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戦争にはどのくらいのお金がかかるのか知っているだろうか(写真はイメージ)
誰も言わないけれど戦争にはこれだけカネがかかる 太平洋戦争の戦費は天文学的レベルだった!
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/47482
2016.8.1 加谷 珪一 JBpress
参院選の結果、改憲勢力が3分の2を超えたことで、憲法改正が視野に入ってきた。
戦後の日本において安全保障の問題はイデオロギー論争と同一であり、憲法9条はもっぱら政治的な視点でのみ議論されてきた。今でもその傾向は大きく変わっていない。
だが、仮に9条が改正され、日本でも戦争遂行が可能ということになるとそうはいかなくなる。軍隊というのはお金のかかるものであり、経済問題と切り離して安全保障を議論することなどできないからである。
現在の日本は大きな経済的課題を抱えているが、戦争を経済の視点で捉えた議論はほとんど行われていない。日本は太平洋戦争という無謀な戦争を行い、国家財政を完全に破たんさせたという恥ずべき過去がある。本当に憲法を改正するつもりがあるのなら、戦争というものに対してもっとリアルな議論が必要なはずだ。
■太平洋戦争の戦費は国家予算の280倍?
戦争にはどのくらいのお金がかかるのか?
そう聞かれてスラスラと答えられる人はそう多くないだろう。メディアの報道でも経済的な部分に焦点が当たることは少ない。だが戦争の遂行能力は、その国の経済力に依存しており、経済や財政の問題と不可分である。戦争と経済の関係を知るには、まずは過去の具体例を探るのが近道である。
日本は明治維新以後、日清戦争、日露戦争、太平洋戦争という3つの大きな戦争を経験している。最初の大規模な戦争となった日清戦争の戦費は、当時の金額で約2億3000万円、初の近代戦となった日露戦争の戦費は約18億3000万円だった。
日清戦争開戦当時のGDP(当時はGNP)は13億4000万円だったので、戦費総額のGDP比は0.17倍である。現在の日本のGDPは約500兆円なので、単純に0.17倍という数字を当てはめると85兆円という金額になる。現在の国家予算(一般会計)は約100兆円なので、国家予算に匹敵する金額を1つの戦争に投じた計算だ。
一方、日露戦争当時のGDPは約30億円だったので、日露戦争における戦費総額のGDP比は0.6倍である。日露戦争の負担は日清戦争よりもはるかに大きく、現在の金額に当てはめると300兆円ということになる。
日清戦争から10年後に行われた日露戦争は、当時、急速に発達しつつあったグローバル経済を背景に実施された。最新鋭の艦船やハイテク兵器が多数投入されたため、戦争遂行期間がほとんど同じであるにもかかわらず、日清戦争の8倍もの戦費を必要とした。
これが太平洋戦争になると根本的にケタが変わってくる。太平洋戦争(日中戦争を含む)の名目上の戦費総額は約7600億円。日中戦争開戦時のGDPは228億円なので、戦費総額のGDP比率を計算すると33倍になる。国家予算に対する比率では何と280倍という、まさに天文学的な数字である。
■インフレというカラクリ
GDPの33倍ということになると、今の日本にあてはめれば、兆の単位を超え1.65京(けい)円になってしまう。ただ、この数字には少々カラクリがある。
太平洋戦争は国力を無視した戦争であり、経済的にはそもそも遂行が不可能なものであった。通常の手段で戦費を調達することはできず、そのほとんどは国債を日銀が直接引き受けることによって賄われた。これは、日銀が無制限に輪転機を回すということを意味しているので、当然のことながらインフレが発生する。インフレによって通貨価値が下がり、見かけ上の戦費も急上昇したのである。
また、旧日本軍はアジアの占領地域でかなり強引な戦費の調達を行っている。占領地域に国策金融機関を設立し、現地通貨や軍票(一種の約束手形)などを乱発した。
これは裏付けのない通貨のようなものなので、アジアの占領地域では、日本国内をはるかに上回るインフレが発生している。占領地では激しいインフレになっているにもかかわらず、名目上の交換レートは従来のまま据え置かれたので、書類上、占領地の軍事費は膨れ上がることになった。
したがって、実質ベースで戦費がいくらかかったのかを知るためには、こうしたインフレの影響を控除する必要がある。日中戦争以降の国内インフレ率を考慮し、占領地のインフレ率を国内の1.5倍と仮定すると、太平洋戦争の戦費はおよそ2000億円と計算される。
戦費総額が2000億円だとすると、GDPとの比率は約8.8倍に、国家予算との比率では74倍となる。
先ほどの数字に比べればかなり小さくなったが、それでも現在の価値に置き換えれば4400兆円もの金額である。天文学的なレベルであることに変わりはない。
日本は終戦後、財政破たんから準ハイパーインフレに陥り、最終的には預金封鎖によって国民から財産を強制徴収する形で埋め合わせが行われた。
戦費に関するより詳しい分析は、拙著『教養として身につけておきたい戦争と経済の本質』(総合法令出版)に記したので、興味のある方は参照していただきたい。
■米国の戦費負担は思いのほか軽かった
経済を破たんさせた日本とは対照的に、大戦のもう一方の当事者である米国の財政にはかなり余裕があった。米国における第2次世界大戦の戦費総額は約3000億ドル。開戦当時の米国のGDPは920億ドルなのでGDP比は3.2倍となる。
絶対値としてはかなり大きい数字だが、日本と比べると相対的な負担はかなり軽い。当時の購買力平価に基づいた米国のGDPは日本の約5倍だったので、米国はドル換算で日本の2倍の戦費を投入した計算になる。日本は5倍の経済規模がある国と全面戦争したのであり、常識的に考えて日本側に勝ち目はない。
ちなみに米国は、第2次大戦後、朝鮮戦争、ベトナム戦争、湾岸戦争、イラク戦争という4つの大きな戦争を実施している。これらの戦争は、絶対水準としては小さなものではないが、米国経済が巨大であることから、経済に対するインパクトはそれほど大きくない。
朝鮮戦争には、延べ570万人の兵力と300億ドルの経費を投入している。しかし期間が36カ月と比較的短期間だったこともあり、戦費はGDP比0.1倍という低い水準に収まった。
泥沼の戦争と呼ばれ、米国衰退のきっかけになったとも言われるベトナム戦争も、経済的に見るとインパクトはそれほどでもない。延べ兵力は870万人、戦費総額は1100億ドルに達するが、戦費のGDP比は0.15倍であり、朝鮮戦争の1.5倍程度である。
イラク戦争になるとさらに負担は小さくなる。米国経済はレーガノミクス以降、めざましい成長を実現し、規模がさらに拡大した。イラク戦争の戦費総額は1兆370億ドル、延べ動員兵力は200万人と大規模だが、戦費のGDP比はわずか0.1倍である。
各戦争の戦費負担は、すべてGDP比で0.15倍以内に収まっていることが分かる。第2次大戦後の米国にとって、一連の戦争を遂行する経済的な負担はかなり小さかったというのが現実である。好調な経済が持続したので、こうした戦争を遂行できたと解釈することも可能だ。
■すべては経済力が決め手となる
近年、兵器のハイテク化が急速に進み、経済規模と戦争遂行能力はますます一致するようになっている。下の表は現時点における平時における各国の軍事費とGDPの大きさを比較したものである。
(* 配信先のサイトでこの記事をお読みの方はこちらで表をご覧いただけます。http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/46971)
当然といえば当然だが、世界最大の経済大国である米国の軍事費は突出しており、年間70兆円以上の金額を軍事費に支出している。日本の国家予算(一般会計)は年間約100兆円なので、米国は日本の国家予算に近い金額を常に軍事費として拠出していることになる。
次に金額が大きいのは中国である。中国はすでに年間25兆円程度を軍事費として支出しているが、中国政府の透明性は低い。総額でどの程度の支出があるのか、外部からは見えにくい状況となっており、実際にはもっと金額が多いという説もある。いずれにせよ、中国の軍事費はすでに日本の4倍以上もあるというのが現実である。
注目すべきなのは、軍事費のGDPに対する比率である。北朝鮮のように国民を飢えさせてもよい国は別として、一定以上の生活水準がある国は、無尽蔵に軍事費を使えるわけではない。最終的に軍事費は、GDPの一定割合に収まってくることになる。ロシアは、表の中ではもっとも国民生活に犠牲を強いて軍事費を捻出している国だが、それでもGDPに占める軍事費の割合は4.5%程度である。
GDPに対する軍事費の比率を一定以下に抑える必要があるのだとすると、軍事力の大きさは必然的にGDPの規模に比例することになる。
日本では1976年に三木内閣が、防衛費をGDP(当時はGNP)の1%以内に収めるという閣議決定を行って以降、防衛費はGDPの1%以内に抑制されてきた。このところ日本の防衛力が弱体化しているのは、防衛費の1%枠が原因であると指摘する声もある。だが、軍事費が基本的にGDPに比例するものだとすると、相対的に日本の防衛費が減っている最大の要因は、日本が経済成長できていないことである。
過去20年間、日本のGDPはほぼ横ばいだが、同じ期間で米国は2.4倍、ドイツは1.8倍、中国に至っては18.4倍に成長している。日本はバブル崩壊以後、グローバルな競争社会に背を向け、目先の安定を享受する代わりに成長を犠牲にする道を選択をしてきた。
もし日本が諸外国と同レベルの経済成長を実現し、国際的な平均水準であるGDP比2%を防衛費にかけていたと仮定すると、現在の防衛費は中国とほぼ同じ水準になる。日本人は、冷静にこの事実を理解しておく必要があるだろう。
「戦争は他の手段を持ってする政治の継続である」というクラウゼヴィッツの一節は非常に有名だが、政治や外交が経済活動の延長線上にあることもまた常識である。戦争と経済活動を切り離して考えることはできないし、ましてや勇ましい掛け声だけで戦争を遂行することなど不可能である。
本当に憲法を改正する気があるのなら、この現実と正面から向き合うことが必要だが、果たして今の日本人にその覚悟はあるのだろうか。
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