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稲田事務所の領収書が問題に
大臣任命直後に政治資金問題スクープする赤旗の調査力
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20160923-00000014-pseven-soci
SAPIO2016年10月号
政党機関紙でありながら、与党政治家や一般の新聞社からも一目置かれる「しんぶん赤旗」。その調査力・取材力は想像以上に強力で、これまでも数々のスクープで存在感を示してきた。日刊紙約20万部、日曜版約100万部の機関紙が、朝日や読売などの全国紙をなぜ“抜く”ことができるのか。その答えは、共産党ならではの“諜報網”がカギを握っている。
「しんぶん赤旗」は、共産党の党中央委員会に所属する「赤旗編集局」が制作している。
東京・渋谷区の党本部隣にある編集局には「中央機関紙編集委員会」のもと、政治部、社会部、経済部、外信部、日曜版編集部など21の部がある。一般紙にはない「国民運動部」や「党活動部」もあり、前者は女性、労働、反原発など共産党が取り組む政治運動を、後者は各地の党活動などを取材し報じている。
その他、全国9か所に総・支局があり、中国・北京やベトナム・ハノイ、米国・ワシントンDCなどで活動する海外特派員もいる。
団塊世代の大量退職もあり、かつて400人ほどいたという編集局所属記者は、現在300人程度だという。これとは別に、各都道府県には「専任通信員」が約50人、配置されている。
赤旗は週刊誌やフリーランス記者同様、記者クラブに加盟しておらず、発表情報や官公庁などからのリークを得にくい立場にある(国会や省庁に入れる通行パスはある)。裁判報道では、司法クラブに加盟していないため、傍聴を希望する際は何人もが手分けをし、一般のクジ引きの列に並ぶのだという。反面、そうした取材上の制約があるからこそ、「独自ネタ」を集めるため必死な活動をしているとも言える。
赤旗は「偽装請負」の実態やブラック企業を名指しで追及するなど、数々のスクープを連発してきた。小泉内閣で総理首席秘書官を務めた飯島勲氏は雑誌記事の中で赤旗について「情報を扱っている人間であれば必ず目を通さなくてはいけない重要なメディアの一つだ」と断言している。
では、そうしたスクープはどこから生まれるのか。
稲田朋美・防衛相「白紙領収書受領」問題のスクープ(日曜版8月14日号)は、赤旗の取材手法を端的に示している。同紙編集部は情報開示請求により、稲田事務所の政治資金収支報告書に添付された領収書のコピーを入手。彼らはその山の中から、自民党同僚議員の政治資金パーティー券購入の際に稲田事務所が受け取った領収書に目をつけた。
領収書の発行元はそれぞれ異なるのに、日付、宛名、金額が同じ筆跡に見える。記者らは文字の鑑定を“筆跡鑑定人”に依頼、「稲田事務所の会計責任者が、領収書の金額や宛名を書いた」ことを確かめた。
稲田事務所は赤旗の取材に対し“白紙領収書”の受領を認めている。
大臣に任命された途端、「政治資金問題」をスクープするという“調査力”には、他紙の記者も舌を巻く。赤旗は日常的に情報開示請求を行い、与党議員の収支報告書を常にチェックしているとみられる。大臣など要職に就いたところで政権への攻撃材料として使うべく、あらかじめ準備しているのだろう。
「赤旗には個別のジャンルに強い記者がいる。政治資金調査のスペシャリストとして知られたベテラン記者は、収支報告書を大テーブル一面に敷き詰め、自ら分析する手法を取っていた。赤旗ではその技術の伝承が課題だったが、近年は政治資金分析用のフォーマットをエクセルで作成し、グループで疑惑を見つける仕組みが整ってきたようだ」(赤旗記者と付き合いのある全国紙記者)
他にも、保守系議員に食い込んで情報を集める政治記者や、防衛・基地問題に強い記者、年金問題に強い記者など、全国紙ではチームで取材するようなテーマも一人で取り組むベテラン記者らがいるという。ただし事件などで記者の手が回らないことも多く、通信社の配信記事も少なくない。
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