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「参院選。反安倍政治の受け皿はできた。あとは投票するだけだ。「マガジン9」:想田和弘氏」
http://sun.ap.teacup.com/souun/20291.html
2016/7/1 晴耕雨読
2016年6月29日up映画作家・想田和弘の観察する日々第41回 参院選。反安倍政治の受け皿はできた。あとは投票するだけだ。「デモクラシーの緩慢な自殺」を食い止めるために。から転載します。
http://www.magazine9.jp/article/soda/28869/
第41回 参院選。反安倍政治の受け皿はできた。あとは投票するだけだ。「デモクラシーの緩慢な自殺」を食い止めるために。
英国では国民投票が開かれ、EU離脱が決まった。フランスやオーストリアでは極右政党が躍進し、米国ではドナルド・トランプ氏が台頭しつつある。
どの動きも、大半の日本人の目には、自分の首を自分で絞める自殺行為のようにみえるのではないだろうか。こうした物事の本質は、その渦中にいるよりも、遠くからの方が見えやすいからである。
米国で暮らす僕の目からは、第二次安倍政権成立以来の日本で起きていることも、まさにそれらを先取りする流れのようにみえる。「熱狂なきファシズム」ともいうべき「デモクラシーの緩慢な自殺」が、安倍政権下で起きつつあるようにみえる。そして今度の参院選で政権側の勢力を止められないならば、日本のデモクラシーは「死」の方向にもう一歩大きく歩を進めることになるように思う。
しかし今回の参院選は、今までの選挙とは一味違う。そう、僕は本気で期待している。というより、期待するしかない。
なぜなら、度重なる選挙での敗北と、安保法制反対運動に参加した市民たちの声に押されて、野党各党もついに重い腰をあげたからだ。今回の選挙では、32ある一人区のすべてで、野党統一候補を立てることに成功しているのである。「オール沖縄」に触発され、その方式が全国に拡大したのである。
これはかなり画期的なことだ。
なにしろ、いままでは安倍政権に不満や危険性を感じても、「受け皿がない」ことを理由に選挙を棄権したり、当選など決しておぼつかない候補に批判票を入れざるをえない人も多かったはずだ(僕は後者である)。
だが、今回はそうではない。念願の受け皿はなんとか用意された。あとは私たちが投票すればよいのである。というより、投票しなかったらせっかくの受け皿も台無しで、実にもったいない。
具体的な例を示そう。
僕はニューヨークに住んでいるので、今回も在外投票をする。選挙区は本籍地である栃木県。一人区である。2010年の参院選では、次のような結果であった。
324,790(36.2%) 上野通子(自民)公明推薦
319,898(35.6%) 簗瀬進(民主)
224,529(25.0%) 荒木大樹(みんな)
28,617(3.2%) 小池一徳(共産)
それに対して今回の候補者の顔ぶれは、次のようなものである(届け出順)。
上野通子(自民)公明推薦
田野辺隆男(無所属)民・共・社・生活推薦
三觜明美(幸福実現党)
上野氏と事実上の一騎打ちになる田野辺氏は、安倍政治に危機感を抱き、NHKの職を投げ打って立候補を決めたという人物。いわば筋金入りの反安倍候補である。旧「みんな」に投票した人たちが、上野氏と田野辺氏のどちらに投票するのかは微妙だが、単純に前回の結果から類推すれば、田野辺氏にも十分勝ち目はあるであろう。いや、なんとか勝ってもらわねばならない。そしてそのためには、民主主義を信じる者は彼に投票しなければならないのである。
みなさんも自分の選挙区について、前回と今回を比較してみたらいかがだろうか。これまでの選挙に比べれば、ずいぶんと「闘い」の条件はよくなっていることを実感すると思う。
なお、首都・東京の選挙区(6人区)では、前回の選挙で17万票以上を集めた三宅洋平氏も立候補し、山本太郎議員が全力で応援している。山本議員いわく、三宅氏なら「牛歩を間違いなく一緒にしてくれる(笑)」そうである。安保法制国会などでの山本議員のユニークな活躍ぶりは記憶に新しいところだが、たしかに彼のような政治家が2倍に増えることを想像するだけでワクワクするではないか! マスメディアからはなぜか無視されている彼だが、聴衆は日に日に膨らんでいる。YouTubeですでに11万Viewを稼いでいる氏の演説は必見である。
20160623三宅洋平 選挙フェスDay2 JR高円寺駅北口 東京都選挙区 参議院選挙
最後に一言。
今回は参院選なので、政権選択の選挙ではない。反安倍陣営に政権担当能力があるかどうかに不安を感じる人も多いとは思うが、そのことを重視する必要性は低い。
憲法違反の安保法制。原発再稼働。公約違反のTPP。アンチ民主主義の憲法草案。メディア統制と言論の自由の抑圧。福祉の切り捨て。溶けた年金。
安倍政治にブレーキをかけたい。そう思う主権者は、心置きなく反安倍陣営に投票すればよい。いや、投票しなければならないのである。「デモクラシーの緩慢な自殺」を食い止めるために。
※記事を引用する場合は出典の明記「マガジン9:http://www.magazine9.jp/」をお願いします
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想田和弘
想田和弘(そうだ かずひろ): 映画作家。ニューヨーク在住。東京大学文学部卒。テレビ用ドキュメンタリー番組を手がけた後、台本やナレーションを使わないドキュメンタリーの手法「観察映画シリーズ」を作り始める。『選挙』(観察映画第1弾、07年)で米ピーボディ賞を受賞。『精神』(同第2弾、08年)では釜山国際映画祭最優秀ドキュメンタリー賞を、『Peace』(同番外編、11年)では香港国際映画祭最優秀ドキュメンタリー賞などを受賞。『演劇1』『演劇2』(同第3弾、第4弾、12年)はナント三大陸映画祭で「若い審査員賞」を受賞した。2013年夏、『選挙2』(同第5弾)を日本全国で劇場公開。最新作『牡蠣工場』(同第6弾)はロカルノ国際映画祭に正式招待された。主な著書に『なぜ僕はドキュメンタリーを撮るのか』(講談社現代新書)、『演劇 vs.映画』(岩波書店)、『日本人は民主主義を捨てたがっているのか?』(岩波ブックレット)、『熱狂なきファシズム』(河出書房)、『カメラを持て、町へ出よう ──「観察映画」論』(集英社インターナショナル)などがある。
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