http://www.asyura2.com/16/senkyo215/msg/475.html
Tweet |
小池都知事は戦うべき「本当の敵」を間違えている このままじゃ役人に骨抜きにされて終わる
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/50125
2016.11.04 長谷川 幸洋ジャーナリスト 東京新聞・中日新聞論説副主幹 現代ビジネス
■「嘘の責任」は知事にもある
築地市場の豊洲移転問題で東京都の小池百合子知事が当時の市場長(現・副知事)ら幹部8人の懲戒処分を検討する方針を決めた。「ようやくか」という思いがする。これが都政改革のスタートになるのだろうか。
今回の処分検討は、都が11月1日に公表した第2次自己検証報告書(http://www.shijou.metro.tokyo.jp/toyosu/pdf/toyosu/siryou/pdf/team2_houkoku.pdf)を受けて決まった。その前の9月30日に都は1回目の自己検証報告書をまとめている。
なぜ今回、2回目の報告書を出したかといえば、理由は簡単だ。「だれが盛り土を止めて地下空間を設置することを決めたのか」という肝心の部分について、最初の報告書にデタラメがあったからだ。
地下空間は都からの提案だったのに、報告書は都が設置した「技術会議の提案」にすり替えて記述していた。役人が姑息な責任逃れをしたのだ。この事実が都議会の質疑で明らかになり、知事は報告書の出し直しを指示せざるを得なくなった。
嘘の責任は役人たちだけではない。知事本人も、である。
最初の報告書が出た後、知事は会見で「いつ誰がどの時点で盛り土をしないと決めたのか」という核心部分について「ピンポイントで指し示すのは難しい。流れの中で、空気の中で進んでいった」と説明していた。マスコミも知事の言葉をそのまま報じた。
私は10月14日公開コラム(http://gendai.ismedia.jp/articles/-/49946)で「そんなバカな話があるか」と批判した。そもそも報告書が「決定権者は中西市場長(当時、現・副知事)だった」と断定している。
報告書が決定権者を特定しているのに、知事が「流れの中で、空気の中で進んだ」と説明するのは、あえて報告書の内容を無視して、役人の責任をあいまいにする意図があったからではないか。そんな説明をそのまま受け入れるマスコミもマスコミだ。少しは自分の頭で考えたらどうか。
小池知事は現職副知事の責任を追及すると、役人全体を敵を回して後の仕事がやりにくくなる、と心配したのかもしれない。いずれにせよ、役人たちとのガチンコ対決を避けようとする思惑がミエミエだった。
そんな経過を経て出し直された2回目の報告書は当時、市場長だった中西充副知事はじめ8人の幹部を特定して責任を明確にした。こうなれば処分は当然である。
こうした展開は小池知事が「事実に追い詰められる形で役人たちを処分せざるを得なくなった」という事情を示している。知事は当初、あきらかに役人の責任追及に及び腰だった。だが、デタラメがバレてしまい「もはやこれまで」とバッサリ切ったのだ。
■本当に戦うべき相手を間違えていないか?
小池改革が役人に甘い姿勢は当初からにじみ出ていた。
小池都政がスタートしてまもなく書いた9月16日公開コラム(http://gendai.ismedia.jp/articles/-/49736)で指摘したように、ブレーンである上山信一特別顧問(慶応義塾大学教授)が最初の都政改革会議で都幹部たちを前に「みなさん、改革意欲が十分で…」などとおべんちゃらを言っていたほどだ。
そもそも知事が掲げた「自律改革」というキャッチフレーズにも、役人任せの姿勢が表れている。何をどう改革するかは、役人の自主性に委ねるという話である。一見もっともらしいが、それでは役人が自分に痛い話に手をつけるわけがない。
「これでは先が思いやられる」と思っていたら、たちまち馬脚を現したのが、最初の報告書と知事会見だった。そう振り返れば、今回の処分は「知事の軌道修正」ととれなくもない。だが、はたしてそれは本心からなのか。
知事がどれほど本気で改革に取り組むかは、今後の展開を見ないと、なんとも言えない。とはいえ、今回の処分で小池改革は新たな段階を迎える。役人も血を流すはめになった。彼らは甘くはない。これから当然、反撃を考えるだろう。
知事の手法は悪役を仕立てて、自分がそれと戦う劇場スタイルである。五輪組織委員会の森喜朗会長や都議会のドンと言われる内田茂都議らを悪役に仕立て、自分は正義の味方になってバッサバッサと斬りまくる。
「火事とケンカは江戸の華」と言うように、マスコミは大物同士のケンカが大好きだから、小池劇場の立ち回りを連日、報じる。観客は拍手喝采で、結果として90%近い支持率を得てきた。
だが私に言わせれば、戦う相手が違う。
本当の悪役は森会長や内田都議ではない。都の官僚、役人だ。五輪問題にしろ豊洲移転にしろ、実際に計画を立案し決めたのは森会長や内田都議なのか。そうではない。都の役人ではないか。
■役人はこんなに狡猾
そもそも「改革」とは何か。税金の無駄遣いや非効率を改めることだ。無駄遣いや非効率を生み出す根本の原因は役人たちがデタラメな仕事を繰り返し、またそれを許すような制度になっているからである。
無駄や非効率を正そうと思えば、役人や制度が内包している根幹の問題に手を付けなければ改まらない。森会長や内田都議とチャンバラをすれば、マスコミは喜ぶが、それで改革が進むわけではない。大本の制度や仕組みが変わらなければダメなのだ。
そういう観点から見ると、小池知事や上山特別顧問らの仕事ぶりは残念ながら、まだ核心に迫っているとは到底、言えない。それが証拠に天下り問題や都の関連団体の整理統合などには、まったく手が付いていないではないか。
本当に戦うべき相手である役人とは、まだ全然、戦っていないのだ。それが今回の事態で役人に立ち向かわざるをえなくなった。これで本格的に戦闘開始となるなら、新たなステージに突入する。逆に今回限りなら、改革にはクエスチョンマークがつく。
主役の1人である上山特別顧問は大阪市の改革で名を挙げたと言われるが、本当にそうか。私は橋下徹市長時代に大阪市職員の天下りを審査する人事監察委員会の部会長を務めたが、天下りや制度改革問題について上山氏の活躍を耳にしたことは、ただの一度もない。
大阪市の天下りを制限する職員基本条例の改正を設計した当事者に聞いてみると「上山さんがやったのは職員への背広支給を止めさせるとか、細かい経費節減のような話だけ。根幹を改める制度系の仕事はしてませんね」と言っていた。
それはそうだろう。そもそもコンサルタントは制度の根幹には手をつけずに、表面に見える無駄を、敵を作らないようにしてきれいに削るのが仕事である。根幹に手を付けて、本当に役人の仕事を減らしてしまったら、嫌われて二度と注文がこなくなる。
制度を作るのは役人の仕事だ。そこに外部から来たコンサルタントが手を突っ込むのを許すわけがない。当たり前である。逆に言えば、そういう手心の塩梅が分からなければ、コンサルタントととして生きていけない。
知事や特別顧問たちからは「いや、それはこれから取り組むのだ」という返事が返ってくるかもしれない。そうだとすれば、大いに期待したい。ただ、それには知事が議会で多数派を形成する必要がある。
■早くも正念場
残念ながら、いまの都議会の小池与党は127人中の3人しかいない。
それが分かっているから、知事は「希望の塾」を発足させ、来年6月の都議選に備えている。小池新党を作って戦うかどうか、知事は明言を避けているが、私は新党で戦わなければ、小池改革はあっという間に失速するとみる。
なぜかといえば、改革の中身である予算や条例を可決成立させるのは議会であるからだ。予算や条例を成立させられなければ、何もできないのと同じである。それは大阪改革の経験でもあきらかだ。
与党化に期待して自民党や公明党にすり寄る手もある。だが、そうすれば足元を見られて改革を骨抜きにされるのがオチだろう。といって新党で戦っても、過半数を取るのは至難の技だ。結局、小池改革には期待したいが、先行きは厳しいと言わざるをえない。
五輪問題では、焦点のボート会場について都の案として宮城県の長沼ボート場のほか、海の森水上競技場の見直し2案を含めた3案を提示した。長沼案に入れ込んでいた姿勢と比べれば、軌道修正した感じがある。元の鞘に収まっても容認する気配が濃厚だ。
最終的に長沼案が採用されず海の森で決着となると、長沼案を提案しただけでなく、自ら「小池知事と宮城県の村井嘉浩知事の会談をアレンジした」(http://agora-web.jp/archives/2022108.html)と認めている上山氏の政治責任も生じるだろう。
紙の提案だけならともかく、知事同士のトップ会談まで設営したとなると、政治プロセスに足を踏み入れた形になる。知事が信頼するコンサルタントが政治活動をしても、べつに問題はない。ただし、結果責任はついて回る。それが「政治」である。
役人ではなく、都民が選んだ政治家でもない、単なるコンサルタントの「特別顧問」が動かす都政改革を有権者がどう評価するか。小池改革は早くも正念場を迎えている。
投稿コメント全ログ コメント即時配信 スレ建て依頼 削除コメント確認方法
▲上へ ★阿修羅♪ > 政治・選挙・NHK215掲示板 次へ 前へ
スパムメールの中から見つけ出すためにメールのタイトルには必ず「阿修羅さんへ」と記述してください。
すべてのページの引用、転載、リンクを許可します。確認メールは不要です。引用元リンクを表示してください。