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自由主義そのものを安っぽくするトランプと安倍首相
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16年11月26日 永田町徒然草
キューバ革命の指導者フィディル・カストロが死去したとの報道に接した。カストロとその盟友チェ・ゲバラは、私たちの世代に大きな影響を与えた革命家・政治家だった。学生時代私もチェ・ゲバラのように髭を伸ばしたものだが、ゲバラのようには格好良くならなかったので半年くらいで止めた(笑)。私たちがカストロやゲバラに憧れたのは、超大国アメリカのすぐ隣でその傀儡政権を倒し、アメリカと戦って国造りをしていることへの尊敬があったような気がする。
アメリカとキューバは、50年ぶりに国交を回復した。キューバはこれから大きく変わるであろう。しかし、キューバ自身は社会主義を放棄しないと言っている。キューバそしてアメリカ・キューバの関係がどうなるのか、私は注目していきたいと思っている。キューバに親近感を持つ日本人は多いので、わが国からも多くの人々が訪ずれるであろう。是非そういうところを見てきて欲しいものである。
お隣の韓国の政治情勢が深刻だ。ここまでくるとパク・クネ大統領はもう持たないであろう。いろいろな思惑があって簡単には済まないであろうが、政治的にもたないものを無理矢理もたせても政治的に意味がない。憲法上の手続きに従って、粛々かつ淡々と決着をつけることを強く期待する。パク大統領は、絶対に武力を用いて国民の反抗を抑えようとしないことが肝心だ。そうなったら元の木阿弥だ。
ところで最近のドル高と株高は、一体どういう訳なのだ。私は、経済や金融のことはよく分からないが、「トランプ氏が大統領になると何故アメリカが良くなる」とアメリカ人が考えるのか、そこがどうしても分からない。ウォール街の金融資本は、どんなことにも屁理屈を付けて、要するに儲けようとしているだけなのではないか。
アメリカの株高を追って、日本株も上昇している。それを見て、多くの人たちが「トランプ次期大統領もそんなに悪くはないのではないか」という雰囲気がわが国でも出てきている。円安になると株高になる。もうそろそろ単純な考えは、止めた方がいいのではないか。輸出企業は、円安になると儲かるかもしれないが、わが国は大の輸入国でもあるのだ。国民の生活物資は、輸入に頼るものが多い。消費者物価が上がり、また個人消費が減退する。
経済や金融のことは専門家に委ねるとして、政治的には野蛮な思想が世界中に蔓延(はびこ)るであろう。トランプ氏が選挙の時に語ったことは、彼の本音なのであろう。私には、共鳴できるものはほとんどなかった。あれは選挙に勝つための方便だった、とは到底思われない。そんな言い訳をする人間など、信用できる筈がない。
これまでアメリカという国は、経済的・軍事的な大国であっただけではない。政治的にも大国であった。冷戦時代は、自由主義陣営全体のリーダーであった。アメリカという国や社会でやってきたことは、全部とは言わないが自由主義国の模範となってきたことは沢山ある。もちろんイギリスやフランスにも模範となるものがあった。
それらの模範となる理念や制度は、品格のある知性的なものであった。トランプ氏のこれまでの言動のどこに品格と知性があるのだろうか。トランプ氏の言動に、そのようなものを私は少しも感じることはできない。自由主義が安っぽくするような気がしてならない。ドイツのメルケル首相がトランプ氏当選の際に贈った祝辞は、明らかにこれに釘を刺すものだった。
ところが、トランプ次期大統領と無理矢理会った安倍首相は、「トランプ氏と信頼関係が築けると確信した」と言明した。安倍首相の自由主義に対する考えは、トランプ氏と同じレベルなのであろう。だから信頼できる指導者と感じたのであろう。トランプ次期大統領やその取巻きと早くも懇(ねんご)ろになろうとしている政治家や評論家も同類なのであろう。
自由主義の歴史は、決して長くない。せいぜい300年位しかないのだ。自由主義自体が本当に人類を幸福にする思想なのか、300年の歴史の試練では断言できるものではない。自由主義者は、そのくらいの考えをもって事に当たる必要があると私は思っている。だから自由主義に対する深い理解と進化を怠ってはならないのだ。トランプ氏や安倍首相のような安っぽい考えに、私たちは絶対に染まってはならないのだ。
今日はこのくらいにしておこう。それでは、また。
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