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TPP批准推進は「安倍売国政権」の証しー(植草一秀氏)
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26th Sep 2016 市村 悦延 · @hellotomhanks
臨時国会が召集された。
会期は11月30日までの66日間。
冒頭で補正予算が審議されるが、安倍政権が最優先事項に位置付けるのはTPPである。
TPPは12ヵ国で最終合意をまとめ、本年2月4日に署名された。
署名から2年以内に参加する12の国すべてが議会の承認など国内手続きを終えれば発効する。
しかし、2年以内にこうした手続きを終えることができない場合、
12ヵ国のGDPの85%以上を占める、少なくとも6か国が手続きを終えると、
その時点から60日後に協定が発効する。
12ヵ国のGDP合計額に占める比率は日本が17.7%、アメリカが60.4%であり、
この2ヵ国のいずれかが批准手続きを終えない場合、
残りの国がすべて批准手続きを終えてもGDP比85%に届かない。
TPPは流れることになる。
また、日米が批准手続きを終えても、他に4ヵ国以上が批准手続きを終えなければTPPは発効しない。
TPP発効には日米両国の批准が必要不可欠であるが、最重要国である米国の批准見通しが立っていない。
オバマ大統領は任期中のTPP批准を目指すし姿勢を崩していないが、非現実的な願望の域を出ない。
米議会下院のマコネル共和党上院院内総務は、8月25日に、
「TPPにはいくつかの深刻な欠陥があり、年内は動かない」
と述べるとともに、
「次期政権がTPPの内容を修正する可能性がある」
と指摘した。
さらに、共和党の実力者であるライアン下院議長もTPPの内容を修正しない限り
審議には応じないとの方針を示している。
つまり、オバマ政権下での米国のTPP批准は絶望的な状況にあり、
大統領選後に米国がTPPを承認することがあるとすれば、
必ず、TPP最終合意文書が修正されてからということが想定されている。
TPPが日本にとって大きなプラスを与える内容であるならともかく、
大多数の日本の主権者は日本のTPP参加を求めていない。
この状況下で、日本が先行してTPPを批准する必要はない。
「必要がない」というよりも、正確に表現するなら、「日本はTPPを批准するべきでない」ということになる。
なぜなら、TPPは日本の主権者に
百害を与え、
一利を与えない
からである。
自民党は2012年12月の衆院総選挙に際して、6項目の公約を掲げた。
「わが党は、TPP交渉参加の判断基準を明確に示します」
TPP交渉参加の判断基準
1 政府が、「聖域なき関税撤廃」を前提にする限り、交渉参加に反対する。
2 自由貿易の理念に反する自動車等の工業製品の数値目標は受け入れない。
3 国民皆保険制度を守る。
4 食の安全安心の基準を守る。
5 国の主権を損なうようなISD条項は合意しない。
6 政府調達・金融サービス等は、わが国の特性を踏まえる。
日本政府が署名したTPP最終合意文書は、上記の自民党公約に全面的に反するものである。
1.農林水産物について、重要5品目が明示され、
「聖域」として関税を守ることが公約に示されたが、
TPP最終合意では1品目も「聖域」として関税撤廃の除外項目にはならなかった。
2.TPP交渉に参加する前に行われた日米事前協議で、日本は自動車輸入等について数値目標を明示した。
3.「いつでも、だれでも、どこでも」必要十分な医療を受けることができる現在の国民医療保険制度が崩壊する
可能性が極めて高い。
4.食の安全安心の基準は崩壊する。
5.国の主権を損なうISD条項が盛り込まれている。
6.政府調達において外資への全面市場開放が行われ、金融サービスにおいては外資を優遇するする
措置がすでに採られている。
これが現実であり、TPPは安倍自民党の政権公約に全面的に反するものになっている。
また、米国では共和党の大統領候補であるトランプ氏がTPP拒絶を明確にしており、
クリントン氏も現時点ではTPP反対を表明している。
日本の国民に不利益を与えるTPP。
米国が批准することがあるとすれば、現在の最終合意とは異なる修正後のものへの批准になる。
日本がいま批准してしまうと、米国による修正後のTPPへの参加を検討する機会を失う。
これは日本の主権者の利益を損なうことだ。
臨時国会でのTPP批准は絶対に許されない。
TPP批准を阻止するには、主権者が動かなければならない。
安倍政権のTPP暴走を絶対に止めなければならない。
安倍政権がTPP批准に前のめりであるのは、この政権が米国を支配する巨大資本の支配下にあるからだ。
米国を支配する巨大資本の目的は巨大資本自身の利益極大化である。
これ以外に目的はない。
米国を支配する巨大資本が目論んでいるのは
「日本収奪」
である。
日本をTPPの蟻地獄に引きずり込む。
その上で、日本から収奪し尽くす。
安倍政権は巨大資本に支配され、巨大資本の命令に従って動いている。
この行為は日本の主権者の利益を損なうものだが、安倍政権は意に介さない。
安倍政権は巨大資本の指揮命令の下に動いている。
日本の主権者の不利益など眼中にない。
農協幹部は裏切り者である。
農協幹部は農業生産者の側、農協組合員の側に立っていない。
安倍政権が樹立され、安倍政権の影響力が強まっているため、農協の組合員の利益ではなく、
政治権力者の言いなりになっている。
安倍政権は日本をTPPに参加させ、日本を巨大資本に献上する。
日本の既存農業は崩壊し、新たに、外国資本が日本農業を支配する。
農協を解体し、その農協を、新たに外資が支配する農業法人の下請け機関に衣替えさせる。
農協は現在、営農支援、金融、保険の三事業を行っている。
金融、保険の事業収益を営農支援事業の経費に充てている。
農協から金融事業、保険事業を取り上げると、営農支援事業は立ち行かなくなる。
農協の自立を不可能にして、この農協を外資の農業法人、
あるいは物流管理会社の下請け代理店に衣替えさせる。
地産地消の日本の地域農業は崩壊する。
外資にとって必要な農業は、大規模農法による商業生産物を生み出す農業だけであり、
これ以外の農業は切り捨てられることになる。
日本の主権者は食料の自給体制を完全に失うことになる。
TPPでもっとも深刻な影響が広がるのが医療である。
TPP参加により、十分な医療は金持ちしか受けられない状況に移行する。
現在の公的保険医療制度では、
「いつでも、だれでも、どこでも」
必要十分な医療を受けられること
が制度によって保障されている。
それでも、健康保険料を支払うことができない「無保険者」が増大して、大きな問題になっている。
日本がTPPに参加すると、
「十分な医療を受けられない」主権者が大量発生することになる。
医療費支出を削減したい財務省は、公的保険がカバーする医療行為を狭めようとしている。
TPP参加で薬価等が上昇し、公的医療保険の収支が悪化する。
この機会を活用して財務省は「混合診療の全面解禁」を推進する。
「混合診療の全面解禁」
とは、
医療が二種類に区分されることを意味する。
「公的保険医療」と「公的保険外医療」の二種類だ。
金持ちは民間医療保険に加入して「公的保険外医療」を受けられるが、
金持ちでない主権者は、「公的保険医療」しか受けられなくなる。
「必要十分な医療」を受けることができなくなるわけだ。
「食の安全・安心」も崩壊する。
例えば、遺伝子組み換え(GM)食品は健康に害を及ぼす恐れがあるとされており、
多くの消費者が摂取を避けている。
しかし、
遺伝子組み換え(GM)食品が健康に害を及ぼすことの証明
は容易でない。
各種実験で害を及ぼす可能性は十分に示されているが、
「因果関係が確実にある」
ことの証明は簡単でない。
この
「恐れ」
の段階での「表示義務」などの規制を、事業者が「不当な差別」だとして訴える。
最終判断を下すのは世銀傘下の紛争処理機関で、
これが訴えを認めると国は巨額の賠償金を支払わされ、「表示義務」は強制的に廃止される。
米国産の肉に大量に含まれている「成長ホルモン」や「ラクトパミン」などの物質、
除草剤や農薬などへの規制も、訴えの対象にされ、
「安全性を優先する予防的な規制措置」
がことごとく破壊されることになる可能性が高い。
つまり、
「食の安全・安心」
は完全に破壊されることになる。
そして、最大の問題はISD条項による主権喪失だ。
日本の諸制度、諸規制を日本が決定する権利を失う。
「主権の喪失」
そのものである。
自民党公約は
「主権を損なうようなISD条項に合意しない」
と明記した。
TPP最終合意文書にISD条項が盛り込まれている時点で、日本の批准はあり得ないのだ。
安倍政権がこんなTPPを押し通そうとするなら、
安倍政権は寸分の疑いの余地なく「売国政権」ということになる。
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