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子供たちにツケを残さないために、いまの僕たちにできること
日本の保健医療支出は先進国で最高水準の可能性
医療・介護の抜本改革が急務
2016年9月29日(木)
小黒 一正
財務省が2016年8月末に取りまとめた概算要求の総額(国の一般会計)は約101兆円で、100兆円の大台を3年連続で突破した。2016年12月に閣議決定する2017年度予算案に向けて、これから本格的な予算編成が始まる。その際、歳出抑制の主な対象となるのは、医療・介護を含む社会保障費である。
このような状況の中、OECDが衝撃的なデータを公表した。保健医療支出(対GDP)など保健医療関係の最新データだ。このデータが衝撃的である理由は、2015年の日本の保健医療支出(対GDP)が、OECD加盟35か国中3位(米国とスイスに次ぐ)に急上昇したからである(図表1)。
厚生労働省は、財務省との予算折衝などにおいて医療予算の増額を要求するとき、高齢化が進展しているにもかかわらず、日本の医療費が先進国の中で低水準かつ効率的である根拠として、保健医療支出(対GDP)の国際比較を利用してきた。しかし日本の保健医療支出が3位であることが事実であれば、その根拠が弱まる可能性がある。
図表1:OECD諸国の保健医療支出(対GDP)
(出所)「OECD Health Statistics 2016」から筆者作成
http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/opinion/15/216138/092100011/graph_01.jpg
OECDの「保健医療支出」は、(1)「国民医療費」に、(2)介護保険に係る費用のほか、(3)健康診査や(4)市販薬の売上などの費用を加えた概念。急上昇した主な原因は、保健医療関係データの基準をOECDが変更したことである。
旧基準(A System of Health Accounts 1.0)に基づけば、近年の日本のランキングは10位前後。例えば2014年の日本の保健医療支出(対GDP)は10.1%で、OECD加盟35か国中10位(米国、オランダ、スイス、スウェーデン、ドイツ、フランス、デンマーク、ベルギー、カナダに次ぐ)であった。
だが、新基準(A System of Health Accounts 2011)を適用すると11.2%になり、その順位は(微妙な差で)3位だが、2位のスイスと同水準に急上昇する。「高福祉国家」の象徴であるオランダ、スウェーデン、デンマークなどよりも上位となる。
データを精査すると、日本が置かれた状況は、より深刻である可能性もある。というのは、新基準を適用すると、2014年と15年は3位だが、2011〜13年の間、OECD加盟35か国中2位(米国に次ぐ)であったからである。
これは、米国を除けば、2011〜13年の間、日本の保健医療支出(対GDP)はOECD加盟国34か国中1位となっていたことを意味する。米国の医療は原則的に自由診療であり特殊であるため他の国と同列に比較することはできない。
これは一体、何を意味するのか。日本の保健医療システムは、1961 年に掲げた「ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ」という理念の下、最近まで、比較的少ない負担で質の高い保健医療サービスを提供してきた。これは事実だが、高齢化により医療費が伸びる事態は避けがたくなりつつあるということだ。
例えば、厚労省の推計(「社会保障に係る費用の将来推計について《改定後(平成24年3月)》」)では、2015年度に約50兆円であった医療・介護費は、2025年度には約74兆円に膨らむ見通しである。団塊の世代が全て75歳以上になるからだ。この10年間で、医療費は約40兆円から約54兆円に、介護費は約10兆円から約20兆円に増加するという試算だ(合計24兆円)。これは2025年度に向けて、医療・介護に関する抜本的な改革が急務であることを示唆する。
対象範囲の見直しで順位が上昇
ところで今回の基準変更は、これまで曖昧で不透明であった長期医療サービスの定義や境界を明確にするために行われた。新基準では、長期医療サービスに「医療の有資格者が提供するサービス」のほか、「ADL(Activities of Daily Living:日常生活動作)に関するサービス」などが加わった。
日本の介護保険に係る費用では、旧基準には含まれなかった38サービス(例:「通所介護」「訪問入浴介護」「認知症向けの生活介護」)が含まれることになった。これが日本の順位が急上昇した大きな要因である。
今回の基準変更に伴い、日本以外に、保健医療支出(対GDP)が大幅に変化した国はどこか。2013年のデータに基づき、比較したのが以下の図表2である。図表では、「変化幅」を「新基準の保健医療支出(対GDP)から旧基準のものを引いた値」と定め、変化幅の大きい順に左側から並べた。
変化幅はアイルランド(2.37%ポイント)、英国(1.47%ポイント)、日本(1.09%ポイント)、フィンランド(0.87%ポイント)、スペイン(0.23%ポイント)の順で大きく変化した。
図表2:保健医療支出(対GDP)に関する新基準と旧基準の比較(2013年)
(出所)「OECD Health Statistics 2016」「OECD Health at a glance 2015」から筆者作成
http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/opinion/15/216138/092100011/graph_02.jpg
新基準に基づく公表は今回が初めて。対象となった国々の医療・介護制度は極めて複雑かつ多様であり、新基準で加算すべき他の国の介護関係コストなどに見落としがあれば、今後順位が変わる可能性も十分にあり得る。各国の数値は慎重に評価する必要があることはいうまでもない。
ただし、日本の保健医療支出(対GDP)が今後も上位を占める場合、それは我々に重い宿題を突きつけることになるはずだ。財政赤字が恒常化して債務残高が対GDPで200%を超える中、社会保障の給付と負担のバランスを含めて再検討する必要が生じる。
その場合、改革の哲学や方向性が重要なカギを握る。この連載コラムでも、「医療費の自己負担率を疾病別に:実態調査で試算」や「『地域包括ケア・コンパクトシティ』構想の課題」で改革の方向性を示してきた。先般、『2025年、高齢者が難民になる日 ―ケア・コンパクトシティという選択』(日経プレミアシリーズ)を刊行し、より踏み込んだ包括的な政策提言をしている。
「地域包括ケア・コンパクトシティ」構想は一つの試案だが、今回の保健医療支出(対GDP)に関するOECDの公表を受けて、医療・介護の抜本改革に向けた政策論争が広がることを期待したい。
このコラムについて
子供たちにツケを残さないために、いまの僕たちにできること
この連載コラムは、拙書『2020年、日本が破綻する日』(日経プレミアムシリーズ)をふまえて、 財政・社会保障の再生や今後の成長戦略のあり方について考察していきます。国債の増発によって社会保障費を賄う現状は、ツケを私たちの子供たちに 回しているだけです。子供や孫たちに過剰な負担をかけないためにはどうするべきか? 財政の持続可能性のみでなく、財政負担の世代間公平も視点に入れて分析します。
また、子供や孫たちに成長の糧を残すためにはどうすべきか、も議論します。
楽しみにしてください。もちろん、皆様のご意見・ご感想も大歓迎です。
http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/opinion/15/216138/092100011/
週刊誌の医療ネガティブキャンペーンどう思う?
医論・異論 from 日経メディカル
冷静に受け止めるも「説明に時間とられる」に怒り
2016年9月29日(木)
高志昌宏=シニアエディター
今年上半期、一部週刊誌が「医者に言われても受けてはいけない手術・飲み続けてはいけない薬」といった大きなネガティブキャンペーンを張った。今回の「医師1000人に聞きました」では、そのキャンペーンで日常診療にどのような影響があったかを聞いた。日経メディカルOnlineの会員医師3587人が回答した(アンケート期間:8月19日〜29日)。
問1:日常診療でこのキャンペーンによる影響がありましたか
問1●一部週刊誌で「医者に言われても受けてはいけない手術・飲み続けてはいけない薬」といったキャンペーンが続き、話題となっています。先生の診療では、この一連の報道による影響がありますか
http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/report/16/030200012/092800018/01.jpg
まず、日常診療でこのキャンペーンによる影響があるかを尋ねたところ、「大いにある」が7.2%(254人)、「若干はある」が29.3%(1037人)と、計3分の1以上(36.4%)を占めた(右図)。その一方、「ない」との回答も42.5%(1506人)に上り、影響があるとした回答の合計と拮抗した。「どちらともいえない」は21.0%(745人)だった。なお、百分率は「現在、診療はしていない」と回答した45人を除外して算出した。
次に、具体的にどのような影響があったか、自由記述方式で尋ねた。書き込まれた内容は多岐にわたり一般化は難しいが、「説明すれば患者は納得し、実際に薬を中断した患者は少なかったが、そのためにかなりの時間を要し、ただでさえ多忙な日常診療がさらに圧迫された」というのが多数意見と感じた。
実際に自己判断で薬をやめた患者がいて検査値が悪化したとか、手術を勧めても拒否されたとの回答は、数は少ないもののいくつか寄せられた。これに対して、「自己判断で患者が降圧薬を中止したが、その後も血圧は安定していて、本当に薬は不要だったのかもしれないケースを経験した」との回答も1件あった。
このような自己判断による休薬に対して、「最後は患者が自分で判断すること」と半ば突き放す意見が散見されたが、「自分に相談してくれず、偏った情報から自己判断して治療を放棄してしまった患者がいるはず」と、去ってしまった患者の存在を心配する指摘も多かった。
問2:具体的には、どのような影響がありましたか
・10人ほどの患者が雑誌の切り抜きを持ってきて、「薬を飲んでて大丈夫か」と聞いてきた。(40歳代勤務医、脳神経外科)
・3人ほどから「私の飲んでいる薬が週刊誌に載っていましたが、どうなんでしょうか?」と尋ねられた。うち2人は、重要性や副作用の頻度、万が一副作用が出た時の対処法など、こちらが詳しく説明し分かってもらえました。しかし1人は、何を言っても聞いてくれず、週刊誌の方を信じて薬を止めてしまいました。最終的には患者さんの判断なので、自己責任でする分にはしょうがないです。(50歳代勤務医、外科)
・長く通っている人は内服中止などの問題はないものの、相談を受けた結果として診療時間が延びた。外来が長くなった分を請求したいくらい、腹が立っている。(50歳代勤務医、内科)
・ずっと高コレステロール血症で内服されている患者から、今後の治療の要否について質問されました。「飲む方が良いというエビデンスがある一方、飲まないほうが良いという明確なエビデンスはなく、また副作用については定期的にフォローしていますが、最終的に決めるのはあなたです」というような話をしました。今は継続治療しておられます。(50歳代勤務医、内科)
・「あの記事は本当か?」という質問は多いが、薬をやめたり拒否した患者はいない。(60歳代診療所勤務医、内科)
・手術を提案しても週刊誌を出されて拒否された。(30歳代勤務医、消化器外科)
・飲んではいけない薬に入っていた薬剤を中止し、脂質や血糖コントロールが非常に悪化した患者がいた。(40歳代勤務医、代謝・内分泌内科)
・当院に転院したばかりの患者さんが、自己判断で降圧薬を中止した。だが中止後も血圧は安定していたため、本当に不要だったのかもしれない。(40歳代開業医、代謝・内分泌内科)
・あの記事が噴飯ものであることを説明。大半は理解していただけたが、薬価が高いことに不満があった患者さんはジェネリックに変更した。(60歳代開業医、内科)
・以前はマメに(このような記事を)読んでいましたが、今は気にしません。中にはそういう話をされる方もいますが、自分の考えをお話しさせていただいています。(50歳代開業医、整形外科)
・危険な薬を出していると誤解され、良好だった医師・患者関係にひびが入った。(60歳代開業医、消化器内科)
・患者に直接的に言われることはないが、不信感を持たれている可能性はある。(30歳代勤務医、麻酔科)
最後に、今回のキャンペーンに対して、どのような印象を持っているかを聞いた。偏った情報を一方的に流す週刊誌に対する憤りが圧倒的だったが、アンジオテンシン2受容体拮抗薬を使った大規模臨床試験で指摘された一連の不正や腹腔鏡手術での事故などを例に、医療側としても襟を正すところがあり、反面教師として捉えるべきという意見も多かった。また、今回の騒動をきっかけに、患者が自分の治療にもっと関心を持ってくれるとありがたいという意見もあった。
問3:先生は、このキャンペーンに対してどのような印象持っていますか
・外来での患者からの問い合わせは思っていたほど多くはなく、いずれもきちんと説明すれば納得してもらえた。だが最も懸念されるのは、問い合わせすることなく勝手に服薬、通院を止めてしまう患者が必ずいるであろうこと。(このようなネガティブキャンペーンは)言語道断。売れている薬剤というのは、有効性の立証されている優れた薬剤がほとんど。特に脳心血管疾患の2次予防目的に服用中の患者が自己中断し、後遺症を残す疾患を再発したら誰が責任を取るのか。科学的根拠のない記事を興味本位に書き立てる無責任な姿勢に怒りを覚える。それを支持するとして名を出している、れっきとした医師にも唖然とする。(50歳代勤務医、循環器内科)
・他の業界で、例えば「ソバはアレルギーが出る場合があるので食べてはいけない」などというキャンペーンをしたら、訴訟を起こされるのではないか。なぜ医師会が週刊誌の名前を挙げて全面的に抗議しないのか不思議です。(50歳代診療所勤務医、代謝・内分泌内科)
・雑誌を売るためなら、人の健康を犠牲にしても構わない人々がいることが信じられない。(50歳代開業医、内科)
・記事内容と見出しが異なり、見出しにより患者に誤解を招いている。(30歳代診療所勤務医、代謝・内分泌内科)
・(キャンペーンの)記事をほぼ読みました。全てが嘘ではないが、論拠のないコメントも散見され、全体にマイナス面のみを取り上げており、一般の人たちの不安と不信をあおるような記事になっていると思いました。もっとも、医者の言うがままに治療を受けたり、何かあるとすぐに病院、すぐに薬といった傾向が強い、日本人の気質を考え直す1つのきっかけにもなると思います。(20歳代勤務医、精神科)
・患者が自分の病気や症状を自ら勉強するきっかけになってくれればいいと思う。また、安易に薬の処方を希望する患者が減ってくれればいいと思う。(40歳代勤務医、消化器内科)
・最近、高齢者の慢性疾患に対する薬が、統計的に有意というエビデンスのみで、幅を利かせているような気がします。急性期の症状を緩和するような薬は効果がすぐ分かりますが、慢性疾患の薬は、実際にコストに見合った効果があるのか、不明なものも多いと思います。週刊誌の内容は必ずしもうなずけるものとは言えなくても、考えさせられる点も、もちろんあります。ただし、週刊誌に影響されて処方は変えてはいません。このような機会をきっかけに、学会やマスコミが、どこが正しくてどこがおかしいのか議論することになればいいと思いますが、いつもそのような方向に進まないのが残念なところです。(60歳代診療所勤務医、代謝・内分泌内科)
・問題提起としてはいいと思います。医師の説明不足が問われていると思います。(60歳代勤務医、外科)
・いつの時代でもこういうことは話題になるので、気にしていない。(50歳代診療所勤務医、小児科)
・扇動するのはマスコミの常。(50歳代勤務医、泌尿器科)
・こういうネガティブキャンペーンのあとは、たいがい何らかのとんでもない政策を国は打ってくるので、興味深くはあります。(40歳代勤務医、精神科)
・診療は医師と患者さんとの信頼関係で成り立っていますので、十分に説明してもそのような記事を信じる方は、無理に治療を勧めても納得してくれないでしょう。それは仕方がないと思います。(50歳代開業医、眼科)
・乳腺外科専門医です。(1)手術の要否、(2)手術方法(温存か全摘か)、(3)補助薬物療法(特に化学療法、遺伝子抗体療法)などについて、セカンド・オピニオンを繰り返し求められています。当方の説明に対して懐疑的な態度を示されるのは残念。医師・患者関係のもろさを感じています。癌などの病気は、症例ごとに進行度も生物学的性格も異なり、治療法にしても、手術術式の適応や薬物適応の選択も異なっています。基礎的知識に乏しい患者に対して、権威ある学者のふりをして偏った意見を押し付けるのは、極めて不適切と考えます。(70歳以上勤務医、外科)
この記事は日経メディカルに2016年9月27日に掲載された記事を一部改編して転載したものです。内容は掲載時点での情報です。
このコラムについて
医論・異論 from 日経メディカル
日常診療に役立つ情報を厳選して提供する臨床医のためのサイト「日経メディカル」が、専門記者による解説記事、第一線の医療従事者によるコラムなどの中から、医療界の動向をより深く知るためのお役立ち情報をお届けします。
http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/report/16/030200012/092800018/
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