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東京にはもっと集中と成長が必要だ
「保守・革新」というアジェンダ設定は終わった
2016.7.22(金) 池田 信夫
東京都知事選挙のポスター掲示板。戦後ずっと続いてきた「保守・革新」という対立にはもう意味がない
東京都知事選挙は、参議院選挙より盛り上がりをみせている。保守が小池百合子氏と増田寛也氏に分裂して、今までとは違うアジェンダ(争点)で選挙が行なわれているからだ。その意味で、この選挙は参院選より重要だ。
他方、街頭演説もしないで「戦争法案・憲法改悪反対」の集会で演説していたのが鳥越俊太郎氏だ。「参議院で改憲勢力が3分の2を超えたので出馬を決意した」という彼にとっては、都政なんかどうでもいいのだろう。60年安保から同じことを言い続けている鳥越氏は「超保守」である。
60年安保の亡霊を成仏させよう
自民党は保守党といわれるが、その綱領をみても保守主義といえる思想はない。「反共産主義」というのは昔は意味があったが、今は言わずもがなだろう。1955年に再軍備に反対する吉田茂の自由党に憲法改正を掲げる鳩山一郎の民主党が合流したのだから、一貫した思想がないのは当然だ。
唯一の党是といえるのは「自主憲法の制定」だが、これを可能にする衆参両院の3分の2を自民党は取ることができなかった。今回の参院選で「改憲勢力」が3分の2を超えたといわれるが、憲法第9条については公明党が改正に反対している。
改正の発議ができたとしても、国民投票の過半数が必要だが、世論調査でも第9条の改正に賛成する人は3割以下だ。第9条を除外して改正しても意味がない。つまり「押しつけ憲法の改正」か「平和憲法の改悪反対」かなどというアジェンダは、存在しないのだ。
とすれば、いったい日本の政党は何をめぐって対立しているのか。参院選の投票率が50%前後と低迷するのも、国民に政策の選択肢がないからだ。民進党のように共産党と「民共連合」を組んでも、支持基盤を狭めるだけだろう。
今回の都知事選で争われているのは、そういう旧態依然のイデオロギーを都政に持ち込もうとしている「革新」の鳥越氏と、もっと身近な都政の問題を訴える「保守」の小池・増田氏の戦いだ。これから国政も、こうした現実的な問題が争点になるだろう。
いつまでも憲法や安保をめぐる言葉遊びをしている時間はない。あと10年で団塊の世代が後期高齢者になり、社会保障のコストは激増する。60年安保の亡霊はもう成仏させ、東京の緊急の課題を解決しなければならない。
東京にホームレスの老人があふれる
東京の――そして日本の――直面する最大の問題は、人口減少と高齢化だ。いま東京都の人口分布のピークは35〜39歳だが、これは25年後には60〜65歳になり、高齢者が143万人も増える(松谷明彦『東京劣化』)。
地方の高齢化はピークを越え、今後は団塊の世代が死亡して人口が減るだけだ。その後も人口はゆるやかに減少していくが、「地方消滅」などということはありえない。他方、東京の人口は減らないが、高齢化が急速に進むため税収が減る。このゆがみは世代間では若年層の貧困化として、地域間では都市のスラム化として出てくる。
東京の高齢者の4割は借家住まいである。彼らのほとんどは年金に頼って暮らしているが、財政の悪化で年金の減額は避けられない。そうなると賃貸住宅にも入れないホームレスの老人が、東京にあふれるだろう。
したがって安価な賃貸住宅の建設を補助するなど、公共投資を重点配分する必要がある。他方で税収も減るので、無駄な財政支出を減らし、社会保障を抜本改革して東京を「小さな政府」にする必要がある。オリンピックなどやっている場合ではないのだ。
これは「東京一極集中を是正」することではない。逆である。40年後には人口は9000万人を切り、その4割が高齢者になるので、人々は大都市に集まり、インフラ整備も都市に集中するしかないのだ。
東京から都市経営のイノベーションを
他方、世界の富は国家ではなく都市を単位にして動くようになっている。人口1000万人以上のメガシティは世界に20以上あり、その他420の非西洋圏の大都市が、今後10年の世界の経済成長の半分を占めるだろう、とマッキンゼーは予想している。
都市にインフラを集中することによってその効率も上がる。たとえば電車の路線が増えればその駅前の商店街の集積度が上がり、それに従って道路の利用効率も上がる・・・というように大都市化によってインフラの効率は指数関数的に上がるのだ。
だから人口減少時代に必要なのは、よく言われるような「脱成長」で衰退に甘んじることではない。それはいま豊かな人にとっては快いだろうが、40年後には国民負担率は7割を超え、可処分所得は絶対的に減る。必要なのは、生産性を上げて所得を維持することなのだ。
しかしこれは容易ではない。東京は香港やシンガポールなど、アジアの大都市との競争にも負け始めている上に、地方への所得移転によってさらにハンディキャップを負っている。これは企業でいうと黒字部門の収益で赤字部門の損失を補填しているようなもので、日本全体が沈んでいく。
実は東京には、まだ成長余力がある。大前研一氏によると、東京都の容積率は23区内の平均で136%にすぎない。これは高さに換算すると1.3階建てで、ニューヨークのマンハッタン(1400%)はおろか、住宅街(630%)にも遠く及ばない。
これは建築基準法の規制だけでなく、借地借家法で借家人の権利が強く、権利関係が複雑になっているためだ。このような低層家屋の多くは木造で、首都直下大地震が来たら火災で多くの死者が出る。こうした規制改革と再開発は、都知事の裁量でできる。
戦後ずっと続いてきた「保守・革新」という対立には、もう意味がない。21世紀は国民国家から都市国家に変わる時代だ、ポール・ローマー(世界銀行チーフ・エコノミスト)はいう。彼は都市を国家から独立させて企業のように経営する「チャーター・シティ」という構想を提案している。
今後は東京や大阪のような大都市が連合して、都市から日本を変えていくべきだ。1970年代の「革新自治体」の時代にも同じような動きがあったが、バラマキ福祉で自滅してしまった。今度は「選択と集中」によって都市の生産性を高めるイノベーションが必要だ。
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/47438
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