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2016年7月8日 松原麻依【清談社】
自民勝利はきわどいか、攻防続く参院選の行方
7月10日に投開票が行われる参議院選挙は、安倍首相にとっては「憲法改正」実現に向けた一歩であり、野党にとっては改憲を阻止するという、重要な意味合いがある。各党の思惑がせめぎあうなか、投開票日の迫った選挙情勢を、政界の動向に詳しいジャーナリストの鈴木哲夫氏に聞いた。
安倍首相の悲願「憲法改正」なるか
選挙区は地方を中心に野党が攻勢
?投開票まであと数日、大詰めとなった参議院選挙。安倍晋三首相にとっては任期中最後の参院選であり、「憲法改正」の悲願達成をかけた大勝負でもある。
「安倍首相の掲げる『憲法改正』を実現するには、衆参でそれぞれ3分の2の賛成が必要です。そのため、自民にとって参院選の勝敗ラインは『改憲勢力で3分の2』に達すること。今度の参院選は改憲勢力3分の2を取って憲法改正へと繋げたい自民と、改正に反対する野党勢力との攻防、という構図になっています」
自公とおおさか維新を合わせた「改憲勢力」で3分の2を取れるかどうか。ギリギリの攻防が続いているが、自民党は現職大臣も落選の危機にあるなど、かなりの苦戦を強いられている? Photo:Rodrigo Reyes Marin/AFLO
?安倍首相は参院選で勝つために、オバマ米大統領の広島訪問実現や一億総活躍社会プランを打ち出すなど、これまで様々な布石を打ってきた。
?しかし、舛添要一・前東京都知事の政治資金問題が自民党批判に飛び火するなど、支持率アップは筋書き通りとはいかなかったようだ。そうした背景もあって、自民が目標としている「改憲勢力3分の2以上」は微妙なラインとなっている。
「参院選全体の情勢としては、今のところ、自民が勝敗ラインにギリギリ届くか否かといったところ。選挙区では野党が追い上げていますが、比例区は自民が優勢です」
?野党は比例区で統一名簿を作り自民に対抗する動きも見せていたが、それも実現せず、結局各党がバラバラに出馬。そのため、比例では相対的に大政党である自民党が有利になっているという。
「参院選の比例区は得票数の多い人から順番に議席が割り振られるため、どの候補者も自分で票を取りにいかなくてはいけません。衆院選のように予め決められた名簿の順に当選するわけではないので、自民党の候補にとっては、敵は陣内にあり、といったところでしょうか」
岩城光英氏や島尻安伊子氏も当落の危機!
自民は1人区で最悪14敗する可能性も
?一方、改憲勢力で3分の2を獲得できるかどうかの分け目となっているのが選挙区。特に注視されているのが1人区で、地方を中心に野党の追い上げが目立つ。
「他党と接戦、もしくはリードされている選挙区を、自民党は『重点区』に指定しています。重点区は青森・宮城・岩手・山形・福島・新潟・長野・山梨・三重・滋賀・大分・沖縄の12ヵ所。自民党自身が行っている世論調査などでは、これらのうち福島の岩城光英氏や沖縄の島尻安伊子氏は、現職の大臣でありながら、当落の危機という状況です」
「序盤ではこの重点区で自民の12敗も危ぶまれていましたが、山梨の高野剛氏や滋賀の小鑓隆史氏は挽回の可能性が大きくなりました。しかし、新たに愛媛などは野党の統一候補が盛り返しています」
「一部、自民が攻勢になった1人区もありますが、逆にリードされているところもあるので、トータルで32ある1人区のうち野党は2ケタを取るかもしれません。自民にとっては最悪、14敗する可能性も出てきました」
?社会党の土井たか子委員長がマドンナ旋風を巻き起こした1989年の参院選では、野党が1人区で23勝3敗をあげて与野党が逆転。2007年の参院選でも、民主党が1人区で圧勝したことで2年後の政権交代へとつながった。
「ここでの勝敗が次の政局を決める」と言われているほど1人区は重要だが、今の自民は地方で弱い。アベノミクスの恩恵が大企業や都市ばかりに集中し、地方には行き届かなかったこと、農家を中心としたTPPへの反発、少子高齢化への対策がないがしろにされていたことなどが、地方の安倍政権への不満につながっているという。
「また、複数区、たとえば北海道・千葉・神奈川などは最後の1議席を自民党の2人目と野党候補で取り合っている状況で、最後の最後までどうなるかわかりません」
改憲勢力「3分の2」達成は
公明・おおさか維新の議席数で決まる
?鈴木氏の票読みでは、今回の改選議席121のうち、自民が獲得する議席数は選挙区・比例区合わせて55〜57になる見通しだ。一方、憲法改正の発議に必要な3分の2を得るためには、78議席取る必要がある。自民だけではとても目標の議席に届かないので、憲法改正に前向きな公明党やおおさか維新の会の結果が勝敗を左右するという。
「仮に、自民の獲得議席が57だったとすると、改憲に必要な78を取るには残り21が必要。今のところは公明党の勝数は12〜14、おおさか維新が6〜8といった見通しです」
つまり、改憲勢力が78以上の議席を取るには、公明党は13議席以上、おおさか維新の党は7議席以上勝たなくてはいけない。しかしそれだけの議席を獲得できるかどうか、両党ともきわどい状況が続いている。
「公明党は埼玉・兵庫の候補者が当落線上で粘っています。もしこの2つの選挙区で候補者が負ければ公明党の議席は12に、勝てば14になるでしょう。おおさか維新はというと、本拠地の大阪の選挙区で1人目が当選確実、2人目が当落線上ギリギリのところにいると言われています。また、共同代表の片山虎之助氏の息子である兵庫の片山大介氏や東京の田中康夫氏の勝敗もまだ予測がつきません」
?おおさか維新の候補者4人全員が選挙区で勝ったとしても、改憲勢力で78議席に達するには比例区で2以上の議席をとる必要がある。しかも、自民の獲得議席数が55を下回るとさらに状況は厳しくなるだろう。
「当落線上にいる自公・おおさか維新の候補者の勝敗は現時点でも見通しが立っていません。最後の数日が勝負の分かれ目でしょう」
?憲法改正について「在任中に成し遂げたい」と述べていた安倍首相。もし、今回の参院選で改憲勢力が78議席以上を取れなければ、その夢も潰える。参院選が憲法改正への一手となるのかどうか、開票まであと数日を残すことになったが、与野党では相変わらず瀬戸際の攻防が続いている。
http://diamond.jp/articles/-/94852
岸博幸の政策ウォッチ
【第37回】 2016年7月8日 岸 博幸 [慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科教授]
英EU離脱とトランプ躍進で危惧される「エリートの弱体化」
英国のEU離脱の背景には、エリート層の意見に耳を貸さない一般大衆の存在があったようです
英国のEU離脱という国民投票の結果がいまだに世界経済を揺るがしています。そして、米国の大統領選ではトランプ旋風がいまだに続き、もしトランプが大統領選に勝った場合は、これも世界経済の不安要因と見られています。
そして、この両方の現象の捉え方としては、ポピュリズムが蔓延した結果という見方が一般的です。移民の増加などグローバル化により低所得者層の賃金が上がらず、雇用が不安定になる中で、そうした層がグローバル化に反対。また政治家やビジネスリーダー、エコノミストといったいわゆるエリートたちの意見を信用しなくなったという見立てです。
一般大衆は“公平性”、エリートは“効率性”を重視
実際、5月に英国のエコノミスト639人を対象に行われた調査では、その88%が、EU離脱となったら英国の経済成長は減速して雇用も悪化すると回答しました。また、別の調査では、40人の著名エコノミストのうち、わずか2人だけがEU離脱派の主張に賛成でした。それにもかかわらず、国民投票では投票者の52%が離脱に賛成しました。
この数字からは、確かに英国では一般大衆がエリートたちの意見を信用しなくなったと見ることもできます。
エリートたちの主張は、煎じ詰めればグローバル化を進めて経済の“効率性”を高めることにより、経済成長を実現してGDPのパイを拡大しようということに尽きます。この主張は経済学的には正しいことを考えると、それでは英国の一般大衆は怒りで合理的な思考をできなくなったのでしょうか、それとも理解しているのに敢えてそれと反対の立場を取ったのでしょうか?
この点について考える参考となる面白い論文が、米国で昨年発表されました。人は金銭価値のあるトークン(メダル)のやり取りをする中でどういう行動をするかという実験についての論文です。実験参加者がシミュレーションの中で、トークンを自分だけで独占しようとするか、または他人とトークンをシェアしようとするかを調べているのですが、面白いのは、もし参加者が他人とシェアする場合、自分だけで独占する場合に比べてトークンの総量が減少するように設計されていることです。市場の効率性(=トークンの量の最大化)と公平性の間にトレードオフを設けたのです。
この実験の結果をざっくりとまとめると、参加者が平均的な米国人の場合は約半数が効率性よりも公平性を重視した行動を取ったのに対して、参加者がイェール大学ロースクールの学生というエリート予備軍の集団の場合は、逆に80%が公平性よりも効率性を選んだのです。イェール大学を卒業すればエリート集団に仲間入りできて自分は良い収入が期待できるので、集団の間での分配の公平性よりも全体のパイの大きさに意識が向いた結果ではないかと推測されています。
参考:http://www.umass.edu/preferen/You%20Must%20Read%20This/Distributional%20Preferences.pdf
この実験の結果を英国に当てはめて考えてみると、エリート層はEU残留でグローバル化を進めて英国経済の“効率性”を高めることを最大の価値と考えました。それに対して、一般大衆は、それよりも自分の収入や社会保障は大丈夫か、自分の仲間や地域コミュニティの暮らし向きは大丈夫かといった方を重視したと考えられるのではないでしょうか。そして、この“大丈夫か”という判断は、他者や社会の標準との比較に基づく場合が多いことを考えると、これは経済の“公平性”の実現を最大の価値と考えたと言うことができます。
このようにエリートと一般大衆で実現したい経済の価値の優先順位が異なっていたならば、一般大衆が経済学的には当たり前の結論(EU残留)に反対したことも納得できます。英国のEU離脱は、ある意味で一般大衆による合理的な判断の結果だったのです。
エリート層の弱体化という深刻な事態
しかし、よく考えると、エリート層と一般大衆で実現したい経済価値の優先順位が異なるのは、別に最近始まった話ではなく、昔からよくあったことです。それでもエリート層は、効率性と公平性のバランスを何とか取りながら騙し騙し経済を運営してきたのに、なぜ今回は英国と米国と二つの大国でそれに失敗しているのでしょうか。
この点についての説得的な推論は、世の中の変化が速過ぎてエリート層がそれに追いつけていないということではないでしょうか。
英国や米国で進んでいる格差拡大の原因としては、グローバル化のみならずデジタル化という構造変化も指摘できます。意外と看過されがちですが、デジタル化のペースはこの10年で一気に加速しました。世界初のスマホ(iPhone)が登場したのが2007年、フェイスブックが商用サービスを開始したのが2006年、ツイッターが始まったのが2007年、Airbnbは2007年に起業、世界初のタブレット(iPad)が登場したのは2010年、3Dプリンターが普及したのはつい最近、といった事実からもそれは明らかです。
かつ、アラブの春やアップルのサプライチェーンなどから明らかなように、デジタル化がグローバル化を更に加速している面は否定できません。つまり、この10年で世の中の変化のペースはすごく速くなったのです。
その一方で、グローバルなレベルで社会保障、教育、コミュニティといった社会システムはそれに見合ったペースで進化できていないからこそ、英国や米国で一般大衆が公平性をより強く主張するようになっている面は否定できないのではないでしょうか。エリート層が弱体化し、構造変化のペースに社会の制度や仕組みを追いつかせることができていないからこそ、英国はEU離脱となり、米国ではトランプ旋風が起きていると考えられるのです。
そうしたエリート層の弱体化は、例えば米国の有名シンクタンクがTPPの米国経済にもたらす影響を分析したレポートにも現れています。このレポートは、
・TPPは2030年までに米国経済に年間1310億ドル(米国GDPの0.5%)の所得増をもたらす
・一方で、5万3700人の米国人が仕事を変えることを余儀なくされるが、もともと米国では年間5500万人が仕事を変えているので、大した影響ではない
と述べていますが、その5万人強の人やその親族、友人にとっては、これは大変な問題です。かつ、工場の海外流出や移民増加などグローバル化による地域コミュニティの変化には、より多くの人が懸念を抱くはずです。
だからこそ、米国のメディアには、グローバル化によって自分の仕事にはまったく影響がなくても、知り合いがリストラされたり地域コミュニティが衰退したりといった理由でトランプ支持を表明する人がよく登場するのです。
英国と米国の混乱は対岸の火事ではない
こう考えると、英国のEU離脱も米国でのトランプ旋風も、一般大衆がアホでポピュリズムに走ったからではなく、むしろエリート層が弱体化してグローバル化とデジタル化という構造変化の速さに見合った形で社会システムを進化させられていないからこそ、一般大衆が経済の効率性よりも公平性を追求するという合理的な判断をした結果であると言えるのではないでしょうか。
そして、それは日本にとって、英国や米国という対岸の火事ではありません。よく考えたら、日本は潜在成長率が先進国で最低と、エリート層による効率性の追求も不十分ですが、持続可能性に大きな疑問符がつく社会保障システムの下では一般大衆にとって公平性の実現度合いも不十分です。
それにもかかわらず、参院選での各党の公約を見ると、与党の公約は効率性の観点からも公平性の観点からも明らかに中途半端で不十分な内容となっており、一方で野党の多くは構造変化の進展を踏まえているとは思えない時代遅れな公平性の追求ばかりを主張しています。
幸い、日本ではトランプのように一般大衆の不安と怒りを具現化できるリーダーがいませんので、英国や米国のような混乱した状況にはなっていませんが、いつそういう人が現れるか分かりません。
私もかつてエリートと言われる側にいた人間として自戒の念を込めて言うと、そうなる前に、日本のエリート層と言われる人たちは、もっと自分たちの考え、経済政策、そして社会システムを進化させて、効率性と公平性の双方を十分に追求できるようにしなければいけないのではないでしょうか。
http://diamond.jp/articles/-/94847
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