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TPP漂流ならTPP関連予算即時凍結不可欠
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2016年11月24日 植草一秀の『知られざる真実』
米国の次期大統領に選出されたドナルド・トランプ氏は大統領就任当日にTPPからの離脱を表明することを改めて宣言した。
安倍首相は50万円のゴルフクラブを持参し、
「駆けつけ朝貢」
でゴルフクラブを「進貢」した。
ニューヨークの「トランプ私邸詣で」をしたその足で南米に渡航。
アルゼンチンのブエノスアイレスで、
「米国抜きのTPPは意味がない」
と発言した直後に、トランプ氏は
「大統領就任初日にTPP離脱を宣言する」
とビデオメッセージで発表した。
安倍首相の発言直後にメッセージ発表のタイミングを合わせたのだろう。
安倍首相は9月19日にニューヨークを訪問した際、クリントン氏とだけ会談して大統領選でのクリントン支持の旗幟を鮮明にした。
そのクリントン氏が落選してトランプ氏が当選したために、安倍氏は完全に顔色を失った。
慌てふためいて50万円のゴルフクラブを片手にトランプ私邸を詣でた姿を世界が冷ややかな目で眺めている。
日本の国益も尊厳も喪う、軽挙妄動である。
TPPの発効可能性は限りなくゼロに近づいた。
自民党議員のなかには「TPPは死んだ」と公言する者も現れている。
日本の国会は、この事実を厳粛に受け止めた対応を示すべきである。
しかし、これに伴って重大な問題が二つ浮上する。
第一は、TPP関連予算が宙に浮くことだ。
TPPにかこつけて、巨大利権をむさぶろうとする勢力が存在する。
安倍政権が遮二無二TPP批准案、TPP関連法の強行採決に突き進んでいる大きな理由がこの点にある。
11月23日付の中日新聞が1面トップで
「宙に浮く1兆1900億円」
と伝えた。
記事は次の内容を伝えている。
「経済産業省は、中小企業の海外進出などを後押しする組織を官民共同で設立。全国の商工会議所などで経営者らの相談に応じる。
今年6月にはメキシコにも窓口を設けた。
そのための予算は15年度補正と16年度当初で計241億円に上る。
農林水産省は15年度補正で、長野県富士見町のレタス保存用冷蔵庫や、石川県白山市のコメの乾燥施設の整備費などに補助金を出す「産地パワーアップ事業」に505億円を計上した。」
安倍首相が石川県を訪問した際には、白山市所在の農業法人を訪問した。
安倍政権支持と、安倍政権の予算編成が「癒着」の構造を生み出しているように見える。
しかし、TPPが漂流するなら、TPP関連予算は凍結するべきである。
また、国会でTPP関連法の強行制定もやめるべきだ。
第二の問題は、トランプ氏がTPPに代えて、2国間協定を積極的に活用することを示したことだ。
米国は日本とのFTAまたはEPA締結を念頭に置いている。
そもそもTPPは日本を収奪するための最終兵器だった。
しかし、その適用が、米国に弊害を与える部分もある。
だから、米国内でTPP反対の主張が強まった。
しかし、TPPが消滅しても、日本を収奪しようとする意図は厳然と残る。
トランプ氏は「アメリカファースト」のスタンスを示しているのであり、日本からの収奪を否定しているわけではない。
日本は米日FTA、米日EPAに対して最大の警戒をしなければならないのである。
国益無視で、強欲巨大資本の命令通りに行動してきた安倍首相が、今度は日米2国間交渉で強欲巨大資本の言いなりになる危険が極めて高い。
米日FTAやEPAが日本の国益を喪失するかたちで締結されるなら、TPP消滅のメリットはほとんどなくなると言ってよい。
まずは、米日二国間の協定には
ISD条項を絶対に入れてはならないことを確認しておくべきである。
また、関税の引下げ交渉において日本の国益を守らねばならぬことも当然のことだ。
米国の自動車輸入の関税は14年、あるいは29年間一切下げずに、豚肉や牛肉の関税は直ちに引き下げるなどと言う、ふざけた取り決めを結ぶことを許してよいわけがない。
TPPがご破算になり、米日FTA、EPAを検討すると言うなら、日本の国益を守る交渉をゼロベースで行う必要がある。
この点を銘記することが絶対に必要だ。
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