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[ニュース複眼]小池都政、改革の成否握るのは
東京都の小池百合子知事が都政改革に突き進んでいる。豊洲市場への移転問題に加え、五輪の施設整備でも問題提起の姿勢を貫く。都民目線で透明性の確保や信頼確保を狙う小池氏の改革手法をどう見るか。都政健全化への課題は何か。
■根回しなし、貫けるか 元鳥取県知事 片山善博氏
小池百合子知事の所信表明はツボを押さえていた。都政改革のポイントの情報公開の徹底と、都議会との関係正常化をしっかり盛り込んだ。
都議会には本来のチェック機能を果たしてほしいと強調した。逆に言えば、今までのように知事提出の議案を無傷で通すための根回しはしないという宣言だ。情報公開と議会との関係正常化は、小池知事の政治力の源泉といえる。
そもそも議会との向き合い方は今までが異常で、口利きや不公正な取引があった可能性もある。議会側は根回しがないなら議案を全部否決すると言わんばかりだったが、そんなことをすれば来年の都議選で厳しい審判を受ける。今後は議会の見識が試される。
豊洲への移転問題は都政全体の病理の象徴で、この問題を正すことは都政改革の大きな実践例になる。小池知事が演説冒頭で豊洲問題を取り上げた意味も理解できる。
盛り土がなかった問題の検証は、当初から責任者を特定できないと思っていた。第三者による外部調査でもそう変わらない結果になったのではないか。担当者が人事異動で出入りする中で何となく計画が変わることは役所ではよくあることだ。
小池知事は誰かの明確な意思で決まったと予測しただろうが、役所はそんなものではない。都庁にそんなリーダーシップを発揮できる職員はたぶんいない。逆にいなかったことが問題ともいえるが、これがルーズな役所の特徴だ。
「ガバナンス(統治)の欠如」も強調されるが、そもそも鈴木俊一元知事の4期目ごろから、青島幸男、石原慎太郎、猪瀬直樹、舛添要一各氏の歴代都知事下でガバナンスは利いておらず、都政は弛緩(しかん)していた。改革には必ず批判が伴う。トップリーダーの気力が続くには庁内と世論からの支えが重要だ。ただし小池知事は都庁の中に落下傘で降りたわけで、組織にのみ込まれないためには、ある程度の期間は外部人材に頼らざるを得ないとも思う。
しかし新党結成はやめるべきだ。今の選挙制度で議会多数派の形成は難しく、新党は少数派にならざるを得ない。仮に他の会派と連携し過半数を確保できても、それはそれで議会のチェック機能がなくなり一昔前と同じ事になる。
都知事選では私自身の名前も浮上したが、私ならこんなドラスチックな改革はできなかっただろう。豊洲問題などは見過ごしたかもしれない。小池知事とは方向性は似ているが、こんなに短期間で結果は出なかったと思う。小池さんが知事になって良かった。
(聞き手は飯塚遼)
かたやま・よしひろ 東大法卒。旧自治省を経て99年に鳥取県知事に就き2期8年で退任。民主党政権の10〜11年には総務相。07年から慶大教授。65歳。
■職員と政策議論を 元東京都副知事 青山氏
小池都政は今も知事選モードが続いている。選挙戦で最大の争点だった待機児童問題は、適切な補正予算案を組んで都議会に提案した。否決する内容ではないだろう。
築地市場の移転は選挙中に言っていたのと同じ理由で、就任1カ月後に延期を決めた。市場関係者や議会へ説明せずにいきなり決めるという、プロセスを無視した決め方だ。本来は延期の正当性が論争になるはずだったが、思わぬ事態が起きる。(土壌汚染対策の盛り土がなく)地下空間があったことだ。安全性の問題と、都庁の意思決定・情報公開の問題がある。
安全性について専門家会議を設けたのは適切な措置だ。軽々には言えないが、常識的に考えれば、地下空間でも土壌汚染対策はできるはず。そのプロセスを公開することがとても大事だ。率直に言うと、安全について非科学的な声も聞かれる。だが世論を考えれば、合理性の範囲を超えて、感性の範囲での安心対策も要求されるだろう。
より根深い問題は都庁の信頼性だ。地下空間は技術的にはあり得る。しかし重大なことが上に報告されずに決められていた。都政の歴史でも前代未聞の出来事だ。
私が知る都庁はこんなものまで上げなくてもいいということまで上げてくる組織。正反対のことが実際に起こった。関係者は一様にショックを受けている。なぜこうなったのか究明を続けて、組織的な解決を図った方がいい。小池知事にとって重い宿題だ。
問題は着地点だ。特に豊洲市場はいつまでも移転を延期できない。安全対策を講じた上でいつ移転を決めるのか、時期はいつごろか、段取りを示すことが求められる。
また自分が知事の時代に実現しない大事業を、批判を超えて手がけるのが本来の知事の仕事だ。例えば、都営地下鉄大江戸線は鈴木俊一知事が批判を受けながら推進して石原慎太郎知事時代に完成し、多くの都民が利用している。
知事が短期間に交代したこの3年半の都政は、長期的な取り組みがないのが最大の問題だ。石原知事時代は不協和音もあったが、少なくとも1期目は都庁職員と互いに政策を議論し合う風土があった。石原さんは政策は現場からしか出てこないと話していた。小池知事も都庁といい関係をなるべく早く築いてほしい。
都議会が一段落すれば小池知事もほかのことに飛び込める。国際金融センター構想など東京が成長するための産業経済政策やインフラ投資をきちんとしていけば、小池都政は安定軌道に乗るはずだ。
(聞き手は舘野真治)
あおやま・やすし 東京都庁OB。政策報道室理事などを歴任。石原知事1期目の99〜03年に副知事。現在は明治大学公共政策大学院特任教授。73歳。
■統治体制の刷新急げ 政策工房社長 原英史氏
就任からわずか2カ月で、豊洲市場や東京五輪・パラリンピックといった分かりやすい課題に目をつけ、次々と問題をあぶり出している。都民の関心を高め、改革への機運を高めたという点でまずは百点満点以上の滑り出しだ。
次に必要なのは、小池知事に期待する世論の追い風があるうちに都庁のガバナンス改革に取り組むことだ。豊洲市場の一部で盛り土がなかった問題では、不透明な意思決定や組織の縦割りなど都庁のガバナンス不全が露呈した。都民の利益になる施策が知事主導で進む体制整備が急務だ。
橋下徹氏が大阪府知事や大阪市長を務めた時も、早期に府庁や市役所のガバナンス改革を進めた。私も政策作りに関わったが、大阪での一連の改革は参考になるだろう。その一つは、府民市民にとっていい仕事をしたかどうかで職員を評価する制度の導入だ。
2012年に府市で成立した「職員基本条例」は職員の評価に5段階の相対評価を採用した。各評価の配分を明確にし、最低評価も最高評価も一定数つく。最低評価が続き、指導や研修で改善しない場合は免職や降任もあり得る。
地方自治体の公務員の場合、国や議会の意向に過度に配慮する場合がある。職員にメリハリのある評価制度を導入することで、有権者のために首長が提案した施策を着実に進められる組織になる。
また、職員基本条例では「天下り」を原則禁止した。職員と政治の関係を適正化するため、職員の政治活動を規制する条例や口利きを透明化する制度もつくった。全ては職員が首長の顔を見て働く環境作りにつながる。
大阪の改革では「職員が知事や市長の言いなりでいいのか」という批判もあったが、部下である職員が、選挙で選ばれた首長の考えで施策を進めるのは当然だ。その上で同じく有権者の声を代弁する議会としっかり対話すべきだ。
ガバナンス改革は具体的な成果がすぐ見えにくい。橋下氏が目指した「大阪都構想」が昨年の住民投票で否決されたのも、役所の組織が変わるメリットが有権者に伝わらなかったからだろう。小池知事は今の勢いを利用すれば、本質的な改革ができるはずだ。
小池知事や橋下氏の改革手法は「ポピュリズム」と批判されることもあるが、いい意味での「ポピュリズム」なら大いに歓迎すべきではないか。有権者に直接訴えて支持されないと、達成できない改革もある。世論に引きずられるのではなく、うまく利用して、都民の方を向いた知事主導の組織をつくってほしい。
(聞き手は佐野敦子)
はら・えいじ 通商産業省(現経済産業省)入省、行政改革担当相補佐官などを経て退官。11年に大阪府市特別顧問。橋下徹氏の大阪改革を支えた。49歳。
[アンカー] 政策力引き出す仕組み構築必要
都庁は巨大組織だから徒手空拳で乗り込んでもできることは限られる。このため小池百合子知事が外部の有識者を使って改革に踏み出した点は理解できる。豊洲問題で都庁のガバナンスの欠如が明らかになったことも、結果的に知事の追い風になっている。
都政の情報公開は確かに大切だ。併せて、日本をけん引する東京の成長戦略や無電柱化のような都市づくりなどについても、何をいつまでに実現するのか示してほしい。そのためには都庁の政策力を引き出す仕組みづくりも要る。
都政を前に進めるうえで気になるのは都議会との関係だ。小池知事が立ち上げる政治塾が「新党」につながれば、無用なあつれきを生みかねない。
(編集委員 谷隆徳)
[日経新聞10月6日朝刊P.9]
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