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安倍首相訪米 トランプ氏への土産はポスターかー(植草一秀氏)
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15th Nov 2016 市村 悦延 · @hellotomhanks
米国大統領選から1週間が経過した。
メディアが絶対本命としたクリントン氏が敗北。
メディアの集中砲火を浴び続けたトランプ氏が当選を果たした。
マスメディアはトランプ氏を落選させるミッションに失敗した腹いせに、
トランプが当選しても、なおトランプ叩きを続けている。
トランプの当選についてはさまざまな論評がある。
私は、トランプ支持の背景は
反グローバリズムのうねり
であると指摘し続けてきた。
6月23日に英国EU離脱国民投票があった。
私は、英国民がEU離脱の決断を示す可能性は十分にあると予測してきた。
そして、英国民がEU離脱の判断を示したときに、この決断の背景は
反グローバリズムのうねり
であると指摘した。
世の中でこの指摘を示したのは、恐らく私が一番早かったと思う。
マスメディアは英国民の判断を
「世紀の誤判断」
であるとして糾弾し続けた。
マスメディアの異様なトランプ叩き。
そして、英国民のEU離脱決断に対する異様な糾弾。
この異様さに、実は真相の片鱗が表れている。
基本図式は
1%対99%
である。
米国におけるクリントン対トランプの対立の図式は、
強欲巨大資本が支援するクリントン
対
強欲巨大資本の支配下にはないトランプ
というものだった。
だからこそ、メディアは徹底してトランプを叩いた。
英国民のEU離脱は、反グローバリズムを象徴する意思決定である。
強欲巨大資本はいかなる手段を用いてでも、これを潰さねばならなかった。
しかし、それに失敗した。
だからこそ、その後、英国民の判断を徹底的にこき下ろしたのである。
しかし、その後の英国はどうであろうか。
英ポンドが大幅に下落したが、このおかげで英国には外国人旅行客が殺到している。
英国は輸出価格競争力を回復して、欧州で最高水準の経済成長率を実現している。
そして、英国のFT株価指数は史上最高値を更新した。
英国民のEU離脱決断が「世紀の誤判断」であるとの指摘は現実に適合していない。
トランプ氏の言動には問題がある。
それは事実。
しかし、米国人は、この問題点を踏まえつつ、
それでもクリントンよりはトランプが良いとしてトランプを選出した。
その理由はクリントンが強欲巨大資本の支配下にある候補者であり、
99%ではなく、1%のための政治を指向しているからである。
米国民はオバマ政権に期待した。
しかし、オバマ大統領も巨大資本の支配下の大統領に過ぎなかった。
そのために、99%の利益を追求する政治を実現できなかった。
この不満をすくい上げたのがトランプ候補だった。
そして、メディアはトランプ氏の当選を阻止するために総力戦を展開したのである。
このとき、メディアの異様な、ヒステリックな対応の裏を読まなければならない。
メディアがあれほどの対応を示していたのは、米国民のトランプ支持の強さの反映だったのである。
この点に気付かぬ大多数の人々が、真実を見誤ったと言える。
当然のことながら、強欲巨大資本はトランプの懐柔に向かう。
TPPを何とか延命させるために、トランプに猛烈な働きかけが行われるだろう。
だから、私たちはトランプを厳しく監視しなければならない。
TPP離脱を確約したトランプ当選は、日本の主権者にとっての朗報であることは間違いない。
しかし、トランプ氏が裏切らない保証はない。
だから、これからのプロセスが極めて大事になる。
安倍首相は17日にトランプ氏と会談する。
9月の国連総会に出席するために訪米した際、安倍首相はクリントン氏と会談した。
安倍氏はクリントン支持の旗幟を鮮明にしたのである。
国家の安全保障上、これは大失策だった。
この批判が表面化したために、安倍首相官邸は、訪米の際に、
ジャパン・ソサエティー会長のウィルパー・ロス氏とも会談したと反論している。
確かに、ウィルパー・ロス氏はトランプ氏の経済顧問を務めているが、
クリントン氏と会談したこととはまったく意味が異なる。
安倍首相は、だからこそ、大統領選当選直後に、会談のアポを取り付けることができたと強弁している。
トランプ氏と会談したというなら話は別だが、
トランプ氏のスタッフの一人と面会することと、クリントン氏本人と会談することとはまったく意味が違うのだ。
外交においては、どのクラスの人物が会談するのかが常に問題になる。
外交上の失敗について、言い訳、弁明をしているに過ぎない。
さて、11月17日の会談であるが、安倍首相は1枚のポスターを持参してゆくのではないか。
そのポスターとは、
ウソつかない!
TPP断固反対!
ブレない!
日本を耕す!!自民党
と大書きしたポスターである。
安倍自民党は2012年12月の総選挙で、このポスターを貼り巡らせた。
そして、選挙で多数議席を獲得して第2次安倍政権を発足させた。
選挙の投票日は2012年12月16日。
そして、2013年3月15日、安倍首相は
TPP交渉への参加を決定、公表した。
「TPP断固反対!」
のポスターを貼り巡らせて、選挙から3ヵ月もたたぬうちに、
「TPP交渉への参加」を決定した。
このポスターをトランプ氏へのお土産に持参するのではないか。
そのうえで、
「国民など、どのように扱っても、何の影響もない」
とアドバイスするのではないか。
トランプ氏は10月22日に、リンカーンの演説で有名なペンシルベニア(Pennsylvania)州ゲティスバーグ(Gettysburg)で演説を行い、大統領就任当初100日間の計画について言及した。
100日間行動計画は
Donald Trump’s Contract with the American Voter
ドナルド・トランプのアメリカの有権者との契約
で、このなかの
Seven Actions to protect American workers
アメリカの労働者を守るための7つの行動
のなかの第2番目の公約として
SECOND, I will announce our withdrawal from the Trance-Pacific Partnership.
第二に、私はTPPからの離脱を宣言する。
を掲げた。
これは、上記の契約書のなかで、
On the first day of my term of office, my administration will immediately pursue the following.
私の任期初日に、私の政府は直ちに以下の事項の実現を追求する。
としたなかで掲げられたものである。
安倍晋三氏は、主権者との約束など、全面的に無視して、破棄しても、何の弊害もない、
とアドバイスするのではないか。
トランプ氏が執務初日に実行するとしている、その言葉の表現は
pursue
であり、
遂行する、の意味もあるが、同時に
追求する、追い求める
の意味もあるから、言い逃れは十分にできるとアドバイスするのではないか。
日本の主権者にとって、トランプ氏が選出された最大のメリットは、
トランプ氏がTPP離脱を明確に公約化したことにあり、
トランプ氏がTPP離脱の公約を破棄する場合には、トランプ氏勝利のメリットが消滅してしまう。
政治の世界では、ベターな選択しかできないのが通常である。
ベストな選択は見当たらないことが多い。
クリントンが選出されて最終的にTPPが発効されてしまうことと比較して、
トランプ氏が選出されてTPPが消滅することは、はるかに望ましい事態である。
トランプ氏が米国の主権者を裏切らないように、日本からもプレッシャーをかけてゆく必要がある。
主権者との公約をいとも簡単に破棄するという風習を日本から世界にまき散らすことは、日本の恥になる。
日本政府も2012年12月選挙での訴えの原点に立ち戻り、TPP離脱の意思決定を行うべきである。
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