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民進党よ、テロを政治利用するな! 批判するなら本丸は「年金運用」、その急所を教えよう
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/49078
2016年07月04日(月) 高橋 洋一「ニュースの深層」 現代ビジネス
■民進党は、「テロに屈して」しまったのか
バングラディッシュの首都ダッカで、痛ましいテロが起きた。このテロに巻き込まれて亡くなった日本人7名を含めた20名の方のご冥福をお祈りします。
テロ発生時、日本は参院選挙の真っただ中であった。安倍首相は、2日に予定していた北海道での遊説を取りやめ、国家安全保障会議を開き対応した。菅官房長官は、2日午前8時半に官邸で緊急記者会見を行った後、新潟に選挙応援で出かけた。民進党の岡田克也代表と共産党の志位和夫委員長は、このことを強く批判している。
民進党の岡田代表は、参院選の応援のため訪れていた兵庫県西宮市で「内閣の危機管理に対する正常な感覚が失われているということがはっきり出た」と指摘し、共産党の志位委員長は。川崎市で「危機管理の責任者が官邸を離れるのは非常に重大な問題だ」と批判した。
これに対して、菅官房長官は、首相が官邸に残り、官房長官の代行として副長官を置き、政府としてやるべきことはやれる体制だったので、まったく問題ないとしている。
民進党と共産党は、官房長官が官邸に不在だったことを批判しているが、政府の対応の不手際を具体的に指摘できていない。何か対応にミスであれば別であるが、そうでなければ、単なる言いがかりでしかない。
かつて、自民党も、民主党の震災対応を批判したことがあった。それと同じではないかという考え方もあり、その観点からみれば、野党が批判するのは仕方ないという意見もある。
ただし、今回はテロ事件である。的を外した批判は、テロを仕掛けた者の思うつぼになる。テロ事件に対して、世界各国では「テロに屈しない」(never yield to terror)というのが共通の理解である。「テロに屈しない」というのは、テロを仕掛けた者の意図に乗ってはいけないということだ。
テロは人々に恐怖を与えるのだから、テロがあっても無視した行動をとることがいい、ともいえる。いかなる名目でもテロに乗っかった行為は、テロに屈したことになってしまう。テロを利用して、自党への投票を呼び掛けたり、他党を非難したら、それこそテロに屈したのと同じだ。
■批判が薄っぺらすぎる
もちろん、政府は人命保護などやるべきことをやらなければいけない。しかし、そこで、つまらないことで政府を批判すると、テロ首謀者を支援したことに結果となってしまう。行うべきはテロの非難、である。
今回の民進党や共産党の批判は、政府の行為に落ち度がないのに、官房長官だけの行動を批判しており、テロを政治利用していることになる。政策での政府批判なら理解できるが、参院選の終盤になって、民進党と共産党の共闘が「ダッカ事件での官房長官批判」ということでは情けない。
民進・共産はテロについての政権批判をやるぐらいなら、GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)の追及をどんどんやってもらいたい。
GPIFの昨年度の運用成績が5兆円超の損失となったことについて、民進党の枝野幸男幹事長は、「参院選の(アベノミクスや改憲の是非に次ぐ)三つ目の大きな争点になったと思う」と述べた(そういえば、先週の本コラムで、「人殺し予算」発言をした共産党の藤野政策委員長は今後出てくるかわからないと書いたが、やはり更迭されたようだ)。
いずれにしても、民進党と共産党は、この問題の追及でも共闘の形をとってはいる。共産党の小池晃書記局長は、「(安倍政権が)年金運用の25%だった株式比率を50%に引き上げたから、株価が下がったら大変な損が生じている」、「今度の選挙は『消えた年金』ではない。『消した年金』になりつつある」と安倍政権を批判している。
GPIFが運用基準を見直したのは2014年10月だ。そのとき、国債など国内債券の運用比率を60%から35%に下げ、株式投資(外国株を含む)の比率を24%から50%に引き上げた。
民進党や共産党は、その運用基準の見直しが間違ったから損失が出たというロジックの批判だ。そして、そのための処方箋は運用基準を元に戻す、と主張しているわけだ。
こんな薄っぺらい批判は、簡単に論破されてしまう。実際、「5兆円損しても、これまでの累積利益は40兆円以上ある」と一蹴されてしまう。そのとき、「民主党政権時代はどうだったのか。ほとんど稼いでいないではないか」と逆襲されてしまう。
■筆者の攻め方を伝授しよう
まったく、公的年金に関するきちんとした理解もないままに、目先だけの数字で批判するから、民進党は「経済音痴」と言われてしまうのだ。
運用成績の公表を参院選後にずらしたというのは、昨年の公表日が7月10日であるので、決定的な問題とはいえない。それに、概数であれば昨年度5兆円損したのはすでに明らかになっているので、別の攻め方をしなければいけない。
ここで、筆者の攻め方を、民進党と共産党に伝授しよう。実は、運用基準の改定前の2014年3月17日付けの本コラム「国民の年金使う『官の財テク』は無責任体制で癒着の温床になるばかり!GPIFの積極運用に反対する」(http://gendai.ismedia.jp/articles/-/38686)を書いているように、筆者はGPIFの猛烈な批判者である。
そこで書かれているのは、公的年金の運用に株は必要か、という本質論である。短期的な損得ではなく、本質的に株運用は不要という話だ。
年金の運営方法には、「積立方式」と「賦課方式」がある。前者の積立方式は私的年金で用いられていて、あらかじめ資金を拠出させ、それを運用して、将来の年金給付にあてるものだ。その年金バランスシートを作れば、右の負債には将来の年金給付を現在価値にしたもの、左の資産は現在の運用資産残高になって、両者は一致している。
後者の賦課方式は公的年金だけだ。公的年金はスタート時から給付がある。つまり、初期段階で給付を受けている人は積立をしていない。その原資は若い世代の払った保険料だ。
その年金バランスシートは、右の負債は将来の年金給付を現在価値にしたものだが、左の資産は現在の運用資産残高に加えて、将来の保険料収入の現在価値もある。給付額は、保険料と現在の資産残高で賄われるはずなので、年金バランスシートの資産と負債は見合っている。
■厚生年金のバランスシートを見てみると…
厚生年金について、具体的にB/Sをみよう。今では国の財務書類として、毎年公表されており、2014年のものがインターネット上でも見られる(http://www.mof.go.jp/budget/report/public_finance_fact_sheet/fy2014/national/fy2014-gassan.pdf)。
それによれば、負債の年金給付債務は2030兆円、資産の積立金は170兆円、将来保険料は1470兆円、国庫負担は390兆円である。積立金170兆円は年金給付債務2030兆円の8.4%にすぎない。もし積立方式なら、積立金は2030兆円必要であるが、170兆円なので、9割方賦課方式であるといってもいい。
厚生省は、高齢化のスピードが速いので、修正賦課方式(厚労省は「修正積立方式」と詐称に等しい呼び方をしている)で、積立金を有していると説明する。しかし、賦課方式の場合と比べて、年金給付額はどの程度違うかというと、1割くらい増やせると言った程度だ。
この程度は、経済要因でぶれるので、100兆円以上の積立金を持つのか、先進国での年金財政運営(年金数理の観点)からは説明できない。保険料を高めに徴収して積立金を増やし、不必要な運用リスクを抱えても、給付額に大差ないからだ。その観点からみると、積立金は年金運営の流動性確保程度で10兆円程度あれば十分である。
厚生省が修正賦課方式にこだわるのは、年金資産の運用に関わる利権と考えざるをえない。実際、GPIFは金融の公共事業といわれており、多くの金融機関が群がっている。
筆者が、公的年金の本質論から導き出した「公的年金では株式運用不要、GPIFは廃止」という答えは、海外では一般国民に対する公的年金で株式運用している国はあまり多くないという事実と整合的である。具体例は、前述の2014年の筆者コラムをご覧いただきたい。
■GPIFの代替案をここに示す
筆者のGPIFの積極運用に対する批判で、GPIFの代替案も示しておこう。これは、民進党がGPIFの存続を前提として、その運用基準という小手先だけの改革になっているのと、まったく異なっている。
以下は、前述の2014年の筆者コラムから抜粋である。
「そもそも、GPIFの積極運用の理由は、株式投資でインフレヘッジができるからだとされている。そうであれば、市場運用はせずに全額を非市場性の物価連動国債にすればいい。それで、市場運用に伴う不確実性も排除され、年金財政もリスクなしで問題ない。
これは、GPIFを即刻廃止し、厚労省の担当者一人になってもできる話だ。なぜならば、担当者が『今月はいくら分買います』と財務省に電話すればいいだけなのだから。
こういった提案に反対するのは、GPIFだけではない。GPIFから運用委託を受けている民間の金融機関もそうだ。100兆円を越える資産を運用し、その信託報酬を1%取れただけでも、金融機関には手数料として1000億円が転がり込むおいしい仕事なのだ。
実際、金融機関の厚労省詣では霞が関でも有名である。その中で、関連団体のポストを天下り用に用意する、といったことも含まれる。
GPIFを排除し、非市場性の物価連動国債にすれば、無駄排除とともに癒着構造も解消できる」
このくらいの抜本的な批判でないと、政府はまったくびくともしないだろう。そういえば、民主党政権時代に、GPIFの廃止を提言したら、即座に反対されたのを思い出した。それでは、政府にまともなことをいえないだろう。
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