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中国・北京で握手する国連の潘基文事務総長(左)と中国の習近平国家主席(右、2016年7月7日撮影)〔AFPBB News〕
長期政権にあぐらかく安倍首相、中国の思う壺に 宥和的対応を見抜いて東シナ海で軍事行動活発化
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/47523
2016.8.4 森 清勇 JBpress
中国は東シナ海の日中中間線付近でも、日中合意を無視して一方的にガス田開発を進めている。
「防衛白書」は早い段階から、「中国はわが国を含む周辺諸国との利害が対立する問題を巡って、高圧的とも指摘される対応を示すなど、今後の方向性について不安を抱かせる面もある」と指摘していた。
米議会の諮問機関「米中経済安全保障調査委員会」も年次報告で、中国が尖閣諸島の周辺海域で「軍事、民間の両面でプレゼンスを静かに増大し続けている」(産経新聞27.11.19)と警鐘を鳴らしていた。
こうしたことが明示的になったのが2008年12月8日、中国が海洋調査船2隻(海監46号、海監51号)を尖閣諸島の日本領海内に侵入させたことである。2010年9月7日には、尖閣諸島沖で不審船の取り締まりをしていた海上保安庁所属の巡視船に、中国漁船が追突する事案が発生する。
日本は逮捕した船長たちを法的手続きできちっと裁き、管轄権を明確にする絶好のチャンスであったが、中国が繰り出すあの手この手の圧力に菅直人政権は腰砕けとなる。
この対中軟弱姿勢が、中国に一段と大胆な行動を取らせる誘因になった可能性がある。
爾後、中国が問題を起し日本が抗議すると、中国は「古来から中国の領土」という謳い文句で、あべこべに日本が事案や騒ぎを起こしたと理不尽な報道官コメントを国際社会に向けて行い、圧力をかける状況を繰り返す。
安倍晋三政権になってからも、公船の接続水域侵入が続き、領海侵犯もしばしば起きている。しかし、安保法制成立以後は長期政権を視野に入れ始めたのか、対中外交で軟弱姿勢に転じたのではないかと仄聞する。
■「隣国への情け」などあり得ない
追突事案の半年後の2011年3月11日、日本は千年に一度とも言われた東日本大震災に見舞われる。茫然自失の菅政権は国の守りそっちのけで、自衛隊の半数を大震災対処に当たらせる未曾有の態勢をとる。
権謀術策で生き延び、隣国の混乱は自国のチャンスとみる中国に、日本の困惑への思いやりなどあるはずもない。国家海洋局所属のヘリが3月26日、海自艦「いそゆき」に水平約90メートル、高度約60メートルに接近し周回する威嚇行動を取る。
さらに4月1日にも同局の航空機が同じ間隔まで接近周回する極めて危険な飛行を行い、許し難い威嚇を行う。
しかし、日本政府はこうした中国の意図的と思われる威嚇行動に対して、何らの対応行動をとることもなかった。日本で初めて起きた福島第一原子力発電所のメルトダウン食い止めに汲汲であったし、こういう時期の中国の威嚇行動など思いもよらなかったのかもしれない。
日本のこうした対応状況は中国軍にしっかりメモリーされ、尖閣諸島周辺における中国の行動はエスカレートしていく。本来は国が対処すべきことでありながら放任状態におかれているため、都知事の石原慎太郎氏が大きな危惧を抱き動き出す。
知事がワシントンのヘリテージ財団主催のシンポジウムで尖閣諸島の買い取り合意を明らかにしたのは12年4月16日である。購入の動機については、島に港湾施設などを整備して日本の有効支配を確たるものにするためとした。
都による尖閣諸島購入の流れに中国政府は外交部の声明で激しく反発。このため日本政府(野田毅内閣)は中国政府の反発を和らげ「平穏かつ安定的な維持管理」をするためとして、国有化を決め、9月11日に移転登記などを済ませる。
政治主導を掲げて登場した民主党政権であったが、国民の期待に応えることができずに3年3か月余で自民党に政権を奪還される。
代わって登場した安倍政権は、第1次政権時代に引き続き安全保障における意思決定システムやシームレスな対応を可能にする安保法制の整備を進めた。
この間にも、中国公船による接続水域入域や領海侵犯は増加し、また領空接近に対するスクランブル発進回数は急激に増大している。
その都度、政府は「毅然とした対応」を語るが、行動が伴っているのだろうか。言葉遊びに終わっているように思えてならない。中国は確実に行動をエスカレートしているからである。
■憂国の士からきたメール
今年6月9日には尖閣諸島の接続水域に中国の軍艦が侵入した。従来の公船とは画然と意味を異にし、中国はステージを挙げたのである。そして15日は領海に侵入する。
友人から萩生田光一官房副長官に当てたという下記内容のメール(概要)が来た。
「口永良部島の領海に侵入した中国の軍艦に対し海上警備行動または防衛出動を発令しなかったのはどういう理由でしょうか?」
「無害通航をしたのかもしれないなどと相手の行動を許してしまったのは、非常に危険です。侵入して反撃されず、攻撃されず、悪意を善意に解釈されて、侵略を無害航行や訪問として許されてしまえば、彼らは日本のどこにでも侵入してくる、それも数日うちにやってくることが予測できます」
それが的中したかのように、2日後の東シナ海上空で中国はいまだかつてなかったスクランブル発進した自衛隊機に対する攻撃動作を仕かけてきたのである。
友人は、「領海侵入したらすぐさま、射撃する、撃沈するという態度を示さない限り、日本の中心までずかずかと入ってきてしまうのです。防衛出動を下令するのは総理大臣です。安倍さんは多弁によって、国家非常事態をまぎらわせ、中国の意図を調査するなどとごまかしている。調査しているあいだにどんどん侵略されてしまうのです」と続ける。
難産の安保法制は3月に施行されたが、例えば南スーダンに派遣されている部隊などにはすぐには適用されない。
たぶん法制に基づく教育や訓練が間に合っていないからであろうと推察されるが、そもそもの問題は自衛隊が軍隊でないために、通常の軍事行動がとれず、世界の常識を疑わせるような制約ばかり課されているからである。
今次の領海侵入も日米印が海上共同訓練を実施している状況下で、しかもインドの軍艦を追尾する形での情報収集艦の侵入である。無害通航ではない軍事的行動とみてもおかしくないが、政府は海上警備行動を取るどころか、抗議もしないで、懸念の伝達だけで済ませた。
日本が独立した国家として、国際慣習法に基づく防衛行動さえとり得ない根本は憲法9条にあるが、早急に見直される気配はない。侵略され、国民の生命財産が蹂躙されてから、対処行動を取るとでもいうのであろうか。
「すでに中国人は数百万人日本にいる。国防動員法(注:6年前に施行)が中国から発令されたら彼らは日本全土で蜂起するのです。満州人、内モンゴル人、チベット人やウィグル人のように日本民族は絶滅されてしまう」と、無抵抗に終わらざるを得ない現状を嘆く友人は、正しく憂国の士である。
中国の行動は目に見えて拡大している。日本は中国の行動に反比例して、刻一刻と「死に体」に近づいているのかもしれない。
■日本政府は消極的すぎないか
東シナ海上空で一触即発の事態が発生した状況については、元戦闘機パイロットで航空自衛隊航空支援集団司令官も務めた空将の織田邦男氏がJBpressで公開した。
記事によると、「これまで中国軍戦闘機は東シナ海の一定ラインから南下しようとはせず、空自のスクランブル機に対しても、敵対行動を取ったことは一度もなかった。だが今回は、(中略)これまでのラインを易々と越えて南下し、空自スクランブル機に対し攻撃行動を仕かけてきた」と述べる。
産経新聞(28.6.29付)によると、防衛省幹部は大筋で事実関係を認めたが、「実際にどこまで中国機が空自機に迫ったかが問題だ」と指摘した由である。
織田氏は「常識を度外視して、中国軍機が尖閣上空まで近づいてきている。これが常態化すれば、領空の安定は守れなくなる」と強調している。
萩生田光一官房副長官は6月29日の記者会見で、「17日に中国軍用機が南下し、自衛隊機がスクランブル発進をしたことは事実」と認めるが、「攻撃動作やミサイル攻撃を受けたというような事実はない」と説明。
そのうえで、「現役(自衛官)の応援の意味も含めての発信だと思うが、国際社会に与える影響も大きい。内容については個人的には遺憾だ」とコメントしている。
中国も符丁を合わせるかのように、「内容は事実無根」と否定し、日本のメディアの報道ぶりを批判している。
内閣官房が否定するので防衛省も詳しくは言えないのだろうが、産経新聞の取材に対して大筋で認めたということが大切であろう。
南シナ海に関しては仲裁裁判所の判決で、中国の主張に法的根拠がないとなったが、中国は一切認めないとしている。今後は、力で既成事実化を一層推進していくに違いない。
安倍政権が中国の傍若無人的な行動に今後も「抗議」でもない「懸念」表明だけで済ますならば、いずれは菅政権の二の舞になるのではないだろうか。
■軟弱外交がもたらした残酷物語
中国の無法ぶりは今に始まったことではない。中国がよく主張する「古来から」は「無法社会」の接頭語にこそふさわしいと言える。
アヘン戦争以来、中国は欧米諸国に蚕食されてきた。その欧米諸国が今日的用語法で言えばウィン‐ウィンの関係で、中国の領土保全と近代化に尽力してやろうと知恵を絞ったのがワシントン会議(1921‐22年)である。「支那に関する9か国条約」「支那の関税に関する条約」「山東懸案解決に関する条約」などが結ばれた。
しかし、支那(当時の中国)は、条約に基づく解決ではなく、米英などを味方につけて混乱をもたらし、愚直に条約を守る日本にその責任を押しつけて解決しようとした。
1927年3月、蒋介石の北伐中に暴徒化した革命軍が排外暴動を起こし、外国の権益や領事館、居留民団を襲い、虐殺、暴行、掠奪の限りを尽くした。米英仏の軍艦は城内に向けて砲撃するが、日本(の駆逐艦)は中央の命により隠忍する。世に言う南京事件であり、幣原軟弱外交である。
革命軍はこれをいいことに、焦点を日本に絞り、暴虐の限りを尽くす。「領事が神経痛のため、病臥中をかばう夫人を良人の前で裸体にし、薪炭車に連行して27人が輪姦したとか、30数人の婦女は少女に至るまで凌辱され、(中略)警察署長は射撃されて瀕死の重傷を負った。抵抗を禁じられた水兵が切歯扼腕してこの惨状に目を被うていなければならなかった」と佐々木到一少将は記している。
翌1928年5月にも16人が虐殺・凌辱され、暴行・略奪される済南事件が起きる。「手足を縛し、手斧様のもので頭部、面部に斬撃を加へ、あるいは滅多切りとなし、婦女は全て陰部に棒が挿入され」(佐々木少将)た状況で、酸鼻の極みであったという。
その後も同じような事案が繰り返され、1937年7月7日の盧溝橋事件、その3週間後には日本人居留民約350人が掠奪、暴行された揚げ句、婦人・子供を含む260人が虐殺される通州事件が起きる。
事件の都度、日本政府の不拡大方針により現地解決の線で話がまとまる。しかし、共産党の画策ですぐに停戦協定は破られる。こうした状況を何回も繰り返す。
中国は日本の外交を「良し」とするどころか、日本「与し易し」として、その後も日本人居留地だけを襲い、同様の蛮行を繰り返すことになる。
条約に責任を負うべき米英も、日本の条約遵守を尊ぶどころか、中国に味方して増長させ、支那事変に発展していく。
■おわりに
習近平政権は、南シナ海や東シナ海の内海化によって共産党の偉大さと統治の正統性を示そうとしているように思える。しかし、南シナ海については仲裁裁判で法的根拠がなくなったので、力による実効支配を一段と強めるとみられる。
他方で、米国の大統領選は混乱を極めており、オバマ政権より一層内向的になるともみられる。従来は米国が世界の警察官として目を光らせていたが、その力も意志もなくしつつある米国である。
こうして、法の支配を無視する中国の傍若無人ぶりは、一段とエスカレートするに違いない。
かつて、南シナ海で発生した米国の偵察機への中国軍機の異常接近などが、東シナ海でも発生しているし、日本に対する威嚇も上述の通りである。
また、中国は08年6月の日中政府によるガス田共同開発の合意を無視して開発を強行している。中間線の中国側にはすでに16基のガス田掘削施設が設けられ、3基が生産活動しているとみられている。
核を持たない日本は拡大核抑止に関しては米国に依存せざるを得ないが、その他においては台湾やインド、東南アジア、そして豪州などと価値観を共有しながら連携する必要がある。
核心は、軍艦の接続水域や領海侵入を既成事実化させないことである。そのために「日本は常に毅然とした態度を示し続けるべきだ」と元海将の伊藤俊幸氏は言う(産経新聞28.7.18)。
また、海上保安庁と自衛隊が警戒監視を強化すると同時に、「他国の海軍と共同パトロール」をする必要性を挙げる。その場合、日米に限らず、日米韓、日米豪、日米印、さらには4か国、5か国で「中国の行動は間違っている」というメッセージを日本以外の国も共同で発信することだという。
こうしたうえで、「いざという時には、海上警備行動をかけて『武器を使用するぞ』とアナウンスしておくのも大事だ」と語る。これによって抑止力を高めておくというのである。
南シナ海で中国が行ってきたことは、東シナ海へのシグナルでもあろう。しかし、南シナ海で中国が行った状況まで放置しておくことはできない。日本は一刻も早く、中国のエスカレートを止めなければならない。
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