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東シナ海の我が国接続海域を航行する中国公船〔AFPBB News〕
日本の甘い対応に増長する中国、危うし東シナ海 自民党は「一触即発」事案を検証し、法改正につなげ
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/47649
2016.8.19 森 清勇 JBpress
元自衛官として、争いごとを誰よりも嫌う。現役の自衛官も家族ともども同様だと思う。
しかし、先の参院選に次いで東京都知事選で日本国民の関心が内政に集中し、続いて平和の祭典と言われるリオ・オリンピックを堪能している間に、中国は一方的に東シナ海の日中中間線や尖閣諸島周辺で日本を翻弄している。
尖閣諸島周辺では領海侵犯を繰り返し、東シナ海上空では攻撃動作を仕かける中国の大胆不敵な行動に対し、日本は十分な対処ができていない。先の安保法制はこうした事態に対処する最小限の法制でしかなかったが、野党などは今でも廃案を目指している。
「廃案」という的外れの行動は、先の法案審議が違憲論争に終始し、現実に起きている国際情勢をはじめ、尖閣諸島周辺の状況などにほとんど質疑が及ばなかったからである。
その後の状況は安保法制の有用性に加え、自衛隊の行動を律している自衛隊法にも大きな欠陥があることが判明してきた。
尖閣諸島周辺の状況は緊迫しており、海上保安庁や自衛隊が対処している実相を検証し、また厳しい現実を国民に知らせ、法改正につなげる必要があるのではないだろうか。
■政府に有難迷惑の論文
6月28日のJBpressに織田邦男元空将が投稿した「東シナ海で一触即発の危機、ついに中国が軍事行動 中国機のミサイル攻撃を避けようと、自衛隊機が自己防御装置作動」(http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/47196)が波紋を広げた。
この論文を巡って、日本政府(内閣官房及び防衛省)は翌29日、スクランブル発進したことは認めたが、「攻撃動作やミサイル攻撃を受けたというような事実はない」と否定した。
そのうえで、記事が「国際社会に与える影響も大きい。内容については個人的(注:萩生田光一官房副長官)には遺憾だ」(「産経新聞」平成28.6.30)と述べ、投稿者を批判した。
ところが、その5日後の7月4日、中国国防省が「東シナ海を巡行する中国軍のSU-30戦闘機2機に対し、空自F-15戦闘機2機が高速で近づき、レーダーを照射。中国軍機が対応したところ空自機はミサイルなどを撹乱する『フレア』を噴射して逃げた」(『正論』2016年9月)と、発表したのである。
同誌によると、河野克俊統合幕僚長も記者会見で「論文は事実に基づいていない」と否定し、また論文投稿自体を「適切でない」と非難したという。
事実は1つしかないし、織田氏によると、まかり間違えば、戦闘機が格闘するドッグ・ファイトが生起しかねなかった緊迫した状況にあったようである。
事案が起きた6月17日は参院選の告示直前であり、その後の参院選でも事案が公表されなかったこともあり、「一触即発」状況に誰も気づくことなく、民進党は共産党などとスクラムを組んで安保法制を「戦争法」と称して廃案を目指して選挙戦を闘ったのである。
日本国民の関心は、今でもほぼ地球の裏側で開かれているリオ・オリンピックに向いている。この時期を狙うかのように、中国海軍は連日のように公船や、大量の漁船、そして軍艦まで繰り出して尖閣諸島の接続水域入域はおろか、領海侵犯さえ繰り返している。
織田論文は、国民の惰眠に警鐘を鳴らし、蝸牛角上の争いでは済まされないことを教えている。
■領海空侵犯には厳正対処が基本
ここ数年に国際社会で起きた領海・領空侵犯等に対して、国際法等で対処したいくつかの事案を見てみよう。
艦艇の撃沈こそないが、漁船の不法滞在や違法操業などに対して、被害国が警告した後も退去しないなどから、発砲し撃沈させた事例などはある。国際法上は問題なく、攻撃した側が批判されたこともない。
パラオは2012年3月、3日間にわたり領海にとどまっていた中国漁船を銃撃し、船員1人を射殺した。中国は猛抗議したが、パラオは一歩も引くことなく、逮捕・起訴した中国人船員25人全員に、1人1000ドルの罰金を支払わせて釈放した。
2016年3月にはアルゼンチン沿岸警備隊が、南大西洋の同国の排他的経済水域で違法操業していた中国の大型漁船を見つけ停船を命ずるが、従わずに抵抗するなどしたために、警告の上で発砲し沈没させた。
他方、領空侵犯では2014年3月23日、トルコ空軍は国境に接近するシリア空軍戦闘機Mig-29、2機に対し4度にわたり警告を発したが従わなかったため、1機が領空に侵入した時点でトルコ空軍F-16がミサイルで撃墜する。
2015年11月24日には、イスラム国空爆に向かうロシア空軍機が領空侵犯を繰り返していたので、手続きを踏んで抗議、警告を発する。しかし、その後も領空侵犯を繰り返したためトルコ空軍F-16 が領空侵犯したロシア空軍機Su-24を撃墜した。
いずれも国際法にのっとった対処で、国際社会ではパラオ、アルゼンチン、トルコ政府を非難する声はほとんんど聞かれなかったという。
東シナ海の尖閣諸島周辺では、接続水域や領海、さらには上空などにおいて、海保や空自の警告を無視した中国の漁船、公船、軍艦、そして軍用機などが傍若無人の行動をとっている。
織田氏が言うように、「空自機は『やられる』まで反撃できない」(『正論』2016年9月号)となれば、空自のパイロットも戦闘機もいくらあってもたまらないし、そもそも日本の防衛自体が成り立たないのではないだろうか。
■常駐で実効支配の顕示を
「自民党は平成24年の衆院選で、尖閣諸島への公務員常駐を公約に掲げたが、政権復帰後は放置している。自衛隊を含め有人化の検討を急ぐ必要がある」。これは、平成28年8月8日付「産経新聞」の「主張」である。
常駐は日本領土であることの明示であり、民主党政権が国有化した後に行われた選挙公約である。常駐などを進めておれば、日本の主権主張も確たるものになったであろうし、中国も今日とは違った形の行動をとっていたのではないだろうか。
しかし、日本が何もしてこなかった結果であろうが、今年6月から8月初旬にかけての中国の行動は、従来の行動からレベルアップさせたものとなっている。
一部の中国漁民は軍事訓練を受けていることも以前から報告されていた。そもそも、2008年に海上保安庁の巡視船に追突した中国漁船は、巡視船を破損させるほどで、今日いうところの偽装漁船であったのであろう。
尖閣諸島周辺海域では、中国海警の公船に加え、軍艦までが遂に出動し、はては論文が暴いた戦闘機の「攻撃動作の仕かけ」である。
また、日中中間線の中国側ガス田では施設の建設がどんどん進んでいる。今では16基が確認され、上部にヘリパッドやレーダーが設置された施設もあり、3基では炎が上がって採掘が始めていることも確認されている。
ほとんど報道されてこなかったが、安保法案審議が行われていた昨年もこうした動きがみられていた。それにもかかわらず、法案の必要性や準備された法案で対処できるかなどについての議論は一切なかった。
いま、当時の新聞を開いてみると、安保法案を審議する衆院特別委の1コマにつけられた(大中小の)見出しは、「緊張感なき『戦後最大の法案』」「響きわたるやじ・3割が空席・・・TVでは伝わらない実態」「後半は睡眠・談笑」(「産経新聞」平成27年6月1日)とある。
同時期に共同通信社が実施した世論調査では、政権の姿勢に対して81.4%が「十分に説明しているとは思わない」と答えている。野党が、成立させたくない法案のため必要性ではなく憲法論に持ち込み、審議をさせなかったと言った方が適切であろう。
■事実関係の検証が不可欠
これほど由々しき事態が連日のように発生しているにもかかわらず、国民に張りつめた空気は感じられない。何と能天気な日本であることか。
先の安保法案審議では憲法問題に入ってしまい、政府側も法案成立を目指すあまり、東シナ海や尖閣諸島をめぐる情勢を議論しないままに終わってしまった。
その東シナ海で、「一触即発」の事態が起きているわけである。織田氏は戦闘機の特性に触れつつ、「政府判断は中国をエスカレートさせないか」(同誌)と危惧している。
ドッグ・ファイトや戦争に発展しない仕掛けが不可欠である。それは国際法にのっとって行動し、国際社会を味方につける以外にない。今回の事案では、どういう状況が発生していたかを自民党の外交防衛部会などが検証して、必要とあれば国民に実態を開示し、自衛隊法の改正などにつなげる必要があろう。
自衛隊の行動には防衛出動や治安出動、さらには海上警備行動及び領空侵犯措置などがあるが、織田氏は領空侵犯措置以外の行動には自衛隊法で権限規定が明記されているが、領空侵犯措置にだけ権限規定の記述がないことを指摘している。
自衛隊は軍隊でないということから、基本的に警職法に基づく行動しかとれないので「武器の使用」が辛うじて許されているだけである。
そこには「武力の行使」を基本とする「戦争」の意識がないので、相手には「臆病」とか「弱い」といった誤解しか与えず、相手は「威嚇」などでどんどん押してくることになる。
こうした相手の行動を食い止めるためには、日本が国際法に基づく「武力の行使」を正々堂々ととり得る法体系で対処する以外にない。
ともあれ、「一触即発」の状況がどのように起きたか、その実態、そしてパイロットが採り得る行動、法令で十分か否かなどを検証することが必要である。
織田氏は「実力で抵抗する侵犯機には『武器使用を認める』というが」、実際は法律論の世界を出ていないので現場の実情とのかい離が大きいという。そうしたことから、過去に改正案が検討されたこともあったが、実現していないと述べる。
■おわりに
政府は平成27年4月3日、閣議で自衛隊を「国際法上、一般的には軍隊として取り扱われる」とする答弁書を決定している。
広辞苑などでいう戦うための集団・組織で、陸海空軍の汎称という点からは、政府が認めるように「軍隊」と言われるであろう。
しかし、実際はどこの軍隊も「××をやってはいけない」とネガティブリストで、やってはいけないことを示すのみであるから、想定外を繰り出す相手に対して、あらゆる手段を駆使して対処することが許される。
ところが自衛隊だけは「○○はやってよい」とポジティブリストで示しているため、何が起きるか分からない状況でも往々にして対応できないことが多くなる。「一触即発」事案は、こうした日本の法体系に関わる問題であろう。
PKO(平和維持活動)始まって以来、自衛隊は犠牲者を出していないという「褒め言葉」がある。犠牲者を出していないことは確かに訓練精到な証ではある。指揮官も部隊も「1人も欠けることなく、任務を完遂して帰国するぞ!」が、派遣される部隊のモットーにさえなったと聞いたことがある。
国家としては、被害者などを出さない最善の策かもしれないが、他国軍に守ってもらい、共同訓練やレクレーションなどを相互に繰り広げた部隊としては、相手を助けられないことほど恥ずかしい名誉の喪失はない。この不名誉は、ある程度、先の安保法制で緩和された。
しかし、最大の問題は他国の軍隊が国際の法規や慣例に準拠して行動できることが、自衛隊ではできないことである。
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