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5兆円どころでない安倍政権の巨大損失責任−(植草一秀氏)
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1st Jul 2016 市村 悦延 · @hellotomhanks
6月30日に東京の東都生活協同組合多摩NT主催の講演会に講師として出講した。
演題は「アベノミクス失敗とわたしたちのくらし」
平日昼間の講演会にもかかわらず、会場に入りきれぬほどの市民が参集下さった。
資料は私の方で用意させていただいたが、
どれくらい人が集まるか分からないとのことでやや控えめに用意したところ、大幅な不足が生じてしまった。
手元資料とまったく同じパワーポイントデータを使って話をさせていただいたので、
説明はご理解いただけたと思うが、資料を入手できなかった参加者にはお詫び申し上げたい。
しかし、日本の主権者は安倍政権下での日本経済凋落を極めて深刻に受け止めている。
だからこそ、平日の昼でも時間を割いて学習会に参加するのである。
7月10日の投票日に向けて参院選が佳境を迎えているが、
安倍政権はマスメディアに手を回して、できるだけ国民が政治問題を真剣に考えぬよう、策略を施している。
6月1日以降、記述してきたが、敵の戦略は次のとおりだ。
1.投票率をできるだけ引き下げる
2.与党勝利予想を流布する
3.アベノミクスを宣伝する
4.共産党を含む野党共闘を攻撃する
5.重要争点を隠す
権力は選挙が近づくと必ず麻薬事件を表面化させる。
テレビの情報番組が麻薬事件に時間を割くように仕向けるのだ。
この指摘どおりに今回も麻薬事件を表面化させた。
「安倍政治を許さない!」私たち市民は、次の戦術を確実に実行しなければならない。
1.投票率を引き上げる
2.メディア情報はウソであるという真実を主権者に知らせる
3.アベノミクス失敗の真実を主権者に知らせる
4.政策を基軸に投票を決める
5.本当の選挙重要争点を明示する
重要な選挙争点は次の五つだ。
原発、憲法、TPP、基地、格差・経済問題
である。
安倍政権は「改憲」という牙を隠して、「アベノミクス」を前面に押し立てている。
改憲勢力が参院で3分の2を占有すれば、安倍政権は改憲に突き進むだろう。
緊急事態条項が加憲されれば、安倍独裁国家が誕生するという最悪の悪夢が現実化してしまう。
これだけは絶対に避けねばならない。
そして、「アベノミクス」に代表される経済政策だけでなく、
原発、憲法、TPP、基地の問題を真剣に考えて投票先を決めねばならない。
このなかで、安倍政権は「アベノミクス」=経済政策を前面に掲げようとしているが、
この点でも安倍政権は完全にアウトであるという事実を大拡散しなければならない。
経済の総合評価である実質経済成長率は民主党政権時代の3分の1に留まっている。
あのパッとしなかった民主党政権時代の3分の1なのだ。
完全にアウトだ。
失業率が下がったと言っても雇用が増えたのは非正規労働、正規労働は減り続けた。
「アベノミクス」で日本経済は完全に転落したという「真実」をすべての主権者に伝える必要がある。
そして、もうひとつ、絶対に見落としてはならないことがある。
それは、安倍政権が国民に対して想像を絶する巨額損失を押し付けていることだ。
6月29日付記事に記述したように、年初来の円高と株安で、
年金資産および政府保有外貨準備において、巨額損失が計上されていると考えられる。
単純に仮定計算をすると、昨年末のGPIF残高139.4兆円のうち、
日本株式の比率を23.4%、外国証券の比率を40%として、
日本株価下落を21%、外国通貨下落率を17%とすると、
株価下落と為替評価損失が16兆円生じることになる。
他方、日本政府は日銀から資金を借りて、外貨建て債券を巨額購入してきた。
その大部分は米国国債である。
日本政府が保有する外国証券は5月末で1兆693億ドルだ。
年初来の円高で発生している為替評価損失は21兆円程度と推定される。
両者を合わせると評価損失合計は37兆円になる。
わずか半年で、国民財産を37兆円も毀損させた。
このような政権の存続を許すわけにはいかないのだ。
この数字を提示したからだと推測されるが、安倍政権はメディアを使って、
GPIFの昨年度の損失が5兆円程度であったことをリークした。
日経平均株価は
2015年3月末が19206円、
2016年3月末が16758円
下落率は約13%
ドル円レートは
2015年3月末が120円/ドル
2016年3月末が112円/ドル
下落率は6.7%
であり、年度を通じる損失が5兆円程度というのは概ね順当な数値である。
しかし、問題は金融変動のトレンドが
円安・株高
から
円高・株安
に転じているなかで、
日本株式と外国証券への資金配分比率を大幅に引き上げたこと
および、
ドル高が進行している間に、政府保有のドル建て債券を1ドルも売却しなかったことだ。
そのために、2016年前半だけで、株価と為替レートだけで仮定計算すると、
GPIFと外貨準備の評価損失が37兆円にまで膨らんだ疑いが浮上するのだ。
安倍政権は参院選を前に政府の巨額損失情報が流布されないように、
GPIFの年度間の損失が5兆円程度であったことをリークしたのだろう。
しかし、現実は、この数字とかけ離れて深刻である。
年初以降の金融変動と、この金融変動にまったく対応しない政府の無策が、
国民に対して、想像を絶する負担を押し付けるものになっているのだ。
昨年4月21日に『知られざる真実』ブログに、
「安倍政権は政府保有米国債売却を決断せよ」
http://uekusak.cocolog-nifty.com/blog/2015/04/post-c62c.html
というタイトルの記事を掲載したことを伝えた。
ブログの続きは
メルマガ記事「総督でなく首相なら米国債売却を決断できる」
に記述した。その一部を以下に転載する。
「その53兆円の外為損失が、この2年半の円安、ドル高で消滅した。
98兆円に目減りした日本の外貨準備高の円換算金額が、
1ドル=120円の円安で、152兆円に回帰したのである。
53兆円の損失を、全額回収できる千載一遇のチャンスが到来した。
53兆円もの損失を計上していた日本の外貨準備高であるが、
いま、保有している米ドル資産を全額売却すれば、その損失を全額回収できるのである。」
「日本政府は1ドル=120円にまでドルが上昇した現局面で、保有米国国債を全額売却するべきである。
日本の米国国債保有高が世界一になったと喜んでいる場合ではない。」
「現在の1ドル=120円は、円安が大幅に行き過ぎた水準であるとしているのだ。
為替レートはさまざまな要因で変動するから、この指標ひとつで、
今後は円高に回帰すると決めつけることはできない。
しかし、再び円高の方向に回帰する可能性は十分にある。
そうであるなら、円安進行で、ドル資産投資の巨大損失を解消できるいま、
保有している巨大なドル資産を、ドルが高いうちに売却するのが、適正な行動である。
日本政府が保有する米国国債をいま全額売却すれば、53兆円の巨大損失を完全解消できるのだ。
これが、日本国民の利益を優先する政府の責任ある行動である。」
ドル高の局面で1.3兆ドル規模の政府保有ドル資産をすべて売却して円に換金するべきだと強く主張した。
ところが、安倍政権はドル資産を1ドルたりとも売ることなく、現在の円高で巨額損失を生みつつ、
それを放置している。
消費税率を2%引き上げて入る税収は5兆円である。
35兆円の損失がなければ、消費税増税を7年も延期できる。
民間の投資顧問会社であれば、
年金資金運用で1000億円の損失を計上しても天地をひっくり返すような大騒ぎになる。
これに対して、安倍政権はわずか半年で37兆円もの損失を生み出している疑いがあるのだ。
このような巨大スキャンダルを見逃して良いわけがない。
参院選まで10日を切った。
安倍政権の巨額損失問題を適正に追及するべきである。
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