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コラム:
トランプ大統領、日本に与える「頭痛の種」
11月10日、来たるべきトランプ大統領の時代は、世界第3位の経済大国である日本にとって、多くの頭痛の種を生み出すことになる。写真は、トランプ氏を映すテレビ画面の手前に置かれた日米の国旗。都内のFX会社で8日撮影(2016年 ロイター/Toru Hanai)
Quentin Webb
[10日 ロイター BREAKINGVIEWS] - 日本の当局者は日本酒をちょっとひっかけた方がいいかもしれない。来たるべきトランプ大統領の時代は、世界第3位の経済大国である日本にとって、多くの頭痛の種を生み出すことになるからだ。
たとえ過度の円高を回避したとしても、保護貿易主義の台頭や経済の不確実性、アジア太平洋地域への米国のコミットメント縮小といった課題は残ったままだ。
日本の市場は、世界的イベントに対して神経質になりやすい。それゆえ、11月9日は米大統領選の結果が判明するにつれ、一時的に円が急騰し、日経平均が急落しても驚きではなかった。不確実性が高まったときには、安全資産の円が逃避買いされ、輸出関連株は直撃される。だが、現在のように米国債利回りが上昇すれば、資金はドルにまた流れ込む。投資家はおそらく、予想外のトランプ勝利を消化するのに時間が必要だったのだろう。
強すぎる自国通貨は企業利益を減少させ、輸入価格を下げることになり、さらには日銀のインフレ目標達成を困難にさせる。日銀はマイナス金利の深堀りを迫られるかもしれない。少なくとも現在そのような圧力は鳴りを潜めている。
しかしながら、安倍晋三首相は対処すべき課題の山に直面している。首相が強く支持する環太平洋連携協定(TPP)が今やほぼ死に体と化していることは大きな失望である。だが裏を返せば、問題がそれ以上に悪くなることはないということだ。
とはいえ、もしトランプ政権が関税を引き上げたり、グローバル化に対して他の措置を講じたりするのであれば、それは打撃となる。モルガン・スタンレーによると、日本の対米輸出は全体の4分の1を占める。その一方で、世界経済全体の見通しもますます暗くなっている。日本企業の経営者は一段と慎重になり、日本が抱える問題はすでに弱まっている成長力とともに根強さを増す可能性がある。
トランプ氏が日本に防衛費負担を求めていることも懸念要因だ。米軍を日本に駐留させる全費用をめぐる話はまだ扱いやすいが、この問題にはもっと広い意味が暗示されている。つまり、アジアの米同盟国は、自分自身で防衛しなければならいということだ。これは地域の安定にとって悪い予兆である。
安倍首相が推進する構造・財政改革、金融緩和政策は、かつてないほど必要とされている。ほとんどの日本人はそれに祝杯をあげるだろう。
*筆者は「Reuters Breakingviews」のコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています。
http://jp.reuters.com/article/column-trump-japan-idJPKBN1350JF?sp=true
焦点:米国でへイトスピーチ蔓延、攻撃的トランプ発言が触発か
Peter Eisler
[ココモ(インディアナ州) 7日 ロイター] - カレン・ピーターズさんは、勤労者世帯が中心の静穏な住宅街で人生の大半を過ごしてきた。こぎれいに整えられた自宅前の歩道に、黒のスプレーで書かれた文字は、筆跡こそ乱暴な走り書きだったが、侮辱のメッセージは明白だった。
「KKK ビッチ」(白人至上主義の秘密結社クー・クラックス・クラン(KKK)の略称と雌犬の意)
こうした人種的偏見に満ちた落書きは、10月半ばから、インディアナ州の小都市ココモの自動車、家屋、電柱などに出現している。ピーターズさんのような被害者の多くはアフリカ系米国人だが、そうでない人もいる。多くの人は芝生に、今週の大統領選挙で民主党を支持するプラカードを立てていた。複数の家庭のカードには悪名高き「KKK」のイニシャルが吹き付けられていた。
「これは政治的な問題だと思う。手に負えなくなりつつある」とピーターズさんは言う。大統領選挙における対立の過熱、それも特に共和党ドナルド・トランプ候補の攻撃的な移民排斥主義の論調が、過激主義者を大胆にさせているのだと彼女は考えている。
「(候補者が)無教養なことを口にしていると、たぶん他の人々もそういうことをやっても問題ないのだと考える。本当に悲しいことだ。私たちの国は逆戻りしつつあるように思う」
こうした攻撃について、警察は容疑者を特定していない。市長や地元の党職員を含む民主党関係者は、政治的な動機による犯罪だと考えている。地元の共和党関係者はこれに懐疑的で、無知なチンピラのしわざであり、共和党とは無関係であると主張する。
米国各地で、煽動的で対決色の強い政治的論調が市民どうしの会話にまで染みこんできており、有権者を分断している。
その影響を数値化することは難しい。政治的動機による犯罪や煽動的な言論を把握するような全国規模のデータは存在しないからだ。
だが、無党派のピュー・リサーチ・センターの調査によれば、政治的な敵対者を中傷することが「適切な場合もある」と考える有権者の比率は、3月には30%だったのが、10月には43%にまで上昇している。どちらの党を支持する有権者でも、他党について「非常に否定的な」見解を持っている人が過半数を超えている。これは1992年の調査開始以来、初めての結果だ。政府に対する不信感は過去最悪のレベルで推移している。
「こうした指標はグループ間の対立が高まっていることを示しており、品のない言葉のやり取りから軽度の攻撃、さらには非常に過激な行動に至るまで、あらゆる事象につながりかねない」。カリフォルニア州立大学の憎悪・過激主義研究センターのブライアン・レビン所長はそう分析する。
敵意の多くは、移民やアフリカ系米国人その他のグループ、典型的には民主党ヒラリー・クリントン候補を支持する人々に対して向けられているものの、共和党員もトゲのある言葉や敵意に直面している。
過激主義に関する議論の多くはいわゆる「オルタナ右翼(Alt-Right)」に注目している。トランプ候補の選挙運動に共感する政治的な暗部から浮上してきた、白人ナショナリスト、反ユダヤ、反移民主義者による緩やかに結びついた運動だ。
メキシコ国境に壁を築く、不法移民数百万人を強制送還する、テロとの関係がないかムスリムを厳しく取り調べるといったトランプ氏の公約は、オルタナ右翼のコミュニティを活気づけてきた。
マイケル・ヒル氏は、トランプ候補のこうした表現が、米国における白人キリスト教徒ら多数派の地位が侵食されるというオルタナ右翼の懸念を正当化したと指摘する。ヒル氏は白人至上主義者、反ユダヤ主義者、外国人嫌いを自称し、独立した「白人の国」の創設をめざす「南部ナショナリスト」グループである「南部同盟」のリーダーである。
「トランプ氏の選挙運動を取り巻く全般的な政治環境は、私たちだけでなく、他の右翼団体にとっても非常に有意義だ」とヒル氏は言う。
これに似たナショナリスト的な底流は、ロシアから日本、英国に至る他の諸国でも発生している。この夏、英国の欧州連合(EU)離脱をめぐる議論がヒートアップするなかで、EU残留派の国会議員ジョー・コックス氏が路上で銃撃を受け、刃物で刺された。トーマス・メア容疑者は、「裏切り者に死を、英国に自由を」と主張していた。
米国では、敵意にあふれる政治的な表現、破壊行為、暴力に関するニュースが定期的に報じられている。
ミシシッピ州では、黒人教会が放火され、「トランプに投票を」と落書きされた。ノースカロライナ州では共和党の郡事務所が炎上し、近所のビルには「ナチ共和党員は街を出て行け」とスプレーでペイントされていた。オハイオ州では民主党の選挙事務所に大量の肥料が投棄された。
ユタ州では中庭にトランプ候補支持のプラカードを掲示していた男性が、車に「KKK」の落書きを受けた。ウィスコンシン州では、大学フットボールの試合で、首に絞首刑の縄をかけられたバラク・オバマ氏のマスクを着用するファンが見られた。
<過激派が主流に>
トランプ氏の立場は「白人からの資産略奪にブレーキをかける」というオルタナ右翼の目標と合致していると白人ナショナリストのジャレド・テイラー氏は言う。彼が運営するウェブサイト「アメリカン・ルネッサンス」は、オルタナ右翼運動のなかで人気を博している。
だがテイラー氏によれば、メディアは「トランプ氏の信用を落とそうとして」オルタナ右翼のあいだでトランプ氏が支持されていることを誇張しているという。
トランプ氏は、政治的右翼のうち過激な部分について非難することを躊躇(ちゅうちょ)しているとして、民主党及び共和党の一部から批判されている。だが先週、KKKの代表的な機関紙がトランプ支持の記事を1面に掲げたときは、さすがにトランプ陣営も「ひどく不快な」記事であるとして、これを拒否する声明を発表した。
テイラー氏、ヒル氏その他のオルタナ右翼の関係者は、自分たちは破壊行為・暴力行為を支持・許容しないと言う。彼らは、自分たちの発言がヘイトスピーチであるという考えを否定し、彼らに対する左翼による悪口のほうがはるかにヘイトだと主張する。
合衆国憲法第一修正に見られる言論の自由に関する規定は、煽動的な言葉遣いに対しても幅広い保護を認めている。だが各州・連邦の法令は、法執行機関に対し、人種・民族・宗教・障害・性的志向に対する偏見に基づく「ヘイトクライム」を捜査・訴追する権限を与えている。
カリフォルニア州立大学の研究者らの記録によれば、昨年のヘイトクライム件数は6%増加しているが、ほとんどの少数派グループに対する攻撃という点では、基本的な変化は相対的に小さいことが分かる。だが、ムスリムに対するヘイトクライムは86%も増加している。
政治分野の研究者・実務家のなかには、今回の大統領選挙が始まるずっと前から、全般的に礼節の低下が始まっていると考える人もいる。
インディアナ州ハワード郡で共和党郡会長を務めるクレイグ・ダン氏は、少数派の過激な意見がインターネットやソーシャルメディア上で増幅され「全般的な礼節の崩壊」に拍車をかけていると語る。
地元の当局者は、自分たちのコミュニティにどのような影響が出るのかと懸念している。
地元の雰囲気は「より危険で、緊張が増している」と語るのは、ココモ市の民主党に所属するグレッグ・グッドナイト市長。落書きによる攻撃は非常にやっかいだ、と彼は言う。「この街でこんなことが起きるのは記憶にない」
自宅の庭に置いた民主党プラカードに「KKK」とスプレーで書かれたモニカ・ファウラーさん(43)は、こうした攻撃に苦しんでいる。「反対すること自体は構わない」と彼女は言う。「だが、他人を怖がらせたり、苦しめたりする行動を取ることは、考えられない」
(翻訳:エァクレーレン)
http://jp.reuters.com/article/usa-election-hatespeech-idJPKBN1350LJ
トランプ氏はワシントン変えるか、主要政策とその実現可能性
[ワシントン 9日 ロイター] - 「ワシントンを変える」を旗印に米大統領選を制した共和党のドナルド・トランプ氏は移民や通商政策の改革に向け強い意欲を示している。
ただ実現には議会の協力が必要だ。トランプ氏はそもそも議会指導部との関係が良いとは言えず、共和党主流派と思想的な食い違いも指摘されており、「蜜月」後の議会共和党との関係には不透明感が残る。
以下、トランプ氏が掲げる政策と、その実現可能性をまとめた。
<通商>
トランプ氏は選挙戦では、国際的な通商協定は米国の労働者並びに競争力を損ねた、との主張を展開した。中国に対しては「強い姿勢で」臨むと約束したほか、環太平洋連携協定(TPP)からの離脱、および北米自由貿易協定(NAFTA)の再交渉、もしくは撤廃を表明した。
トランプ氏は米大統領として、中国など外国からの輸入品への関税について、税率を引き上げる一定の権限を持つことになる。また議会が批准したとしても、トランプ氏はTPPを先延ばしすることも可能だ。
エコノミストは、こうした措置がとられた場合、米消費者にとって物価が大幅に上昇、経済にマイナスになりかねないと警告。米国の輸出にも打撃になる可能性があると見ている。
<移民>
トランプ氏は、メキシコとの国境沿いに壁を建設すると約束。不法移民を送還し、「テロに屈した」国からの移民を禁止すると表明した。
こうした政策の実行には、多額の資金が必要と見られる。トランプ氏は、壁建設のコストは80億─120億ドル、との試算を示しているが、コストが同氏の推定を大幅に上回る可能性を指摘する向きも多い。
政界では、不法移民を全員送還し、国境に壁を築くのに、少なくとも1660億ドルが必要と試算されている。議会共和党の多くは、こうした政策を支持しているが、多額のコストにはたじろぐ可能性がある。
トランプ氏は、メキシコに壁建設費用を負担させるとしているが、米大統領といえども外国に無理やり費用を出させる権限はない。
より広範囲な移民政策としては、全体の移民の数を減らし、海外からの熟練労働者の受け入れを抑制する方向に動く可能性がある。そうなれば、移民法緩和を求めてきた経済界やヒスパニックには打撃となる。
<ヘルスケア>
医療保険制度改革法(オバマケア)を撤回し、代わりにメディケイド(低所得者・障害者向け公的医療保険)の運営で各州の裁量を拡大することを主張している。州をまたいだ保険販売も容認するとしている。
トランプ氏は議会の協力を得る必要があるが、上院で法案廃止に必要な60票の賛成票を共和党が確保するのは困難とみられる。また仮に数百万人に保険を提供した法律を廃止すれば、共和党は厳しい批判を受けかねない。
ただ、オバマケアの成功を目指さない人物を担当者に起用するなど、トランプ氏には制度を弱める方法がいくつもある。
<税と歳出>
大幅な減税を約束する一方で、歳出の3分の1以上を占める医療・年金プログラムは維持する方針を示している。この組み合わせは財政赤字の急増につながる恐れがある。
インフラと国防予算を増やすが、医療と年金以外の支出は毎年1%削減することを提唱している。
これまでに税率を引き下げることや税制の抜け穴をふさぐことを目指してきた議会共和党から大きな支援が期待できる。だが、現在税制の優遇措置を受けている住宅保有者や企業などから強い抵抗を受けるだろう。
国民の支持が厚い給付プログラムを維持すると約束しているが、財政悪化を懸念する保守派議員が反発する公算が大きい。
<金融規制>
金融危機後の2010年に成立した米金融規制改革法(ドッド・フランク法)を「解体する」と約束しているが、詳細は明らかにしていない。
共和党は公約で金融機関の商業銀行業務と証券業務の兼営を禁じた1930年代のグラス・スティーガル法の復活を掲げている。トランプ氏の選挙対策本部長を務めていたポール・マナフォート氏はこれを支持する考えを示していた。
ただ、共和党議員の多くはグラス・スティーガル法の復活に反対している。
<イスラム国>
トランプ氏は過激派組織「イスラム国」(IS)との戦いに関する計画の詳細を明らかにしていないが、これまでにISを「打ち負かす」と述べている。
敵に戦略が露呈しないよう詳細は機密にする構え。
トランプ氏は大統領選に勝利した場合、来年1月20日の就任から30日以内に軍司令官に独自の計画を示すよう求めると述べていた。
シリアからの難民受け入れは拒否。代わりにシリア国内に難民のための「安全地帯」を設置し、資金は湾岸諸国に拠出させる方針。
ただオバマ大統領は、シリアでの安全地帯設置には米軍の大きな関与が必要となると指摘。長期化したイラク・アフガニスタン戦争にうんざりした国民には不人気な政策となる可能性がある。
<ロシア>
「非常に良好な」関係を築くと表明し、IS対策でロシアと協力する可能性にも言及している。
2014年にウクライナから編入されたクリミアをロシアの領土と認め、西側諸国が科した制裁の解除を検討する方針も示した。
米国の一部同盟国が防衛の義務を果たしていないとして北大西洋条約機構(NATO)を批判。7月には、ロシアがNATO加盟国を攻撃した場合、その国が義務を果たしている場合のみ防衛すると述べている。
一方NATOは、対ロシア制裁が、ウクライナで親ロシア派を支援するロシアに行動を改めさせる鍵になるとしている。またNATOは長年にわたって国際テロ対策に注力してきたと強調している。
<最高裁判所>
最高裁判事のポストは現在1つ空席となっており、トランプ氏の任期4年の間にさらに空席が出る見通し。同氏は保守派の判事を指名し、リベラル派と保守派が4人ずつできっ抗する現在の最高裁を保守派に傾けるチャンスを得る。
トランプ氏の候補者リストは、一部の保守系活動家や共和党上院議員らから評価されている。
http://jp.reuters.com/article/usa-election-trump-policies-idJPKBN13504H?sp=true
中国、EUが市場経済国として完全に認めていないことに失望
[北京 10日 ロイター] - 中国商務省の沈丹陽報道官は10日の定例会見で、欧州連合(EU)が中国の「市場経済国」としての地位を完全には認めていないことに政府は失望していると述べた。EUに対し、反ダンピング規制の緩和を求めていくものとみられる。
中国の貿易相手国とEUは、12月半ばから中国に対し、世界貿易機関(WTO)協定上の「市場経済国(MES)」と認めるかどうかを協議してきた。中国側はWTO加盟時の合意内容を根拠に、加盟から15年経つ今年12月に自動的に「市場経済国(MES)」になると主張しているが、米国は、中国の取り組みは市場経済国として認定されるには不十分との考えを示している。
こうした中、欧州委員会は9日、中国の製造業が鉄鋼などの製品を不当に低い価格で輸出しているかどうかを判断する新たな方法を提案した。
中国側はこの提案について、同国が「非市場経済国」であるとの認定を取り下げるものだとみなすとしたが、欧州委員会が「著しいゆがみ」が生じた場合の条項を盛り込んだことに失望していると述べた。この条項では、「ゆがみ」が国内価格に影響を与えた場合、捜査当局は代わりに国際基準価格を適用できると定めている。
沈報道官はEU提案について、「(中国の)『代替国』としての認定を完全に無効とするものではなく、現状をひそかに維持することを許容したに過ぎない」と述べた。さらに、新しい基準は「公正で合理的かつ、透明性を持つべきであり、新しい形で差別を行うものであってはならない」と主張した。
EUの貿易担当大臣らは新しい反ダンピング規制について、11日に協議する予定。
http://jp.reuters.com/article/eu-china-trade-idJPKBN1350BP
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