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YouTube「ANNnewsCH」より
相模原事件は措置入院解除のせいじゃない、警察の捜査ミスだ! いたずら殺害予告は逮捕しても植松容疑者は放置
http://lite-ra.com/2016/07/post-2461.html
2016.07.31. 措置入院解除より警察の捜査ミス リテラ
神奈川県相模原市の障がい者福祉施設「津久井やまゆり園」で起こった殺傷事件をめぐって、「措置入院」問題がクローズアップされている。3カ月前、植松聖容疑者が「他害の恐れあり」として措置入院になっていたのに、13日間で退院させたことについて、マスコミがこぞって批判の声を上げているのだ。
新聞やワイドショーも、「措置入院させても『人権』の問題で退院させざるを得ない」という主旨の専門家のコメントを紹介し、まるで「措置入院制度の不備のせいで事件が起きた」かのような主張を展開している。
いや、マスコミだけではない。安倍晋三首相も今月28日、関係閣僚会議でさっそく措置入院のあり方の見直しなどを指示し、厚生労働省も入院解除が妥当だったかどうかの調査を行うと発表した。
今回の事件は、明らかに社会にはびこる弱者排除の風潮と自民党=安倍政権の障がい者切り捨て政策に影響を受けたヘイトクライムなのに、そこにはまったく触れず、すべての原因が措置入院であるかのような論調が形成されているのだ。
しかし、はっきり言うが、今回の事件は措置入院制度とは何の関係もない。もし事件を未然に防げる可能性があったとしたら、それは措置入院以前の段階であり、責任はその段階で捜査を怠った警察にある。
周知のように、植松容疑者は衆院議長宛てで、差出人として自身の名前と住所、勤務先を明記した上、詳細な障がい者施設殺戮予告の手紙を渡していた。そこには、実際の犯行とまったく同じ手口の障害者大量殺戮の詳細な計画の予告が書かれ、「津久井やまゆり園」ともうひとつの施設を、具体的なターゲットとしてあげてもいた。
普通なら、これは「威力業務妨害」や「脅迫」で即、逮捕される案件であり、植松容疑者はこの段階で逮捕されているべきなのだ。
実際、これまでもSNSや脅迫状などで有名人や公共施設での殺人、爆破予告などをして、威力業務妨害や偽計業務妨害、脅迫で逮捕されたケースは山ほどある。
たとえば、「明日にしお(注:愛知県西尾市のことと思われる)で3人殺します」と2ちゃんねるに書き込んで偽計業務妨害で逮捕されたケース、同じく2ちゃんねるに「今から大量の子供を殺す。準備万端だぜ」と書き込んで威力業務妨害で逮捕されたケース、「ディズニーランドで客刺し殺してくる」と携帯の掲示板に書き込んで威力業務妨害で逮捕されたケースなど、今回の植松容疑者の予告文よりずっと具体性がない、ただのいたずらに対しても警察は厳しい姿勢で臨み、身柄を拘束してきた。
しかも、摘発対象は殺人や爆破といった、明確な犯罪予告だけではない。昨年6月には、2ちゃんねるの掲示板で、秋篠宮家次女の佳子内親王について、「逆らえないようにしてやる」「ICUには同志の仲間がたくさんいる」という書き込みをしただけで、43歳男性が偽計業務妨害で逮捕された。同じく昨年5月には、ドローンを各地で飛ばしていた15歳の少年が「東京・浅草神社の三社祭に行く」とネット配信しただけで威力業務妨害の容疑で逮捕されている。
さらに、相模原事件後の29日には、横浜市内の障がい者施設に対して、「破壊しに行きます」とメールを送った男が神奈川県警に逮捕されている。
ところが、植松容疑者について、警視庁はまったく捜査に動いていないのだ。繰り返すが、植松容疑者の予告文のほうが前述した逮捕事件よりもはるかに具体的であったにもかかわらず、だ。
仮に植松容疑者に精神疾患の可能性があったとしても(実際には病歴はなかった)、事情聴取くらいはすべきだと思うのだが、警視庁はそれすらしていない。神奈川県警に情報提供しただけ。その後、植松容疑者が同僚に障がい者の殺害を示唆したことで、施設が神奈川県警に通報。県警から自治体に報告が上がり、措置入院が決定されたが、もっと前の段階で、少なくとも事情聴取には踏み切るべきだったのだ。
これは明らかに、警察、とくに警視庁の捜査怠慢だろう。佳子内親王やディズニーランドについては具体性がなくても容疑者を逮捕しているのに、今回は事情聴取すらしない。このあまりに違う扱いを見ていると、警察自体が自民党の極右政治家たちやネトウヨ同様、障がい者の安全について重視しておらず、心の底で「障がい者は殺されてもかまわない」と考えているのではないか、と指摘したくなるくらいだ(29日に障がい者施設破壊予告の男を逮捕したのは、相模原事件後であり、批判を受けないように対応しただけだろう)。
しかも、テレビや新聞はこうした警視庁の捜査批判を一切していない。なぜか。キー局の社会部記者がため息まじりにこう語る。
「いまのマスコミ、とくにテレビは警察の捜査批判は絶対できませんよ。県警クラスならまだ、場合によっては捜査批判をすることもありますが、警視庁については絶対タブーです。警視庁はマスコミにとっていちばんの情報源であり、いま、公安部は完全に安倍政権の別働隊になっている。批判なんかしたら、どんな嫌がらせをされるかわからない。現場がやろうとしても、報道局の幹部が絶対に抑えにかかるはずです。とくに、今回の相模原の事件については、政府も警察も一切捜査ミスを認めず、措置入院問題に話をずらしていっていますからね。マスコミも右にならえ、ということなのでしょう」
つまり、「措置入院見直し」は警察の捜査ミスを隠蔽するためにもち出された話であり、マスコミはそれにまんまと乗っかっているだけなのだ。
しかも、いま、議論されているその措置入院制度の見直し論自体が明らかに的外れなものだ。自民党の極右政治家、保守系マスコミは、措置入院の強制性を高めろ、と叫んでいるが、これは日本も批准している国連の障害者権利条約の条文《いかなる場合においても自由の剥奪が障害の存在により正当化されないことを確保する》に逆行している。
そもそも日本は、先進国のなかでも精神科病院の患者入院日数がダントツで長く、人口1万人あたりの病床数も1位というランクを独走しつづけている“精神保健後進国”だ。こうした日本の対応は、WHO(世界保健機関)より、“社会に開かれた療法を取り入れることによって入院の増加を防ぐべき”などとする勧告を受けてきた。
しかも、これはたんに人権侵害の問題だけではない。治療の実効性という意味でも入院の強制性を高めることは逆効果だというのは専門家の間で常識となっている。現に、戦後の先進国の精神保健は、施設収容ではなく地域中心の継続的なケアに重点が置かれるようになっている。
そんな現実も知らずに、ひたすら「精神病患者を閉じ込めろ」と時代錯誤の主張を叫ぶ自民党政治家と右派マスコミ。ようするに、連中は今回の事件を政治利用して、人権制限の口実にしたいだけなのだ。実際、山東昭子参院議長などは、精神疾患の患者とはまったく関係のない性犯罪者対策として導入されている「GPSを使った監視」をもち出し、「人権という問題を原点から見つめ直すときがきている。ストーカーもそうだが、人権という美名の下に犯罪が横行している」といったとんでもない主張を当たり前のように語っている。
繰り返しておくが、今回の事件は明らかなヘイトクライムだ。植松聖容疑者が措置入院中に「ヒトラーの思想が2週間前に降りてきた」などと病院の担当者に語り、友人や理容室の店員に「障がい者は国にとって無駄な金じゃね?」「(障がい者)ひとりにつき税金がこれだけ使われている」「何人殺せばいくら税金が浮く」と語っていた。こうした思想は、安倍政権の閣僚や自民党の極右政治家たち、そしてネトウヨたちももっており、植松容疑者は明らかに影響を受けている。
それがまったく語られず、逆にここぞとばかりに、精神障がい者の人権制限が大きな声で叫ばれる。いったいこの国はどうなってしまったのだろうか。
(編集部)
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