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下流化ニッポンの処方箋
「貧困への攻撃」はいつか自分に向けられる
2016年9月7日藤田孝典 / NPO法人ほっとプラス代表理事
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貧困バッシング(2)
NHKの番組が取り上げた女子生徒への貧困バッシングでは、1000円ランチを食べ、高価な文具を持っている女子生徒が「貧困であるはずがない」という批判が噴出しました。その背景に、「絶対的貧困」と「相対的貧困」の混同があることを、前回の原稿「『1000円ランチ』女子高生をたたく日本人の貧困観」で指摘しました。
貧困への視線が極めて厳しい日本社会
私たちのNPO法人「ほっとプラス」には、貧困支援への応援と批判の声が数多く届きます。ある男性はこんな批判の手紙を送ってきました。
「貧しい人は努力をしないでそうなったのだから、私たちの税金で救済することに賛成できません。それは社会的に許し難いことです。適者生存、みんなが努力する社会の中で、貧困者は適者ではありません。努力しないで貧しくなったのだから、貧しくても仕方がないと思います」
こんなに一生懸命働いて、税金を納めているのに、その税金が使われるのは許せない、という意識でしょうか。貧困の人がいるため自分が損をしている、必要以上の税金を取られているという被害感情もあるでしょう。
誰もが病気になったり、働けなくなったり、貧しくなったりする可能性があります。その時に助け合う仕組みが社会保障という相互扶助です。しかし、貧困への厳しい視線、不寛容な態度はむしろ強まっていて、「お互いさま」という気持ちは失われつつあるように見えます。
20年続いた不況で、どの階層の人もしんどい思いをしながら働き、暮らしています。住宅、医療、教育、介護などあらゆる局面で負担は増えています。高齢者と貧困層、子供以外の層に、税が公正に分配されていない、という不満があるようにも感じます。「税金の払い損」という考えは、若年層から見ればあながち的外れともいえません。
貧困バッシングは逆に貧困を増やす
北九州市で2007年7月、「おにぎり食べたい」という書き置きを残して亡くなった男性が発見されました。このような極限の貧しさは、無条件に支援の対象と考えられるでしょう。
反対に、この男性に必要な支援が届いていて、飢えずに済み、生活保護を受給したとしたら、どうなっていたでしょうか。逆に「何も生産しない人間」と批判され、バッシング対象になっていたかもしれません。貧困の現場で、同情と批判は常に背中合わせです。
「死ぬか、死にそうな困窮なら支援してやってもいいが、貧乏人らしく社会の片隅でつつましく生きろ」という懲罰的な態度は、支援や保護を必要とする人の適格性と態度を一方的に決めつけるものです。
このような圧力は困窮アピールをためらわせ、支援の手を届きにくくさせて、結果的に事態をより悪化させます。
女子生徒と母親の2人家庭が、食事や衣服に困るような絶対的貧困世帯でなくても、経済リソースが十分でない「相対的貧困」状態であるなら、けがや病気、勤務先の倒産などの事態で、たちまち困窮に陥るでしょう。だからこそ、相対的貧困の発見と対応が大切なのです。バッシングは貧困の芽を見えにくくし、より深刻な貧困を増やす結果につながりかねません。
貧困をたたいても誰も得をしない現実
近年は、相対的貧困の考え方に加えて、「社会的排除」の発見と防止の必要性が指摘されています。いじめ、不登校、ドラッグ、売春、家庭内暴力、育児放棄(ネグレクト)などの社会的排除要因を放置すると、いずれ貧困、生活保護、反社会性、犯罪につながる、だから早めに発見することが大切だ、という議論です。
人間の自尊感情を傷つける社会的排除を早期に見つけ、防ぐ−−つまり、普通の暮らしから外れないようにすることが、結果的に社会やコミュニティーのメリットにつながります。目の前の採算性では測れない社会的利益をどう実現するかという視点が、今こそ必要でしょう。
財源が少なく、みんなが苦しい状況のなか、他者へのいたわりが薄れようとしています。北欧や欧州のようにある程度税率を上げ、その税を社会の広い層に再分配して、多くの人が社会サービスを受益していると実感できるような社会にすることが大切です。
貧困バッシングが誰も幸せにしないことを、多くの人に知ってほしいと思います。
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藤田孝典
藤田孝典
NPO法人ほっとプラス代表理事
1982年生まれ。NPO法人ほっとプラス代表理事、聖学院大学人間福祉学部客員准教授、反貧困ネットワーク埼玉代表。厚生労働省社会保障審議会特別部会委員。ソーシャルワーカーとして現場で生活困窮者支援をしながら、生活保護や貧困問題への対策を積極的に提言している。著書に「下流老人 一億総老後崩壊の衝撃」「ひとりも殺させない」「貧困世代 社会の監獄に閉じ込められた若者たち」など。
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ひきこもり調査 40歳超無視?2016/9/8(木) 9:04掲載
内閣府が公表した『若者の生活に関する調査報告書』Photo by shiho Dobashi(ダイヤモンド・オンライン)
内閣府「ひきこもり実態調査」、40歳以上は無視の杜撰
一言で言うと、誰のためなのか、何のためなのかが見えてこない調査だった。
内閣府は7日、15〜39歳を対象にした「ひきこもり」実態調査の結果を公表した。6年前に行われた同調査と比較して、「39歳以下の“ひきこもり”群が15万人余り減少した」という今回のデータ。ただ、この間、指摘されてきた同調査についての様々な瑕疵については、まったく反映されない内容だった。(ダイヤモンド・オンライン)
[記事全文]
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詳しく知る
全体像が分からず、実態を把握する取り組みが求められる
出典:毎日新聞 2016年9月7日
「大人のひきこもり」 ひきこもりが長期化・高年齢化している
出典:池上正樹 2015年12月27日
「ひきこもり主婦」など、女性のひきこもりも顕在化しつつある
出典:ダイヤモンド・オンライン 2016年1月14日
全国の「ひきこもり地域支援センター」の設置状況リスト
出典:厚生労働省
http://news.yahoo.co.jp/pickup/6213733
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