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出張ドタキャン、珍答弁連発…稲田防衛大臣の言動がどうにも不可解だ 防衛官僚もピリピリムード…
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/50038
2016.10.26 半田 滋 現代ビジネス
「涙の答弁」だけではない。相次ぐ重要案件のドタキャン、間違った答弁を連発…。稲田朋美防衛相の言動が、どうにも不可解だ。官僚たちも「腫れ物に触る」ように、彼女と接しているという。
はたして、大臣としての自覚と資格があるのだろうか。過去30人以上の防衛相(長官)を取材してきた半田滋氏が、その実態をレポートする。
■「涙の答弁」の真相
「初の女性首相候補」の鳴り物入りで国防の要職に就いた稲田朋美防衛相。就任して初めての国会論戦となった衆院予算委員会で、終戦記念日の8月15日に行われた全国戦没者追悼式を欠席したことを民進党の辻元清美氏に追及され、涙ぐんだ。
公式の場で涙を見せること自体、首相候補以前に政治家の資質として疑問符がつくが、奇妙な行動は涙だけではなかった。
式典を欠席したことについて、辻元氏は「あなたは『自国のために命を捧げた方に感謝の心をあらわすことができない国家であっては防衛は成り立たない』といっている」「欠席は言行不一致ではないか」と指摘すると、稲田氏は「大変、残念だったと思う」と言葉を詰まらせ、そして涙ぐんだ。
8月15日、稲田氏は自衛隊がソマリア沖海賊対処の「拠点」を置くアフリカのジブチにいた。それは唐突な出張だった。直前の12日、持ち回り閣議で決済され、翌13日に慌ただしく出発している。早くからジブチ行きが計画されていたとすれば、8日に開かれた閣議で決まっていたはずである。
帰国は16日。ジブチのホテルに泊まったのは一日だけで、あとは途中泊、機内泊という一泊四日のドタバタぶり。国会日程もないのにこの慌てようはない。
急だったことは日本からジブチまでの経路を見てもわかる。成田−シンガポール−ドーハ(カタール)−ジブチと中東を経由したが、通常ならハブ空港であるアフリカのアジスアベバ(エチオピア)経由など別の便を選ぶ。シンガポールでの乗り継ぎに10時間もあったのでホテルで泊まり、ドーハでは6時間のトランジットを余儀なくされ、ジブチのホテルにチェックインしたのは視察日当日の15日午前1時過ぎだった。
変則的なルートになったのは日本のお盆にあたり、アジスアベバ便や他のハブ空港のナイロビ(ケニア)便、ドバイ(アラブ首長国連邦)便が満席になるなど特別な事情があったためだろう。余裕をもって計画していたならば、このような行程にはまずならない。
稲田氏は国会議員になって以来、毎年、終戦記念日に靖国神社への参拝を欠かしたことがない。仮に今年、防衛相として参拝したとすれば中国、韓国との関係は決定的に悪化したはずだ。しかし、避けたら避けたで参拝を求める国内の支持層からの批判を浴びただろう。
防衛省幹部は「ジブチ訪問は大臣本人の希望。終戦記念日に重なったのは偶然だと思う」と解説するものの、国内外で浮上しかねない問題を回避するため、首相官邸の判断で体よく日本から追い出したとの見方が有力視される。
本人の意思によるジブチ訪問であれば、追悼式欠席は「承知の上」となり、指摘されて涙ぐむのは不自然に過ぎる。見方を変えれば追悼式に出るという閣僚としての職務を放棄させ、稲田氏が体面を失っても構わないという決断は首相官邸にしかできない。
だとすれば、安倍政権にとって稲田氏は「軽量」ということになる。女性閣僚として抜擢したように見せかけてその実、女性活躍社会を掲げる安倍晋三首相にとって都合のよい広告塔のひとつに過ぎないのかもしれない。
そんな稲田氏の不可解な行動が、翌9月になって連続して起きた。
■二つの「ドタキャン」
9月12日、陸海空自衛隊の将官約180人が一堂に会する、年に一度の高級幹部会同が防衛省で開かれた。
稲田氏は安倍首相に続いて訓示したが、その日の夕方官邸で開かれた首相主催の将官らとの懇親会には欠席し、代わりに若宮健嗣防衛副大臣が出席した。理由は不明だが、自衛隊の高級幹部が集う公式行事に防衛相が欠席したのは極めて異例だ。
続いて稲田氏は重要な二つの出張をドタキャンしている。ひとつは沖縄訪問だ。9月10、11の両日、辺野古新基地建設に反対する翁長雄志沖縄県知事ら地元首長との会談が予定されていた。
ところが、訪問前日の9日夕になって同行を予定していた報道陣に沖縄行きの中止が伝えられた。この朝、北朝鮮は今年二度目の核実験に踏み切ったが、同日午前、国家安全保障会議が開かれ、北京「大使館」ルートで厳重抗議をすることで日本政府としての対応はほぼ終わっている。
那覇へ出発するはずだった10日、稲田氏は韓国の韓民求国防長官と約15分、電話会談したが、午前9時には終わった。この時点で防衛省から羽田空港に向かっていれば、予約していた午前10時40分発の飛行機に余裕を持って乗れたはずだ。
このあと稲田氏は午後0時40分に官邸近くのホテルで昼食中の安倍首相と会っているが、首相は午後1時17分には渋谷の美容室に着いている。面会の時間は、わずか20分程度。沖縄行きをキャンセルするほどの用件があったとは考えにくい。
防衛相として、基地問題が山積する沖縄を訪問しないわけにはいかない。結局、沖縄訪問は9月24日に仕切り直され、翁長氏らとの会談も二週間遅れで行われた。
ただ、反対運動が続く辺野古新基地、東村高江のヘリパット建設現場とも自衛隊のヘリコプターで上空から眺めただけ。歓迎されない沖縄へは行きたくなかったのでは、との憶測が記者の間に広がった。
もうひとつのドタキャンは国連平和維持活動(PKO)として自衛隊を派遣している南スーダンへの訪問だ。9月15日に訪米した稲田氏は、その足で現地へ飛ぶ日程だったが、これも訪問前日の16日夕になって中止が伝えられた。防衛省は「服用している抗マラリア薬の副作用でアレルギー症状が出たため」と発表した。
稲田氏は薬効に合わせて一週間前に飲んだとみられ、防衛省幹部は「体調が悪そうだった」とかばうが、米国の水がよほど合っているのか、ワシントンDCではカーター国防長官と会ったほか、アーミテージ元国務副長官、IMFのラガルド専務理事と予定通り会談し、米戦略国際問題研究所(CSIS)で講演までこなした。
アーミテージ氏とラガルド氏は、稲田氏が自民党政調会長だった昨年9月の訪米で面会した相手であり、そのときもCSISで講演している。つまり、ここでは二年連続の講演をしたことになる。何のことはない。カーター氏との会談を除けば、防衛省の公務とは直接、関係のない旧交を温める旅であり、有力者に自らを売り込む狙いだったことがうかがえる。
■優先順位を間違えている
一方、南スーダン訪問は、7月に自衛隊のいる首都ジュバで武力衝突が発生し、治安情勢の悪化が懸念される中、安全保障関連法にもとづく「駆け付け警護」「宿営地の共同防衛」という新任務を与えるか判断材料を集めるための重要な視察だった。いつでも行ける米国をキャンセルしてでも向かうべきであり、明らかに優先順位が違う。
案の定、南スーダンへ行かないわけにはいかず、こちらも仕切り直して10月8日に訪問した。しかし、滞在はジュバのみでわずか7時間。会談が多かったうえ、武力衝突が起きた現場を避けて通り、表面的な視察に終始したが、会見で「ジュバは落ち着いている」と宣言した。
気温50度という酷暑の中、防虫服の上に防衛相の「五つ星」ワッペンを張ったカーキ色のジャンパーをはおり、白っぽいパンツに短ブーツという出で立ち。抗マラリア薬は飲まなかったというが、気配りすべきはファッションや虫よけより隊員の安全だろうに。
奇妙な出来事はまだある。9月13日、稲田氏は記者会見で、この日、高江のヘリパッド建設工事に自衛隊の大型ヘリコプターを投入した自衛隊法上の根拠を問われ、回答に詰まった。
すると陪席した秘書官らに防衛実務小六法を渡すよう求め、慌てた武田博史報道官が待機していた職員から受け取って手渡すと、稲田氏は会見中にもかかわらず、読み始めて約30秒間沈黙。この様子はテレビで報道され、ネットには「稲田氏側近に激怒」「ブチ切れ」などと二次加工された記事が並んでいる。
翌14日、稲田氏は参院外交防衛委員会で、国会議員バッジをつけずに答弁に臨み、元自衛官で「ヒゲの隊長」こと佐藤正久委員長から「国民の代表としてバッジをもらっている。その重みを受け止め対応してもらいたい」と注意される一幕もあった。
国民の代表としての自覚を持ってもらわなければ困るのは当然としても、稲田氏は防衛相として必要な基礎知識を持ち合わせているだろうか。そう疑いたくなるほど間違い答弁を連発している。
■大臣の資質、以前の問題?
まず10月4日の参院予算委員会で「(尖閣諸島周辺の接続水域に)中国の戦艦が入ってきた」と答弁したが、中国は「戦艦」を持っていない。質問した民進党の後藤祐一氏から「防衛省発表では『艦艇』『艦船』となっている。言葉の選び方を慎重に」とたしなめられる始末。
続く5日には同じ委員会で民進党の蓮舫氏から追及を受けて「中国漁船」を「中国公船」、「防衛費」を「軍事費」と言い間違えた。
この日、稲田氏は沖縄の尖閣諸島沖で2010年、中国漁船が海上保安庁の巡視船に衝突した事件について聞かれ、「尖閣で『中国公船』が衝突して大混乱になった」と事実を誤認して説明。
続いて過去の雑誌で「軍事費を増やすべきだ」という旨の発言をしていたことについて釈明した際は、「財源のない子ども手当を付けるぐらいであれば『軍事費』を増やすべきではないかと申し上げた」と述べた。
自衛隊は憲法上、軍隊ではないため、政府は防衛費と呼ぶが、自民党憲法改正草案には「国防軍」の保有が明記してある。稲田氏の気分は早くも「軍隊」なのかもしれない。
そして6日の同じ委員会では、資金管理団体「ともみ組」が同じ筆跡で書かれた領収書を三年間で約260枚、約520万円分を総務省に提出していたことが判明した。同じ問題が明らかになった菅義偉官房長官とともに、パーティーで主催者側が一人ずつ金額を確認すれば対応に時間がかかることを理由にあげ、稲田氏は「主催者のいわば『委託』を受けて正確に書き込んだ。何ら問題ない」などと答弁した。
稲田氏は個人事業主でもある弁護士だ。税額の確定申告は手慣れていることだろう。国税当局に同じ筆跡で書かれた領収書をまとめて提出し、「委託を受けているから問題ない」と説明して通ると考えているのだろうか。
もはや大臣の資質以前に国会議員として、いや社会人としての常識を疑わざるを得ないところまできているのではないか。
稲田氏が防衛省の大臣室の机に常に防衛実務小六法を置き、外出する際は秘書官に持ち歩かせているのは公然の秘密とされている。
省内では「国会答弁に備えているのか、ご自身の疑問を解消したいからなのかは分かりませんが、報告を受ける案件は、関係する法令をすべて書き出すよう求めます。いかにも法律のプロ、弁護士らしい」(幹部)との評があるが、細部にこだわり過ぎるとの厭味が含まれていないだろうか。言葉の裏に「大臣は大局を理解していない」との批判がにじむ。
筆者はこれまで30人以上の防衛相(長官)を取材してきたが、稲田氏ほど防衛官僚たちが腫れ物に触るように接した例を知らない。周囲をピリピリさせる独特のオーラをまき散らしているのだ。安倍首相の「お気に入り」だからかもしれない。
稲田氏自身にも安全保障問題について「しろうと」の自覚はあるようで、部隊視察をひんぱんに繰り返し、自衛隊のことを早く知ろうと努力しているのはわかる。だが、沖縄で地元住民たちと膝詰めで話した先輩防衛相のように、「国民の意見」を知ろうとする様子は見られない。「上から目線」とされる安倍首相を真似ているのだろうか。
11月末の臨時国会が終わるころには、「初の女性首相候補」などの戯れ言は聞かれなくなるに違いない。
- 戦争板リンク:南スーダン「自衛隊が有意義な活動できる状況」 稲田氏(現場を知らないベソかき大臣!?) 戦争とはこういう物 2016/10/26 10:10:05
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