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対トランプ外交。安倍政権が主導権を握るための交渉術を教えよう 実は、アベノミクスに興味津々!?
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/50202
2016.11.14 橋 洋一 経済学者 嘉悦大学教授 現代ビジネス
■日本の悪夢が現実に
先週の本コラム「トランプ勝利で朴槿恵辞任」(http://gendai.ismedia.jp/articles/-/50143)がどうやら実現しそうである。
ご承知の通り、トランプ氏は大統領選に勝利した。朴大統領へは、12日、退陣を求める大規模なデモが行われ、主催者発表で100万人、警察の推計で26万人が参加した。15日か16日、韓国検察が朴大統領を聴取する予定とも報道されている。
実際に辞任すると、朴大統領は逮捕される可能性もあるので、辞任しないかもしれない。しかし、支持率5%では、残り1年余の任期に完全にレームダック状態で、事実上辞任と同じ状況だ。
朴大統領の周辺では、韓流ドラマ顔負けの権力とカネを取り巻くドロドロの人間関係があり、日本でも報道されているが、朴大統領の友人である崔順実(チェ・スンシル)容疑者のさらに友人であるキム・リンダ氏が、「韓国版ロッキード事件」といわれる次期戦闘機の選定に関与していたという、新たな事件も起こった。
これは、12日の大阪朝日放送「正義のミカタ」で、コリア・レポート編集長の辺真一氏が解説してくれた。こうなってくると、もはや朴大統領も命運尽きたようだ。
他方、トランプ氏について、先週のコラムでのトランプの勝利確率は4割程度としたから、4割打者がヒットを打ったわけで、筆者はそれほど驚いていない。
もっとも、今後のために反省しておくべき点もある。筆者の予想は、選挙人538人のうち、クリントン氏272人、トランプ氏266人と予想して、これが覆る確率を4割としたわけだ。
538人の選挙人は、54州・地区から成り立っている。筆者の事前予想と実際の選挙結果の違いは、54州・地区のうち4つ、ペンシルバニア州(20)、ミシガン州(16)、ウィスコンシン州(10)、ネバタ州(6)であった(カッコ内は選挙人数)。
結果は、ペンシルバニア州、ミシガン州、ウィスコンシン州でトランプ氏が勝ち、ネバタ州でクリントン氏が勝った。クリントン氏272人対トランプ氏266人は、クリントン氏232人対トランプ氏306人となった(一部未確定な州もあるので暫定値)。
伝統的に民主党の強い州でクリントン氏が負けたのは意外だった。敗因はいろいろ語られている。トランプ氏が勝ったので、大げさに言えば、百年単位で世界をとらえる、ウォーラーステイン流の近代世界システム論に則れば、今はまさに構造変化に直面しているともいえる。
もっとも、この種の「話」は、評論家にとっては蘊蓄をひけらかすよいチャンスであるが、実際の政策には使えないものだ。言われなくても、アメリカの覇権は徐々に弱体化しており、オバマ大統領も、トランプ新大統領も、その流れに逆らえないことは分かっている。多少加速するか、そうでないか程度の話でしかない。
今のところ、外交スタッフなどは不明であるが、トランプ氏の「孤立主義」は、アメリカの覇権の衰退を多少早めることになるのだろう。
また、そうした大げさなことではなく、選挙直前に、FBI長官がクリントン氏のメール問題を再び蒸し返したことが影響しただけかもしれない。実際、クリントン氏はその恨み節を言っている。先週の本コラムでも、FBI長官発言後、クリントン氏の勝率が急速に落ちている。
筆者が引用したネイト・シルバー氏は、その時点ではクリントン氏が最後に持ち直したといったが、人の行動は慣性があるので、一度動き出すと容易には反転しない。反転しないという特性から、メール問題発言以降、クリントン氏の勝率は85%から50%台へと急落したと筆者はみている。
過去の大統領選からみても、今回は接戦だった。過去の大統領選での当選者と対抗者の投票率、選挙人獲得率をみれば、投票率より選挙人獲得率のほうが大きく、レバレッジを効かしていることがわかる。これは各州の選挙人を原則総取りするからだ。逆にいえば、死票が多い、ということになる。
今回、トランプ氏の投票数はクリントン氏より少なく、投票率は49.7%だった。その一方、選挙人獲得数は306人で、選挙人獲得率は56.9%だった。
データのある1828年の米大統領選から今回までの48回のうち、今回のトランプ氏の投票率は4番目に少なく、選挙人獲得率も8番目に少ないものだった(下図)。
■トランプ流の「ディール」を見抜く
いずれにしても、当面、日本にとってはTPPの行方が気になる。
トランプ氏は選挙中一貫してTPPに反対し続けた。その一方、同氏の周辺から、TPPそのものに反対しているのではなく、米国にとって修正すべき点があり、そのためにあえて反対を声高にいっているだけとか、多国間交渉がよくないので二国間交渉すべきとかという意見が出ている。
どちらも正しいだろう。これがトランプ流の「ディール」である。方向をぶち上げ、その後具体策に落としていく。これは現実的なやり方であるが、そのリスクは「変節した」といわれかねないことだ。
これに対して、2つの見方がある。
1つは政治的な観点から、TPPにあれほど反対したのだから、その御旗は下ろせないだろうというもの。ミシガンやウィスコンシンなどの中西部で、元来民主党の基盤を崩したトランプ氏だが、その背景には、民主党支持だった低所得階層の白人労働者が反旗を翻したためといわれている。その人たちの意見を無視できないからだ。
他方、トランプ氏はビジネスマンだったので、状況によって変幻自在であるから、君子豹変もありえる。政治経験のなさがかえって大胆な柔軟性をもたらすかもしれない。
結局、どちらになるのかは、実際に交渉し、やってみなければわからない
日本はその交渉結果について、政治的リスクをかけても国会で議決し、国家間の約束を守った。そのことを念押しした上で、トランプ氏に対して、TPPの成果を踏まえて従来とは違う、例えば日米の二国間交渉等の貿易交渉をもちかければ、日本としても決して不利な立場にならないはずだ。
次に安全保障である。
トランプ氏は、北大西洋条約機構(NATO)や国連(UN)などの国際機関への資金分担は不相応に多いとし、日本や韓国、サウジアラビアといった同盟諸国との関係についても不公平だとしている。そこで、日本に在日米軍負担の増額を要求し、できなければ撤退すると発言してきた。
まず、トランプ氏が米大統領になるのは、アメリカが日本を必ず守ってくれるという平和ボケを考え直すいい機会だ。
■自主防衛、いったいいくらかかるのか?
防衛については、いろいろな立場がある。まず、非武装中立の立場で、国連などの場で外交努力をするが自国による防衛をしないというものだ。このお花畑論議をいう人は結構多い。
防衛を行う場合、他国との共同防衛か、自主防衛かという二つの選択肢がある。日米同盟を考えると前者が現状に近い。後者は対米追随ではなく完全自主防衛であれば、いずれ核兵器の保有も視野に入れなければならなくなる。
日米同盟と自主防衛のコスト比較については、武田康裕氏と武藤功氏による『
コストを試算!日米同盟解体 国を守るのに、いくらかかるのか』(毎日新聞社)という本が参考になる。この著者らは防衛大教授だ。
その中で、日米同盟コスト1.7兆円、自主防衛コスト24〜25.5兆円と書かれている。ここで、自主防衛コストのうち20兆円程度は貿易縮小などの間接的な経済の悪影響が含まれており、これをどう見るかで意見が分かれるものの、日米同盟コストに今の防衛関係費を加えても6.7兆円であり、自主防衛コスト24〜25.5兆円より少額であるという結論は変わりないだろう。
お花畑議論を論外として、日米安保と自主防衛のどちらを選ぶかというと、コストの問題から、現実としては日米安保にならざるを得ない。自主防衛とすれば、いずれ核兵器保有まで行かざるを得ないので、日本としては選択しにくい。
トランプ氏が、各国に米軍駐留経費を全額負担せよというのであれば、日本に駐留する米軍に対するメリットを伝えた上で、日本の負担率が米国資料でも世界最高水準(75%程度)であることをいい、他の同盟国が日本並みに水準になったら、日本と交渉しろとでもいったらいい。
もし、日本が在日米軍の経費負担をしても、千数百億円程度で済むので、自主防衛コストよりはるかに小さい。トランプ氏はビジネスの交渉スタイルを踏襲するようだから、米国と「ディール」してもいいのではないか。
■実は安倍政権に興味津々!?
第三に、マクロ政策はどうだろうか。
トランプ氏は、財政政策で必ずしも緊縮でない。これも、従来の共和党とまったく違う方向だ。歳入面で、所得税減税、一部富裕層増税、法人税引き下げ、歳出面ではオバマケア一部見直し(これは歳出増)、インフラ投資と、まるで民主党の政策のようだ。
さらに、財政再建についてほとんど言及しないばかりか、債務解消公約を撤回している。なお債務管理について、中央銀行を活用しようとしていることは注目に値する。トランプ氏は、自らを「借金王」といいながら、低金利を歓迎する意向を示している。金融政策は緩和傾向だろう。
こうしたマクロ経済政策は、トランプ氏を徹底的に批判するクルーグマン教授(ノーベル経済学賞受賞者)も、一定の効果があると認めている。
このような伝統的な共和党らしからぬ積極財政、金融緩和のマクロ経済政策には、議会やFRBの協力なしではできない。そうした調整能力は不透明であるが、実現すれば、世界経済には一定の貢献をする。日本では、同じような方向のマクロ経済政策が望ましい。
こうした状況に対し、早速、安倍首相は今月17日トランプ氏と会談する予定だ。隣の韓国が朴大統領の不祥事で身動きがとれないので、対照的な素早さである。
安倍首相は、9月に訪米した際、クリントン氏と会談をしている。その際、トランプ氏とは都合がつかずに会見できなかったが、同氏の側近とは会っており、そのときのパイプが生きたようだ。なにしろ、外務省官僚はトランプ氏を泡沫候補としてまともにパイプを作ってこなかった経緯がある。
TPPの見通し、日米安全保障の動向、マクロ経済政策の3点について、トランプ氏と安倍首相は直に話して、個人的な信頼関係を作るのだろう。大きな方向で、価値観を共有するはずだ。
また、韓国情勢や12月の日ロ首脳会談にも言及するはずだ。東アジアの安定のために、日米がどのような貢献ができるか、政治家同士の話し合いが行われるはずだ。
そうなると、困るのは国内左派であろう。この典型は浜矩子・同志社大学教授だ(https://twitter.com/mainichibiz/status/797212561301192704)。
なにしろ、国内左派はTPPでアメリカの言いなりとなり、食の安全が確保できないと言っていたのに、TPP反対のトランプ氏が当選すると、トランプ氏批判をし始めた。TPP反対論者の左派は、トランプ氏の当選を歓迎しなければいけないはずなのに、何でもケチをつける癖が出てしまったようだ。
また、トランプ氏は、在日米軍の撤退も辞さないと言っているのだから、これも国内左派は歓迎すべきだろう。もっとも、米軍撤退という事態になると、集団的自衛権の否定は自主防衛ひいては核保有の流れになってしまうのだが。
いずれにしても、国内左派のように、集団的自衛権を認めないことの不条理が浮き彫りになる。在日米軍を前提として集団的自衛権を認めれば、安全保障のメリットがあるばかりか、日本側コストも抑えられるという常識が、国内左派に欠如しているのが明らかになるだろう。
また、トランプ氏は、安倍首相と会談するとき、「アベノミクスを教えてもらいたい」とも言っていると聞く。国内左派が毛嫌いするアベノミクスを、米国大統領になる人物が興味をもっているのだ。実際、アベノミクスで雇用環境は劇的に改善した。この効果は、共和党の大統領であっても、興味津々だろう。
本コラムで何回も指摘しているが、雇用を改善する政策は、世界の国では右でも左の立場でも評価できるのに、日本国内の左派はそうした国際常識もないのがバレバレだ。ここでも左派が困惑する姿が浮かぶ。
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