http://www.asyura2.com/16/senkyo214/msg/529.html
Tweet |
北方領土問題、安倍政権が奮起しても成果は「このあたり」が限界 だから1月解散はあり得ない!?
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/49961
2016.10.17 橋 洋一 経済学者 嘉悦大学教授 現代ビジネス
■北方領土はそんなに甘くない
解散風が永田町に吹いている。
先々週10月3日付けの本コラム(「蓮舫・野田氏が相手なら、次の選挙で「自民党300議席」は堅そうだ」http://gendai.ismedia.jp/articles/-/49851)で、マスコミを賑わしている「1月冒頭解散」だけではなく11月解散もあり得ると書いたら、そうした意見も政治評論家の間で出てきているようだ(10月15日の歳川氏論考 http://gendai.ismedia.jp/articles/-/49954)。
筆者が、1月冒頭解散があまり見込みがないと思うのは、その前提である北方領土の日ロ首脳会談の成果について、あまりに楽観的すぎるからだ。
たしかに、12月15日に行われる、プーチン・ロシア大統領を安倍首相の地元山口に招いての首脳会談に期待が集まっていることは理解できる。しかし、それがただちに北方領土解決になるかといえば、そうではない。北方領土問題は、これまで70年間も解決できなかった超難問であることを忘れてはならない。
領土問題の解決は、基本的には戦争によってはかられてきた。平和的に解決したら、ノーベル平和賞ものなのである。さらに、70年の間には日本外務省の外交的な失敗もあった。
それを、今回挽回して取り返そうというのだから、かなりの妥協が必要である。こうした妥協の末に返還があったとしても、経緯を知らない人が見れば、それほどの外交成果には見えないのだ。
そもそも、多くの日本人には北方四島すべてが返還されるべきだという願望がある。実際、歴史から言えば、第二次世界大戦の終わりに、旧ソ連がどさくさに紛れて北方四島を不法に占領したのは事実である。
昔から日本とロシアは「綱引き」をやっていたが…【PHOTO】gettyimages
もし日本が平和国家でなければ、25年前のソ連邦崩壊前後、武力で北方四島を奪還していたとしても不思議ではない。武力での奪還、というと穏やかではないが、意図的に紛争を起こして、それに乗じて事実上の武力行使をして、既成事実を積み重ねてしまうことだ。
思えば、その当時が日本としても最大のチャンスだった。GDPは世界二位でアメリカを急追しており、日本の国力は絶頂期であった。さらに、中国の台頭もまだ起こっていないので、北方領土交渉に日本が注力できる態勢が整っていた。また、当時のロシアはソ連崩壊直後で市場経済が混乱していたため、日本側は日本の経済力を生かせるチャンスだった。
しかし、日本はこの機運をうまくいかせなかった。ロシアの識者の間では、日本は90年代にロシアが苦しんでいたときに何もしてくれなかったという不満が多いという。
その中でも絶好機を逃したのが、1992年にロシアから提示された北方領土に関する「秘密提案」だ。その提案に対しては、北海道新聞などで関係者の話が掲載されている。
■泡と消えた「秘密提案」の中身
この秘密提案は存在しないことになっているが、実際に行われたのは周知の事実だ。日本側の関係者であった東郷和彦・元外務省欧亜局長によれば、以下のとおりだ。
1992年3月、東京で行われた日露外相会談において、当時のコズイレス・露外相が渡辺美智雄外相に対して、「平和条約締結以前に歯舞群島、色丹島を日本に引き渡す」という内容の秘密提案(コズイレフ提案)を行った。この提案はエリツィン氏の了解は得ていなかったが、もし日本側が乗ってくれば正式提案するという含みがあった。
提案は渡辺美智雄外相とコズイレス外相の会談の席上、口頭で行われた。ロシア側は@歯舞、色丹を引き渡す手続きについて協議する、A歯舞、色丹を引き渡す、B歯舞、色丹問題の解決にならう形で国後、択捉両島の扱いを協議する、C合意に達すれば平和条約を締結するというものだった。
これは、歯舞、色丹の返還を先に進めるという点で、1956年の「日ソ共同宣言」とは違った内容だ。さらに協議の行方によっては国後、択捉の返還の可能性も残したので、間違いなくこれまでのロシア提案では最大限譲歩のものだ。
しかし、この提案について、ロシアの最大限の譲歩であることを認識できずに、「もっとロシアは妥協してくる」と根拠のない希望的予想をして、受け入れを真剣に検討しなかった。
その後、ロシアは経済回復に伴い強気に転じた。ほぼ10年後の2001年のイルクーツク会談で、今度は日本側がプーチン政権に対し、1992年のロシア側の秘密提案とほぼ同じ提案を行ったが、プーチン政権に完全に無視された。
その後、現在に至るまで、プーチン氏は、1956年の「日ソ共同宣言」を踏襲するとして、歯舞、色丹はいざしらず、まだ一度も国後、択捉の帰属協議に応じると言ったことはない。
これが、これまでの北方領土の交渉事実である。
現状を簡単にいえば、以下の通りだ。
(1)日本は、4島一括返還が先で、その後平和条約を締結する。
(2)ロシアは、平和条約締結を先行させて、その後二島返還で決着させる。
そこで、これまでの経緯から推察できることは、次の会談で北方四島について日ソ間で合意ができたとしても、
@4島一括返還は絶対にあり得ない
A現実は2島返還+α
Bαはゼロまたは限りなくゼロに近い
という交渉結果である。
いくらロシアへ経済支援するとしても、あくまでロシアを交渉テーブルに引き出すための撒き餌でしかない。経済協力するしないと、領土問題はリンクしているはずがない。実際、今より経済苦境にあった25年前ですら、ロシアは大幅譲歩はしていない。
ポイントはBのαがゼロなのか、ゼロに近いがゼロでないのかである。
プーチン氏のこれまでの言動ではαはゼロであるが、安倍首相はαはゼロに近いが、なんとかαゼロではなくしたい、と考えている。
■放っておけば、武力でしか解決できなくなる
正直に言えば、安倍首相および日本を取り巻く環境はよくない。
何しろこれまで絶好のチャンスを逃してきたことによって、ロシアは北方領土を実効支配し、現在1万8000人のロシア人が住んでいる。一方、日本人は住んでいない。しかも、日本人で元居住者はすでに高齢であり、いまさら帰島したいという人はほとんどいない。
返還すれば、住民に対する莫大な補償問題も伴うという。日ソの相対的な経済力も関係しており、25年前より日本は苦しい。
また、軍事面で言えば、日本は中国の台頭もあり、ロシアと中国の二面作戦をとれなくなっている。特に、中国は尖閣への野心を隠していないので、対中国のためにもロシアと平和条約を締結しておく必要性は以前より格段に増している。
さらに、不法占拠後、北方領土は共産圏の最前線となり、軍事基地や国境警備隊基地が多く配置された。オホーツク海は対アメリカ戦略として原潜の最適な地域となっている。その放棄につながる北方領土問題で、ロシアのスタンスは固い。
北海道新聞の報道によれば、「北方四島は日米安保条約の適用除外にせよ」とのロシア側の要望も日本側に打診されているようだ。この問題だけでも解決は容易ではない。
つまり、実効支配が長引けば長引くほど、領土返還は難しくなる。年々、領土返還のハードルは高くなっているのだ。あと30年もすれば、それこそ武力行使でしか解決できなくなるだろう。
ロシアとしては現状維持のままがベストである。それを破るとすれば、長期政権の安倍政権のうちに前進させるしかありえない。ただし、それでも、2島+αが限界であり、それもαがゼロでなければ御の字という状態なのだ。
こうした点から、北方領土の成果をもって1月冒頭解散という話は、ちょっとあり得ないと思っている。
もっとも、2島+αでも、これまで外務省が失敗してきたことを考えると、ここで決着した方が日本にとっていいと思っている。αとして、日本にとってはベストは、国後、択捉両島について交渉の余地を残すことである。
日本側は1998年の橋本=エリツィンの川奈会談で、四島を日本領土と確定させれば、ロシアの施政権を認めるという譲歩もしたが、うまくいかなかった。こうした従来の交渉経緯を考えると、国後、択捉両島について交渉の余地を残すこともかなり苦しいと言わざるを得ない。
こうした交渉は長期政権しかできないので、四島が現状のまま時が過ぎないように、安倍政権に奮起してもらいたいものだ。
投稿コメント全ログ コメント即時配信 スレ建て依頼 削除コメント確認方法
▲上へ ★阿修羅♪ > 政治・選挙・NHK214掲示板 次へ 前へ
スパムメールの中から見つけ出すためにメールのタイトルには必ず「阿修羅さんへ」と記述してください。
すべてのページの引用、転載、リンクを許可します。確認メールは不要です。引用元リンクを表示してください。