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(回答先: 日本会議の実力(上) 「草の根保守」改憲に存在感 投稿者 あっしら 日時 2016 年 10 月 18 日 17:23:54)
[永田町インサイド]日本会議の実力
(下) 政界への影響力に限界も
保守系団体「日本会議」はどこまで国会議員に影響力を持つのか。関連の議員連盟から政策決定プロセスへの波及を探る。
日本会議は自民党や民進党などの保守系議員に憲法改正や靖国神社への参拝、日本らしい教育制度のあり方を提言している。理念に共鳴する議員をひきつける。日ごろの活動では保守系議員への支持を訴え、議員らの活動を下支えする。こうして影響力を保つ。
「私の政治家としての一歩も、この集会から始まった」。日本会議などが毎年8月15日に靖国神社参道で開く戦没者追悼中央国民集会。昨年、自民党政調会長として集会に出席した稲田朋美防衛相はあいさつでこう振り返った。稲田氏はまだ弁護士だった2005年、同集会で声明文を読み上げた後、山谷えり子参院議員に連れられ、当時、党幹事長代理だった安倍晋三首相と面会。衆院選への出馬を要請された。
今年の集会には、第2次安倍内閣で総務相を務めた新藤義孝衆院議員が出席し、日本会議の活動への支持を呼びかけた。稲田、新藤両氏とも日本会議と連携する超党派の議員連盟「日本会議国会議員懇談会」の主要メンバーだ。
参加は「名簿だけ」
議連の総会は年に1回開く。今年3月に国会内で開いた総会には30人超の国会議員が出席し、憲法改正の国民投票実現に向けた運動方針などを決めた。
日本会議が安倍政権の政策を左右しているとの観測の根拠の一つは、現役閣僚の多くがこの議連に属していることだ。議連側は最新の名簿を明らかにしていないが、議連関係者によると、安倍首相と、19人の現役閣僚のうち15閣僚が議連に属しているという。
ただ複数の閣僚の事務所が「議連の会合に出席したことがない」と回答。別の閣僚の事務所は「議連に属している自覚はない」と答えた。実際、議連所属の国会議員は約290人だが、勉強会に出席するなど実際に活発に活動するのは「インナー」と呼ばれる一部幹部の保守系議員らだけだ。
選挙への影響力はどうか。日本会議の影響力の源泉は、様々な保守勢力の「結節点」(日本会議関係者)となり、保守勢力をひとまとまりの運動体に仕立てている点にある。
神社本庁など神社界を母体とする「神道政治連盟」など宗教票を持つ団体と連携することで影響力を維持。現在は憲法改正に向けた1000万人署名運動を展開し、動員力を誇示する。
ただ、日本会議自体の会員数は約3万8000人。自民党を支持する日本医師会の政治団体「日本医師連盟」が選挙のたびに20万人規模の票を出すのに比べ、組織力は圧倒的に小さく、自分たちで組織内候補を立候補させられる状況にはない。活動資金も会費収入が中心で、保守系議員に政治献金をする余力はない。
自民党の二階俊博幹事長は14日の記者会見で、日本会議の活動について聞かれると「活発にやっていただければ結構だ」と述べるにとどめた。
「日本会議もあれぐらいの組織力を持っていればずいぶんと助かるのだが……」。首相周辺は昨年、国会周辺で左派勢力による安全保障法反対を巡るデモの様子をながめ、こう漏らした。
先の大戦への「反省」や周辺国への「おわび」を盛り込んだ昨年の戦後70年談話は、日本会議内で安倍首相への不信感を湧かせた。ただ、ある首相側近は日本会議を「安倍政権を応援する勝手連」と表現。安倍政権は日本会議と決して一枚岩ではないと突き放した。
日本会議の今後の課題の一つは、安倍政権が現実路線にシフトするなか、世間の注目を集めつつある保守系国民運動の勢いをどう維持するかだ。
カギとなるのは憲法改正への働きかけだ。日本会議が支持する安倍首相を巡っては、党総裁の任期延長論が浮上している。安倍政権が長続きするほど日本会議にも良いと思いきや、事はそう簡単ではないらしい。
日本会議の政策を決める政策委員の一人は「むしろ、任期が延びるから改憲を急ぐ必要はないという雰囲気になりつつあることを懸念している」と指摘。日本会議が呼びかける改憲への国民運動の勢いが鈍りかねないと危惧する。
日本会議の活動が一般国民の共感を得るまで広がっていないのも大きな課題だ。日本会議に理解を示す保守系論客の金美齢氏でさえ「日本会議のイベントに出る出席者はいつも同じ面々ばかり」と運動の広がりのなさを嘆く。
生前退位が火種
ここに来て、日本会議の最大の求心力となっている天皇陛下からも新たな難題が突きつけられた。生前退位の意向を示されたことに、日本会議内では象徴天皇制のあり方を根本から変えかねないと動揺が続く。表向きは「天皇陛下のご意向なら実現するほかない」との方針だが、内部で反発も根強い。日本会議にとって火種になりかねない。
近年インターネットを通じて若者を中心に日本会議への入会者数が増えているが、無党派層の保守化によって現在の日本会議への関心が支えられている面は否めない。今後、無党派層の趣向が変われば、影響力を失う可能性もある。
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地方での勢力は…議連に1800人 青年会議所とも連携
日本会議の地方での影響力はどれほどか。全47都道府県に本部を持ち、その下に240超の支部も持つ地方ネットワークは、2007年に発足した「日本会議地方議員連盟」に属する全国約1800人の地方議会議員と連携して活動する。
これら地方議員の主導で、すでに34都府県議会で「国会に憲法改正の早期実現を求める意見書」が決議された。16年中に全国の8割に当たる37都道府県での決議採択を目指す。もっとも、都道府県議会や市区町村議会の定員は合計約3万4千人。日本会議地方議連に属するのはその5%程度だ。
各地の若手経営者らからなる日本青年会議所(JC)とも連携する。JCは「憲法意思確立委員会」を設け、改憲に向けた活動を展開。日本会議系の「美しい日本の憲法をつくる国民の会」による改憲賛同者1000万人署名運動も各地のJC会員と連携して署名集めを進めている。
日本会議が支持する歴史教科書の採択拡大を念頭に、地方の教育現場での活動も側面支援する。例えば神奈川県では、12年に設立された「教育を良くする神奈川県民の会」と連携し、歴史教育や道徳教育の重要性を訴える講演活動を進める。
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「保守の急進化」に矛盾 宇野重規・東大教授
――日本会議の活動をどうみるか。
「元は安保闘争など1970年前後の左派運動への対抗勢力だった。影響力は政権中枢まで届かなかった。運動としても根は浅く動員できる勢力も少ない。だから政治家や一部の知識人と結びついて道を開いてきた。安倍政権になって、政権への影響力はともかく、少なくとも政権中枢に手が届く状態になった」
「日本人が自信を失いつつあるなか、日本の良さを確認したいという雰囲気が草の根で広がる。日本会議への注目はそういう時代の空気を反映したものだろう」
――日本の保守層に変化はあるか。
「単に過去に価値を見いだす思考がすべて『保守主義』ではない。保守主義の特徴は、急進的な進歩主義へのある種の慎重さや謙虚さだ。漸進的な変化を求め、あまりに野心的で急進的な勢力を抑える役割に回ったときに良さが出る」
「だが今は抑止対象だったリベラリズムが失速している。ライバルの弱体化で保守主義自身が急進的になり、本来の良さである慎重さや自己抑制的な姿勢が失われ知的傲慢さも透ける」
――安倍政権の誕生は偶然か。
「戦後の自民党政治には二大潮流がある。軽武装・経済国家を志向した吉田茂元首相から大平正芳元首相につながる宏池会(現岸田派)と、その対抗勢力として国家の役割を強調する岸信介元首相に源を発する清和会(現細田派)だ。宏池会の流れが衰え、2000年代から清和会の路線が強まった。安倍政権は突然変異ではない。中国の台頭や東日本大震災を通じてみえてきた日本の脆弱性など内外の環境変化もまた、安倍政権の誕生を必然たらしめた」
――安倍晋三氏は保守主義者か。
「保守らしからぬ保守主義者だ。保守主義では本来何を守るかが具体的に語られるべきだ。だが安倍氏は現憲法を守るのではなく改正すると言う。現在の政治制度の根幹を否定する分、何を守るのかと言われると『日本の良き伝統』などとたんに抽象的になる」
――安倍氏の「戦後レジームからの脱却」は保守層のキーワードだ。
「『戦後レジーム』には現憲法だけでなく日米安保条約など日米関係も大きなウエートを占めるはず。『戦後レジームからの脱却』を掲げながら対米自主外交を唱えず、米国との関係強化を訴えるのは矛盾だ」
うの・しげき 東大法卒。千葉大助教授を経て東大社会科学研究所教授。専門は政治思想史・政治哲学。近著に「保守主義とは何か」。東京都出身、49歳。
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〈記者の目〉「保守主義」の内実を問う
東大の宇野重規教授が言うように「保守主義」とは慎重さや自己抑制の姿勢が本来の良さのはずだ。だが、いわゆる「ネット右翼」勢力の言動は言うまでもなく、日本会議にも異なる意見に激しく反発する傾向が見える。こうした態度は、宇野教授の定義にならえば本来の「保守主義」ではないのではないか。日本会議を巡る論議は、「保守主義」の内実を問うテーマにもつながる。
(島田学)
[日経新聞10月16日朝刊P.12]
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