き、奴隷、異端者の火あぶり、拷問処刑、公開絞首刑、借金の形としての強制労働、決闘、ハーレム、宦官、奇形を見世物にすること、てん足、精神障害者を笑い者にすること、……それにホッケーのエンフォーサー(乱闘専門の大型プレーヤー)と同じ運命をたどるでしょう。
第九に、男女平等。世界的なデータを見ると、女性の教育水準が高まり、婚期が遅くなり、所得が増え、権力や影響力のある地位に就くことが増えていることがわかります。
最後に、知性。すべての国で、知能指数は10年で3ポイントのペースで上昇しています。
人類の未来に悲観的な人たちは「ちょっと待った。破滅的な出来事はいつ起きてもおかしくない。そうなれば、こうした進歩もストップするか、後退するんだぞ」と言うでしょう。しかし、おそらく戦争を別にすれば、これらの指標のいずれも、株式市場のようなバブル崩壊や数値の急落には見舞われないでしょう。その進歩は少しずつ積み重なってきたもので、各分野の進歩が別の分野の進歩を刺激してきました。
豊かな国ほど、環境を改善し、犯罪組織を監視し、市民を教育し、医療を提供する資金的余裕がある。教育水準が高く、女性のエンパワーメントが進んだ世界は、独裁者に支配されたり、愚かな戦争に関わりにくい。これらの進歩を後押しする技術革新は加速する一方です。現在もムーアの法則は有効であり、ゲノミクス、神経科学、人工知能、材料科学、データに基づく政策立案が急速に増えています。
では、SF小説に出てくるディストピア(ユートピアとは反対の暗黒の世界)は到来しないのか。サイボーグの暴走やナノボットの氾濫は、おおむね空想にすぎません。おそらく2000年問題のように、大騒ぎしたわりには大した問題にはならなかった「テクノパニック」と同じ運命をたどるでしょう。
それでも懸念するべき深刻な問題は二つありますが、どちらも解決可能です。まず核の第三次世界大戦や、ハリウッド映画的な核テロリズムの問題。これらが起きる「予言」はされてきましたが、世界では長崎への原爆投下以来、核兵器が使用されたことはありません。冷戦は終結し、イランを含め16ヵ国が核開発を断念し、世界の核弾頭数は80%以上減りました。
2010年には流出核と核分裂性物質の供給を禁止する国際的な合意もありました。こうした過去70年間のトレンドを、さらに数十年持続すればいいのです。すでに核兵器の段階的削減に向けたロードマップは、ロシアとアメリカを含む主要国首脳が原則的に受け入れています。
http://diamond.jp/articles/-/110586
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