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小選挙区制の功罪
(上)二大政党制 理想は遠く 安倍1強と続く「多弱」
1996年に小選挙区比例代表並立制で衆院選が投開票されてから、20日で20年がたった。「政権交代可能な二大政党制」を目指した制度は、過去7回の選挙で2回の政権交代を実現させた。だが選挙区で1人しか勝者を出さない小選挙区制は、第1党が圧勝しやすい制度でもある。政治にどんな影響があったのか。
民意の増幅効果
「次期衆院選は130〜150人程度の確保が現実的な目標だ」。民進党幹部は語る。前身の旧民主党が野党に転落して4年弱が過ぎ、民進党は衆院96議席と3桁に届かない。野党第1党ながら定数475の過半数を目指せない現状は、二大政党の一翼を担う存在とは言いにくい。なぜこうなってしまったのか。
小選挙区制は相手候補より一票でも多ければ勝ちだ。大政党に有利とされ、有権者の期待を担う政党が出たら圧倒的に議席を伸ばせる。14年の衆院選の小選挙区で自民党の得票率は48%だったのに対し、議席占有率は76%。得票率23%の旧民主党は同13%。民意の増幅効果が大きく、議席につながらない死票も増えるが政権交代は起こりやすい。
だが期待を裏切った場合の回復が難しいのも特徴とされる。ベテラン議員は「政権選択と言うよりも政権の否定の選挙」と説く。民主党政権で外相などを務めた前原誠司氏は「未熟だった政権運営への不信感がなお拭えていない」と語る。
岡田克也前代表は、地方議員などの組織力を整えられない野党の怠惰を自戒する。「4〜5年で(組織を)作り上げないと、目指したことができないとなりかねない」と懸念する。
いまは二大政党制というより1強多弱だ。小林良彰・慶応大教授は「比例代表制は少数政党が多く残る。小選挙区制が二大政党をもたらすというのは神話」と話す。日本は、有権者の多様な意見の反映を求める声を重視し、比例代表との並立制を選んだためだ。
並立制では自民党が公明党と組むように、民進党も他党との連携が選択肢に入る。共産党と野党共闘を進めるのはこうした狙いだ。
首相に権力集中
1強の自民党はうまく現行制度を活用している。小選挙区制は公認権をもつ執行部の重みが増し、首相に権力が集中する。官邸機能の強化も支えに、小泉純一郎首相は官邸主導を確立した。05年郵政選挙では公認権を行使し、党内反対派に刺客を送り込み圧勝した。
「壁にあたれば国民に信を問い、勝って推し進める方法を突き詰めた」。小泉首相を政調会長などで支えた中川秀直氏は述懐する。
安倍晋三首相も同じ路線だ。自ら経済政策「アベノミクス」をけん引し、海外首脳からは「強い政権」との評を得て外交にも強みを見せる。それがいま選挙での議席につながっている。
牧原出・東大教授は「国民は永久に自民党政権が続くとは思っていない。自民党も緊張感は持っている」と語る。一方で「官邸にあまりに配慮して党が主張しなさ過ぎ」(閣僚経験者)との指摘もある。官邸主導が行き過ぎればしっぺ返しを食らう可能性もはらむ。
[日経新聞10月21日朝刊P.4]
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(下)「現制度で初当選」8割 増える若手「資質」懸念も
「中選挙区時代より集金力は1桁以上減った」。自民党岸田派(宏池会)関係者は打ち明ける。政治資金収支報告書によると、同派の収入(2014年分)は繰り越し分を除き約2億円。最大派閥の細田派(清和研)も同水準だ。小選挙区比例代表並立制導入から20年、派閥支配は弱まった。
派閥政治を脱す
1つの選挙区で複数が当選する中選挙区時代、自民党では同じ選挙区内で各派が勢力争いを繰り広げた。資金力のある派閥に議員が集まるため、各派は資金集めに奔走。リクルート事件などで政治不信を招いた。
こうした状況を変えようとしたのが1990年代の政治改革だった。94年、企業・団体からの献金を政党などに絞る関連法が成立。党が資金面で主導権を握った。小選挙区で誰を立てるかの公認権とあわせ、ヒトとカネの権限がそろって派閥から執行部に移った。
いまも政治とカネの問題はあるが「金権政治が言われた時代より相当に小規模で限定的」(中北浩爾・一橋大大学院教授)という。
議員はどう変わったのか。1人しか当選しない小選挙区では、多数派の支持は中選挙区制より決定的だ。自民党は公募で「一般受け」がする候補を増やしたが、地元をまめに回る活動に慣れず「国民の代弁者とはほど遠い議員もいる」(ベテラン議員)という。
自民、旧民主両党が交互に第1党になった05、09、12年の衆院選は、地元組織が弱い両党の若手が大量に当落を経験する「振り子現象」もあった。党や党首、そのときの「風」を頼む選挙になじんだ議員は多い。
党員集まらず
「党員集めに苦しんでいる」。19日、自民党の「選挙塾」で悲鳴があがった。呼び出された当選1〜2回議員34人のうち30人は公募選出だ。同党の当選1〜2回議員の大半は圧勝した12、14年衆院選で誕生。政治経験が乏しい1〜2回の割合は小選挙区制導入時から9ポイント増え、4割を超えた。
育休取得の主張で注目を集めながら不倫問題で辞職した宮崎謙介前議員は12年初当選だ。圧勝時は、選挙区で負けて比例で復活する議員や、比例名簿の下位当選も増える。政治アナリストの伊藤惇夫氏は「レベルの低い人が議員になる場合がある」と指摘する。
党三役経験者は「中選挙区時代は党内に緊張感があった」と語る。首相に苦言を呈す長老議員もいた。だが14年衆院選では、消費増税延期や衆院解散に疑義を示した党税制調査会長の野田毅氏に「官邸が公認を与えない」との噂が党内に流れた。「いまは物言えば唇寒しだ」(現職閣僚)と嘆く声は多い。
小選挙区制導入後に初当選した衆院議員はいまや約8割。衆院選挙制度調査会は今年1月、現行の選挙制度について「多くの政党に理念は共有されており、国民世論でも抜本的改革を望む声が大きいとは言えない」と指摘した。1票の格差などの是正は不可欠だが、小選挙区制自体は定着している。20年を超え、さらに長くつきあう制度だ。その質の向上は、議員を選ぶ有権者の責任でもある。
[日経新聞10月22日朝刊P.4]
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