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19日にJR有楽町駅前で市民連合と野党4党が行った街頭演説会。参加者のプラカードが会場を埋め尽くした (c)朝日新聞社
「SEALDs」最後の戦い 参院選後に解散へ “ゲリラ戦”で「改憲2/3を阻止する」〈週刊朝日〉
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20160629-00000246-sasahi-pol
週刊朝日 2016年7月8日号
参院選公示が迫った6月19日。JR有楽町駅(東京都千代田区)前を、数百人の群衆が埋め尽くした。
中心にいたのは、スーツ姿の政治家だけではない。「みんなのための政治を、いま。」などと書かれたプラカードを掲げた市民たちが、野党党首らを取り囲むように並んでいた。
「市民が主役の選挙」。見るものにそんな印象を与えた異色の街頭演説会は、SEALDs(シールズ)などの団体でつくる「市民連合」と野党4党が合同で行ったものだ。
司会はSEALDs中心メンバーの奥田愛基氏(23)。共産党の志位和夫委員長、民進党の岡田克也代表らの演説に続いてSEALDsメンバーも登壇し、
「今回の選挙のテーマは、市民でこの選挙に勝つってことです。つまり、僕たちでこの選挙に参加していくってことです」(飲食店勤務・山本雅昭氏)
などと熱弁した。演説の合間に歌で投票を呼びかけ、最後はラップ調のコールで、「選挙に行こうよ!」と声を合わせる。昨夏のデモを再現したような“SEALDs流”のイベントだった。
昨年5月に安保法制に反対する大学生らで結成され、国会前デモを社会現象に発展させたSEALDs(自由と民主主義のための学生緊急行動)。参院選を最後に解散すると宣言した彼らが今、「最後の戦い」に臨んでいる。
SEALDsといえばデモの印象が強い。だが昨秋の安保法の成立後は水面下の活動にシフトしていた。中心メンバーの諏訪原健氏(23)が語る。
「昨年5月ごろは法案への注目度も低く、まずは国会前デモなどで法案の問題点を世の中に可視化して伝え、ムーブメントにしていくことを目指しました。安保法成立後は、フェーズ(局面)が変わり、一度“もぐる”時期と考えた。選挙で戦う大前提のスタートラインをつくるために野党共闘をどう実現するか。他の団体と一緒に『市民連合』を結成し、政党関係者などいろいろな人と話をした。32の1人区すべてで野党統一候補が立ったことは大きな成果だと思います」
野党共闘を実現させた現在は第3局面。「市民が参加する選挙」のモデルを示すことに力を入れる。冒頭の有楽町での街頭演説会は、そうした活動の一環だ。
22日には参院選が公示された。政治家たちは街頭で声を上げるが、SEALDsの姿は見えない。奥田氏は新著『変える』(河出書房新社)でこう綴る。
<選挙が近づくにつれて、一層SEALDsが何をやっているかわかりにくくなると思う。全国を回って選挙の「裏方」をやるんだし、そこで国会前みたいに、SEALDsが主催となって、主役になることは一切ない>
今、彼らは何をしているのか。メンバーの一人が説明する。
「昨秋に政治団体として届け出をした関係もあり、公示後に団体として選挙運動はできない。投開票直前に投票を呼びかけるクラブイベントを予定していますが、後はメンバー各自が個人として応援演説に行ったり、野党候補者の選対にボランティアとして関わったり。SNSなどを通した情報発信や、街頭での練り歩きもしています」
23日に渋谷であった「練り歩き」では、「VOTE」などと書かれた手作りの看板を掲げた5人が、夕暮れの渋谷センター街を黙々と歩いた。LINEで連絡を取り合って集合し、事前告知も行わない行動はさながら“ゲリラ戦”。都内の繁華街でほぼ毎日やるという。大学4年の矢部真太氏(23)がこう語る。
「SEALDsはデモだけでなく、これまでもそのときの必要に応じて何がヒットするか考えて活動してきた。今も各自ができることを考えてやっています」
ところで、せっかく育った団体を解散するのは惜しくないのか。SEALDsを以前から知るジャーナリストのおしどりマコ氏は、そうした懸念を否定する。
「彼らはこれまでも、テーマごとに団体の看板をかけかえながら成長してきた。この後も、何かのテーマで再結集すると思いますよ」
おしどり氏によれば、SEALDsの源流の一つは2011年秋、反原発デモの中で経済産業省前でハンストを行った「若者会議」。12年にその中心メンバーらでTAZ(一時的自律空間)が結成され、反原発デモに参加し勉強会を開くなどの活動が始まった。おしどり氏も講師に呼ばれた。
「当時は『自分の意見を持つことから始めよう』というスタンスで、公園に集まって各自の意見を話し合っていた。当時のメンバーは旧来型のデモに懐疑的で、私も『闇雲にデモをするより正しい知識を得たほうがいい』と話したのを覚えています」
13年12月、同じメンバーらが特定秘密保護法に反対する「SASPL(サスプル)」を結成した。
「デモを主催し始めたのはこのころで、奥田君が中心になって試行錯誤しながら、今の形ができていった。ただデモをするだけでなく、既存の市民運動や都知事選候補者の選対などに個々のメンバーが参加して良い点悪い点を学び、特定秘密保護法についても、専門的な知識で議論できるメンバーを育てていたのに驚きました」(おしどり氏)
SASPLを経て、誕生したのがSEALDs。こう考えると、解散も一つの過程にすぎないのかもしれない。前出の諏訪原氏は解散についてこう語った。
「僕の理想は改憲勢力に3分の2をとられることを阻止した上で、いったんそれぞれのメンバーが自分のフィールドでやっていくこと。今後、必要が出てきたときに、みんなまた戻ってくればいい。それまでは各自が社会とのつながりをつくっておいたほうが、厚みが出て強いと思うんです」
若者たちの戦いは終わらないのだ。(本誌・小泉耕平)
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