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都民にもう一度改憲を潰す好機 鳥越氏が勝てば内閣に衝撃
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2016年7月16日 日刊ゲンダイ 文字お越し
安倍政権にブレーキをかけられるか(C)日刊ゲンダイ
今度の都知事選(31日投開票)は、少子化対策や高齢化問題など都政にとって喫緊の課題の解決策で競うのはもちろんだが、争点はそれだけではない。
自公のやりたい放題を都議会でも許し続けるのか、それともブレーキをかけることになるのかどうか。選挙結果は今後の国政にも影響を与えるのは間違いなく、民進党・共産党・社民党・生活の党の4党が推薦する鳥越俊太郎候補(76)が勝利すれば、安倍政権に激震が走ることになる。
だからだろう、鳥越が参院選と同じ枠組みの野党統一候補として出馬することが決まった直後、増田寛也候補(64)を推す自民党は大慌てで世論調査を実施している。1日限りでサンプル数の少ない簡易的な調査らしいが、その結果が14日の告示日あたりから永田町周辺で出回っていて、「1位鳥越、2位増田、3位小池。それぞれの差は10ポイント以内」という。これを聞いた自民党幹部は、「まだ自公の組織の5割しか固めていない。現段階でこれなら増田にも勝ち目がある。小池は頭打ちだ」と満足げだった。
自公は鳥越に追いつけ追い越せと、今後、組織選挙でギシギシと引き締めてくるだろう。だが増田は、岩手県知事時代に公共事業で巨額の借金をつくり、ファーストクラスで外遊三昧だったような血税意識に欠ける人物だ。“公金タカリ”の舛添前知事の再来になりかねない。そのうえ数々の政府の委員を歴任し、告示直前まで東京電力の社外取締役でもあった。都民そっちのけで自民党の操り人形になるだろうことは想像に難くなく、都知事なんて論外だ。
■安倍政権と違う道を提示
一方、準備が遅れていた鳥越は15日、ようやく選挙公約をホームページにアップした。「あなたに都政を取り戻す」がキャッチフレーズ。〈第2の舛添問題を起こさせない体制をつくる〉など6つの柱を掲げ、「知事の海外出張費・公用車の利用ルールを見直す」「政治資金規正法の見直しを東京都から国に働きかける」などを打ち出している。
公約には、野党勝利のため不出馬という苦渋の決断を下した弁護士の宇都宮健児氏の政策も含まれているとみられる。
増田と小池に分裂した与党に対し、候補を一本化できた野党にとって、今回の知事選はまたとない大チャンスなのである。
「安倍政権に打撃を与える絶好の機会でもあります。東京都政が安倍政権とは違う道を提示することで国政への反射効果が出る。例えば、鳥越さんは『原発に依存しない社会』『再生可能エネルギーの普及』と主張しています。鳥越さんが都知事になれば国のエネルギー政策にも影響を及ぼす可能性が出てきます。実際、東京都は東電の株主ですから、東電関係者は誰が知事になるのか相当気にしています。鳥越さんなら、橋下徹さんが大阪市長に就任後、関西電力の株主総会に乗り込んだようなことをやるかもしれません。また、鳥越さんは出馬表明会見で、米軍横田基地へのオスプレイの乗り入れについても疑義を呈していました。米軍が持つ横田上空の管制権の返還も口にしていた。米国ベッタリの安倍政権とは違うという姿勢を見せることになるかもしれません。鳥越さんの公約には貧困・格差の是正も入っています。一部の金持ちのための安倍政治とは大きな対比になるでしょう」(ジャーナリスト・横田一氏)
そんな鳥越が当選すれば、当然、安倍政権がもくろむ憲法改悪にも重大な影響を与えることになる。昨夏の反安保法制の国会前デモで、あの「アベ政治を許さない」というポスターを掲げようと呼び掛けたひとりが鳥越なのだ。
自民党のパペット(C)日刊ゲンダイ
国政の嫌な流れを東京都政から変え、元に戻す
鳥越は政党からの呼び掛けに応じる形ではなく、自分から手を挙げた。その決断理由について、出馬表明会見で「あえて」と前置きしてこう語った。
「憲法改正が射程に入ってきていることが参院選でわかった。これは日本全体の問題だが東京都の問題でもある。国の流れを少し変える、元に戻すようなことを東京都から発信できれば」
憲法改正は都政と直結するものではない。しかしそれでも、こうした見解を胸に秘め、安倍政権による改憲に反対する野党4党の支援を受けた新知事の誕生は、全国に向けた「改憲NO」の象徴となることは間違いない。
政治評論家の森田実氏はこう言う。
「鳥越さんが都知事になれば、安倍首相の極右的な政策をチェックできます。安倍政権に対するブレーキ効果は大きい。改憲についてもやりにくいムードが出ると思います。かつて東京都に革新の美濃部知事が誕生した後、全国に革新知事が波及しました。鳥越さんが勝てば、全国の大きな自治体に政権寄りではない首長が広がる可能性があります。地方自治体から安倍包囲網ができ、国政の空気を変えていくことになるでしょう」
実際、すでに九州では安倍政権に距離を置く知事の誕生で、国の原発政策を揺るがす事態になっている。10日に投開票された鹿児島県知事選で、民進党や社民党の支援を受けた新人が自公支援の現職を破って当選。熊本地震の影響を考慮して、国内で唯一稼働中の川内原発の一時停止を公約にしていたから、28日の新知事就任を前に、いま政府や九州電力が右往左往しているのだ。鳥越が当選すれば、この鹿児島に続くことになるだけでなく、全国の知事選で野党勝利のドミノ現象が起こるきっかけになるかもしれない。
■野党共闘にますます弾み
そして鳥越の勝利は、政策に限らず、安倍首相の政権戦略にも衝撃を与えそうだ。政治評論家の野上忠興氏がこう話す。
「参院選の1人区で2ケタ勝利を挙げた野党共闘に対し、安倍首相は脅威を感じています。参院選が野党共闘のホップとすれば、都知事選はステップ、衆院選がジャンプです。鳥越さんが勝てば、次の衆院選に向け、野党は勢いがつく。見送られたダブル選挙に備え、民進党と共産党の間で候補者の一本化が協議され、すでに衆院の120選挙区について詰めたといいます。この先、最終的に200以上の選挙区で野党統一候補ができるでしょう。野党が見据えるのは改憲阻止です。安倍首相はますます解散・総選挙がやりにくくなりました」
自民党都連に反旗を翻しているとはいえ、小池百合子候補(64)はまだ自民党員だ。自公推薦の増田はもちろんのこと、小池が勝っても暴走する安倍政治の歯止めにはならない。
この首都決戦、安倍に一泡吹かせる千載一遇のチャンスであることを、有権者都民は肝に銘じるべきだ。
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