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「こども国債」の発行で日本経済は蘇る --- 玉木 雄一郎(アゴラ)
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20160818-00010007-agora-bus_all&p=1
子育て世代の支援が個人消費回復のカギ
本年4月〜6月の実質GDPは0.04%、年率換算でわずか0.2%にとどまりました。特に、GDPの6割を占める個人消費は前期比0.2%増で力強さを欠いています。
実質賃金がプラスに転じたのに、なぜ消費が振るわないのか。一つのヒントが、内閣府が今月発表した経済財政白書の記述の中にあります。同白書は「39歳以下の子育て世帯が、将来不安を背景に消費を抑制している」と指摘しています。非正規労働も増える中、本来旺盛な消費意欲のある彼らが財布のひもを固くしています。
ただ、逆に言えば、彼らの世代の将来不安を取り除くことができれば、低迷する個人消費を下支えし、日本経済の停滞を打開する処方箋になるはずです。そこで、私は、以下に述べる「こども国債」の発行による、思い切った子育て・教育支援の拡充を提案したいと思います。
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「こども国債」の発行で消費拡大と持続的な経済成長を
過度に金融政策に依存する政策が限界にきていることは誰の目にも明らかで、伊勢志摩サミットでも、適切な財政政策(fiscal policy)が必要とされました。しかし、自民党政権による財政政策は、どうしても公共事業中心になりがちで、実際、この秋の補正予算でも、約4兆円規模の建設国債の発行を予定しているようです。
これに対して、私は、全く別の方法による財政政策を提案したいと思います。それは、子育てや教育支援の財源確保のための新型国債(「こども国債」(仮称))発行による、子育て・教育関連予算の倍増政策です。もちろん、子育てや教育支援はGDPの拡大を目的に行うものではありませんが、現在、我が国における子育て・教育といった「家庭政策」向けの支出は、GDPの約1%、金額で言うと5兆円程度で、OECD平均の約半分しかありません。そこで、「こども国債」の発行によって財源を確保し、関連予算の規模をOECD平均並みのGDPの約2%にまで倍増させれば、毎年新たに5兆円規模の支出が増え、我が国の子育て・教育関連予算は約10兆円規模になります。
子育て・教育予算の倍増でGDP成長率1%程度アップ
そして、この規模の予算があれば、大学教育と就学前教育を無償化できるし、保育士の待遇改善も進めることも可能となり、子育てや教育の内容は驚くほど向上するでしょう。また、政府支出が新たに約5兆円分増えれば、その分、子育て世代の経済負担が減るので、国民のマインドも明るくなり、課題である個人消費の拡大も期待できます。安倍政権になってからの実質GDPの成長率は年率0.8%ですが、負担軽減分の5兆円のほとんどが消費に回ると仮定すれば、同程度の経済成長率は容易に達成できるはずです。
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「こども国債」は財政健全化にも整合的
問題は、「こども国債」といっても、結局は借金であって、財政再建に反するとの批判があるでしょう。しかし、問題はありません。まず、思い切った子育て・教育支援によって子どもの数が増えれば、彼らは将来、立派な納税者になります。20年〜30年償還の「こども国債」を発行すれば、彼らが自らその借金を返していくことになります。財政学でいう「自償性」の高い国債と言えます。さらに、子育てや教育を充実させることによって失業率などが改善すれば、将来にわたる様々な公的支出も抑制されるでしょう。
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昔「建設国債」、今「こども国債」
前回の東京オリンピックが開催された昭和30年代の日本の課題は、道路や港湾といったインフラ整備でした。そしてインフラはいったん完成すれば、後の世代も恩恵を受けるという理由で、インフラ整備には、財政法上、「建設国債」の発行という形の借金が認められ、整備が加速していきました。
あれから約半世紀、再び東京でオリンピックが開催されるようになった現代の日本が抱える最大の課題は、少子化・人口減少です。人が減り続ければ経済成長はあり得ないし、逆に人が生まれ育てば、その恩恵は後の世代も含めて享受できます。そうであるなら、今の日本において、借金してでも増やすべきなのは、公共事業予算ではなく、子育てや教育関連の予算ではないでしょうか。そのために発行するのが「こども国債」です。
半世紀の時を経て、日本は「建設国債」を必要とする国から「こども国債」を必要とする国に変わったと言えます。
「人への投資こそ最大の成長の源泉である」
「こども国債」を年間5兆円程度発行するだけで、日本の子育て・教育の家計負担のあり方はがらりと変わるはずです。その結果、個人消費の拡大と持続可能な経済成長が期待できます。さらに、短期的な経済効果にとどまらず、「こども国債」を活用した「人への投資」は、中長期的に、日本経済の潜在成長率の向上に寄与するはずです。
もちろん、異論・反論はあるでしょう。しかし、私は臆せず訴えていきたいと思います。「人への投資こそ最大の成長の源泉である」と。
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