http://sendatakayuki.web.fc2.com/etcgenkou4/syohyou175.html 著者若林亜紀氏は公務員問題を主たる取材フィールドとし、雑誌・テレビでご活躍中のフリージャーナリストである。簡単な略歴を記す。慶応義塾大学法学部政治学科卒業後、大手建設会社に就職し、厚生労働省の外郭団体特殊法人日本労働研究機構に転職した。10年間の勤務経験で、全く仕事が無くても60億円の予算を消費するだけの天下り天国にあきれ果て、公務員問題に目覚め退職した。著書にその時の経験をまとめた「ホージンノススメ 特殊法人の優雅で怠惰な生活日誌」(朝日新聞社)、「「独身手当給与明細でわかるトンデモ公務員の実態」(東洋経済新報社)などがある。本書の内容はその題名からして「ホージンノススメ 特殊法人の優雅で怠惰な生活日誌」の姉妹編と云うところであろうか。本書は12ヶ月の月ごとの話題(歳時記)で、公務員(国家と地方公務員)の優雅な生活を描写しようというものである。テーマごとに論じるのではなく、歳時記風の話題を追う構成なので随分読みやすくなっている。 本書を読み終えて、全く脱力感に苛まれる。怒ることも出来なくらいアホらしく、無能な人間集団である事が分った。公務員に仕事をさせるより、全員を生活保護で養ったほうがはるかに安くつく。社会保険庁みたいに仕事をさせればミスだらけ、その後始末に数千億円の金を必要とする。まさに泥棒に追い銭とはこのことだ。閑職と厚遇というのが地方公務員のイメージであるが、民間労働者からみると想像を絶する実態が曝露される。先日大分県で教員採用に賄賂が常習化してことが明るみになり、県教育委員会の要職者が逮捕された。同じ事は県市町村の職員採用でも噂どころか当然といわんばかりに話されている。それほど公務員の生活はおいしいのである。地方地方でさまざまな独自の手当が給与にプラスして支給され、厚生福利なども民間との格差は広がるばかりである。これは財源がすべて税金を使用していること、経済原理が働かず、予算内で節約のインセンティブは働かないこと、労働組合との長年の馴れ合いから来ている。国と地方財政の借金は合計1000兆円超える先進国中最悪の状態である。国が滅びても霞ヶ関は不滅と云う信仰に裏打ちされ、財政収支健全化と称して、さらに増税と借金をしようとしている。公務員は職業ではなく、武士とおなじ「身分」なのである。 4月 入庁式(裏口採用) 毎年入庁してくる信じん公務員は、国家公務員で3万人、地方公務員で5万人もいる。地方公務員として役所に入るには議員か幹部役職のコネがきくが、賄賂の相場は300万円といわれる。法律では職員の採用は競争試験によると決められているが、民主党の長妻氏の調査では国家公務員80万人(2003年)のうち46%にあたる37万人が無試験で採用された。著者の勤めた厚生労働省の特殊法人日本労働政策研究所では、研究員と称して事務員を採用し、「仕事はないからお茶でも飲むか本でも読んでいて」といわれたと云う。役所にはタイムカードは無く、遅刻はざらである。オフィスは余裕があり、茶室まであったという。 5月 ゴールデンウィーク(公務員の休日)、メーデー(労働組合) 地方公務員の個人的国内旅行は届出制、国家公務員では個人的国内旅行は自由であるが国外旅行は承認制である。だから海外旅行は申請はせずこっそり行っている。今日本の労働者で組合に入っているのは18%です。公務員の労働組合は民間に較べて桁違いに強い。最強の自治労は北海道庁と社会保険庁である。北海道庁(職員2万人)の組合専従職員が97人である。5000人以上の民間企業では専従員は平均4.9人である。以下に公務員労働組合専従者の数が多いかが良く分かる。そして決定的なのが、勤務時間中の専従者の給料は公務員では支払われており、民間では支払われないので組合費から払っていることだ。組合加入はほぼ強制的であり、組合を脱退するとリストラの対象となる。消えた年金問題で散々叩かれて、社会保険庁の「自治労国費評議会」労働組合では仕事が極めて楽なことが判明した。パソコンキータッチは一日5000回以内とか、45分働くと15分休憩、個人情報にアクセスしても記録を残さないとかと云う取り決めがあったそうだ。また組合に反対する職員に対する人事、昇給差別が公然と労使でおこなわれている。このような役所に批判が集中し、消えた年金記録の責任を取る形で2010年には社保庁は解体される予定です。 6月 ジューンブライド(結婚事情)、衣替え(制服) 1991年に出来た育児休業法で民間は1年間、給料は半額もらえますが、公務員の育児休業はなんと3年で、出来た穴は期限付き非常勤職員を採用するそうだ。民間企業に勤める男性と結婚した公務員の妻の福利厚生の優遇(官民格差)を知って、世帯主を妻に書き換えるのが通例になっている。社宅、扶養手当、子供のおりおりの祝い金、親の扶養手当などが厚遇され優雅な生活を楽しめるからだ。公務員の制服は支給される。 7月 夏休み 04年度の取手市職員の有給休暇取得日数は15.6日で民間企業従業員の平均8.4日の倍近くあった。それ以外に夏の特別休暇が5日もある。民間では連休には有給休暇実施が当然のように組み入れられている。特別に有給休暇を取らなくても、年に4,5日は強制的にとっている事になっている。労働基本法で定められた有給休暇をとることは問題ないとして、それ以外に休暇を与えるので公務員の休暇は多すぎる。教員の夏季休暇が多いのは当然であろうが、「自主研修」どん「出張」だのと云うウソを使って休暇にしている。生徒のいない学校に先生だけが出てきても仕事にならないなら、休みにして給料を減らせばいい。校長の月給は64万円、非常勤補助教員の年収が80万円では落差が大きすぎる。補助教員には夏季休暇中の給料は支給されない。 8月 サマーレビュー(予算分捕り作文月間 国の予算は税収が50兆円で国債(借金)30兆円の生活である。高度経済成長期の右上がりの時政府支出も増えた。その影響が今も消えない。借金生活に慣れっこになったようだ。「ポストは予算についてくる」といわれ、官庁では予算獲得がすべての出発点である。8月はその分捕り合戦期で、役人は「作文」書きに精を出す。90年まで「ODA]と云う後進国援助、90年以降は「景気対策」、「失業対策」といえば予算が付いたものだ。この頃の厚生労働省のリゾートホテルが失敗し、800億円で作った「スパウザ小田原」は8億円で投売りした。京都の「私のしごと館」は2003年600億円でできたが、今年廃止が決まった。2008年度の作文のテーマは「環境」と「少子化対策」であった。駅前の一等地にホテルのような立派な保育所が作られることだろう。 9月 敬老の日(退職金) 80年代半ばより、年金世帯の所得のほうが勤労世帯の所得より多くなった。民間企業の平均年収は435万円、年金所得者は268万円で、働いている人と年金のみの人を平均した年収は506万円だといわれる。国家公務員の平均退職金は2714万円、地方公務員は2400-2600万円である。教員は2894万円、警察官2752万円と少し高い。民間企業の平均は1110万円です。公務員はたいがい定年後は再任用制で平均24万円の月給です。ところが殆ど仕事らしい仕事はありません。キャリアー官僚の退職金は云うのもばかばかしいほど出る。課長クラスで3298万円、審議官クラスで5302万円、長官で6714万円、事務次官で7594万円だ。天下った後は平均年収1600万円、2年毎の退職金2000万円が出る。「退職金渡り鳥」にこれだけの金が税金から出るだ。 10月 引越し(住宅事情) 都心のマンションやアパートの家賃は20万円、都下で8万円といわれる。ところが公務員宿舎使用料金は格安で都心皇居近くでも一律4万円以下で、危機管理住宅と云う変な名前の官舎はただである。公務員が自分でアパートを借りると家賃補助が27000円、自宅では25000円の住居手当が付く。そして官舎は公務員10人に6戸も用意されている。民間企業では10人につき1戸の住宅事情だ。リストラで独身寮や社宅はどんどん廃止されており、3年前の4分の1程度になった。官舎ではないが、都営住宅、兼営住宅、市営住宅は割安な物件だが、抽選に当らないのが玉に瑕だ。
11月 文化の日(自治体の美術コレクション) 財政難で有名な大阪市の倉庫には150億円の美術品が眠っている。そもそも大阪市の公債残高は全国一の5兆5000億円にのぼり、市長は「非常事態宣言」を出した。事の起こりは1983年市政100周年記念で近代美術館を建てようとなって、買いあさった美術品がそれである。ところが途中バブルがあって建設計画が吹っ飛び美術品だけが宙に浮いている。又最近の流行として豪華ホテルか城のようなごみ焼却場の建設が続いている。大阪市の場合も609億円のごみ焼却場が建設された。このような箱物行政のつけが住民に借財となって重く圧し掛かっている。毎年11月から12月にかけて日本の役所に韓国の役人が大勢視察に来る。韓国の役人はもちろん観光旅行である。韓国・中国の役人の腐敗は著しい。それにお付き合いするのもバカバカしい。 12月 冬のボーナス(賞与と査定) 社会保険庁のように公務員は不祥事を出しても賞与は減らない。退職金も満額もらえる。公務員の平均年収は814万円で、41歳で月給40万円、夏のボーナスは104万円、冬のボーナスは110万円である。日本経済連の大手企業でボーナスの平均は89万円である。中小企業ではさらに少なく20-30万円というところだ。民間企業では会社の業績がよければボーナスは増え、悪くなれば減る。しかし公務員は財政が赤字でもボーナスは減らない。もう一つ公務員が気楽なのは査定が無い事だ。年功序列が堅く守られており、同期ならボーナス額は同じである。国家公務員法では「勤務評定をする」ことになっているのだが、組合の反対でこの何十年と査定はおこなわれた事がない。都道府県と政令指定都市では勤務評定はおこなわれているが、それ以外の市町村では50%程度であった。それも形ばかりの査定で、少しも差が付いていない。まさに公務員は社会主義国と同じである。官僚主義で競争原理が働かないのだ。この役所の意識を変えるには夕張市のように一度破綻する必要がある。 1月 成人の日(給与と手当て) ヤクザな橋下知事で有名な大阪府の市町村の職員互助組合が職員に出産、入園、入学、成人祝い金などが配布されるが、これに自治体が60%も補給していたと云うことが話題になったのは最近のことだ。全国では2006年会計院の調査でその手当補助金が総額667億円にもなった。地方自治体で面白い手当てがある。独身手当て、出世困難手当て、窓口業務手当て、旅行手当て、寒冷地手当てなどやりすぎではないか。国家公務員の平均年収は一般で814万円、自衛隊は593万円、地方公務員では東京都で801万円、全国平均で700万円だ。民間の平均年収は616万円だ。いかに民間に較べて優遇されているかがわかる。驚きの例として、緑のオバサンが802万円、給食調理員が728万円、清掃職員大阪市で1000万円(同和問題が絡んでいそう)、神戸市バス運転手890万円、公用車運転手805万円(タクシー運転手379万円)と云うことで、民間類似職種の給与と較べて公務員の給与は、1.5倍から1.9倍もあった。又地方公務員の管理職の比率が極めて高い。管理職が60%も占め、民間では9%以下である。自治体では人事に差をつけるのは忍びないそうだ。こんな理屈が通る事が問題だ。 2月 議会(役人と議員) 前鳥取県知事の片山義博しは政府の地方分権委員会で「殆どの議会は八百長。シナリオを決めて読みあう学芸会にすぎない」と述べた。一番ひどいのが北海道議会で、シナリオに無い質問をすると「品位がない」と懲戒処分が下されたらしい。全国都道府県議会のうち38議会は質問内容を事前通告制にしており、神奈川・高知など9議会は事前通告無の樹結うな議論がおこなわれている。質問については国会でも同じで、前もって質問を届け出、官僚が答弁書をかいて閣僚が読み上げると云う猿芝居である。官僚内閣制といわれるのは政治家が余りにだらしないからで、一人官僚のせいににするわけにもゆかない。官僚は政治家を篭絡するために、情報提供と入札の便宜と箱物行政である。政治家の不勉強、政治家自身の利益の機会提供、地元への土産のためである。 3月 春うつ・年度末(自殺、予算消化) 人口10万人当たりの国民の死因の1位は癌(68.6人)、2位は自殺(27.8)、第3位は心臓病、4位は脳卒中です。公務員の死因の第1位は癌(42.7)、第2位は自殺(17,7)とむしろ死者数は少ない。長生きしたければ公務員と云う構図がでてきます。それだけ気楽な生活なのでしょうか。公務員の求職者数の数も多く、福岡県では職員42318名のうち、休職者は657名(2006年)であった。休職中は6割の給料がもらえ、3年間休める上更新も可能ということです。民間では半年で首です。休職中の給料はゼロです。民間との労働環境の差が大きすぎて開いた口がふさがりません。3月になると急に予算消化のために出費・工事が増えます。海外出張が増えるのも3月です。予算消費のため財務省の出向役人が音頭を取って消化に励みます。外務省のパリ大使館のワインまとめ買いは新聞で話題なった。パーティも盛んに行い消化に勤める。年度末決済もあるだろうが、国土交通省、環境省も3月に予算の2/3を使い切る。カラ出張・カラ残業も予算消化のためのからくりで、これが裏金(幹部職員の慰安など)に化けるのだ。中央各省庁の3月の歳出は18兆円、2月では3兆円に過ぎない。消費税1%は2兆円であるから、3月の無駄使いを半分にするだけで9兆円つまり消費税4%を下げる効果がある。官庁の無駄使いはハンパじゃない。
[32初期非表示理由]:担当:重複コメント
|