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「決して大企業を敵視していない」共産党・志位委員長に聞く 日本共産党中央委員会幹部会委員長・衆議院議員 志位和夫氏インタビュー
http://diamond.jp/articles/-/95404
2016年7月14日 週刊ダイヤモンド編集部
この7月10日の参議院選挙で、日本共産党は期待したほどに党勢拡大を果たすことができなかった。しかしながら、まさかの“野党共闘”にこぎつけた日本共産党とはどのような政党なのか。なぜ、日本社会には“共産党アレルギー”が存在するのか。そして、志位和夫委員長は、どのような人物なのか。普段の選挙戦では語られることがないベーシックな部分も含めて、志位委員長に今日の日本共産党について語ってもらった。「週刊ダイヤモンド」(6月25日号)の第1特集「創価学会と共産党」に掲載したインタビューの拡大版をお届けする(本インタビューは、選挙前の6月6日に行われました)。(聞き手/「週刊ダイヤモンド」編集部 池冨 仁)
――現在、自由民主党の安倍晋三政権と正面から“ガチンコ対決”できる存在として、あらためて日本共産党に対する注目が集まっています。
しい・かずお
1954年、千葉県生まれ。東京大学工学部物理工学科を卒業後、80年に日本共産党の東京都委員会に入る。82年に党中央委員会に転じ、90年には同書記長に選出される。93年に衆議院選挙で初当選。2000年、同幹部会委員長となる。幼少時の夢は音楽家になることだった。気分転換はクラシック音楽の鑑賞で、いつも持ち歩くiPadにはたくさんの楽曲や譜面が入っている。愛読書はロマン・ロランの『ベートーヴェンの生涯』。ミュージカルは家族で観る。Photo by Shinichi Yokoyama
やはり、政権を獲ってからの安倍首相がやってきたことの数々は、「あまりにも危うい」と感じている国民が増えているのだと思います。
これまで安倍首相は、選挙戦を戦う上ではアベノミクス(成長戦略)一本に絞って進めてきました。そして、いったん多数派となるや、今度は秘密保護法案を強行採決したり、集団的自衛権の行使を容認する閣議決定をしたり、さらには安全保障関連法案を強行採決しています。
――日本共産党では、安保法制を“戦争法”と定義していますね。
私たちは、日本を戦争する国に造り変える安保法制という意味で、戦争法と呼んでいます。この戦争法は、「戦争の放棄」「戦争力の不保持」「交戦権の否認」から構成されている日本国憲法の第9条を破壊する行為だと考えています。
そうした安倍内閣の暴走が続く中で、@ぶれることなく反対する政党が欲しい、A反対するだけでなく、経済でも外交でも対案を出す必要がある、B野党がバラバラに動くのではなく、結束して安倍政権を倒してほしいとの国民の声が高まっている。全国各地を歩きながら、そういう手応えを感じていました。
そこで私たちは、「日本共産党も変わらなければならない」と考えるようになりました。例えば、昨年の9月19日午前中に戦争法案が強行採決された直後、その日の午後に野党各党に対して「国民連合政府構想」の実現を呼び掛けることにしました。安倍政権の暴走は、止めなくてはなりません。今は“非常事態”なのですから、ここは互いの政策の違いを脇に置いてでも、全国的な規模で野党5党が力を合わせて選挙戦を戦う。そして、戦争法を廃止に追い込み、立憲主義を回復させる。その大義の下に結束しようということです。実はそこまで踏み込んだのは、日本共産党の94年の歴史の中でも初めてでした。
■資本主義の総本山たる
米英で起きている変化
――過去の日本共産党には、「大企業を敵視してきた」という印象があります。ところが、近年では「大企業とは共存する」という方針を掲げています。共存するとはどういう意味ですか。
まず私たちは、決して大企業を敵視していませんし、ましてや潰れてもよいと考えているのではありません。そうではない。
端的に言えば、こうなります。「今日の経済社会の中で大企業が果たしている役割は非常に大きい。ですから、大企業には持っている力に見合うだけの社会的な責任を果たしてほしい」ということなのです。
――しかし、大企業は、いきなり日本共産党から「利益剰余金を吐き出せ」と迫られたら、「経営を知らんくせに何を言うか」と反発するのでは。
いやいや。私たちは、「大企業にたまっている内部留保(利益剰余金)を皆に配れ」と言っているのではありません。たまっているのであれば、そのうちの数パーセントでも社会のために還元すればよいのではないか、ということです。
例えば、今日のような「ルールなき資本主義」の中で、大企業がもうけることばかりを重視すれば、競争が激しくなり、最終的には皆が疲弊してしまいます。その結果、経済全体が立ち行かなくなっては、元も子もありません。
そうではなく、もう少し働く人の立場になって考える必要があると思うのです。どういうことかと言うと、現在はため込んでいるだけで“死んだお金”と化している内部留保を活用することで、“生きたお金”に変えるのです。
仮に、大企業が内部留保の数パーセントを出すような仕組みがあれば、正規雇用者を増やせますし、長時間労働も減らせます。“過労死”ということが問題になっているような国は世界でも日本だけですよ。長い目で見れば、循環するような仕組みがあれば、企業のためにもなります。また、社会の発展にも貢献します。そうした民主的なルール作りは、政治の役割になります。
――では、日本でそのようなルール作りが必要になった背景には、どのような問題があったと考えていますか。
世界的な流れで言えば、やはり1980年代に進んだ「新自由主義的な考え方」に原因があると思います。それまでは、政府が公共事業などで需要を創出して経済を活性化させるという「ケインズ主義」でしたが、例えば英国の「サッチャリズム」や、米国の「レーガノミクス」で大幅な規制緩和を加速させたことによって、先進国内でも格差や貧困の問題が顕在化するようになりました。
その後、90年代を通して、企業にとって邪魔になるような規制はすべて撤廃するという新自由主義的な考え方を進めた結果、一握りの富裕層が果実を独占するという状況が生まれました。日本でも同じことが起こりました。この流れは、2000年代に入ってからも続いていますが、企業にとって都合のよいルールなき資本主義というのは、健全な社会の発展を阻害するものだと思うのです。
――近年は、世界的にも格差や貧困の問題がクローズアップされるようになりました。とりわけ、志位さんが注目している国や地域はありますか。
そうですね。私は、ラテンアメリカの動きに注目しています。かつて、この地域は「アメリカの裏庭」などと呼ばれていましたが、近年はまったく異なっています。今では、80年代に米国から押し付けられた新自由主義的な考え方を放棄し、格差や貧困の問題を解決するために自らの意思で民主革命を起こしていることです。それも、ラテンアメリカを“面で覆う”ように進んでいます。
一方では、例えば今年の米国大統領選挙で民主党の有力候補者であるバーニー・サンダースさんは、自らを「民主社会主義者」と言うように、格差や貧困の問題を訴え続けてきました。社会主義者であっても、サンダースさんは米国でかなりの支持を得ていますし、ヒラリー・クリントンさんを追い落とすほどの勢いがあります。さらに英国では、昨年、同じく民主社会主義者を標榜するジェレミー・コービンさんが労働党の党首になっています。彼はハードレフト(強硬左派)に属す政治家ですから、格差や貧困の是正に乗り出しています。
奇しくも、世界で同時多発的に、それも資本主義の総本山である米国や英国で、そうした動きが出ているのです。この新しい流れは、偶然ではありません。
■旧ソ連とはまったく異なる
日本共産党の自主独立路線
――しかしながら、日本の社会には、今も“共産党アレルギー”のようなものがあります。日本共産党の歴史を調べると、1955年に武装闘争路線を放棄してからは、「選挙による議席の獲得を通じて社会を改革する」というソフト路線に転じています。その一方で、約40年間トップの座にあった宮本顕治さんが執筆した『日本革命の展望』(68年)には、マルクス=レーニン主義に立脚する暴力革命を論じた“敵の出方論”が出てきます。
若手の党員向けの勉強会では、ソフト路線に移行してからの日本共産党の理論的支柱だった不破哲三・前中央委員会議長や、現在の党首である志位和夫委員長も講師も務める(左上)。これとは別に、特別党学校という研修会も開催する 写真提供:日本共産党中央委員会
いや。かつて、日本共産党が“敵の出方論”と言っていた時代の考え方は、武力闘争に訴えて暴力革命を起こすということではない。むしろ、反対です。
要するに、国民の多数の支持を経て社会の改革を進めるという方針であっても、アメリカ帝国主義とそれに従属する日本独占資本などの敵がクーデターを仕掛けたり、不法な手段で襲ってきたりした場合には私たちが進める平和的な改革路線が阻まれる可能性があり得る。そうした事態に備えて準備をしておくという意味なのです。武装蜂起して革命を起こしたいのではありません。
――ですが、共産党ウォッチャーには、「敵の出方論=暴力革命」と見ている人が少なくないですし、「現在の日本共産党はソフト路線を打ち出しているが、根っ子は革命政党である。政権を獲ったら最後、旧ソ連のような一党独裁の素顔が出るはずだ」という疑いを抱いている人も少なくありませんね。
違います。私は、世の中の在り方をガラリと変えるという意味で、革命とは悪いことだと思っていません。ただ、そこに至るまでの方法は、あくまで国民の多数の支持を経て社会の改革を進めるという方針に変わりありません。60年以上、一貫しています。これは、一歩一歩進めて行く話なのです。
――ところで、最もベーシックな点をお聞きします。1991年冬に旧ソ連が崩壊したことにより、世間では「共産主義という考え方は終わっているのではないか」と見ている人が多いのではないかと思います。例えば今日でも、共産主義を標榜している国で、経済的に成功しているところはありません。
まず、これまで私たちは「ソビエト連邦は社会主義でも共産主義でもない」と強く発言してきました。私たちとは、まったく異なる存在です。
日本共産党は、旧ソ連がつぶれてから批判を始めたわけではないことを知ってほしい。すでに60年代前半の時点で、「日本共産党はソ連の言いなりになれ」と言われていました。しかしながら、自主独立を尊ぶ私たちと旧ソ連は大論争を続けてきました。しかもソ連は、日本共産党に手先(スパイ)を送り込み、指導部を内部から壊そうとしました。68年には、ソ連が率いるワルシャワ条約機構軍がチェコスロバキアに侵攻します。いわゆる「プラハの春」ですね。
旧ソ連との関係が決定的に悪化したのは、79年のアフガニスタンへの侵攻でした。「もう許せん。社会主義国の顔をして、他国を侵略するとは何事か!」と激怒しました。ですから、91年に旧ソ連が崩壊した際は、日本共産党は「諸手を挙げて歓迎する」という声明を出したほどです。旧ソ連のような民主主義がまったくない、野蛮な体制ではなく、「私たちが日本で未来社会をつくるのだ」という思いでしたね。ちょうど、私が書記局長になって間もなくの頃でした。
――とはいえ、日本共産党は、1922年にコミンテルン(旧ソ連が主導した世界同時革命を目指す共産主義政党による国際組織)の日本支部として立ち上がりました。言うなれば、日本共産党にとって旧ソ連は“親のような筋”に当たります。志位さんも、心中は辛かったのではないですか。
親ではない(笑)。旧ソ連が崩壊して、もう25年が経ちます。旧ソ連が消滅したことで、「これで邪魔者がいなくなった」と清々した気持ちになりました。
米ソによる冷戦構造の枠組みから抜け出した世界の国々は、本気で自分たちの行く末について考えることができるようになりました。それまでは、どちらかの陣営に属していたわけですが、縛りがなくなったのです。そういう意味では、日本はいつまでも「アメリカの言いなり」になっていてはいけません。
■矛盾が多い資本主義の先に
社会主義、共産主義がある
――旧ソ連とは異なる未来社会の実現を目指し、資本主義の枠内で民主的改革を進めるのであれば、日本共産党という党名を変える必要があるのでは。
ありません。変える必要がないのは、日本共産党という党名ほど“理念”が込められたものはないからです。何かと矛盾が多い現在のルールなき資本主義の先には、次なる発展の段階としての「社会主義」(生産手段の私有を廃止して労働の平等・搾取の禁止によって個人の平等や発展を図ろうとする)があり、さらには「共産主義」(生産手段の公有のみに止まらず、私有財産をも廃止することによって完全な平等を達成しようとする)があると考えます。
先ほど、新自由主義的な考え方の問題について指摘しました。新自由主義的な規制緩和を推進する人たちは、意図して「分断」を作り出しています。例えば、正規雇用者と非正規雇用者を分断させ、両者を対立構造の中で反目させたほうが都合がよいからです。この罠にひっかかっている間は、いつまでも問題が解決できません。同じことは、沖縄問題や原発問題についても言えます。
そこで、現役世代のビジネスパーソンには、身の回りでの“連帯”、すなわち社会的連帯について、少し考えてみてほしいですね。例えば、正規雇用者が、立場の弱い非正規雇用者と連帯して、「自分たちの問題」として捉えて改善活動を始めれば、職場の環境をよりよくすることだってできるはずです。
――連帯と言えば、近年の日本共産党は、1960〜70年代の運動では相手にしなかったであろう「SEALDs」(自由と民主主義のための学生緊急行動)の若者たちと連帯していますね。彼らは、国の首相を“お前呼ばわり”するなど、言葉の使い方が少し乱暴だと思うのですが、周りの大人たちは注意しないのですか。
恒例となった首相官邸前の抗議デモに参加する日本共産党の志位和夫委員長(中央)。近年の反原発デモには、かつて敵対していた“新左翼”の活動家などから一般市民まで参加する。現役の党首でありながら、頻繁に現場へ足を運ぶ 写真提供:日本共産党中央委員会
ふふふ。言葉の使い方はともかく、私は“今、戦後かつてない市民運動”が起きていると思っています。今日の市民運動は60〜70年代の運動とは質が違います。運動の単位は、誰かにリードされた集団ではなく、個人なのです。問題意識を持った個人が、自分の言葉で語っています。戦争法の問題では、SEALDsばかりでなく、一般の学生、学者、弁護士、著述家、ママの会など、これまで接点がなかった個人の集まりが生まれました。それらが連帯しているのです。
言葉の問題は難しい。過去15年以上、街頭演説をしてきた私も反省することしきりです。例えば、「安倍政権に終止符を打ちましょう」と言っても、活字で読めば分かりますが、耳から入るとピンとこないかもしれません。同じことでも「安倍政権にピリオドを打ちましょう」と言ったほうが刺さるかもしれない。
政策を訴える上では、なるべく分かりやすい言葉で、かつビジュアルも工夫しなければなりません。決して、難解な言葉ばかり使って部外者を遠ざけようとしているのではありません。その点は、今後も課題であり続けるはずです。
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