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最終案入手、金融行政方針に見る金融庁の本気度
ニュースを斬る
「企業にカネを貸せない理由」を突き崩す
2016年10月20日(木)
杉原 淳一
金融庁は21日にも金融行政方針を公表する。日経ビジネスが入手した最終案を読み解くと、銀行の“貸せない理由”を突き崩そうとする金融庁の狙いが見えてくる。
金融庁は2016年版の「金融行政方針」を21日にも公表する。同方針は、これから1年間、金融庁が金融機関に対して何を求め、具体的にどんな手法でそれを実現していくのかを示すものだ。
日経ビジネスは公表前にその最終案を入手した。案を読み解いていくと、銀行が主張してきた“企業にお金を貸せない理由”を突き崩そうとする狙いが見えてくる。
「金融環境は急激に変化しており、横並びの量的な拡大競争に集中するビジネスモデルは限界に近づいている」――。金融行政方針を紐解くと、金融庁の危機感や問題意識を示す表現が大量に盛り込まれている。
銀行は1980年代後半から1990年代前半のバブル期に不動産への杜撰(ずさん)な融資を膨らませ、これを是正する手段として金融行政は厳罰化の方向に進んだ。金融危機を乗り切る上では効果を発揮したが、厳罰行政が長く続いた結果、「借り手の事業内容ではなく、担保・保証があるかといった形式を必要以上に重視する」、「過去の結果であるバランスシートばかりを議論して、将来の経営の持続可能性を見ない」などの問題が生じていると、金融行政方針は指摘する。
バブル崩壊以降、銀行はリスクを極力避けるようになった。金融庁が指摘するように、担保・保証で焦げ付きのリスクを必要以上に抑える一方で、大企業や一部の優良中小企業には競うように低金利を提示する構図となっている。
不幸な現状を「日本型金融排除」と表現
その結果、銀行は「そもそも融資できる企業が少なく、厳しい金利競争を強いられている」と“貸せない理由”を主張し、一方で中小企業やベンチャー企業からすると「結局は担保か保証が無ければ、お金を借りられない」ということになる。そして「超低金利で簡単に借りられる企業」と「ほとんど借りられない企業」の二極化が進んできた。
こうした不幸な現状はこれまでも指摘されてきたが、今回、金融庁はそれを「日本型金融排除」という言葉で明確に定義した。金融行政方針では「十分な担保・保証のある先や高い信用力のある先以外に対する金融機関の取り組みが十分でないために、企業価値の向上が実現できず、金融機関自身もビジネスチャンスを逃している状況」と表現している。
実態を把握するため、金融庁は銀行が担保や保証に依存した融資をしていないか聞き取りをする。資金を融通するだけでなく、しっかりと企業をコンサルティングして価値向上につなげているのかという点に加え、銀行自体のガバナンス体制や支店のノルマ設定などもチェックする。さらに融資を受ける企業側にも聞き取りを進め、銀行側が挙げる「融資できる企業が少ない」という理由が本当かどうかを検証していく。
優れた銀行は金融庁が「表彰」
今回の金融行政方針のポイントの1つが、表彰制度の導入だ。「金融機関の事業性評価に基づく融資などの組織的・継続的な取り組みについて、優良な金融機関を公表・表彰する」としている。
企業が銀行を選ぶ際に、「他の銀行とどう違うのか」という点が見えづらい。金融庁は9月、金融機関が地元にどれくらい貢献しているのかなどを客観的に測る新たな指標(ベンチマーク)を公表した。創業に関与した件数や地元中小企業に無担保融資している割合など55項目の中から、金融機関が自ら目指すモデルに応じて指標を選ぶ仕組みだ。表彰制度と合せて、融資を受ける企業側が金融機関を比較した上で、主体的に選べるようにする狙いがある。
リスク管理の面では、マイナス金利導入の影響で、地方銀行や信用金庫などが外貨建て資産や長期債、アパートローンを含む不動産向け融資を増加させていると指摘。そのリスク管理を適切に行っているのかチェックすると打ち出した。
金融庁は銀行の存在意義を問うている
「ビジネスモデルの持続可能性に大きな課題が認められる金融機関」に課題解決を促す方針も盛り込んだ。「明らかに収益性の低い第二地方銀行を狙い撃ちにしている」(関係者)との指摘もある。
ただ、金融庁は単純な再編を促しているわけではないようだ。銀行が合併して一時的に経営体力をかさ上げしたとしても、持続的なビジネスモデルが確立していなければ、それは一時しのぎにしかならない。いずれまた、縮小する市場に追い立てられて再編し続ける羽目に陥るだけだ。
金融行政方針に通底しているのは、金融庁が「銀行自らの創意工夫によって、将来も持続できるビジネスモデルを築く」よう促しているという点だ。ただ、それはルールだけを厳守することに慣れきった銀行にとっては高いハードルとなる。厳罰行政から大きく方向転換した金融庁だが、銀行の存在意義そのものを問う視線は厳しさを増している。
このコラムについて
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日々、生み出される膨大なニュース。その本質と意味するところは何か。そこから何を学び取るべきなのか――。本コラムでは、日経ビジネス編集部が選んだ注目のニュースを、その道のプロフェッショナルである執筆陣が独自の視点で鋭く解説。ニュースの裏側に潜む意外な事実、一歩踏み込んだ読み筋を引き出します。
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